10-12初発の無熱性けいれん・てんかんの入口
止める・急性症候性発作を外す・帰せるか決める
β版 · 紙面の最終確認 2026-10-30
日付は紙面の確認日です。院内承認を示すものではありません。処方・運用は、本文の適用条件と出典、院内の採用薬・手順を確認してください。
このページの目次10項目
1ポイント
- 当直でやることは3つだけ。①止める ②急性症候性発作を外す ③帰せるか決める。てんかんの診断を当直でつける必要はない。
- 当直で本当に外すのは「てんかん」ではなく急性症候性発作:中枢神経感染症・頭部外傷・低血糖・電解質異常・中毒・高血圧性脳症。ここを外すと死ぬ。
- 初回の非誘発性発作では、原則として抗てんかん薬を開始しない。神経学的異常・脳波異常・脳画像病変・てんかんの家族歴があれば再発率が高く、治療開始を考慮する。
- 単発で完全に回復した非誘発性発作では、長期の抗発作薬を一律に開始しない。乳児スパズム・重積・急性症候性発作は別に判断し、早急な専門評価と必要な治療へつなぐ。
判断の流れ
拡大して見る ↗2鑑別のながれ
- 立位・痛み・採血などの誘因+前駆の眼前暗黒感→倒れた後に数秒の強直やミオクローヌスが出ることがある(convulsive syncope)→血管迷走神経性失神(心原性を外す・心電図。失神)
- 泣いた後に呼吸を止めチアノーゼか蒼白→意識消失→泣き入りひきつけ→憤怒けいれん(経過観察・鉄欠乏の確認)
- 哺乳と関連した後弓反張(乳児)→胃食道逆流に伴う→Sandifer症候群(胃食道逆流)
- 発作が長く続き、閉眼に抵抗し、左右非対称で変動する→発作後の錯乱が乏しい→心因性非てんかん発作(決めつけない・専門施設へ)
- 発熱を伴う発作、生後6か月〜5歳→年齢・経過が典型的でない、または回復不良なら急性原因やてんかんを再評価→熱性けいれん(熱性けいれん)
- 発熱+けいれん+意識障害が続く(熱性けいれんの型に合わない)→「熱性けいれんでしょう」で帰すと見逃す→細菌性髄膜炎・急性脳炎脳症(持てない・搬送)
- 説明の変わる乳児の発作→養育環境も確認する→虐待による頭部外傷(持てない・画像と通告)
- 初発非誘発性発作→411例中脳腫瘍2例・神経有鉤囊虫症2例が画像で見つかっている→脳腫瘍(持てない・画像が要る)
3発作回数による再発リスクと対応
| 初回の非誘発性発作 | 5年以内の再発率は約43%(小児コホート) | 原則、抗てんかん薬は開始しない。神経学的異常・脳波異常・脳画像病変・てんかんの家族歴があれば治療開始を考慮 |
|---|---|---|
| 2回目の発作 | 1年以内の再発率は約57%(小児コホート) | 抗てんかん薬の加療開始が推奨される |
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4検査
- 血糖:最優先。発作中でも測る
- 電解質(Na・K・Ca・Mg)・血ガス・アンモニア:代謝性の急性症候性発作(肝性脳症・ミトコンドリア脳症など)を拾う。乳児では特に。いずれも当直帯で測れる
- 血算・CRP・血液培養:発熱があれば感染症のワークアップへ
- 中毒スクリーニング:疑ったら
- 頭部CT:出血・大きな占拠性病変の除外目的。当直帯の当院では撮れない。撮る必要があると判断した時点が搬送の判断
- 頭部MRI:神経画像検査を行う場合はMRIが推奨される。一律には行わず、症候性が示唆される場合に行うことが望ましい
- 脳波:単発後に完全に回復した児は外来で計画。意識回復不良は非けいれん性重積を含め緊急相談、乳児スパズム疑いは早急に専門評価・脳波へ
- 心電図:QT延長・Brugada・WPWなど「けいれんに見えた失神」を外す
5対応の注意
