11-5リンパ節腫脹(悪性を外す)
頸部・鎖骨上窩・全身性リンパ節腫大
β版 · 紙面の最終確認 2026-10-30
日付は紙面の確認日です。院内承認を示すものではありません。処方・運用は、本文の適用条件と出典、院内の採用薬・手順を確認してください。
このページの目次10項目
1ポイント
- 子どもの頸部リンパ節は触れるのが普通。仕事は「触れてはいけない場所か」「触れてはいけない性状か」「触れてはいけない全身所見を伴うか」を見ること。
- 場所で切る。鎖骨上窩は原則すべて異常。頸部・腋窩・鼠径は生理的にも触れる。
- 性状で切る。硬い・可動性がない・癒合している・痛くない・大きくなり続ける=悪性を疑う。
- 全身で切る。原因が明らかでない発熱・寝汗・体重減少を伴うリンパ節腫大はリンパ腫を疑う症状。
- 急ぐのは①気道を圧迫しているもの②敗血症になっているもの③悪性。当直帯にその場で出せるのは血算・LDH・CRPまで。末梢血液像・頸部エコーは翌日。
2鑑別のながれ
- リンパ節腫脹→鎖骨上窩に触れる→原則すべて異常。胸腹部の悪性腫瘍・リンパ腫・結核
- リンパ節腫脹→硬い・可動性がなく・癒合し・痛みがなく・進行性に増大→悪性リンパ腫・転移(生検が要る。持てない)
- リンパ節腫脹→原因不明の発熱・寝汗・体重減少を伴う→リンパ腫を疑う症状
- リンパ節腫脹→蒼白・紫斑・肝脾腫・骨痛を伴う→白血病
- リンパ節腫脹→急速に増大し発赤・波動・強い圧痛→化膿性リンパ節炎の膿瘍化(ドレナージは持てない)
- リンパ節腫脹→発熱+ショック(頻脈・末梢冷感・意識変容等)→敗血症(119・即時)
- 頸部リンパ節腫脹→5日以上の発熱+片側1.5cm以上→川崎病を外す
- リンパ節腫脹→開口障害・含み声・流涎・嚥下困難・頸部の後屈保持→深頸部感染症・咽後膿瘍(気道が先)
- リンパ節腫脹→起座呼吸・顔面と頸部の腫れ・頸静脈怒張→前縦隔腫瘤による上大静脈症候群(仰臥位・鎮静禁止)
- 全身のリンパ節腫大→咽頭炎・肝脾腫・異型リンパ球→伝染性単核症(脾破裂に注意)
- 片側頸部の腫大→圧痛・発熱・上気道炎の先行→急性化膿性リンパ節炎(48時間で再評価)
- 腋窩リンパ節腫大→BCG接種歴と同側→BCG接種後リンパ節炎(経過観察が原則)
- 腋窩リンパ節腫大→猫との接触・引っかき歴→猫ひっかき病(当院で対応しうる)
- 頸部の腫瘤→リンパ節ではない。嚥下で動く(正中頸嚢胞)、柔らかく透光性(リンパ管奇形)→正中頸嚢胞・側頸嚢胞・リンパ管奇形(エコーが要る。専門施設)
3部位別の大きさの目安
| 鎖骨上窩・腸骨・膝窩 | 触知で異常 | 紹介・精査 |
|---|---|---|
| 頸部・腋窩 | 1cm超で異常 | 経過観察か精査かを判断 |
| 鼠径 | 1.5cmまでが正常範囲 | 超えたら評価を検討 |
| 上腕骨内側上顆 | 5mm超で異常 | 評価を検討 |
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4検査
- 血算+末梢血液像:芽球・異型リンパ球・血球減少を見る。悪性を外す第一歩。当直帯は血算のみ。鏡検は翌朝
- LDH:高値はリンパ腫・白血病を示唆
- CRP:化膿性か否かの補助
- 血液培養:発熱+全身状態不良なら採取。当直帯は検査室へ提出できないので、抗菌薬投与前に採って保管し翌朝提出する
- EBV抗体(VCA-IgM/IgG、EBNA)・CMV:提出基準は伝染性単核症を参照
- 抗核抗体・補体:長引く発熱があれば膠原病を考える
- IGRA(結核):曝露歴があれば必ず
- 頸部エコー:膿瘍化・内部性状・リンパ節の形を見る。当直帯は当院で撮れない。膿瘍を疑う所見(波動・強い圧痛・発赤)は触診と視診で拾い、疑えば翌日を待たずに相談する
- 胸部X線:前縦隔腫瘤・肺門リンパ節腫大。全身性リンパ節腫大では必ず撮る
- リンパ節生検:診断の確定に必要。当院で持てない
5対応の注意
避けること・注意:経験的抗菌薬の薬剤名・用量を院内採用・地域の感受性を確認せず決め打ちすること、鎖骨上窩のリンパ節腫脹を「よくあること」として様子見にすること、硬く無痛性で進行性のリンパ節を抗菌薬で様子見すること。
↑ このページの入口へ6治療ワークフロー(当院でやること)
- 気道を先に評価する。開口障害・含み声・流涎・起座呼吸があれば触診より先に気道
