11-8甲状腺(機能亢進・低下)
頻脈・発熱・意識障害・新生児の甲状腺機能低下
β版 · 紙面の最終確認 2026-10-30
日付は紙面の確認日です。院内承認を示すものではありません。処方・運用は、本文の適用条件と出典、院内の採用薬・手順を確認してください。
このページの目次10項目
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1ポイント
- 亢進(バセドウ病)と低下(先天性・橋本病)は病態が正反対だが、当直で問われることは同じ:専門医につなぐタイミングを見極めること。抗甲状腺薬の開始・調整は当院で行わない。
- 抗甲状腺薬を飲んでいる子が発熱したら、まず無顆粒球症を疑う。当直帯は好中球数(自動分画)が出せず、白血球総数が保たれていても否定できない。疑ったら薬を止めて専門施設に相談する。
- 甲状腺クリーゼは頻脈・発熱・意識障害の組み合わせで疑う。生命の危機に直面する緊急病態で、持てない。
- 新生児の症状ははっきりしない。頼りになるのは新生児マススクリーニングの結果。
↑ このページの入口へ2鑑別のながれ
- 甲状腺疾患の既往+頻脈・発熱→不穏・せん妄・精神異常・傾眠・けいれん・昏睡等の中枢神経症状→甲状腺クリーゼを疑う。持てない。集中治療できる施設へ
- 抗甲状腺薬内服中の発熱→咽頭痛・口内炎を伴う→無顆粒球症を疑い緊急で血算。著明な好中球減少があれば持てない
- 高度な甲状腺腫大→吸気性喘鳴・嗄声の急な増悪(気道圧迫)→気道評価を最優先。持てない可能性が高い
- 新生児で元気がない・体重が増えない→かすれた声・手足が冷たい・むくみなどが複数該当→先天性甲状腺機能低下症を疑う。マススクリーニング結果を確認
- 頻脈・体重減少・手指振戦・発汗増加+甲状腺腫→クリーゼ基準までは満たさない→バセドウ病の新規疑い。持てない(小児内分泌専門医へ)
↑ このページの入口へ3甲状腺クリーゼの診断基準(確実例・疑い例とも。成人向け・小児での妥当性は確立されていない)
| 確実例 | 中枢神経症状+他の症状項目1つ以上、または中枢神経症状以外の症状項目3つ以上(頻脈130回/分以上・発熱38℃以上・心不全症状・消化器症状) | 持てない。冷却・輸液で支えながら集中治療できる施設へ |
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| 疑い例 | a. 必須項目(甲状腺中毒症の存在=遊離T3・T4のいずれか高値)+中枢神経症状以外の症状項目2つ(頻脈130回/分以上・発熱38℃以上・心不全症状・消化器症状のうち2つ)、またはb. 必須項目を確認できないが甲状腺疾患の既往・眼球突出・甲状腺腫があり確実例条件を満たす場合 | 持てない。冷却・輸液で支えながら集中治療できる施設へ(確実例と同一対応) |
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↑ このページの入口へ4計算・スコア
スコア
甲状腺クリーゼ 確実例チェック(成人向け基準・小児での妥当性は未確立)
↑ このページの入口へ5検査
- 血算(総数のみ判定可。好中球絶対数は当直帯に出ない):抗甲状腺薬内服中の発熱では無顆粒球症を考えて緊急で採る。副作用は服用開始から3か月以内に起きやすい(皮疹5%、白血球減少・無顆粒球症0.1〜0.2%)
- FT3・FT4・TSH:機能亢進・低下の確認。当直帯に提出できるか検査室に確認してから採血する
- TRAb/TPOAb・TgAb:バセドウ病(TRAb)と橋本病(TPOAb・TgAb)の鑑別。専門医判断となることが多い
- 心電図:頻脈・不整脈の確認
- 甲状腺超音波・膝(大腿骨遠位端骨核)のX線(新生児):先天性甲状腺機能低下症の精密検査。指定医療機関で行われることが多い
↑ このページの入口へ6対応の注意
避けること・注意:当院で抗甲状腺薬を新規開始・増減すること、好中球数(自動分画)が当直帯に出ないことを理由に無顆粒球症疑いを経過観察にすること、甲状腺クリーゼ疑いを数値基準だけで否定して帰宅させること。
↑ このページの入口へ7帰宅・入院の目安
- 帰宅甲状腺腫大のみで機能正常・症状なし:当院でフォロー可。外来紹介、眼球突出のみで頻脈なし:眼科・小児内分泌へ外来紹介
- 搬送・紹介甲状腺クリーゼ(確実例・疑い例):持てない。集中治療できる施設へ、無顆粒球症疑い(好中球著減):持てない。感染対策のうえ搬送、バセドウ病の新規疑い・コントロール不良:抗甲状腺薬の開始・調整は当院で行わない。小児内分泌専門医へ紹介、先天性甲状腺機能低下症疑い(マススクリーニング陽性・要精査):精密検査は指定医療機関。当院は院内結果確認と案内が中心、気道を圧迫する高度な甲状腺腫:持てない
↑ このページの入口へ8診療中の疑問と回答
- 抗甲状腺薬内服中に発熱した。抗菌薬だけ出してよい?
