失神・一過性の意識消失

緊急

失神・一過性の意識消失

神経・発達・こころβ版・逐条レビュー継続中

2026-10-03更新
β版用量は適用前に一次資料と院内採用を確認。

施設プロファイル: 二次救急/小児循環器なし。心原性を疑った時点で専門施設へつなぐ。

30秒要約

  • 失神の大半は良性(反射性・起立性)だが、心原性失神は予後が悪い。当直の仕事は「良性を診断すること」ではなく、心原性を外すこと。
  • 心電図を撮る。失神で来たら、原則として全例。正常な心電図1枚でも心原性は否定できず、運動中発症・胸痛・突然死の家族歴などの危険な病歴があれば小児循環器へ相談する。
  • 危ないのは次の7つ。前駆症状なし/胸痛/動悸/運動中に発症/臥位で発症/器質的心疾患の既往/突然死の家族歴。
  • 運動中の失神は、証明されるまで心原性として扱う。
  • けいれん様の動きを伴っても、失神のことがある。「けいれんした」で神経の枠に入れきらない。

レッドフラグ

所見があったときにどれだけ急ぐかと、家族に何を伝えるかの対応表。3列目の文言は家族説明ページに同じ言葉で載っているので、画面を見せながら渡せる。

緊急度所見その場で次にやること時間の勝負
119意識が戻らない/不整脈が続いている/ショック蘇生を優先。モニタ装着待たない
緊急運動中に発症した失神心原性として扱う。心電図。小児循環器へ—
緊急臥位で発症した失神反射性失神では説明しにくい。心原性を疑う—
緊急前駆症状なく突然倒れた同上—
緊急胸痛・動悸を伴う心電図。不整脈・心筋炎・心筋症—
緊急突然死の家族歴(若年の原因不明死・溺死・事故死を含む)QT延長症候群・Brugada・肥大型心筋症などを念頭に—
緊急器質的心疾患の既往専門施設へ—
緊急心電図でQT延長・デルタ波・ST-T異常・心室肥大・徐脈小児循環器へ—
当日立ち上がった直後、長時間の起立、痛み・恐怖・採血などの誘因があり、前駆症状(目の前が暗くなる・吐き気・冷汗)を伴い、すぐ回復した反射性失神として、誘因の回避と再発時の対応を指導—

鑑別:一過性意識消失

病態拾う所見決め手当院の扱い
反射性(神経調節性)失神誘因あり(起立・痛み・恐怖・排尿・咳・採血)、前駆症状あり、倒れた後すぐ回復病歴。心原性を外したうえでの診断当院で完結しうる
起立性低血圧・起立性調節障害起立時、朝に強い、立ちくらみの反復起立試験(起立性調節障害)当院で対応
心原性失神運動中・臥位・前駆症状なし・胸痛・動悸・突然死の家族歴・器質的心疾患病歴・診察・心電図で疑う。正常心電図でも危険な病歴があれば専門相談。ホルター・心エコーは当直帯に無く、必要な評価を専門施設へつなぐ持てない。小児循環器へ
てんかん発作発作後のもうろう、舌咬傷、けいれんが先行、回復が遅い病歴。脳波専門外来へ
低血糖空腹・糖尿病治療中・意識の戻りが遅い血糖測定当院で対応
過換気誘因、しびれ、テタニー病歴当院で対応
心因性(偽失神)頻回、目撃者の前で、外傷を伴わない除外診断。決めつけない慎重に
貧血・出血蒼白、頻脈、月経過多血算当院で対応

心原性を疑う所見(日本循環器学会 失神の診断・治療ガイドライン)

