腸閉塞・イレウス

緊急

腸閉塞・イレウス

外科的緊急β版・逐条レビュー継続中

2026-09-27更新
β版用量は適用前に一次資料と院内採用を確認。

施設プロファイル: 二次救急/外科的処置を持たない/当直帯は超音波・CTが使えない。
腹痛の入口は急性腹痛。

30秒要約

  • 分岐はひとつだけ。腸閉塞において大切なことは、腸閉塞を起こしている腸管が血行障害を起こしているか否かによって治療方針が異なるということ。
  • 血行障害があれば緊急手術。血行障害を伴う場合は、症状は重篤で、非常につよい腹痛を来す。下血も血行障害を考えさせる所見として重要。血行障害を起こしていることが強く疑われれば、緊急手術が必要。
  • 腹部手術の既往を必ず聞く。以前にお腹の中の手術をしているときは、5%ぐらいの頻度で術後に腸閉塞が発生する。
  • 年齢で原因が変わる。腸重積は3か月〜2歳が好発(腸重積の専門ガイドライン準拠。日本小児外科学会の腸閉塞ページは生後半年〜2歳頃とやや幅広く記載)、肥厚性幽門狭窄症は生後1か月前後、腸回転異常・中腸軸捻転は新生児期以降に発生するものが2割で、年長児の反復性嘔吐の原因となる。
  • 主症状は嘔吐。ただし嘔吐を来す腸閉塞以外の多くの疾患があり、区別が必要。

レッドフラグ → 次の一手

所見があったときにどれだけ急ぐかと、家族に何を伝えるかの対応表。3列目の文言は家族説明ページに同じ言葉で載っているので、画面を見せながら渡せる。

緊急度所見その場で次にやること時間の勝負
119胆汁性嘔吐腸回転異常・中腸軸捻転を最優先で外す。持てない(中腸軸捻転)即時
119非常に強い腹痛(血行障害のサイン)緊急手術が必要。持てない即時
119下血を伴う下血も血行障害を考えさせる所見として重要。持てない(小児の血便)即時
119腹膜刺激症状・腹部膨満+ショック穿孔・絞扼。輸液しながら搬送即時
119腹部手術既往+嘔吐+腹部膨満+排ガス停止術後腸閉塞。持てない即時
緊急高度な脱水(先天性腸閉塞・反復する嘔吐)これら病気では、高度な脱水症状となるため、点滴を行い、適切な治療が必要。輸液を当院で開始即時
緊急間欠的な啼泣+嘔吐+不機嫌(3か月〜2歳)腸重積。当直帯はエコーが無く確かめられない。この所見だけで整復可能施設へ電話する(腸重積)即時
緊急生後1か月前後の噴水状嘔吐+体重増加不良肥厚性幽門狭窄症。輸液補正が先(肥厚性幽門狭窄症)当日
緊急鼠径部の膨隆嵌頓ヘルニア(嵌頓ヘルニア)。必ず鼠径部を見る即時
緊急新生児の嘔吐+腹部膨満+胎便排泄遅延先天性腸閉塞・ヒルシュスプルング病。持てない即時
当日血行障害を疑わない腸閉塞脱水補正目的の輸液と減圧。管理できる施設へ当日

分類(学会の表をそのまま使う)

生直後に腸閉塞を来す疾患

区分疾患
機械的閉塞先天性腸閉鎖・狭窄/先天性食道閉鎖/先天性十二指腸閉鎖・狭窄/先天性小腸閉鎖・狭窄/直腸・肛門形成異常/直腸肛門奇形
機能的閉塞大腸運動機能異常/ヒルシュスプルング病/ヒルシュスプルング病類縁疾患(腸管の神経節細胞は存在するが、腸管の動きがヒルシュスプルング病のように悪い疾患群)
全身性疾患周産期胎児循環異常/低出生体重児/敗血症/甲状腺機能低下症

機械的閉塞は、腸管の内腔がつながっていなかったり狭くなっていたりすることにより通過障害が発生する場合で、機能的閉塞とは腸管の管腔はしっかりできているのに腸がうまく動かないために閉塞が発生する病気です。ヒルシュスプルング病がその典型ですが、多くの類似疾患があります。全身性の病気でも腸管運動が障害され閉塞症状が出現することがあります。

