4-18低体温(偶発性低体温症)
深部体温低下・意識障害・徐脈
β版 · 紙面の最終確認 2026-10-30
日付は紙面の確認日です。院内承認を示すものではありません。処方・運用は、本文の適用条件と出典、院内の採用薬・手順を確認してください。
このページの目次9項目
1ポイント
- 定義:深部体温(直腸温・膀胱温・食道温など)が35℃以下。腋窩温では判断できない。直腸温を測る。
- 30℃以下は触るだけで危ない。心筋の被刺激性が高まり致死的不整脈が起きやすい。乱暴に動かさない・揺らさない。
- 震えが止まったのは軽症化ではなく悪化のサイン(中等度低体温では戦慄が消失する)。
- 幼少児は原因リストに明記される。体表面積が大きく熱産生の予備が小さいため冷えやすい。
- 深部体温30℃未満の重度低体温では、心停止に見えても復温を試みながら蘇生を続ける(低体温を伴う心停止では蘇生中止の判断が難しいとされる)。
2鑑別のながれ
- 低体温→低血糖を伴う→低血糖(原因にも結果にもなる。血糖を測る)
- 新生児・乳児の低体温→哺乳低下・不活発→敗血症を疑う(新生児は発熱ではなく低体温で来る)
- 説明のつかない低体温(屋内・寒冷曝露なし)→内服・誤飲歴、甲状腺腫、家庭状況→中毒・内分泌疾患・低血糖・敗血症・虐待(ネグレクト)を考える
- 低体温+意識障害→頭部外傷歴、神経所見→頭部外傷・脳血管障害
- 低体温→水中での発見→溺水
- 低体温(水難・寒冷曝露)→四肢末梢の色調・知覚異常→凍傷。低体温の復温を優先する
3重症度分類
| 軽度低体温 | 35〜32℃。戦慄あり。感情鈍磨・頻呼吸・頻脈 | 受動的復温。原因を探す |
|---|---|---|
| 中等度低体温 | 32〜28℃。戦慄消失。意識低下・徐呼吸・徐脈 | 持てない。復温を開始しながら搬送 |
| 高度低体温(重症) | 28℃以下。筋硬直。昏睡・呼吸停止・心停止 | 持てない。愛護的に扱い体外循環を持つ施設へ |
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4検査
- ABC評価・保温と並行して深部体温を測る。測温を待って初期対応を遅らせない。腋窩温だけで除外しない
- 血糖を測る(低体温の原因にも結果にもなる)
- 心電図モニタ:J波(Osborn波)、T波逆転、PQ・QR・QTSの延長、不整脈を見る
- 採血:血算・生化・電解質・血ガス・凝固・甲状腺(必要に応じ)・中毒スクリーニング
5治療(当院でやること)
- ABC評価・保温と並行して深部体温を測る。測温の準備で初期安定化を遅らせない。測定方法・器具は年齢と院内手順に合わせる
- 気道・呼吸・循環を評価する。愛護的に扱い、乱暴な体位変換をしない
- 濡れた衣服を全部脱がせ、毛布・加温で受動的復温する
- 血糖・心電図(J波・不整脈)を確認する(検査参照)
- 重症度で分ける。中等度以上(32℃未満)は持てない
- 搬送先には体温・意識・心電図所見・推定曝露時間を伝える
やってはいけない・落とし穴
↑ このページの入口へ- 腋窩温だけで低体温の重症度を判断しない
- 30℃以下は体位変換・ライン確保・移送をできるだけそっと行う
- 震えが止まったことを軽症化と読み違えない
6帰宅・入院の目安
- 入院軽度低体温を当院で受動的復温し、原因を治療する場合、低血糖を伴う(ブドウ糖投与は当院で)
- 搬送・紹介中等度低体温(32〜28℃):持てない。復温を開始しながら搬送、高度低体温(28℃以下)・心停止:持てない。体外循環を持つ施設へ、敗血症を疑う乳児:持てない、ネグレクトを疑う:持てない。通告と全身評価
7診療中の疑問と回答
- 温めたら少し元気になった。すぐ帰してよい?
- 低体温は救急評価を要する。温度だけでなく呼吸・循環・意識が安定したか、再び冷える環境に戻らないか確認する。乳児の哺乳不良や反応低下を寒さだけとせず、低血糖・感染症などの原因を評価し、深部体温と経過を確認して帰宅可否を決める。
根拠:NHS Hypothermia(初期安全対応) - 早く温めるため風呂や熱い湯たんぽを使う?
- 熱い風呂、直接の強い熱、手足の摩擦で急に温めない。濡れた衣類を除き乾いた毛布などで保温し、優しく扱いながら医療機関へつなぐ。意識が悪い児には飲ませず、呼吸・脈拍の評価と蘇生が必要かを先に判断する。
根拠:NHS Hypothermia(初期安全対応) - 震えが止まったら改善したと判断する?
- 震えの有無だけでは改善としない。低体温が進むと震えが減り、反応や呼吸も弱くなり得る。深部体温、循環、意識を再評価し、眠っているようでも起こせない・哺乳できない乳児は救急対応する。移動時の乱暴な取り扱いを避ける。
根拠:NHS Hypothermia(初期安全対応) / Resuscitation Council UK 2025 特殊状況(偶発性低体温)
- 震えていないから軽症?
- 逆。震えが消えるのは32℃を下回ったサイン。中等度以上に進んでいる可能性を考える。
- 腋窩温で35℃以下なら低体温症と診断していい?
- いいえ。定義は深部体温(直腸温など)が35℃以下。腋窩温では判断しない。
- 心停止に見えたら?
- 深部体温を確認し、復温を試みながら蘇生を続ける(深部体温30℃未満の重度低体温ではPALSが復温を試みながらの蘇生継続を推奨)。低体温を伴う心停止では蘇生を中止するタイミングの判断が難しいとされる。体外循環のある施設への搬送を最優先する。
- 低体温の子に何を一緒に調べる?
- 血糖(原因にも結果にもなる)と、乳児なら敗血症を必ず考える。
9家族への説明
体の芯の温度が下がりすぎている状態(低体温症)です。わきの下ではなく、おしりから体の奥の温度を測ります。体の芯が冷えると、震えが止まり、ぼんやりして、脈も呼吸もゆっくりになります。震えが止まったのは、良くなったのではなく、悪くなったサインです。冷えた心臓は刺激に弱いので、そっと扱いながら、ゆっくり温めていきます。温度が大きく下がっている場合は、血液を体の外で温める装置がある病院にお願いします。いま血糖も測ります。低血糖は、冷えの原因にも結果にもなるためです。
一般教育・院内オペ補助。個別診断・治療の代わりにはなりません。β版・逐条レビュー継続中。