2-7急性喉頭蓋炎
触らない・寝かせない・泣かせない
β版 · 紙面の最終確認 2026-10-30
日付は紙面の確認日です。院内承認を示すものではありません。処方・運用は、本文の適用条件と出典、院内の採用薬・手順を確認してください。
このページの目次8項目
1ポイント
- 触らない・寝かせない・泣かせない。この3つを守ることが非専門医にできる最大の治療。
- 犬吠様咳嗽がない吸気性喘鳴はクループらしくない。高熱・咽頭痛・流涎・ふくみ声・前傾姿勢が揃えば喉頭蓋炎を疑う。高熱・咽頭痛・咳から12時間以内に急速進行する経過は典型的。
- 分の単位で進む。異物窒息のような一瞬の閉塞ではないが、血液検査の結果を待つ余裕はない。
- 自分で気道確保が実施不可能と判断したら早期に応援を依頼する。当院では挿管を試みない。
- 当直帯に院内の耳鼻咽喉科はいない。呼ぶ先は院内ではなく搬送先。最初の電話は受け入れ先へ。
判断の流れ
拡大して見る ↗2鑑別のながれ
- 吸気性喘鳴→犬吠様咳嗽・嗄声、経過は数日、夜間増悪→クループ(急性声門下喉頭炎)
- 吸気性喘鳴→頸部腫脹・頸部可動域制限・いびき(5歳未満に多い)→咽後膿瘍
- 吸気性喘鳴→開口障害・口蓋垂偏位(思春期以降に多い)→扁桃周囲膿瘍
- 吸気性喘鳴→突然の咳込みから始まる、発熱を伴わない→気道異物
- 吸気性喘鳴→皮疹・曝露歴、分の単位で進む点は共通→アナフィラキシー
3気道管理(非専門医が当院でやること)
- 体位を保つ(座位・前傾など本人が楽な姿勢のまま)
- 刺激しない。処置・採血・ルート確保も気道確保の準備が整うまで急がない
- 酸素を投与する(マスクを嫌がるなら無理に当てない)
- 応援を呼ぶ。自分では実施不可能と判断したら早期に救急医や耳鼻咽喉科医に応援を依頼する
- 受け入れ先へ連絡し、気道が確保できる体制のある施設へ搬送する。最初に「気道緊急」と伝え、吸気性喘鳴・流涎・前傾姿勢の有無を伝える
- 搬送は体位を変えないまま。搬送中も泣かせない(家族に抱いてもらうほうが落ち着くならそうする)
やってはいけない・落とし穴
↑ このページの入口へ- 仰臥位にしない。号泣させない
- 準備なしに舌圧子で咽頭を覗かない
- 血液検査の結果を待って判断を遅らせない
- 当院では挿管を試みない(失敗時の次の手段がない)
4送る/持つの目安
- 搬送・紹介吸気性喘鳴+高熱+流涎+前傾姿勢(座位のまま酸素、応援を呼び気道確保のできる施設へ)、ふくみ声・あえぎ呼吸・陥没呼吸、チアノーゼ・意識低下(気道確保が最優先。当院で不可能なら人を呼ぶことに全力を注ぐ)
5診療中の疑問と回答
- 喉頭蓋炎を疑うが、採血や咽頭ぬぐいを先にしてよい?
- 刺激や体位変換で閉塞が悪化し得る。本人が楽な姿勢を保ち、無理な診察・処置を避けて気道管理の専門応援と受入先へ連絡する。酸素を必要に応じて投与し、検査は安全な気道確保の計画に従う。採血や画像のため搬送を遅らせない。
根拠:RCH 急性上気道閉塞(海外小児指針) - Hibワクチンを接種していれば、喉頭蓋炎は除外できる?
- 接種歴だけでは除外できない。流涎、嚥下困難、含み声、吸気性喘鳴、前傾姿勢や急な進行を重視する。クループとして吸入だけで経過を見ず、気道確保が必要になり得る病態として専門施設へ相談する。典型的な所見が全部そろうのを待たない。
根拠:RCH 急性上気道閉塞(海外小児指針) - 座位ではSpO2が保たれる。仰向けでX線を撮ってよい?
- 酸素化が保たれても上気道閉塞は進行し得る。呼吸努力と姿勢、流涎、声を評価し、本人の楽な体位を崩さない。画像での確定を優先せず、当院では気道管理可能な施設への搬送を調整する。移動中も急変に備えた監視と応援体制を維持する。
根拠:RCH 急性上気道閉塞(海外小児指針)
- 咽頭を見て確認していい?
- 気道確保・酸素投与の準備が整うまで見ない。準備なしに舌圧子で無理に覗かない。
- 画像検査は撮る?
- 頸部単純X線側面像は撮影のために体位を変えない前提でのみ。この病気は画像でなく座位を保つ・流涎・含み声で疑う。
- 挿管はする?
- しない。失敗したときの次(外科的気道確保)が無いため、座位・酸素・刺激しないで保ち、気道確保のできる施設へ即搬送する。
- 咽頭炎として抗菌薬を出して様子を見ていい?
- いいえ。一般的な咽頭炎として抗菌薬のみで経過観察し、気道狭窄が進行して窒息に至った症例がある。疑ったら気道確保のできる施設への相談を優先する。
7家族への説明
のどの奥にある『喉頭蓋』という蓋がはれて、空気の通り道をふさぎかけている可能性があります。この病気は、泣いたり体勢を変えたりするだけで急に息ができなくなることがあります。お子さんが楽な姿勢のままにして、できるだけ静かにさせてください。のどを見る検査も、安全に行える準備が整ってから行います。当院では気道を確保する処置ができないので、できる病院へ急いで移っていただきます。
一般教育・院内オペ補助。個別診断・治療の代わりにはなりません。β版・逐条レビュー継続中。