4-21小児頭部外傷
受傷後の意識・嘔吐・頭痛評価
β版 · 紙面の最終確認 2026-10-30
日付は紙面の確認日です。院内承認を示すものではありません。処方・運用は、本文の適用条件と出典、院内の採用薬・手順を確認してください。
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このページの目次11項目
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1ポイント
- 多くは経過観察でよい。まれな悪化サインを家族に渡して帰宅させるのが仕事。
- 当院の当直帯は頭部CT・MRIが撮れない。PECARN高リスク=CT推奨=当院ではその時点で搬送。
- 中間リスクで院内経過観察を選ぶときは、悪化時の切り替え先はCTでなく搬送。搬送に時間がかかる分、観察に倒す閾値をCTのある施設より低くしておく。
- 虐待を疑う所見(非接触部位のあざ・受傷機転と所見の不一致・生後5か月未満の理由不明のあざ等)があれば、画像はすべて搬送先任せ。当直帯にできるのは記録と多職種連絡・通告の判断。
頭部CTが撮れない当院での判断。中間リスクは機械的に帰宅とせず、観察か搬送を個別に選ぶ。PECARN 原著(Lancet 2009)を参照。
↑ このページの入口へ2鑑別のながれ
- 頭部打撲→耳鼻からの透明液・出血、パンダの目徴候、バトル徴候、鼓室内出血→頭蓋底骨折
- 頭部打撲→頭蓋骨の陥没・段差を触知、乳児の大泉門膨隆→開放性・陥没骨折
- 頭部打撲→非接触部位のあざ、受傷機転と所見が不一致、生後5か月未満の理由不明のあざ→虐待による頭部外傷(AHT)を疑う
- 頭部打撲→瞳孔不同・片麻痺・眼球運動障害などの局所神経学的所見(PECARNの必須3項目にはないが単独でCT適応とされる所見)→局所神経学的所見。PECARNの結果によらず搬送を検討
- 頭部打撲→受傷後のけいれん→受傷後のけいれん。PECARNの結果によらず搬送を検討
- 頭部打撲→上のいずれもない→PECARNで高・中間・低リスクに層別
↑ このページの入口へ3PECARNリスク層別
| 高リスク(2歳未満・重症) | GCS14・意識状態の変容・頭蓋骨骨折を触知 | 頭部CT推奨→当院は院内撮れないため搬送 |
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| 高リスク(2歳以上・重症) | GCS14・意識状態の変容・頭蓋底骨折の徴候 | 頭部CT推奨→当院は院内撮れないため搬送 |
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| 中間リスク(2歳未満・中等症) | 後頭部・頭頂部・側頭部の皮下血腫/5秒以上の意識消失/高エネルギー外傷(転落0.9m以上・車外放出・同乗者死亡・車の横転・ヘルメットなし自転車/歩行者対自動車)/普段と違う様子 | 経過観察(目安6時間)または搬送。当院は院内CTが撮れないため、所見が複数・悪化・生後3か月未満・保護者希望など本来CTに傾ける場面では搬送に傾ける |
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| 中間リスク(2歳以上・中等症) | 意識消失/嘔吐/高エネルギー外傷(転落1.5m以上・車外放出・同乗者死亡・車の横転・ヘルメットなし自転車/歩行者対自動車)/激しい頭痛 | 経過観察(目安6時間)または搬送。当院は院内CTが撮れないため、所見が複数・悪化・保護者希望など本来CTに傾ける場面では搬送に傾ける |
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| 低リスク(軽症) | 上記いずれも該当なし | CT推奨しない。帰宅可 |
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↑ このページの入口へ4計算・スコア
判定
PECARN 頭部CT判定(軽症頭部外傷)
対象: 鈍的頭部外傷・GCS14〜15点。ごく軽症の受傷機転(転倒のみ等)とGCS13点以下は対象外(重症プロトコルへ)。
PECARNは虐待の検出には鋭敏でない。低リスク判定でも虐待を疑う所見が別途あれば精査に進む(本シート§1・虐待鑑別参照)。
いつ使う
鈍的頭部外傷でGCS14〜15点の小児(18歳未満)のCT適応判断。層別の前に、本シート§1のレッドフラグ(頭蓋底骨折徴候・受傷後けいれん・局所神経所見等)があれば即時対応を優先する。
落とし穴
- 「GCS14」は原文ではGCS<15の意(本ルール対象がGCS14〜15のため実質14点)
- 乳児はGCSの言語・運動評価基準が成人と異なる(乳児版E/V/M表で評価)
- 2歳未満の中間リスクでは生後3か月未満をCT寄りに判断する考慮因子に含める
次の一手
