4-25熱中症
高体温・意識障害・脱水
β版 · 紙面の最終確認 2026-10-30
日付は紙面の確認日です。院内承認を示すものではありません。処方・運用は、本文の適用条件と出典、院内の採用薬・手順を確認してください。
このページの目次9項目
1ポイント
- 深部体温が測れなくてもqⅣ度で重症は判定できる:表面体温40.0℃以上(または皮膚に明らかな熱感)かつGCS8以下(またはJCS100以上)。深部体温の測定を待たない。
- 呼びかけへの反応がない・おかしな返答をする・体がひきつけを起こす・自分で水分補給ができない——こども家庭庁が挙げる危険サイン。自力で水分がとれなければ輸液へ進める。
- 熱中症は除外診断。感染症、悪性症候群による中枢性高体温、甲状腺クリーゼなどを外したうえで診断する。
- 小児は冷やしすぎる。体重に対する体表面積が大きく冷却効果が高い反面、急速な体温低下に注意する。
- 蒸散冷却法(体表に水をかけて送風)が局所冷却(アイスパック)より速く(0.31℃/分)、合併症も少ない。
2鑑別のながれ
- 高体温・意識障害→薬剤歴(抗精神病薬・麻酔)→中枢性高体温(悪性症候群・悪性高熱症)
- 高体温→頻脈、甲状腺腫→甲状腺クリーゼ
- 高体温→暑熱環境が乏しく、経過・感染徴候あり→感染症(敗血症・髄膜炎)。発熱と高体温を混同しない
- 高体温・意識障害→嘔吐下痢が先行→脱水・胃腸炎
- 高体温・意識障害→曝露歴あり→中毒
- 高体温→上記いずれもない・暑熱環境あり→熱中症(重症度で対応を決める)
3重症度(Ⅰ・Ⅱ度は2015年分類、Ⅲ度以上は熱中症診療ガイドライン2024)
| Ⅰ度 | めまい・立ちくらみ・生あくび・大量の発汗・筋肉痛・筋肉の硬直(こむら返り)。意識障害なし | 現場の応急処置と見守りで対応可(涼しい場所・冷却・経口補水) |
|---|---|---|
| Ⅱ度 | 頭痛・嘔吐・倦怠感・虚脱感・集中力や判断力の低下(JCS1以下) | 医療機関受診。経口摂取できれば冷却・経口補水、できなければ輸液(当院で対応しうる) |
| Ⅲ度(2024)(重症) | Ⅳ度に該当しない2015年分類のⅢ度 | Ⅲ度も重症。冷却・呼吸循環・臓器評価を行い上級医/専門施設へ即相談。院内管理可否は臓器障害と監視体制で決定 |
| qⅣ度(重症) | 表面体温40.0℃以上(または皮膚に明らかな熱感)かつGCS8以下(またはJCS100以上) | 持てない。冷却を開始しながら集中治療のある施設へ |
| Ⅳ度(重症) | 深部体温40.0℃以上かつGCS8以下 | 持てない。冷却を開始しながら集中治療のある施設へ |
→ 横にスクロールできます
4検査
- 体温:測り方(腋窩か深部か)を記録する。腋窩温だけで重症度を決めない
- 意識レベル:GCSまたはJCSで数字にする。qⅣ度の判定に直結する
- 皮膚の熱感・発汗の有無、環境(気温・湿度・閉め切った室内・車内・運動中)を確認する
- 自力で水分がとれるかを実際に試す
- Ⅲ度以上を疑うとき:血液検査で腎機能(BUN・Cr)・肝逸脱酵素(AST・ALT)・電解質・血糖・CK・凝固(DIC疑い)を確認する。中枢神経症状・肝腎機能障害・血液凝固異常のいずれかがⅢ度の定義に含まれるため必須。当直帯で提出できる(facility.json)
- Ⅲ度以上を疑うとき:尿検査でミオグロビン尿の有無をみる
5冷却(蒸散冷却法)