先天性の腸閉塞は、出生前に診断される場合が増えています。

生直後以降に発生する腸閉塞

区分疾患と特徴
消化器疾患壊死性腸炎(低出生体重児に特徴的で、ミルクを開始してしばらくして発生)/肥厚性幽門狭窄症(生後1か月前後に発生)/腸重積(生後半年から2歳頃までの間で季節の変わり目に多く発生)/腸回転異常・中腸軸捻転(新生児期以降に発生するものが2割で、年長児の反復性嘔吐の原因となる)/メッケル憩室(胎生期の腸管の遺残で、腸閉塞の他に消化管出血の原因となる)/腸管重複症(腸重積の原因となることがある)
腹部手術既往術後イレウス(以前にお腹の中の手術をしているときは、5%ぐらいの頻度で術後に腸閉塞が発生する)
泌尿器疾患ほか巨大水腎症や腹部悪性腫瘍も、巨大な場合は腸管を圧迫し腸閉塞を来す

症状

腸閉塞の症状としては、お腹が膨れる、繰り返す嘔吐、腹痛が主なものですが、下血を伴うこともあります。

また、これら病気では、高度な脱水症状となるため、点滴を行い、適切な治療が必要となります。

治療ワークフロー(当院でやること)

当院の仕事は「血行障害があるかを判断して、輸液して、送る」。

時間やること
0分バイタル。脱水とショックの評価。腹部膨満・腹膜刺激症状
0〜5分嘔吐物の色を自分で見る。胆汁性なら中腸軸捻転として動く(中腸軸捻転)
5分鼠径部と陰嚢を見る(嵌頓ヘルニア・急性陰嚢症)
5〜10分腹部手術の既往を聞く。傷を探す
10〜20分ルート確保・輸液。脱水補正目的の輸液(経口補水・点滴・採血・末梢ルート確保)
10〜20分血算・生化・電解質・血ガス(嘔吐で低Cl性代謝性アルカローシスになりうる)
20分腹部X線(鏡面像・ガス分布・遊離ガス)(腹部X線)。X線は夜間も撮れる(2026-09-14 確認)。腹部エコーだけが当直帯に当てられない(腹部エコー)ので、画像が揃うのを待たずに次へ進む
判断血行障害を疑うか?(強い腹痛・下血・ショック・腹膜刺激症状)→ 疑えば緊急手術が要る=持てない
搬送前絶飲食。胃管を入れるかは施設判断。輸液を続けながら搬送

専門施設での治療(家族への説明のため)

血行障害を伴わない腸閉塞では、脱水補正目的の輸液、腸管蠕動を止めるお薬の投与や、鼻から小腸までチューブを挿入留置して小腸内の減圧をおこなう方法でまず治療します。5日から1週間経過しても腸閉塞の改善が認められない場合には手術による治療を考慮しなければなりません。

腸回転異常・中腸軸捻転では、腸管を助けるために早期診断、早期治療が必要です。

鑑別:嘔吐を腸閉塞と決める前に

小児の腸閉塞の主症状は嘔吐ですが、嘔吐を来す腸閉塞以外の多くの疾患があり、区別が必要です。

病態見分け次の一手
胃食道逆流症胃内のミルクが胃と食道の逆流防止機構が不完全で食道に上がってくる病気で、乳児期には非常に頻度が高い胃食道逆流症
ミルクアレルギー小児嘔吐のかくれた原因として注意が必要小児の血便・食物アレルギー
胃腸炎下痢を伴う、周囲の流行胃腸炎と脱水
頭蓋内圧亢進朝の頭痛・嘔吐、意識・神経所見頭痛・頭部打撲
DKA多飲多尿・体重減少・深く速い呼吸糖尿病性ケトアシドーシス
周期性嘔吐症反復するパターン、間欠期は無症状周期性嘔吐。器質的疾患を外してから
尿路感染症発熱、乳児では嘔吐だけのことがある尿路感染症
中毒内服歴急性中毒
虫垂炎右下腹部痛、発熱虫垂炎
卵巣腫瘍茎捻転(女児)突然の強い下腹部痛+嘔吐卵巣腫瘍茎捻転

問診チェック

  • 嘔吐物の色(胆汁性かどうか)と回数
  • 最終排便・排ガス
  • 腹部手術の既往(何を、いつ)
  • 胎便排泄の時期(新生児・乳児)
  • 出生歴(低出生体重児か)、在胎週数
  • 体重の推移
  • 出生前診断の指摘(先天性腸閉塞は出生前に見つかることが増えている)
  • 既知の疾患(ヒルシュスプルング病・腸回転異常)
  • 水分摂取と尿量(脱水の評価)

送る/持つ(当院=二次救急・外科的処置なし)