心原性失神を疑う病歴・所見として挙げられているのは次のとおり。

  • 前駆症状なし
  • 胸痛
  • 動悸あり
  • 運動中に発症
  • 臥位で発症
  • 器質的心疾患の既往
  • 突然死の家族歴

心電図異常には「失神の原因と診断可能なもの」と「失神の原因を疑うもの」がある。

所見の取り方

  • 目撃者から聞く。本人は覚えていない。倒れ方、持続時間、顔色、けいれん様の動きの有無、回復までの時間。
  • 姿勢を確定する。立っていたか、座っていたか、横になっていたか。臥位発症は意味が変わる。
  • 何をしていたか。運動中か、安静時か、排尿・咳・採血の最中か。
  • 外傷の有無(前駆症状なく倒れた人は受け身が取れず顔面外傷を負いやすい)。
  • 心音(雑音)、脈の不整。
  • 家族歴を具体的に聞く。「若くして亡くなった人はいますか」「原因不明の溺死・交通事故はありますか」。

問診チェック

検査

  1. 心電図(原則全例)。QT延長、デルタ波、Brugada型、ST-T異常、心室肥大、徐脈・伝導障害を見る。
  2. 血糖。
  3. 血算(貧血・出血)。
  4. 起立試験(反射性失神・起立性調節障害を疑うとき)。
  5. 心エコー・ホルター・運動負荷は専門施設で。

送る/持つ(当院=二次救急・小児循環器なし)

状態当院の扱い
心原性を疑う所見がひとつでもある持てない。小児循環器へ紹介
心電図に異常がある持てない。小児循環器へ
反射性失神らしく、心電図正常、危険な所見なし当院で対応。誘因の回避と再発時の対応を指導し、再受診条件を渡す
判断がつかない心電図を添えて紹介する。「様子を見ましょう」で終わらせない

エスカレーション(施設オーバーレイで上書き)

  • 要確認:小児循環器の紹介先と、夜間に相談できるか
  • 要確認:夜間に心電図を撮れる体制(機器・判読)
  • 決定:指摘歴があれば失神の有無によらず心電図を再検し、延長を認めれば循環器専門科へ紹介する(論点:学校心臓検診でQT延長を指摘された児が受診したときの院内の扱い)

家族に渡す一文

「気を失うことの多くは、血圧や脈が一時的に下がって脳の血の巡りが減るもので、命に関わりません。ただし、運動しているときに倒れた・横になっているときに倒れた・前ぶれなく倒れた・ご家族に若くして突然亡くなった方がいる、このどれかに当てはまるときは、心臓が原因のことがあるので詳しい検査をします。心電図は今日撮ります。」

出典

  • 日本循環器学会.失神の診断・治療ガイドライン(2007年初版、2012年改訂版)。心原性失神を疑う病歴・所見(前駆症状なし、胸痛、動悸あり、運動中に発症、臥位で発症、器質的心疾患の既往、突然死の家族歴)、心電図異常に「失神の原因と診断可能なもの」と「失神の原因を疑うもの」があること、2012年改訂版で失神診療のフローチャートと高リスク患者の評価法が導入されたこと。これらは本ガイドラインを紹介する二次情報(フクダ電子「失神診断のための検査・フローチャート」https://www.fukuda.co.jp/medical/icm/syncope/flow/ ほか)経由で確認しており、ガイドライン原文は未確認(2026-09-12閲覧)。
  • 小児慢性特定疾病情報センター.QT延長症候群 概要.https://www.shouman.jp/disease/details/04_11_015/ (2026-09-12閲覧)。失神・突然死を起こすこと、学校心臓検診での発見頻度。
  • 国立循環器病研究センター.先天性QT延長症候群.https://www.ncvc.go.jp/hospital/section/cvm/arrhythmia/qt/ (2026-09-12閲覧)。小児では運動やストレスで失神が誘発されることが大部分、家族歴の重要性、β遮断薬が第一選択。
病態・根拠12章
失神は脳血流の一過性低下として考える

失神は姿勢保持が失われる短い意識消失で、通常は自然に速やかに回復する。反射性失神では疼痛・恐怖・長時間立位などを契機に血管拡張や徐脈が起こり、起立性の病態では体位変化後の循環調整が追いつかない。心原性では不整脈、流出路狭窄、心筋症等により心拍出が急に落ちうる。病歴だけで良性を確定せず、心電図と危険な場面を確認する。[1][3]

