8-9歩かない・手足を動かさない(外傷・跛行)
発熱があれば化膿性関節炎を最初に外す
β版 · 紙面の最終確認 2026-10-30
日付は紙面の確認日です。院内承認を示すものではありません。処方・運用は、本文の適用条件と出典、院内の採用薬・手順を確認してください。
前の画面から引き継いだ体重です。
このページの目次10項目
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1ポイント
- 『歩かない』は主訴であって診断ではない。発熱があれば化膿性関節炎を最初に外す。関節軟骨は時間で壊れる。
- 乳児の骨折は、それだけで虐待を疑う理由になる。自然外力による骨折の85%以上は5歳以上で、歩けない児の大腿骨骨幹部骨折は特異性が高い。
- 受傷機転と所見が合わないときは、機転のほうを疑う。
- 鎮痛に反応しない痛み+腫脹+他動的伸展で増悪 → コンパートメント症候群。筋膜切開は当院で持てない。
↑ このページの入口へ2鑑別のながれ
- 発熱+荷重不能+関節の自動運動を嫌がる→Kocher高値→化膿性関節炎・骨髄炎(持てない。疑った時点で穿刺・ドレナージのできる施設へ)
- 創と骨折の連続→視診→開放骨折(持てない・緊急搬送)
- 鎮痛に反応しない痛み、腫脹、他動的伸展で増悪、異常感覚→麻痺・脈拍消失は進行例→コンパートメント症候群(持てない・筋膜切開が要る)
- 乳児の骨折、受傷機転と所見の不一致、多発・新旧混在→全身骨X線で評価→虐待による骨折(通告と院内の虐待対応の枠組みへ)
- 男児が下腹部痛で歩けない→陰嚢を診る→精巣捻転(持てない・6〜8時間の勝負)
- 夜間痛、体重減少、複数部位、外傷歴に乏しい→血算・画像(末梢血液像は当直帯に出ない)→悪性腫瘍(白血病・骨腫瘍)の骨痛
↑ このページの入口へ3レッドフラグ→次の一手
| 119 | 開放骨折(創から骨が見える・皮膚の連続性が断たれている) | 創を清潔に覆い固定。整形外科のある施設へ緊急搬送 |
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| 119 | 鎮痛に反応しない強い痛み+腫脹+他動的伸展で増悪 | コンパートメント症候群。締め付けを解除し、患肢を心臓より高く上げすぎない。緊急で整形外科へ |
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| 緊急 | 発熱+関節を動かさない・荷重不能 | 当直帯はESRが出ないためKocher基準のESRをCRPで代用した当直帯用スコアで判断。化膿性関節炎を疑えば穿刺は行わず、確定を待たず整形外科のある施設へ搬送 |
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| 緊急 | 乳児(特に歩けない児)の骨折 | 虐待を疑う閾値を下げる。全身骨X線と通告の検討 |
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| 緊急 | 受傷機転と所見が合わない/受診までの時間が長い/説明が変わる | 同上(虐待を疑う) |
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| 緊急 | 麻痺・脈拍消失 | コンパートメント症候群の進行例。緊急 |
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| 当日 | 発熱なし・荷重可能・経過が矛盾しない | 単純性股関節炎などを考えつつ、再評価の日時を約束する |
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↑ このページの入口へ4計算・スコア
スコア
Kocher基準(化膿性股関節炎の予測)
スコア
当直帯用スコア(KocherのESRをCRPで代用・原著Caird基準とは別物)
↑ このページの入口へ5検査
- どこが痛いかを子どもに触らせて指させる。乳児は健側と比較して自発運動の左右差を見る
- 関節の自動運動を嫌がるか(化膿性関節炎は自動・他動とも強く嫌がる)
- 歩かせる。荷重できるかどうかがKocherの1項目そのもの
- 全身の皮膚を見る。あざの部位・新旧・形(虐待の手がかり)