- 高温環境から退避させ、風通しの良い日陰やクーラーの効いた室内に移動する。衣服を脱がせ、きついベルトや下着をゆるめて放熱させる
- 体表にぬるま湯(40℃程度)をかけながら扇風機で送風する(蒸散冷却法)。局所冷却(アイスパック)より冷却速度が速く(0.31℃/分)、合併症も少ない。冷水は皮膚血管の収縮とシバリングを招くため使わない
- 補助として、頸部・腋窩・鼠径部など太い血管が通る部位に冷却(氷のう・冷たいシャワー等)をあてる
- 0〜10歳は体重に対する体表面積が大きく冷却効果が高い。急速な体温低下に注意し、冷やしっぱなしにしない
- 数値目標は置かず、臨床所見(意識レベル・バイタルの改善)で冷却終了を判断する
やってはいけない・落とし穴
↑ このページの入口へ- 胃洗浄・膀胱洗浄は小児では水中毒や誤嚥のリスクを勘案する
- 腋窩温だけで重症度を決めない
- 小児は皮膚から吸収されるため、冷却にアルコールを使わない
- 冷却の数値目標を機械的に適用しない(臨床所見で判断する)
6帰宅・入院の目安
- 帰宅意識清明で自力で水分がとれる、涼しい場所で冷却・経口補水ができる、再受診条件を渡せる
- 入院経口摂取ができず輸液が要る(当院で対応しうる)
- 搬送・紹介Ⅳ度・qⅣ度(持てない。冷却を開始しながら集中治療のある施設へ)、意識障害が続く・臓器障害を疑う(持てない)
7診療中の疑問と回答
- 高体温なら解熱薬を使い、効くまで待ってよい?
- 熱中症を疑う高体温では速やかな冷却と呼吸循環の評価を優先し、解熱薬の反応を待たない。意識異常や自力で飲めない状態は緊急対応が必要。暑熱曝露があっても感染症、中毒などを除外せず、冷却と原因評価を並行する。
根拠:日本救急医学会 熱中症GL2024 - 涼しい場所で体温が下がれば、すぐ帰してよい?
- 意識・歩行・飲水が普段に戻ったか、尿量と循環、悪心・筋痛の残存を確認する。重症経過では肝腎障害や凝固異常などが遅れて明らかになるため、体温の正常化だけで帰宅を決めない。経過と検査から観察・入院を判断する。
根拠:日本救急医学会 熱中症GL2024 - 氷で冷やし続ければよい?小児の冷却終了はどう判断する?
- 小児は体格に対する体表面積が大きく、急激に冷えすぎることがある。体温は測定部位を記録して反復し、意識・循環と合わせて冷却方法を調整する。成人の終了温度を小児へ一律に当てはめず、搬送中も冷却と過冷却の監視を引き継ぐ。
根拠:日本救急医学会 熱中症GL2024
- 深部体温が測れないときは?
- qⅣ度(表面体温40.0℃以上・GCS8以下など)を使う。深部体温の測定を待たない。
- 冷却は何℃まで下げる?
- 数値目標は置かない。小児は下がりすぎる可能性があるため、臨床所見(意識レベル・バイタルの改善)で終了を判断する。
- 搬送を決めたら?
- 冷却を止めずに搬送する。体温(測定部位つき)・意識レベル・環境と曝露時間を伝え、過冷却に注意する。
9家族への説明
暑さで体温が上がり、体の調整が追いつかなくなった状態です。声をかけても反応が鈍い、おかしな返答をする、ひきつけを起こす、自分で水が飲めない——このどれかがあれば危険な状態なので、すぐに知らせてください。冷やす処置をしますが、お子さんは大人より体が冷えやすいので、下げすぎにも注意しながら行います。
一般教育・院内オペ補助。個別診断・治療の代わりにはなりません。β版・逐条レビュー継続中。