- 咽頭痛・発熱では無顆粒球症をまず除外する。抗甲状腺薬を止めて処方医へ連絡し、血算・好中球の緊急評価につなぐ。当直帯に分画が出ない当院では白血球総数だけで否定せず、検査可能な専門施設へ相談する。感染症として薬を追加するだけで待たない。
根拠:日本小児内分泌学会 バセドウ病 / PMDA 抗甲状腺薬による無顆粒球症 - 動悸が減ったので、抗甲状腺薬を中止できる?
- 症状軽快と寛解は同じではない。甲状腺機能、抗体、服薬期間、副作用を処方医が評価して調整する。当院は院内新規開始・増減を行わず、飲み忘れや残薬を確認して専門外来へ引き継ぐ。動悸が再燃しても自己増量せず、発熱・意識変化があれば救急評価する。
根拠:日本小児内分泌学会 バセドウ病 / PMDA 抗甲状腺薬による無顆粒球症 - 薬を飲み始めた児に、次の外来まで何を伝える?
- 発熱・咽頭痛など無顆粒球症を疑う症状と、服薬中止・速やかな連絡手順を説明する。開始初期は定期的な血液検査が必要で、検査予約と結果確認先を明確にする。学校活動は甲状腺機能が改善するまで負荷を調整し、処方医と再開時期を決める。
根拠:日本小児内分泌学会 バセドウ病 / PMDA 抗甲状腺薬による無顆粒球症
- 抗甲状腺薬内服中の発熱で何をまず疑う?
- 無顆粒球症。緊急で血算をとる(当直帯は総数のみ判定可、好中球絶対数は出ない)。総数が保たれていても否定できないので、疑ったら薬を止めて専門施設に相談する。
- 甲状腺クリーゼはどう疑う?
- 頻脈(130回/分以上)・発熱(38℃以上)・意識障害(不穏・せん妄・傾眠・けいれん・昏睡等)の組み合わせで疑う。確実例の基準を満たせば持てない。
- 新生児の甲状腺機能低下はどう気づく?
- 症状ははっきりしないことがほとんど。新生児マススクリーニングの結果を確認する。
- 当院で抗甲状腺薬を調整していい?
- しない。開始・増減は小児内分泌専門医の判断による。
↑ このページの入口へ10家族への説明
甲状腺は、のどぼとけの下にあって、体の代謝を調節するホルモンを作る臓器です。今日は、このホルモンが多すぎないか、少なすぎないかを確認するために診察をしています。抗甲状腺薬(メルカゾールなど)を飲んでいるお子さんが熱を出したときは、まれですがお薬の副作用で白血球が減ることがあるため、まず血液検査で確認します。赤ちゃんの場合、甲状腺のはたらきが生まれつき弱くても、赤ちゃんのうちは症状がはっきりしないことがほとんどです。生まれたときの新生児マススクリーニングの結果を確認し、詳しい検査が必要であれば、それができる病院をご案内します。