4-11小児の初期評価(最初の5分)
外観・呼吸・循環のトリアージ・次の一手
β版 · 紙面の最終確認 2026-10-30
日付は紙面の確認日です。院内承認を示すものではありません。処方・運用は、本文の適用条件と出典、院内の採用薬・手順を確認してください。
このページの目次9項目
1ポイント
- 触る前に、離れて見る。外観・呼吸・循環の3つで「悪い」と思ったら、診察より先に人を呼ぶ。
- 数値は年齢で変わる。大人の感覚で脈や呼吸の速さを判断しない。落ち着いたときに測り直す。
- 血糖・SpO2・体温・体重は、迷ったら全部取る。取らないと後で困る。
- 迷ったら送る。当院は院内外科的処置も小児集中治療も持たない。所見が出たら下の表で次の一手を引く。
判断の流れ
拡大して見る ↗2鑑別のながれ
- 呼吸→吸気性喘鳴+犬吠様咳嗽→クループ。泣かせない(クループ)
- 呼吸→吸気性喘鳴+高熱・流涎・前傾姿勢→急性喉頭蓋炎を疑う。咽頭を覗かない・仰臥位にしない・泣かせない。気道確保を試みず、気道確保できる施設へ即搬送
- 呼吸→呼気性喘鳴(両側性)→喘息・細気管支炎。SpO2測定、吸入(喘息発作 / RSV)
- 呼吸→突然の咳込みから始まった片側の呼吸音低下→気道異物。咳を妨げない、口の中を触らない(気道異物)
- 呼吸→深く速い規則的な呼吸(Kussmaul呼吸)→血糖と血液ガスでDKAを外す(DKA)
- 呼吸→乳児の無呼吸→モニタ装着。敗血症・百日咳・BRUEを考える(意識障害)
- 循環・全身→CRT 2秒以上、四肢冷感、蒼白→ショック。酸素+等張性輸液
- 循環・全身→蕁麻疹・血管性浮腫+気道/呼吸・循環器のいずれか(喘鳴・呼吸苦・血圧低下・ぐったり)→アナフィラキシー。アドレナリン筋注が最優先(じんましんとアナフィラキシー / エピペン)
- 循環・全身→乳児で皮疹なく哺乳不良・持続啼泣・活気低下・嗜眠・蒼白のみ→皮疹がなくても乳児の非典型的アナフィラキシーを疑う(既知アレルゲン曝露歴があれば特に)。皮疹の有無だけで否定しない(じんましんとアナフィラキシー)
- 循環・全身→発熱+紫斑→髄膜炎菌・敗血症を疑う。血液培養、抗菌薬を遅らせない、上級医コール
- 循環・全身→発熱や脱水で説明できない頻脈+肝腫大→心筋炎を疑う。心電図・胸部X線(急性腹痛)
- 循環・全身→3か月未満の38.0℃以上→「元気そう」でも精査前提(3か月未満の発熱)
- 意識・神経→反応が鈍い・ぐったり→血糖をまず測る。意識レベルを数値で記録(意識障害)
- 意識・神経→けいれんが続いている→時刻を記録。5分を超えたら第一選択薬(けいれん重積)
- 意識・神経→けいれんは止まったが意識が戻らない→非けいれん性重積を疑う。脳波は当院で持てない(けいれん重積)
- 意識・神経→運動中・臥位・前ぶれなしで気を失った→心原性を疑う。心電図(失神)
- 意識・神経→瞳孔不同・徐脈+高血圧・異常肢位→頭蓋内圧亢進。当院は院内CTが撮れない=この所見だけで搬送(意識障害)
- おなか→緑〜黄色の胆汁性嘔吐→腸回転異常症・中腸軸捻転を最優先で外す。小児外科へ即連絡(中腸軸捻転)
- おなか→間欠的に激しく泣き合間は機嫌が戻る(3か月〜2歳)→腸重積。当直帯はエコーを当てる人がいない(装置はある)。当てても陰性は否定に使わない=この所見だけで電話。血便を待たない(腸重積)
- おなか→板状硬・反跳痛→腹膜炎。絶食・ルート確保・外科のある施設へ(急性腹痛)
- おなか→男児の腹痛・下腹部痛→陰嚢を必ず開けて診る(精巣捻転は6〜8時間)(急性陰嚢症)
- おなか→鼠径部の硬い膨隆+不機嫌→嵌頓ヘルニア。用手整復を試みず搬送(嵌頓ヘルニア)
- その他→ボタン電池・磁石を飲んだ可能性→頸部から骨盤までX線。なにも飲ませない(消化管異物)
- その他→薬・洗剤・たばこを口にした→吐かせない。物質で水・牛乳の可否が分かれる(急性中毒)
- その他→受傷機転と所見が合わない・乳児の骨折→虐待を疑う。2歳以下は全身骨X線(外傷・跛行)
