失神・一過性の意識消失
神経・発達・こころβ版・逐条レビュー継続中
2026-09-12更新
β版用量は適用前に一次資料と院内採用を確認。このβ版について
施設プロファイル: 二次救急/小児循環器なし。心原性を疑った時点で専門施設へつなぐ。
30秒要約
- 失神の大半は良性(反射性・起立性)だが、心原性失神は予後が悪い。当直の仕事は「良性を診断すること」ではなく、心原性を外すこと。
- 心電図を撮る。失神で来たら、原則として全例。
- 危ないのは次の7つ。前駆症状なし/胸痛/動悸/運動中に発症/臥位で発症/器質的心疾患の既往/突然死の家族歴。
- 運動中の失神は、証明されるまで心原性として扱う。
- けいれん様の動きを伴っても、失神のことがある。「けいれんした」で神経の枠に入れきらない。
レッドフラグ
所見があったときにどれだけ急ぐかと、家族に何を伝えるかの対応表。3列目の文言は家族説明ページに同じ言葉で載っているので、画面を見せながら渡せる。
| 緊急度 | 所見 | その場で次にやること | 時間の勝負 |
|---|---|---|---|
| 119 | 意識が戻らない/不整脈が続いている/ショック | 蘇生を優先。モニタ装着 | 待たない |
| 緊急 | 運動中に発症した失神 | 心原性として扱う。心電図。小児循環器へ | — |
| 緊急 | 臥位で発症した失神 | 反射性失神では説明しにくい。心原性を疑う | — |
| 緊急 | 前駆症状なく突然倒れた | 同上 | — |
| 緊急 | 胸痛・動悸を伴う | 心電図。不整脈・心筋炎・心筋症 | — |
| 緊急 | 突然死の家族歴(若年の原因不明死・溺死・事故死を含む) | QT延長症候群・Brugada・肥大型心筋症などを念頭に | — |
| 緊急 | 器質的心疾患の既往 | 専門施設へ | — |
| 緊急 | 心電図でQT延長・デルタ波・ST-T異常・心室肥大・徐脈 | 小児循環器へ | — |
| 当日 | 立ち上がった直後、長時間の起立、痛み・恐怖・採血などの誘因があり、前駆症状(目の前が暗くなる・吐き気・冷汗)を伴い、すぐ回復した | 反射性失神として、誘因の回避と再発時の対応を指導 | — |
鑑別:一過性意識消失
| 病態 | 拾う所見 | 決め手 | 当院の扱い |
|---|---|---|---|
| 反射性(神経調節性)失神 | 誘因あり(起立・痛み・恐怖・排尿・咳・採血)、前駆症状あり、倒れた後すぐ回復 | 病歴。心原性を外したうえでの診断 | 当院で完結しうる |
| 起立性低血圧・起立性調節障害 | 起立時、朝に強い、立ちくらみの反復 | 起立試験(起立性調節障害) | 当院で対応 |
| 心原性失神 | 運動中・臥位・前駆症状なし・胸痛・動悸・突然死の家族歴・器質的心疾患 | 心電図(当直帯も取れる)。ホルター・心エコーは当直帯に無いので後日・専門施設 | 持てない。小児循環器へ |
| てんかん発作 | 発作後のもうろう、舌咬傷、けいれんが先行、回復が遅い | 病歴。脳波 | 専門外来へ |
| 低血糖 | 空腹・糖尿病治療中・意識の戻りが遅い | 血糖測定 | 当院で対応 |
| 過換気 | 誘因、しびれ、テタニー | 病歴 | 当院で対応 |
| 心因性(偽失神) | 頻回、目撃者の前で、外傷を伴わない | 除外診断。決めつけない | 慎重に |
| 貧血・出血 | 蒼白、頻脈、月経過多 | 血算 | 当院で対応 |
心原性を疑う所見(日本循環器学会 失神の診断・治療ガイドライン)
心原性失神を疑う病歴・所見として挙げられているのは次のとおり。
- 前駆症状なし
- 胸痛
- 動悸あり
- 運動中に発症
- 臥位で発症
- 器質的心疾患の既往
- 突然死の家族歴
心電図異常には「失神の原因と診断可能なもの」と「失神の原因を疑うもの」がある。
所見の取り方
- 目撃者から聞く。本人は覚えていない。倒れ方、持続時間、顔色、けいれん様の動きの有無、回復までの時間。
