2-3クループ症候群
犬が吠えるような咳・吸気性喘鳴
β版 · 紙面の最終確認 2026-10-30
日付は紙面の確認日です。院内承認を示すものではありません。処方・運用は、本文の適用条件と出典、院内の採用薬・手順を確認してください。
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このページの目次11項目
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1ポイント
- 声門下の浮腫による犬吠様咳嗽・嗄声・吸気性喘鳴。多くはウイルス性で、視診・聴診で評価する。夜に悪化しやすい。
- 興奮させない。のどの奥を無理に見ない。
- 流涎・開口制限・前傾姿勢があれば急性喉頭蓋炎、急な発症や蕁麻疹があれば異物・アナフィラキシーを考える。
- 当院の当直帯は単純X線のみ。重症度は吸気性喘鳴・陥没呼吸・意識・チアノーゼで決まり、画像なしで評価できる。
流涎・前傾姿勢・急速な悪化では刺激せず、気道確保できる施設へ相談する。非典型例や治療反応不良も再評価する。Royal Children’s Hospital:Croupを参照。
↑ このページの入口へ2鑑別のながれ
- 吸気性喘鳴→発熱・流涎・前傾姿勢がある→急性喉頭蓋炎・細菌性気管炎(のどを見ずに搬送)
- 発熱・流涎→くぐもった声(hot potato voice)・頸部硬直や斜頸・開口障害(犬吠様咳嗽を欠くことが多い)→咽後膿瘍・扁桃周囲膿瘍(耳鼻科へ緊急相談・搬送)
- 吸気性喘鳴→急な発症・食事中・蕁麻疹や口唇腫脹→気道異物・アナフィラキシー
- 吸気性喘鳴→上のいずれもない→クループ(Westleyで重症度)
↑ このページの入口へ3重症度(Westley)
| 軽症 | 0〜2点 | 興奮時のみの喘鳴。薬なし・帰宅指導 |
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| 中等症 | 3〜5点 | 安静時の喘鳴。デキサメタゾン+必要ならアドレナリン吸入 |
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| 重症 | 6〜11点 | 入院。気道確保の準備。当院に気道確保の専門体制はない——応援を呼び、気道確保のできる施設への搬送も検討する |
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| 切迫 | 12点以上 | 呼吸不全切迫。気道確保を最優先。応援を呼び、気道確保のできる施設へ搬送する |
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↑ このページの入口へ4計算・スコア
スコア
Westley クループスコア
いつ使う
クループ症候群の重症度の定量化。実務上の治療分岐は「安静時に吸気性喘鳴があるか」(あればデキサメタゾン±アドレナリン吸入の適応を判断)。中等症以上で入院考慮、重症で気管内挿管考慮。
落とし穴
- 喘鳴・呼吸音が「静かになる」ことは改善とは限らない — 陥没呼吸・意識の悪化を伴う減弱は閉塞進行の危険サイン
- スコア化の前に、急性喉頭蓋炎・細菌性気管炎・気道異物・アナフィラキシーの除外(本シート§1)。喉の視診・啼泣誘発は避ける
- 生後6か月未満・気道の基礎疾患がある児はスコアが低くても入院閾値を下げる(院内方針)
次の一手
安静時喘鳴あり→薬物治療の適応判断(§4)。アドレナリン吸入を使ったら院内で経過観察(rebound注意)。帰宅時は再受診サインの説明へ。
出典
Westley CR, et al. Am J Dis Child 1978;132:484-487(原著)。国際分類を当院で採用(本シート§2)。
↑ このページの入口へ5検査
- SpO2モニタリング(低酸素・切迫所見があれば)
- 血液検査・迅速抗原検査・頸部X線は典型例で不要——検査のために体位変換・啼泣を招くと気道刺激になる
↑ このページの入口へ6処置・処方例
Rp. 10.1%アドレナリン
0.01mL/kg(上限0.3mL) 吸入 →
—中等症以上(安静時の喘鳴)。クループへの吸入は添付文書外の慣行
- 1mLシリンジでボスミン外用液0.1%を — 吸う(上限0.3mL)
- 生理食塩水2mLと一緒にネブライザーのカップに入れる
- マスクを顔に当て、霧が出なくなるまで吸入する。泣かせない(保護者の抱っこで)
- 吸入後は3〜4時間観察。2回目が要る時点で入院。再投与はモニター下で30分以上あける
Rp. 2デキサメタゾン
0.15mg/kg(上限10mg) 内服 →
—中等症以上(安静時の喘鳴あり)に限る。上限10mg
- デキサメタゾンエリキシル0.01%(0.1mg/mL)なら —(0.15mg/kg、上限10mg=100mL)を1回だけ内服
- エタノール5%を含む。量が多い年長児は錠剤(デカドロン錠0.5mg)で同じ0.15mg/kg・上限10mgでもよい
- 製剤・濃度は当院の採用品で確認する
アドレナリン吸入の改善は一時的で、作用が薄れた後の再燃を確認する。吸入後は3〜4時間観察。2回目の吸入が要れば入院。 避けること・注意:抗菌薬は使わない(大部分はウイルス性)。加湿空気の吸入は有効性のエビデンスがない。総合感冒薬・咳止め・抗ヒスタミン薬は勧めない。鎮静薬・オピオイド系鎮咳薬は呼吸抑制で気道閉塞を悪化させるため使わない。
↑ このページの入口へ7帰宅・入院の目安
- 帰宅安静時の喘鳴がない、水分がとれる、夜間も再受診できる
- 入院吸入の2回目が必要、生後6か月未満・気道の基礎疾患、水分がとれない
↑ このページの入口へ8診療中の疑問と回答
- デキサメタゾンを飲んで30分、まだ咳がある。追加する?