- その他→顔面熱傷・閉所での火災→気道熱傷。高濃度酸素をすぐ開始(熱傷)
3検査
- 体重:実測する。すべての用量計算の前提
- SpO2・体温(測定部位も記録)
- 心拍数・呼吸数:啼泣で大きく変動するため、落ち着いたときに測り直す
- 血圧:年齢の下限と照らす
- 血糖:意識がおかしい、嘔吐が続く、けいれん、ぐったり、のいずれかがあれば測る
- CRT・意識レベル(数値で。時刻とセット)
4処置・処方例
Rp. 1等張性輸液(生理食塩液・リンゲル液など) 10〜20mL/kgを急速投与。低張性輸液は使わない 静注
ショックを疑ったら原因によらずただちに酸素投与とあわせて開始。ただし肝腫大・心雑音など心原性ショックを疑う所見があれば、5〜10mL/kgをより緩徐(10〜20分かけて)に投与し、頻回に再評価する
- 通常のショック:生理食塩液またはリンゲル液を—までを目安に急速投与
- 肝腫大・心雑音など心原性ショックを疑う所見があれば:—〜—をより緩徐に(10〜20分かけて)投与し、頻回に再評価する
- 再評価し、必要があれば等張性輸液を再投与。同時にショックの原因検索を行う
避けること・注意:「血圧が保たれているから大丈夫」という判断(小児は代償するので血圧が下がったときにはもう遅い)、検査をすべて終えてから電話すること。
↑ このページの入口へ5電話で伝える順(ISBAR)
- I(Identify):誰が・どこから・何歳何か月・体重
- S(Situation):いま何を疑っていて、発症から何時間目か
- B(Background):経過・既往・ワクチン・最終飲食
- A(Assessment):バイタル・意識レベル・所見・やった検査と結果
- R(Request):お願いしたいこと(受け入れ/処置/相談だけ、を明示する)
やってはいけない・落とし穴
↑ このページの入口へ- 検査を全部終えてから電話しない。並行する
- 家族に「うちでは手術ができない」ことを、検査の前に伝えておく。決まってからの説明が揉めない
6迷ったときの既定
- 搬送・紹介外科手術、整形外科手術、緊急内視鏡、気管支鏡、人工呼吸管理、脳波、集中治療が要ると思った時点で、確定を待たずに電話する
7診療中の疑問と回答
- 輸液後も頻脈がある。もう一度同量を入れる?
- 頻脈だけで反復せず、灌流、意識、尿量、呼吸、肝腫大などを投与前と比較する。改善が乏しい、呼吸苦や肝腫大が増す場合は輸液過剰・心原性ショックを考える。原因と次の循環支持を上級医・搬送先と相談し、当院で大量輸液を続けない。
根拠:RCH 重症児の初期蘇生(海外指針) - バイタルが測れないほど暴れる児は、鎮静してから評価する?
- まず離れて外観・呼吸・皮膚循環を見て、保護者と楽な姿勢で評価する。低酸素やショックによる不穏を単なる恐怖としない。鎮静で気道・呼吸を悪化させることがあるため、評価目的だけで安易に使わず必要なモニターと応援を確保する。
根拠:RCH 重症児の初期蘇生(海外指針) - 検査結果がそろう前に搬送を相談してもよい?
- 重い呼吸仕事量、反応低下、循環不良など、当院の対応能力を超える所見で早期に相談する。初期処置と相談は並行し、年齢、疑う病態、バイタルの推移、処置への反応を短く伝える。画像や採血の完了を待つことで治療・搬送を遅らせない。
根拠:RCH 重症児の初期蘇生(海外指針)
- 血圧が保たれていれば安心していい?
- いいえ。小児は代償するので、外観・呼吸・循環が悪ければ血圧が保たれていても代償性ショックとして動く。
- 脈拍や呼吸数はいくつから異常?
- 年齢で変わるので大人の感覚で判断しない。啼泣で大きく変動するため、落ち着いたときに測り直す。
- 帰すときに何を伝える?
- 再受診の条件を具体的な所見で紙に渡す。「何かあれば」は条件にならない。
一般教育・院内オペ補助。個別診断・治療の代わりにはなりません。β版・逐条レビュー継続中。