避けること・注意:初回の単発・完全回復例に長期の抗発作薬を一律に開始すること。意識回復不良や新規巣症状があるのに検査を外来へ先送りすること。初発時に頓用のジアゼパム坐剤を一律に持たせること。
↑ このページの入口へ6帰宅・入院・搬送の目安
- 帰宅生後6か月以上で発作後に完全に回復した単発の無熱性発作、神経学的異常なし、家族が夜間の観察に対応できる → 当院で初期評価し脳波は外来で組む。搬送は不要なことが多い
- 入院生後6か月未満の無熱性発作で発作後に完全に回復していれば、夜間は当院で入院管理し日勤帯に専門施設と相談。回復不良・反復時は搬送、生後6か月以上でも、夜間の観察が難しい・家族の不安が強い場合は入院とし、日勤帯に専門施設と相談
- 搬送・紹介けいれん重積:持てない、意識が戻らない:持てない、頭蓋内出血・占拠性病変:持てない。脳外科へ、頭部外傷後7日以内の発作:CTも脳外科もないため搬送、新規の麻痺・巣症状:Todd麻痺と決めつけず脳卒中など急性病変を緊急評価。当直帯はCT・MRIとも撮れないため速やかに搬送相談、中毒が疑われる:中毒110番へ、高血圧を伴う:血圧を年齢基準で測定。高血圧性脳症を疑えば搬送。全身状態が安定していれば急性糸球体腎炎として夜間は当院で入院管理し、日勤帯に専門施設と相談
7診療中の疑問と回答
- 初めての無熱性けいれんが止まったら、すぐ維持薬を始める?
- 単回で止まり意識が戻っただけでは、長期抗発作薬の開始を自動的に決めない。低血糖、電解質異常、感染、外傷、薬物曝露など誘因を確認し、発作の動画と経過を添えて小児神経に相談する。乳児、局在所見、回復遅延では緊急性を上げる。
根拠:RCH 急性けいれん診療指針 - 来院時に発作が続き、開始時刻が分からない場合は?
- 開始時刻不明の持続発作は、短時間と推測して観察を延長せず治療する。気道、呼吸、循環と血糖を確認し、救急搬送中や家庭で投与されたベンゾジアゼピンの回数も合算する。止まらない場合は重積の手順へ移り、反復投与による呼吸抑制も監視する。
根拠:RCH 急性けいれん診療指針 - 発作後に元気なら、全例で緊急脳波やCTが必要?
- 回復した単回発作に、脳波やCTを一律に緊急実施するのではなく、年齢、外傷、局在性、頭蓋内圧亢進所見、意識回復を基に選ぶ。退院時は再発時の安全確保と救急受診の条件を具体的に伝え、初回無熱性発作として専門外来の評価につなぐ。
根拠:RCH 急性けいれん診療指針
- 血糖が低ければどうする?
- 原因検索より先に、まずブドウ糖を投与する。
- 1回だけの発作でも薬を始めるべき?
- 原則始めない。神経学的異常・脳波異常・脳画像病変・てんかんの家族歴があれば治療開始を考慮する。
- 2回目の発作が起きたら?
- 1年以内の再発率が約57%(小児コホートのデータ)と高く、抗てんかん薬の加療開始が推奨される。
- 熱性けいれんと決めつけていい?
- 年齢や経過が典型的でない、発熱+けいれん+意識障害が続く場合は熱性けいれんと決めつけず、細菌性髄膜炎・急性脳炎脳症や代謝異常などを評価する。
9家族への説明
今日の発作は、はっきりした原因(熱・低血糖・頭のけが・薬など)によるものではなさそうです。1回だけの発作では、すぐにお薬を始めないのが原則です。最初の発作のあと、5年以内にもう一度起きる人は10人のうち4人くらいで、残りの人は繰り返しません。2回目が起きた場合は、その後1年以内にまた起きる可能性が高くなるので、そのときはお薬を考えます。次にやることは脳波の検査です。それまでの間、入浴は必ず大人が一緒に、水泳はひとりでしない、高いところに登らない、自転車は控えるでお願いします。5分以上止まらない・続けて起きる・覚めない、このどれかなら救急車を呼んでください。
一般教育・院内オペ補助。個別診断・治療の代わりにはなりません。β版・逐条レビュー継続中。