9-1ネフローゼ症候群(初発の見つけ方)
眼瞼浮腫・高度蛋白尿・低アルブミン血症
β版 · 紙面の最終確認 2026-10-30
日付は紙面の確認日です。院内承認を示すものではありません。処方・運用は、本文の適用条件と出典、院内の採用薬・手順を確認してください。
このページの目次9項目
1ポイント
- 「まぶたが腫れた」で来る。朝いちばんの眼瞼浮腫→夕方に下腿へ移る。アレルギーと間違えて抗ヒスタミン薬を出すと診断が遅れる。
- むくみを見たら尿を確認。蛋白3+〜4+と低アルブミン血症なら強く疑い、循環・感染・血栓を並行評価する。
- 診断基準(ISKDC):高度蛋白尿(早朝尿で尿蛋白クレアチニン比2.0 g/gCr以上、または夜間蓄尿で40 mg/時/m²以上)+低アルブミン血症(血清アルブミン2.5 g/dL以下)。
- 2〜5歳がいちばん多く、約半分が5歳未満で発症する。年間小児人口10万人あたり6.5人。
- 浮腫があっても血管内循環が不足することがある。心拍・CRT・末梢温・尿量に加え、血圧・呼吸も評価し輸液/利尿を判断する。
2鑑別のながれ
- むくみ→痒み・膨疹・急な発症。尿蛋白は出ない→アレルギー(血管性浮腫・じんましん)
- むくみ+血尿→血尿が主役、高血圧、乏尿、低補体血症→急性糸球体腎炎
- むくみ→頸静脈怒張・肝腫大・頻呼吸→心不全
- むくみ+低アルブミン血症→黄疸・肝腫大・AST/ALT上昇→肝疾患
- むくみ+低アルブミン血症→慢性下痢・体重減少、尿蛋白は出ない→蛋白漏出性胃腸症・低栄養
3対応の緊急度
| 119 | 強い腹痛+発熱 | 特発性細菌性腹膜炎を疑う。血培・腹水。当院で持てない |
|---|---|---|
| 119 | 頻脈・CRT延長・四肢冷感・乏尿 | 循環血漿量減少性ショック。生食ボーラス+アルブミン製剤の適応を専門施設と相談 |
| 119 | 片側下肢腫脹・胸痛・突然の呼吸困難・けいれん | 血栓症(深部静脈・肺・脳静脈洞)。当院で持てない |
| 119 | 呼吸困難・起座呼吸・SpO2低下 | 胸水・肺水腫。胸部X線 |
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4検査
- 体重測定(前回値との差)と血圧測定
- 尿定性(早朝尿が望ましい)+尿沈渣+尿蛋白クレアチニン比 — 当直帯に出るのは定性のみ。蛋白3+以上+浮腫+低アルブミン血症があれば定量を待たずに動いてよい
- 血清アルブミン・総蛋白・Cr・BUN・電解質・総コレステロール。C3など追加検査は日勤帯/紹介先と調整
- 血算(Ht上昇は血管内脱水の示唆)
- 陰嚢・陰唇の視診(見ないと分からない。高度なら入院適応)
- 循環血漿量の評価(心拍数・CRT・四肢冷感・尿量)
- 腹部所見(腹水・圧痛)— 発熱+腹痛なら腹膜炎を外す
- 胸部X線(胸水・心拡大)を必要に応じて
- 水痘・麻疹の罹患歴とワクチン歴、直近の曝露歴を記録(治療開始前に必須)
- 血栓症予防:高度浮腫・高度蛋白尿等のハイリスク例のみ弾性ストッキングを使用。抗凝固薬の開始は専門医判断とする(院内方針院内)
5対応の注意
避けること・注意:むくみがあるから輸液は不要と判断すること、水痘・麻疹の曝露歴を確認せずステロイド開始の相談を進めること。
↑ このページの入口へ6送る/持つの目安
- 入院初発ネフローゼ(合併症なし)は初期診断を当院で行い、夜間は当院で入院管理し、日勤帯に専門施設と相談する
- 搬送・紹介循環血漿量減少性ショック(初期輸液は当院、その先は持てない)、血栓症・特発性細菌性腹膜炎の疑い、腎生検の適応サインあり(持続的血尿・肉眼的血尿、高血圧・腎機能低下、低補体血症、1歳未満のいずれか)、既知のネフローゼの再発(尿蛋白3日以上連続陽性等の学会基準で判断し、自己判断で増量せず主治医と連携してステロイド再開を検討する。院内方針院内)
7診療中の疑問と回答
- むくみが強いので、すぐ利尿薬を増やす?
- 浮腫があっても血管内循環が不足することがある。血圧、心拍、灌流、尿量、呼吸と腎機能から体液状態を評価する。循環不足に強い利尿を加えると腎傷害や血栓の危険があるため、アルブミン・利尿薬の適応は腎臓専門医と判断する。
根拠:KDIGO 小児ネフローゼGL2025 / IPNA ステロイド感受性ネフローゼ勧告 - 家庭の尿蛋白が陽性に戻った。残薬のステロイドを開始する?
- 発熱・感染、測定条件、持続日数と浮腫・尿量を確認し、個別の再発時計画に従って主治医へ連絡する。単回の試験紙だけで自己開始・増量しない。当院では初発のステロイド開始は専門施設へ委ねる。重い腹痛、呼吸苦、乏尿があれば緊急評価する。
根拠:KDIGO 小児ネフローゼGL2025 / IPNA ステロイド感受性ネフローゼ勧告 - 治療中に発熱と腹痛が出た。いつもの再発として見てよい?
- 腹膜炎などの感染症、血栓、循環不全を評価する。ステロイド等の免疫抑制とワクチン・曝露歴も確認し、主治医へ速やかに連絡する。強い腹痛、片脚の腫れ、胸痛・呼吸苦は単純な浮腫として待たず、救急評価と入院の必要性を判断する。
根拠:KDIGO 小児ネフローゼGL2025 / IPNA ステロイド感受性ネフローゼ勧告
- どのくらいの子に多い?
- 2〜5歳に最も多く発症し、約半分が5歳未満で発症する。年間小児人口10万人あたり6.5人。
- 腎生検はいつ必要?
- 肉眼的/持続性血尿、持続する高血圧、低補体、循環低下で説明できない腎機能障害、乳児発症は専門評価。生検・遺伝検査の適応は専門医が判断する。
- ステロイドは当直で始める?
- 始めない。診断をつけて受け入れ先を決めるところまでが当院の仕事。
9家族への説明
おしっこにたんぱくが大量に漏れて、血の中のたんぱくが減り、むくみが出る病気です。子どもでは2〜5歳にいちばん多く、日本では1年に10万人あたり6.5人が発症します。お薬(ステロイド)がよく効く型がほとんどですが、治療は入院で始めます。今日いちばん気をつけたいのは、むくみそのものより、お腹の痛みと熱(腹膜炎)、片足の腫れや急な息苦しさ(血栓)です。このどれかがあれば、時間を待たずに来てください。また、水ぼうそうや麻しんにかかったことがあるか、予防接種を受けたかを必ず教えてください。治療の前に確認が要ります。
一般教育・院内オペ補助。個別診断・治療の代わりにはなりません。β版・逐条レビュー継続中。