発症場面が病型を分ける

立位での暑さ・長時間起立、痛みや採血、眼前暗黒感・冷汗・吐き気の前駆症状は反射性を支持する。運動中に倒れた、臥位で発症、前駆症状なく急に倒れた、胸痛・動悸を伴った場合は心原性を優先する。運動「直後」の迷走神経反応と、運動「中」の失神は意味が異なるため目撃者に正確に聞く。[1][2][3]

目撃者から取る時系列

本人は意識消失中を説明できない。倒れる前の姿勢・運動・症状、顔色、最初に力が抜けたか、けいれん様運動の開始時刻と長さ、呼吸、完全回復までの時間を聞く。短いミオクローヌスは失神でも起こる一方、長い発作後混迷、局在徴候、繰り返す発作はてんかん等を考える。低血糖・中毒・貧血/出血も評価し、「けいれんのように見えた」だけで心臓を外さない。[1]

家族歴と既往歴の質

若年突然死だけでなく、原因不明の溺死・単独事故、既知の不整脈・心筋症・突然死の家族歴を確認する。本人の先天性心疾患、川崎病後冠動脈病変、心筋炎、運動時胸痛・息切れ、服薬・QT延長薬を聞く。家族歴の陰性は遺伝性不整脈を除外しない。[2][3][4]

心電図は必須だが一枚で終わらない

RCHは小児失神で少なくとも一度の12誘導心電図を勧める。リズム、PR/QRS/QT、前興奮、伝導障害、肥大・ST-T変化を年齢基準と臨床背景で読む。自動測定値は参考であり異常を上級医と再確認する。発作間欠期に心電図が正常な不整脈もあるため、運動中発症や家族歴などの危険な病歴があれば正常ECGでも小児循環器へ相談する。[1][2]

起立性・反射性と心原性の管理の分岐

全身状態安定、典型的な誘因・前駆症状、速い完全回復、心電図に懸念なし、家族歴や胸痛・動悸なしの場合は反射性/起立性として水分・生活指導と再診を考える。しかし運動中・臥位・前駆なし、胸痛・動悸、突然死の家族歴、心疾患、心電図異常なら外来で長期の起立性管理へ直行しない。運動制限、監視の要否と心エコー・Holter等を受入先と決める。[1][2][3]

当院から搬送するときの境界

意識が戻らない、継続する不整脈、ショックはその場で蘇生と監視を始める。心原性が疑わしい児は当院夜間に心エコー・Holterがないため、検査予約を搬送の前提にしない。受入先には発症が運動中か直後か、姿勢、前駆、回復までの時間、家族歴、心電図原本と血糖、目撃者の動画を伝える。[1][2]

出典
臨床医が迷う場面
心電図が正常なら、運動中の失神でも体育を許可できる?

正常な一枚だけでは心原性を除外できない。運動中の発症、胸痛・動悸、家族の突然死を確認し、小児循環器で評価するまで強い運動再開を安易に許可しない。反射性失神に見えても危険な病歴を優先し、検査と復帰判断を専門医につなぐ。

出典:RCH 小児失神(海外指針) / RCH 小児心電図の解釈(海外)

倒れたときに手足が動いた。てんかん薬を始める?

失神でも短いけいれん様運動が起こり得る。姿勢、誘因、前駆症状、皮膚色、持続と回復の速さを確認し、心電図も評価する。動きだけでてんかんと決めず、意識回復が遅い・反復するなどの所見に応じて小児神経・循環器へ相談する。

出典:RCH 小児失神(海外指針) / RCH 小児心電図の解釈(海外)

反射性らしい失神が繰り返す。薬を出す前に何をする?

水分・食事、睡眠、暑熱や長時間立位との関係を確認し、前駆症状があれば座る・横になる対応を教える。貧血や脱水などを病歴から評価し、頻回で生活に支障がある場合は専門評価へ進む。新たな胸痛や運動時発症は以前の良性診断に固定しない。

出典:RCH 小児失神(海外指針) / RCH 小児心電図の解釈(海外)

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