- 姿勢を確定する。立っていたか、座っていたか、横になっていたか。臥位発症は意味が変わる。
- 何をしていたか。運動中か、安静時か、排尿・咳・採血の最中か。
- 外傷の有無(前駆症状なく倒れた人は受け身が取れず顔面外傷を負いやすい)。
- 心音(雑音)、脈の不整。
- 家族歴を具体的に聞く。「若くして亡くなった人はいますか」「原因不明の溺死・交通事故はありますか」。
問診チェック
検査
- 心電図(原則全例)。QT延長、デルタ波、Brugada型、ST-T異常、心室肥大、徐脈・伝導障害を見る。
- 血糖。
- 血算(貧血・出血)。
- 起立試験(反射性失神・起立性調節障害を疑うとき)。
- 心エコー・ホルター・運動負荷は専門施設で。
送る/持つ(当院=二次救急・小児循環器なし)
| 状態 | 当院の扱い |
|---|---|
| 心原性を疑う所見がひとつでもある | 持てない。小児循環器へ紹介 |
| 心電図に異常がある | 持てない。小児循環器へ |
| 反射性失神らしく、心電図正常、危険な所見なし | 当院で対応。誘因の回避と再発時の対応を指導し、再受診条件を渡す |
| 判断がつかない | 心電図を添えて紹介する。「様子を見ましょう」で終わらせない |
エスカレーション(施設オーバーレイで上書き)
- 要確認:小児循環器の紹介先と、夜間に相談できるか
- 要確認:夜間に心電図を撮れる体制(機器・判読)
- 要確認:学校心臓検診でQT延長を指摘された児が受診したときの院内の扱い
家族に渡す一文
「気を失うことの多くは、血圧や脈が一時的に下がって脳の血の巡りが減るもので、命に関わりません。ただし、運動しているときに倒れた・横になっているときに倒れた・前ぶれなく倒れた・ご家族に若くして突然亡くなった方がいる、このどれかに当てはまるときは、心臓が原因のことがあるので詳しい検査をします。心電図は今日撮ります。」
医師確認事項(要・岡本判断)
- 要確認:小児循環器の紹介先と、心電図異常を認めたときの当院の手順。
- 要確認:本シートの「心原性失神を疑う病歴・所見」は、日本循環器学会 失神の診断・治療ガイドライン(2012年改訂版)を紹介する二次情報から取っており、ガイドライン原文は未確認。この扱いでよいか。
- 要確認:QT延長症候群の学校心臓検診での発見頻度(0.006%)は二次情報。原典の確認が未。
- 要確認:小児に特化した失神の国内ガイドラインは本シートでは見つけられなかった。成人を含むガイドラインの所見を小児に用いている点の妥当性。
出典
- 日本循環器学会.失神の診断・治療ガイドライン(2007年初版、2012年改訂版)。心原性失神を疑う病歴・所見(前駆症状なし、胸痛、動悸あり、運動中に発症、臥位で発症、器質的心疾患の既往、突然死の家族歴)、心電図異常に「失神の原因と診断可能なもの」と「失神の原因を疑うもの」があること、2012年改訂版で失神診療のフローチャートと高リスク患者の評価法が導入されたこと。これらは本ガイドラインを紹介する二次情報(フクダ電子「失神診断のための検査・フローチャート」https://www.fukuda.co.jp/medical/icm/syncope/flow/ ほか)経由で確認しており、ガイドライン原文は未確認(2026-09-12閲覧)。
- 小児慢性特定疾病情報センター.QT延長症候群 概要.https://www.shouman.jp/disease/details/04_11_015/ (2026-09-12閲覧)。失神・突然死を起こすこと、学校心臓検診での発見頻度。
- 国立循環器病研究センター.先天性QT延長症候群.https://www.ncvc.go.jp/hospital/section/cvm/arrhythmia/qt/ (2026-09-12閲覧)。小児では運動やストレスで失神が誘発されることが大部分、家族歴の重要性、β遮断薬が第一選択。
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