- 咳だけで追加しない。抗炎症効果の臨床的改善は通常2〜3時間からで、単回投与後24〜48時間続く。安静時の喘鳴・陥没・飲水を再評価し、閉塞が強ければ効果待ちだけにせずアドレナリン吸入と気道管理を検討する。当院は院内中等症以上への単回投与方針を維持する。
根拠:CPS:クループ救急診療(2026年改訂・海外指針) - アドレナリン吸入で改善したらすぐ帰してよい?
- 効果は一時的で、約2時間で薄れるため直後の改善だけでは帰宅不可。当院では最後の吸入後3〜4時間観察し、安静時の喘鳴・陥没が再燃しないこと、飲水と再受診手段を確認する。夜間、受診が難しい家庭、再燃歴では観察を延ばす。2回目が必要なら当院方針どおり入院・搬送を決める。
根拠:CPS:クループ救急診療(2026年改訂・海外指針) / RCH:クループ(海外指針) - 繰り返すクループには毎回同じ薬でよい?
- 6か月未満、反復・遷延、通常より重い経過では声門下狭窄など気道の背景疾患を疑う。急性期の閉塞を治療したうえで、耳鼻科・小児呼吸器へ評価を依頼する。既往の重症クループや基礎の気道狭窄があれば、同じ見た目でも慎重に観察する。
根拠:CPS:クループ救急診療(2026年改訂・海外指針) / RCH:クループ(海外指針) - 吸入が効かず、高熱と流涎がある。次も吸入?
- 細菌性気管炎、喉頭蓋炎、深頸部感染を疑う。無理な咽頭診察や仰臥位を避け、本人が楽な姿勢で気道管理ができる上級医・搬送先を直ちに確保する。画像や検査の完了を優先せず、クループとして吸入を繰り返すだけで経過を見ない。
根拠:CPS:クループ救急診療(2026年改訂・海外指針) / RCH:クループ(海外指針) - 気管支拡張薬や抗菌薬を足すと咳が早く止まる?
- 典型的なウイルス性クループの主病変は声門下の浮腫で、通常はSABAや抗菌薬を追加しない。呼気性喘鳴が別にある、細菌感染を疑う高熱・毒性所見がある場合は診断を分けて考える。鎮静を伴う鎮咳薬で症状を隠したり、家庭の加湿を気道閉塞の治療代わりにしたりしない。
根拠:CPS:クループ救急診療(2026年改訂・海外指針) / RCH:クループ(海外指針) - 軽症の扱いが海外と違うが、どう説明する?
- 海外では軽症へのステロイドを広く勧める指針もあるが、当院は院内安静時喘鳴のある中等症以上に投与する既存方針で運用する。軽症でも年齢・背景疾患・受診アクセスでリスクを再評価し、迷う場合は上級医へ相談する。帰宅時は安静時喘鳴、飲めない、陥没、眠り込みの出現で直ちに再受診と伝える。
根拠:CPS:クループ救急診療(2026年改訂・海外指針) / RCH:クループ(海外指針)
- 軽症にもデキサメタゾンを使う?
- 当院は院内使わない。国内GLどおり中等症以上(院内方針院内)。
- アドレナリン吸入は何分あけて繰り返せる?
- 添付文書は4〜6時間。2回目が要る時点で入院を決め、再投与はモニター下で30分以上あける。
- X線は撮る?
- 典型例は不要。撮るなら喉頭蓋炎・異物の鑑別目的で、当直医が読む。
- 喘鳴が弱くなったら安心していい?
- いいえ。陥没呼吸や意識の悪化を伴っていれば、喘鳴・呼吸音が静かになるのは気道閉塞が進行しているサインのことがある。
↑ このページの入口へ10家族への説明
犬が吠えるような咳の多くはかぜの延長です。できるだけ落ち着かせて、のどの奥は無理に見ないでください。唇が青い、陥没が強い、よだれで飲めないときはすぐ連絡してください。夜に強くなりやすいです。