7-9麦粒腫・霰粒腫・鼻涙管閉塞
ものもらい・しこり・赤ちゃんの涙目
β版 · 紙面の最終確認 2026-10-30
日付は紙面の確認日です。院内承認を示すものではありません。処方・運用は、本文の適用条件と出典、院内の採用薬・手順を確認してください。
このページの目次8項目
1ポイント
- 「ものもらい」は病名ではない。麦粒腫(分泌腺への細菌感染)と霰粒腫(マイボーム腺の詰まり)の総称。
- 当直で本当に分けるべきは、まぶたの中か外か。眼窩蜂窩織炎(眼球運動制限・眼球突出・発熱・全身状態不良)だけは今夜の話。
- 炎症が強い時期は麦粒腫と霰粒腫を分けられない。眼窩蜂窩織炎でないことを確認して、抗菌薬点眼を出し眼科へ紹介する。
- 赤ちゃんの涙目と目やには先天性鼻涙管閉塞。自然開通することが多い。
2鑑別のながれ
- 眼瞼の発赤腫脹+発熱+全身状態不良→眼球突出・眼球運動制限・視力低下→眼窩蜂窩織炎(持てない)
- 眼窩蜂窩織炎の治療中に意識障害・けいれんを伴う→海綿静脈洞血栓症・頭蓋内進展を疑う所見→119。持てない
- 眼瞼の発赤腫脹→眼球運動は正常→眼瞼(隔膜前)蜂窩織炎
- 目頭から1cm程度下方が赤く腫れて痛む→急性の経過→急性涙嚢炎
- 両側の眼瞼腫脹→尿蛋白を伴う→ネフローゼ症候群(尿を見れば分かる)
- 生後数日〜2週の新生児の目やに+眼瞼腫脹→日齢が鍵→新生児結膜炎(淋菌・クラミジア疑い、持てない)
- まぶたのしこりがなかなか治らない・出血する・睫毛が抜ける→麦粒腫・霰粒腫として長期化した非典型例→悪性腫瘍との鑑別が特に重要。眼科へ(数日)
3検査
- 両側の眼瞼腫脹では尿定性を確認する(ネフローゼ症候群の除外)。
- 眼瞼を翻転して裏面を見る(内麦粒腫・結膜の所見)。
- 目頭の下(涙嚢部)を押してみる(膿が逆流すれば涙嚢炎)。
4涙嚢マッサージ(先天性鼻涙管閉塞)
- 抗菌薬点眼のあとに行う。
- 綿棒で涙嚢部を垂直に2〜3mm程度押し込んで窪ませる。これを1回に10回行う。
- 1日4回程度行う。
やってはいけない・落とし穴
↑ このページの入口へ- 大人の指で行うとマッサージが強すぎる。爪で皮膚を傷つけ感染源になるため綿棒を使う。
5帰宅・入院の目安
- 帰宅麦粒腫(軽症):抗菌薬点眼を出し、眼科へ紹介、霰粒腫:急がない。眼科外来へ、先天性鼻涙管閉塞:涙嚢マッサージを指導し眼科へ紹介
- 搬送・紹介眼窩蜂窩織炎を疑う:持てない。画像と点滴抗菌薬、新生児結膜炎(淋菌・クラミジアを疑う):持てない、急性涙嚢炎:抗菌薬は当院で開始できるが、切開は持てない、先天性鼻涙管閉塞のブジー(鼻涙管開放術):持てない、なかなか治らない・出血する・睫毛が抜けるしこり:悪性腫瘍の除外のため眼科へ
6診療中の疑問と回答
- まぶたのしこりが残る。抗菌薬点眼を延長する?
- 霰粒腫は腺の閉塞であり、感染が続いているとは限らない。痛み・発赤の推移としこりの大きさを確認し、温罨法などのケアを行う。大きい、消えない、視軸を覆う場合は視機能への影響も考えて眼科へ相談し、点眼のみを漫然と継続しない。
根拠:AAPOS Chalazion / AAPOS Nasolacrimal duct obstruction - 鼻涙管閉塞の目やにが減ったら点眼を毎日続ける?
- 抗菌薬は強い目やにや感染の対処であり、涙管を開く薬ではない。長期の予防点眼を続けるより、清潔と指導されたマッサージ、涙目の経過を確認する。自然軽快しない例や強い症状は眼科に相談し、処置時期を一般外来だけで決めない。
根拠:AAPOS Chalazion / AAPOS Nasolacrimal duct obstruction - 涙目の乳児で目頭が赤く腫れ発熱した。いつもの点眼?
- 涙嚢炎など深い感染を疑う。痛みのある目頭の腫脹、膿、全身状態を確認し、点眼だけで待たず同日眼科・小児科で評価する。全身抗菌薬や入院を要することがある。涙目が通常の閉塞か別の眼疾患かも、専門診察で確かめる。
根拠:AAPOS Chalazion / AAPOS Nasolacrimal duct obstruction
- 麦粒腫と霰粒腫はその場で見分けられるか?
- 炎症が強い時期は見分けられない。麦粒腫として治療を始めた後、腫れが引いてしこりがはっきりし霰粒腫と分かることもよくある。
- 赤ちゃんの涙目はいつ処置するか?
- 当直で時期を決める必要はない。自然開通することが多く、1歳未満で外来で行うブジーの時期は専門家でも意見が分かれる。
8家族への説明
麦粒腫・霰粒腫の場合:まぶたの「ものもらい」には、ばい菌が入って赤く腫れて痛むもの(麦粒腫)と、脂の出口が詰まってコロコロしたしこりになるもの(霰粒腫)の2種類があります。炎症が強い時期はこの2つを見分けられませんので、まずは炎症を抑える治療をして落ち着いてから判断します。目をこすらない、手を洗う、これが大事です。熱が出る、目が前に出てくる、目が動かしにくい、見えにくい、このどれかがあれば、すぐに来てください。
先天性鼻涙管閉塞の場合:赤ちゃんの涙の通り道(鼻涙管)が生まれつきまだ開いていないことがあり、自然に開通することが多い病気です。目頭の下をやさしくマッサージして涙の流れを促します。
一般教育・院内オペ補助。個別診断・治療の代わりにはなりません。β版・逐条レビュー継続中。