高リスク→CT。中間リスク→経過観察(おおむね6時間目安)またはCT(担当医裁量・所見が複数か・症状悪化・保護者の要望を考慮)。帰宅時は観察期間の目安: 1歳以上24時間・1歳未満48時間(本シート帰宅指導参照)。
出典
日本小児神経学会「小児頭部外傷時のCT撮像基準の提言・指針」2019 / PECARN原著(Kuppermann 2009)。性能: 原著で2歳未満NPV100%・2歳以上NPV99.95%、本邦6施設6,585例の前方視的検証でNPV99.96%(95%CI 99.86-100)。詳細は本シート詳細リファレンス§2の出典参照。
↑ このページの入口へ5検査
- 全身骨単純X線:虐待疑いで2歳未満は全例、2〜5歳は既存骨折がある場合に施行、5歳以上は不要
- 眼底検査:虐待疑いで眼科医による所見検索・写真撮影
- 頭部単純X線単独での判断はしない(骨折の有無だけでは頭蓋内病変を除外できない)
- 低リスク群への念のためのCTはしない(被ばくの観点から不要)
↑ このページの入口へ6処置・処方例
Rp. 1アセトアミノフェン
10〜15mg/kg/回 頓用 内服・坐剤低リスク・中間リスクで経過観察を選んだときの疼痛時。頭蓋内出血が否定できない間はNSAIDsを使わない(avoid参照)。意識評価を妨げるため、強い鎮静を伴う薬剤とは併用しない
- カロナールシロップ2%(20mg/mL)なら —〜—、細粒20%(200mg/g)なら —〜— を1回
- 坐剤(アンヒバ・アルピニー)でも同じ1回10〜15mg/kg。50/100/200mgの規格から体重に近い個数を選ぶ
- 4〜6時間以上あけて、1日総量60mg/kg(上限1,500mg/日)を超えない。1回500mg・1日1,500mgの成人上限を超えたら体重換算でなく成人上限を優先
避けること・注意:頭蓋内出血が否定できない間のNSAIDs使用、経過観察中の鎮静性の強い薬剤(抗ヒスタミン薬等)、低リスク群への念のためのCT撮影。
↑ このページの入口へ7帰宅・入院の目安
- 帰宅低リスク群でレッドフラグがない、家族に再受診サインを渡せる、観察期間の目安(1歳以上24時間・1歳未満48時間)を家庭で見守れる
- 入院中間リスク群で院内経過観察を選ぶ場合(当院は院内夜間入院ができる、目安6時間。当院は院内CTが撮れないため、生後3か月未満・所見が複数・保護者希望など本来CTに傾ける場面では搬送に傾ける)
- 搬送・紹介高リスク群(頭部CT推奨)は当院で撮影できないため搬送、瞳孔不同・片麻痺・眼球運動障害などの局所神経学的所見、または受傷後のけいれんがあれば、PECARNの結果を待たず搬送、中間リスク群の経過観察中に意識レベル低下・嘔吐増悪・新規神経症状が出たら搬送に切り替える、虐待を疑う所見があれば、頭部CT・全身骨X線・眼底検査・MRIはすべて搬送先に委ねる
↑ このページの入口へ8診療中の疑問と回答
- 観察中にまた吐いた。制吐薬だけで帰せる?
- 嘔吐の反復とともに頭痛、意識、瞳孔、神経所見を取り直す。持続症状や悪化があれば観察延長と画像評価が必要で、当院当直帯では搬送へ切り替える。制吐薬への反応を頭蓋内損傷がない根拠にせず、受傷機転と経時変化を搬送先に伝える。
根拠:RCH Head injury(海外指針・画像不可時は搬送) - 元気だが乳児・話せない児。低リスクとしてよい?
- 本人から症状を聞けない乳児、特に低月齢では評価を慎重に行う。頭皮腫脹、触診、哺乳、普段との反応の差を確認し、受傷機転との整合も見る。既存の年齢別リスク基準と上級医判断を用い、診察が不確かなまま保護者の『元気』だけで帰宅を決めない。
根拠:RCH Head injury(海外指針・画像不可時は搬送) - 翌日から学校やスポーツに戻してよい?
- 頭痛、めまい、集中困難など脳震盪症状が残るか確認する。帰宅後も段階的な学習・活動復帰を計画し、症状が出る負荷は調整する。競技への復帰は再受傷を避け、医師の確認と段階的復帰の指導を受ける。悪化する頭痛や新しい神経症状は再評価する。
根拠:RCH Head injury(海外指針・画像不可時は搬送)
- 低リスクでも念のためCTを撮った方が安心では?
- 撮らない。低リスク群への念のためのCTは被ばくの観点から推奨されない。
- 中間リスクは経過観察でいい?
- 当院で経過観察を選ぶなら、悪化時の切り替え先はCTではなく搬送になる。搬送に時間がかかる分、経過観察に倒す閾値はCTのある施設より低くしておく。
- CTが正常なら安心していい?
- 保証はできない。基準を用いてCTをとらない、または結果が正常だった場合も100%安心できるものではないと説明する。
↑ このページの入口へ10家族への説明
頭を打つケガの多くはおうちで見て大丈夫です。けいれん、呼びかけへの反応が鈍い、何度も吐く、頭痛が強くなる、耳や鼻から血や透明な液、頭がへこんでいるときは、昼夜問わずすぐ受診してください。