6-8食物アレルギー(診断と日常管理)
診断の入口と、間違った除去を止める
β版 · 紙面の最終確認 2026-10-30
日付は紙面の確認日です。院内承認を示すものではありません。処方・運用は、本文の適用条件と出典、院内の採用薬・手順を確認してください。
このページの目次7項目
1ポイント
- 特異的IgE陽性=食物アレルギーではない。感作の証明だけで除去を安易に指導しない。
- 病歴と標的検査を合わせて診断する。OFCは全例必須の再誘発試験ではない。診断が不確実な場合、安全摂取範囲・耐性の確認が必要な場合に専門施設で適応を判断する。
- 管理は必要最小限の除去。検査陽性だけで除去食品を増やさず、病歴と個別診断に基づいて安全に食べられる範囲を保つ。
- FDEIAは運動等が反応の閾値を下げる病態。食物だけでも症状が出る場合があり、「運動しなければ安全」とは限らない。運動・体調・薬を確認する。
- 食物摂取後の急な気道・呼吸・循環症状では、皮膚症状がなくてもアナフィラキシーを疑う。アナフィラキシー・エピペンの急性期手順へ。
2鑑別のながれ
- 食後の腹部症状→免疫機序でない、皮膚・呼吸器症状を伴わない→食物不耐症(乳糖不耐など)
- 口腔・咽頭の違和感→花粉との交差反応では口腔症状主体だが、全身症状もあり得る→口腔アレルギー症候群 / PFAS(食物アレルギーの病型)
- 同じものを食べた複数人に発症→食後まもなく→食中毒・ヒスタミン中毒
- 特異的IgE陽性→食べても症状が出ない→感作のみ(無症状)。除去しない
- 新生児・乳児の嘔吐・血便・体重増加不良→IgE非依存性のことが多い→消化管アレルギー
3検査
- 食品の形・量・発症までの時間・症状・再現性・以前の摂取・運動や薬を確認し、標的検査を合わせて診断する。乳児湿疹の検討手順を全病型へ一般化しない。
- OFCは確定診断・安全摂取量・耐性の確認を目的に、利益とリスクを比較して専門施設で適応を判断する。当院は院内既存2026-09-25決定でOFCを紹介する。自宅で再摂取を試させない。
- 特異的IgEは病歴から疑う抗原に絞って測定し、網羅的パネル測定は行わない
4帰宅・入院の目安
- 帰宅診断の入口(病歴聴取・特異的IgE)は当院で行える
- 搬送・紹介食物経口負荷試験(OFC)が要る例(当院は院内専門施設へ紹介)、複数除去・成長不良・食事への恐怖(専門外来で診断と栄養を見直し、必要に応じてOFC)、FDEIAの精査(負荷試験の適応は専門施設で判断。陰性でも除外に限界)
5診療中の疑問と回答
- 特異的IgEが下がったら、自宅で除去解除してよい?
- 数値の低下だけでは解除しない。直近の症状、これまで食べられた量・調理法、喘息の状態を合わせ、必要に応じてOFCで確認する。重篤反応や微量での反応がある児ほど実施施設を慎重に選ぶ。採血の数字をそのまま「食べてよい量」に換算しない。
根拠:食物アレルギー診療の手引き2023:食物経口負荷試験 - OFCが陰性なら、翌日から量も調理法も自由にしてよい?
- 試験で確認した食品・調理法・量をもとに、実施医が家庭での摂取方法と増量の範囲を具体化する。陰性の最終判断には家庭での反復摂取の確認も含まれる。加熱卵での結果を生卵や大量摂取へ広げず、帰宅後の症状があれば摂取を中止して実施施設に連絡する。
根拠:食物アレルギー診療の手引き2023:食物経口負荷試験 - 少量OFCで陽性だった。ずっと完全除去でよい?
- 当面の除去範囲を決めたうえで、次の評価時期を設定する。手引きでは少量OFC陽性後の再試験は1年後を一つの目安としているが、微量反応・アナフィラキシー・反復陽性は専門施設へ相談する。安全に摂取できる範囲の検討と、症状を起こしながら家庭で増量することは区別する。
根拠:食物アレルギー診療の手引き2023:管理・治療 - 抗ヒスタミン薬を先に飲めば、原因食物を食べても安全?
- 安全にはならない。皮膚症状を軽くしても、気道閉塞や循環不全を防ぐ薬ではない。誤食後に呼吸・循環症状や急速な悪化があれば内服の効果を待たず、アドレナリン筋注・救急要請の手順へ進む。原因食物を食べるための予防内服として処方しない。
根拠:食物アレルギー診療の手引き2023:症状出現時の対応 - 除去中の児の再診で、採血以外に何を確認する?
- 成長曲線、代替食品、園・学校での誤食、実際に食べている量を確認する。牛乳除去ではカルシウムなどの不足に注意し、複数除去や成長不良は栄養士・専門医につなぐ。解除の可能性を定期的に見直し、学校への指示書と緊急時対応も現在の診断に合わせて更新する。
根拠:食物アレルギー診療の手引き2023:管理・治療 - 少しずつ食べさせる治療を一般外来で始めてよい?
- 症状誘発閾値が不明・低い児への自宅増量は安易に指導しない。国内の手引きでは経口免疫療法は専門性と安全管理を要し、一般診療としては推奨されない。専門医が確認した無症状の摂取範囲を維持する指導と、脱感作を目的とする治療を混同せず、希望があれば専門施設へ紹介する。
根拠:食物アレルギー診療の手引き2023:管理・治療
- 血液検査が陽性なら除去すべき?
- 特異的IgE陽性は感作の証明で、症状と病歴を合わせて判断する。診断不確実例等では専門施設でOFCを検討するが、全例で再誘発して初めて確定するわけではない。
- 念のため除去していい?
- しない。栄養とQOLを損なう。管理の原則は必要最小限の除去。
- 運動後にアナフィラキシーが出たら?
- 食べた内容と時間、運動、体調、薬を確認する。食物のみでも起こり得る。いま呼吸・循環症状があれば原因精査より急性期対応を優先する。
- FDEIAの予防で伝えることは?
- 従来の目安は運動2〜4時間前の原因食物を避けることだが、専門医の個別指示を優先する。NSAIDs、体調等も影響し、時間を満たしても安全とは保証しない。
- 学校からエピペンの取り扱いを聞かれたら?
- 当院での学校生活管理指導表の記載・エピペン処方/学校運用は未確認。必要性と担当医を確認し、専門施設等と園・学校の保管・使用手順を調整する。学校生活管理指導表(アレルギー疾患用)を医師が記載する。教職員がその場で本人に代わって注射することは、反復継続の意図がないため医師法違反にならないとの厚生労働省・文部科学省の見解(2009年7月6日)がある。
- 複数の食品を「念のため」除去していて、体重増加不良や成長障害があるときは?
- 専門外来へつなぎ、必要な除去と栄養を再評価する。病歴を踏まえ、必要に応じてOFCで安全に食べられる範囲を確認する。
7家族への説明
血液検査の陽性だけでは食物アレルギーとは決まりません。食べた内容と症状を確認し、必要な場合は専門施設で安全を確保して食べる検査を行います。心配だけで食品を増やして除くと、栄養や生活に負担が出ます。安全に食べられるものを保ちながら、必要な食品だけを除く方針を一緒に決めます。自宅で原因として疑う食品を試したり量を増やしたりしないでください。食事のあとや運動中に症状が出た場合は、その前の食べ物・運動・薬などを教えてください。
一般教育・院内オペ補助。個別診断・治療の代わりにはなりません。β版・逐条レビュー継続中。