12-1おなかのレントゲン
便秘・イレウス・遊離ガス・異物
β版 · 紙面の最終確認 2026-09-27
日付は紙面の確認日です。院内承認を示すものではありません。処方・運用は、本文の適用条件と出典、院内の採用薬・手順を確認してください。
このページの目次8項目
1ポイント
- 当院の当直帯にCT・超音波は無い。腹部X線は撮れる。夜間の読影は当直医が自分で行う(放射線科の読影は翌日以降)。
- 便秘の確定診断はX線でなく病歴・身体所見が主体。X線は基礎疾患除外・直腸診不能例・難治例の便貯留評価に限定する。便貯留スコア(Barr/Leech等)は観察者間信頼性にばらつきがあり過信しない。
- free airは立位困難なら数分待ってから左側臥位(decubitus)を追加する。イレウスはガスパターン(小腸=中心性・plica circularisが全周を横切る/大腸=辺縁性・haustraは全周を横切らない)と鏡面像(ニボー)で読む。
- ボタン電池の食道停留は無症状でも2時間以内目安の超緊急。複数磁石(または磁石+金属)誤飲は穿孔・瘻孔リスクで緊急対応。
- 腸重積は腹部X線でなく超音波が第一選択。X線は遊離ガス像・小腸閉塞像から重症度と非観血的整復の可否を判断する補助的位置づけ。
2鑑別のながれ
- 腹部膨満・嘔吐・腹痛→小腸ガス=中心性・plica circularisが全周を横切る細い線状影、鏡面像(ニボー)が目立ちやすい→機械的イレウス(腸重積・腸回転異常・鼠径ヘルニア嵌頓等)
- 腹膜炎・電解質異常・術後・重症感染症後の腹部膨満→大腸ガス優位で一様に拡張→麻痺性イレウス
- 立位で確認できない急性腹症→左側臥位で遊離ガスが腹壁と肝表面の間に移動するまで数分待つ→消化管穿孔(free air)
- 誤飲を疑う突然の流涎・嚥下障害・嘔吐→PA像で二重の輪郭(double halo sign)、側面像で正極・負極のズレ(step-off sign)→ボタン電池(コインと即断しない)
3異物の緊急度(NASPGHAN分類の要約)
| 中等症 | 胃・小腸内の無症状ボタン電池(5歳未満かつ電池径20mm以上) | Urgent扱い。連続X線で移動を確認し、移動していれば経過観察でよい。胃内に48時間停滞していれば内視鏡的摘出目的の紹介を検討する |
|---|---|---|
| 中等症 | 胃・小腸内の無症状の単数磁石 | Urgent(電池ほどの秒読みではないが経過を追う) |
| 重症 | 食道内のボタン電池(有症状/無症状問わず)、食道内で有症状の磁石、胃・小腸内で有症状の単数磁石 | 2時間以内目安で緊急対応 |
| 最重症 | 磁石が複数個、または磁石+金属で隣接 | Multiple magnet protocolを適用(無症状でも緊急) |
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4検査
- 便秘の確定診断はX線でなく病歴・身体所見が主体。X線は基礎疾患除外・直腸診不能例・難治例の便貯留評価に限定する
- free air診断精度は概ね70〜80%。陰性でも穿孔を否定できない
- イレウス初期はガス像が正常に見えることがある。臨床的に強く疑うなら2〜3時間後の再撮影を検討する
- 磁石は複数個が密着していると1個の陰影に見えることがある。必ず2方向(PA+側面)で撮影し個数を確認する
5腹部X線の撮り方(free air確認・異物確認)
- 立位で撮影する(横隔膜下の遊離ガス=free airを確認する基本体位)
- 立位が困難なら左側臥位(decubitus位)とし、遊離ガスが腹壁と肝表面の間に移動するまで数分(4〜5分程度)待ってから撮影する
- 異物(コイン様物・ボタン電池・磁石)を疑うときはPA(正面)と側面の2方向で撮影し、個数・向きを確認する
- 臨床的にイレウスを強く疑うのに所見がなければ、2〜3時間後に再撮影する
やってはいけない・落とし穴
- free air診断精度は概ね70〜80%。陰性でも臨床的に強く疑うなら穿孔を否定しない
- 複数の磁石が密着していると1個の陰影に見えることがある。必ず2方向で個数を確認する
- ボタン電池はPA像の二重の輪郭(double halo sign)、側面像の正極・負極のズレ(step-off sign)を確認し、円形陰影をコインと即断しない
6帰宅・入院の目安
- 搬送・紹介腹部膨満+間欠的な啼泣・不機嫌、血便(イチゴジャム様)など腸重積を疑う所見があれば、X線・エコーで確認する前に決まった連携先へ直接電話する(当直帯に腹部エコー・CTは無い)、ボタン電池が食道内にあれば無症状でも2時間以内目安で緊急対応する、5歳未満かつ電池径20mm以上の無症状ボタン電池が胃内で48時間動かなければ、内視鏡的摘出目的で紹介する(それまではUrgent扱いで連続X線を追う)、磁石が複数個(または磁石+金属)で隣接していれば無症状でも緊急扱いとする、free air(遊離ガス)があれば消化管穿孔として緊急対応する
7Q&A
- X線が正常なら便秘は軽いと言える?
- 言えない。便貯留スコアは観察者間信頼性にばらつきがあり、臨床的便秘診断児の20%超で偽陰性になりうる。
- ボタン電池は症状が無ければ様子を見ていい?
- 見ない。食道内であれば無症状でも2時間以内目安の超緊急として扱う。
- 円形陰影が見えたらコインと判断していい?
- しない。double halo signとstep-off signを毎回確認し、ボタン電池を除外する。
8家族への説明
ボタン電池(時計や体温計、リモコンなどの小さい電池)を飲み込んだ可能性が少しでもあれば、症状がなくてもすぐに受診してください。様子を見ないでください。磁石のおもちゃを2個以上(または磁石と金属を一緒に)飲み込んだ可能性があるときも、症状がなくてもすぐに受診してください。お腹の中で磁石同士がくっついて腸に穴が開くことがあります。
詳しい根拠・出典は 詳細リファレンス へ
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