5-5胃食道逆流症・乳児の嘔吐
生理的な溢乳と病的GERDの線引き
β版 · 紙面の最終確認 2026-10-30
日付は紙面の確認日です。院内承認を示すものではありません。処方・運用は、本文の適用条件と出典、院内の採用薬・手順を確認してください。
このページの目次7項目
1ポイント
- 溢乳は乳児期に生理的に高頻度。多くは1歳までに自然に良くなる。吐くこと自体は病気ではない。
- 緑色(黄緑色を含む)の嘔吐は胆汁性として腸閉塞を疑う。中腸軸捻転を最優先に評価し、小児外科へ相談する。
- ぐったり・ショックがあれば、GERDの評価より先に全身状態を診る(最初の5分)。
- 体重増加不良・吐血・呼吸症状・哺乳拒否などは評価が必要。泣き・反り返り・咳だけでGERDとは診断しない。警告徴候があれば専門施設へ。
- 生後2〜8週の非胆汁性・噴水状嘔吐は肥厚性幽門狭窄症を考える。
- 睡眠時は仰向け、硬く平らな寝床。溢乳・泣きだけへの酸分泌抑制薬や、2週間後の自動的な薬物移行は行わない。
2鑑別のながれ
- 嘔吐→胆汁性(緑色・黄緑色)。腹部膨満がなくても除外しない→中腸軸捻転・腸回転異常症(最優先で外す)
- 嘔吐→生後2〜8週の非胆汁性・噴水状、吐いた直後に欲しがる→肥厚性幽門狭窄症
- 嘔吐→哺乳開始後の不活発・腹部膨満・血便→食物蛋白誘発胃腸炎(消化器症状が乏しく、体重増加不良・活動性低下など非特異的症状のみの例もある)
- 嘔吐→間欠的啼泣(3か月〜2歳未満)→腸重積(当直帯はエコーが無い=疑った時点で電話)
- 嘔吐→発熱を伴う嘔吐→尿路感染症(検尿)
- 嘔吐→大泉門膨隆・意識の変化・眼位異常を伴う嘔吐→頭蓋内圧亢進(画像評価)
- 嘔吐→反復する嘔吐+意識障害+低血糖・アシドーシス→代謝疾患(血糖・血液ガス・アンモニア)
- 嘔吐→低Na・高K・アシドーシス→副腎皮質過形成(電解質)
3検査
- 哺乳量・回数・調乳・実際の飲み方と成長を確認する。過剰な一回量を調整しても一日の必要量は確保する。母乳育児を支え、睡眠時は仰向けにする。
- 警告徴候があれば専門施設へ紹介する。造影・内視鏡・pH/MII-pHは目的に合わせて選び、溢乳だけの健康な乳児に一律に行わない。
- 進行する非胆汁性・噴水状嘔吐で幽門狭窄を疑う場合は、脱水・電解質・血液ガスの評価と同日中の小児外科相談を並行する。夜間の超音波判読体制がなければ診断できる施設へ相談し、日勤まで待機させない。
- 当院は院内既存の2026-09-25決定により生活指導まで。薬・手術への自動進行はせず、専門施設で適応を確認する。
4帰宅・紹介の目安
- 帰宅溢乳のみ・体重増加良好(生活指導。1歳までに軽快することを伝える)
- 搬送・紹介警告徴候あり(専門施設へ紹介。当院は院内生活指導まで)、24時間pHモニタリング・内視鏡が要る、噴門形成術が要る、胆汁性嘔吐だった(別疾患。緊急搬送)
5診療中の疑問と回答
- 溢乳が多いからPPIで診断的治療を始める?
- 体重増加と哺乳が良好な乳児の溢乳・泣きだけに酸分泌抑制薬を開始しない。哺乳量と飲ませ方を見直し、過量を避ける。体重増加不良、吐血、哺乳拒否などは別途評価し、薬の反応だけでGERDと診断しない。
根拠:RCH 乳児胃食道逆流 - 逆流を減らすため、うつぶせや傾斜ベッドで寝かせる?
- 睡眠は仰向けで硬く平らな寝床を保ち、逆流を理由に安全な睡眠姿勢を変えない。哺乳の見直しは覚醒中のケアとして行う。夜間のむせや呼吸障害がある場合は姿勢だけで対処せず、呼吸・嚥下を含めて原因を評価する。
根拠:RCH 乳児胃食道逆流 - 生活調整で吐く回数が減らないときの再評価は?
- 摂取量、成長、嘔吐の色・勢いと発症時期を再確認する。胆汁性嘔吐は腸閉塞、早期乳児の噴水状嘔吐は幽門狭窄などを考える。血便・湿疹などがあれば牛乳蛋白アレルギーも評価し、薬を自動追加せず専門科への紹介を判断する。
根拠:RCH 乳児胃食道逆流
- すぐ薬を出してよいか?
- 健康な乳児の溢乳・泣きだけには通常出さない。睡眠時は仰向けとし、哺乳と成長を確認する。続く症状は再評価し、2週間たったら自動的に薬へ進めない。
- どんな症状が「警告徴候」か?
- 体重増加不良・出血・呼吸苦などは評価が必要。哺乳拒否・反り返り・咳は非特異的なので逆流が原因と決めつけない。緑色の嘔吐は腸閉塞として緊急相談する。
7家族への説明
赤ちゃんの溢乳はよく見られ、成長とともに軽くなることが多いです。飲む量や飲み方を一緒に確認します。寝かせるときは仰向けにして、平らな寝床を使ってください。体重が増えない、血を吐く、呼吸が苦しそう、飲めない、ぐったりする場合は早めに受診してください。緑色の嘔吐は急いで別の病気を調べる必要があります。
一般教育・院内オペ補助。個別診断・治療の代わりにはなりません。β版・逐条レビュー継続中。