- 腫脹している部位では他動的伸展で痛みが増すかを必ず確認する(コンパートメント症候群)
- 発熱+跛行では血算・CRPに加えて血液培養を採取する。培養は当直帯に提出できないので、抗菌薬を使う前に採取し、室温で保存して翌朝提出する
- エコーは当直帯に当てられない。診察所見と血算・CRPで疑ったらそのまま相談する
- X線は部位を決めて正面・側面の両方。虐待を疑う2歳以下は全身骨X線を撮り、1〜2週間後に再撮影する
↑ このページの入口へ6処置・処方例
Rp. 1アセトアミノフェン
1回10〜15mg/kg、4〜6時間以上あけて。1日総量60mg/kgかつ1500mgを超えない(1回最大500mg) 内服/坐剤送ると決めたら固定と並行して鎮痛する。採用品で確認
- カロナールシロップ2%(20mg/mL)なら —〜—、細粒20%(200mg/g)なら —〜— を1回(10〜15mg/kg)
- 坐剤(アンヒバ・アルピニー)は1回 —〜— に一番近い規格・個数を選ぶ(50・100・200mg)
- 次は4〜6時間以上あける。1日の合計は — まで
避けること・注意:発熱があって歩けない児をKocherスコアが低いことだけで『様子見』で帰すこと、虐待を疑う所見(受傷機転と所見の不一致・受診までの時間の長さ・説明が変わる)を見過ごすこと。
↑ このページの入口へ7送る・持つの目安
- 帰宅単純性股関節炎らしい:当院で経過観察しうる。再評価の日時を約束する
- 搬送・紹介開放骨折:持てない。創を覆い固定して緊急搬送、コンパートメント症候群の疑い:持てない。筋膜切開が要る。緊急搬送、化膿性関節炎の疑い(当直帯用スコア高値):持てない。穿刺は行わず、疑った時点で整形外科のある施設へ、転位のある骨折・整復が要る骨折:持てない。整形外科のある施設へ、虐待を疑う:医学的対応と並行して施設内の虐待対応の枠組みへ。通告は疑いの段階で行う
↑ このページの入口へ8診療中の疑問と回答
- 発熱と跛行があるが、単純X線が正常なら帰宅できる?
- 正常X線でも初期の骨・関節感染を除外できない。発熱、関節可動域制限、腫脹、荷重不能があれば化膿性関節炎を考え、緊急に整形外科へ相談する。採血や画像の一項目が正常でも、臨床所見が強ければ帰宅判断の根拠にしない。
根拠:RCH 跛行・荷重不能児 - 膝を痛がるときも股関節を診る必要がある?
- 股関節の痛みが膝に現れることがあるため、訴える場所だけでなく上下の関節、股関節、脊椎、腹部を診る。年長児の荷重不能や股関節可動域制限では大腿骨頭すべり症も考える。痛い脚を歩かせて確認することを繰り返さず、荷重を避けて紹介する。
根拠:RCH 跛行・荷重不能児 - 一過性股関節炎として帰宅させた後、いつ見直す?
- 鎮痛後に歩け、危険所見がなく、再評価の手段があることを確認する。発熱、痛みの増悪、再び歩けない場合は予定日を待たず再診とする。症状が7日を超えて続く場合や診断が不明な場合は、単なる経過延長とせず画像を含む再評価・専門相談へ進む。
根拠:RCH 跛行・荷重不能児
- Kocherスコアが低ければ様子を見ていい?
- 低くても、発熱があって歩けない児は様子見で帰さない。当直帯はESRが出ないため当直帯用スコア(ESRをCRPで代用)で判断し、高ければ穿刺は行わず確定を待たずに送る。翌日ESRが出たらKocher基準で確認し直す。
- 赤沈が夜間に出ないときは?
- 当直帯用スコア(発熱>38.5℃・荷重不能・CRP>2.0mg/dL・白血球>12,000/μL、KocherのESRをCRPで代用)で判断し、翌日ESRを追加する。
- 乳児の骨折は外傷歴があれば安心?
- 安心できない。歩けない児の骨折はそれだけで虐待を疑う理由になる。受傷機転と所見が合うかを必ず確認する。
- 送ると決めたら、まず何をする?
- ①固定(動かさない)・鎮痛→②開放創は清潔に覆う→③受け入れ先へ先に電話(発熱の有無とスコアの該当数を最初に伝える)→④絶食(手術になりうる場合)の順で進める。
↑ このページの入口へ10家族への説明
痛がって使わない手足には、骨や関節の中で急いで治療が必要なものが隠れていることがあります。とくに熱があって足をつけない場合は、関節の中に細菌が入っている可能性を先に確かめます。当院では手術ができないので、必要と判断したら、できる病院にお願いします。