- 全身のリンパ節を触る(頸部・鎖骨上窩・腋窩・鼠径)。鎖骨上窩を飛ばさない
- 腫れている領域が受ける場所を探す(頭皮・歯・口腔・眼・皮膚の傷・虫刺され)
- 肝脾腫を触る。腹部の腫瘤も確認する
- 皮膚を見る(紫斑・点状出血・発疹・BCG痕の発赤)
- 血算+LDH・CRPを全身性なら必ず測る。末梢血液像は翌朝にオーダーする
- 必要に応じてEBV/CMV・ASO・抗核抗体・結核の検査(IGRA)
- 胸部X線(前縦隔腫瘤・肺門リンパ節)
- 急性化膿性リンパ節炎として治療するなら48時間後の再評価を必ず約束する
やってはいけない・落とし穴
↑ このページの入口へ- 生検が要ると判断したら抗菌薬でごまかさずに紹介する
- 「痛くないから様子見」で1か月放置しない
7帰宅・入院の目安
- 帰宅全身状態がよく発熱がない、または短期間、柔らかく可動性があり圧痛があり増大していない、鎖骨上窩ではない、肝脾腫・紫斑・蒼白がない、再評価の日を決めて家族に書いて渡している、単純な反応性リンパ節腫脹・急性化膿性リンパ節炎:当院で外来治療し、48時間で再評価する、伝染性単核症:典型例は外来対応
- 入院伝染性単核症:入院基準は伝染性単核症を参照(脾破裂・気道閉塞は持てない・搬送)、川崎病(疑い):定型・不全型を問わず当院で治療を開始する(詳細・搬送基準は川崎病を参照)
- 搬送・紹介気道圧迫(深頸部感染・前縦隔腫瘤):持てない。119、発熱+リンパ節腫脹+ショック:敗血症。持てない。119、鎖骨上窩の腫大:持てない。紹介、悪性を疑う性状(硬い・固着・無痛・進行性):持てない(生検が要る)、血算・末梢血液像の異常:持てない、膿瘍化した化膿性リンパ節炎:ドレナージが要る=持てない、結核・非結核性抗酸菌症の疑い:持てない。結核は届出
8診療中の疑問と回答
- 首のしこりが数週間残る。全員に抗菌薬を出す?
- ウイルス後の反応性リンパ節は長く触れることがある。全身状態、縮小傾向、圧痛・発赤・片側性を確認し、細菌性を疑う所見がなければ抗菌薬を漫然と使わない。鎖骨上窩、硬く固着する腫瘤、体重減少・寝汗は別に評価して紹介する。
根拠:RCH Cervical lymphadenopathy - 化膿性リンパ節炎で内服2日後も改善しない。薬を増やす?
- 48時間前後の診察で発熱、腫脹、痛みと内服状況を確認する。波動や増大があれば膿瘍を疑い超音波・外科相談を考える。頸部運動制限、流涎、呼吸・嚥下障害は深頸部感染として急ぐ。耐性菌だけを想定して内服変更を繰り返さない。
根拠:RCH Cervical lymphadenopathy - ステロイドで腫れを小さくしてから紹介してよい?
- 原因不明の持続性・進行性リンパ節腫脹に診断前のステロイドを安易に使わない。悪性疾患などの評価を妨げる可能性がある。血算・血液像と全身所見を確認し、必要な画像・生検を専門科と相談する。呼吸苦や臥位困難なら緊急紹介する。
根拠:RCH Cervical lymphadenopathy
- 首のリンパ節が触れたらすぐ心配?
- いいえ。子どもの頸部リンパ節は触れるのが普通。鎖骨上窩か、性状(硬い・可動性なし・癒合・無痛・進行性)か、全身所見(発熱・寝汗・体重減少)かで切る。
- 鎖骨上窩のリンパ節は様子を見ていい?
- 見ない。鎖骨上窩は原則すべて異常として扱い、胸部X線・血算・LDHをとって紹介する。
- 急性化膿性リンパ節炎の抗菌薬は何を使う?
- 本シートでは薬剤名・用量を決めていない。院内採用と地域の感受性で決まる。狙う菌は黄色ブドウ球菌とA群溶連菌。
- 「様子を見る」を選べるのはどんなとき?
- 全身状態が良く発熱がないか短期間、柔らかく可動性・圧痛があり増大していない、鎖骨上窩でない、肝脾腫・紫斑・蒼白がなく、再評価の日を決めて渡せるとき。
10家族への説明
子どもの首のリンパ節は、触れるのがふつうです。かぜやのどの炎症のあとに腫れて、しばらく小さいまま残ることもよくあります。次に見る日を決めましょう。それまでの間、腫れが急に大きくなる、皮膚が赤く腫れて痛みが強くなる、熱が下がらない、汗で寝間着が濡れるほどの寝汗、体重が減る、あざや鼻血が増える、顔がむくむ・横になると息が苦しい、このどれかがあれば、日を待たずに来てください。
一般教育・院内オペ補助。個別診断・治療の代わりにはなりません。β版・逐条レビュー継続中。