状態当院の扱い
血行障害を疑う(強い腹痛・下血・ショック)持てない。緊急手術が要る
胆汁性嘔吐持てない(中腸軸捻転)
術後腸閉塞持てない(減圧と経過観察に5日〜1週間かかる)
新生児の腸閉塞持てない。新生児外科へ
腸重積当直帯は整復に進めない(確診の手段が無く、不成功時に開腹できない)。整復可能施設へ(腸重積)
嵌頓ヘルニア持てない(嵌頓ヘルニア)
肥厚性幽門狭窄症輸液補正は当院で開始。手術は持てない(肥厚性幽門狭窄症)
腸閉塞が否定的で、嘔吐の原因が説明できる当院で対応

エスカレーション(施設オーバーレイで上書き)

  • 要確認:小児外科・新生児外科の紹介先(夜間・休日)。小児外科は決まった連携先に直接電話する運用(施設名・番号は保留中)
  • 決定:搬送前に経鼻胃管を留置し減圧してから搬送する(論点:当院で胃管(減圧)を入れるか。搬送前に入れるかどうかの方針)
  • 確定(2026-09-14):夜間の腹部エコーは当院で当てられない。腹部X線は撮れる
  • 決定:維持輸液(体重換算)を開始し、鎮痛はアセトアミノフェン等の非オピオイドを基本とする(論点:搬送中の輸液と鎮痛の指示)
  • 要確認:造影検査(上部消化管造影・注腸)ができる施設

家族に渡す一文

「腸の通り道がふさがっている(腸閉塞)可能性を考えています。子どもの腸閉塞は、年齢によって原因が違います。大事なのは、ふさがっているところの血の巡りが止まっているかどうかです。血の巡りが止まっている場合は、急いで手術が必要になります。とても強い痛みや血便は、そのサインです。血の巡りが保たれている場合は、点滴と、鼻から入れる管でお腹の中の圧を下げる治療から始めます。どちらにしても、手術ができる病院で診ていただく必要があります。いま点滴を始めるのは、繰り返す嘔吐で強い脱水になっているためです。」

出典

  • 日本小児外科学会.小児外科で治療する病気「腸閉塞」.http://www.jsps.or.jp/archives/sick_type/tyou-heisoku (httpでアクセス。2026-09-13閲覧)。「腸閉塞は、腸管の通過がなんらかの原因により障害された状態で、小児でも多くの原因で発生します」「機械的閉塞は、腸管の内腔がつながっていなかったり狭くなっていたりすることにより通過障害が発生する場合で、機能的閉塞とは腸管の管腔はしっかりできているのに腸がうまく動かないために閉塞が発生する病気です。ヒルシュスプルング病がその典型ですが、多くの類似疾患があります。全身性の病気でも腸管運動が障害され閉塞症状が出現することがあります。先天性の腸閉塞は、出生前に診断される場合が増えています」「腸閉塞の症状としては、お腹が膨れる、繰り返す嘔吐、腹痛が主なものですが、下血を伴うこともあります。また、これら病気では、高度な脱水症状となるため、点滴を行い、適切な治療が必要となります」「壊死性腸炎は低出生体重児に特徴的で、ミルクを開始してしばらくして発生します。肥厚性幽門狭窄症は生後1か月前後に発生します。腸重積は、生後半年から2歳頃までの間で季節の変わり目に多く発生します。腸回転異常・中腸軸捻転は、新生児期以降に発生するものが2割で、年長児の反復性嘔吐の原因となります。メッケル憩室は、胎生期の腸管の遺残で、腸閉塞の他に消化管出血の原因となります。腸管重複症は、腸重積の原因となることがあります。その他に、以前にお腹の中の手術をしているときは、5%ぐらいの頻度で術後に腸閉塞が発生します。巨大水腎症や腹部悪性腫瘍も、巨大な場合は腸管を圧迫し腸閉塞を来します」「小児の腸閉塞の主症状は嘔吐ですが、嘔吐を来す腸閉塞以外の多くの疾患があり、区別が必要です。胃食道逆流症は、胃内のミルクが胃と食道の逆流防止機構が不完全で食道に上がってくる病気で、乳児期には非常に頻度が高く、ミルクアレルギーも小児嘔吐のかくれた原因として注意が必要です」「腸閉塞において大切なことは、腸閉塞を起こしている腸管が血行障害を起こしているか否かによって治療方針が異なるということです。腸回転異常・中腸軸捻転では、腸管を助けるために早期診断、早期治療が必要です。血行障害を伴う場合は、症状は重篤で、非常につよい腹痛を来します。下血も血行障害を考えさせる所見として重要です。血行障害を起こしていることが強く疑われれば、緊急手術が必要になります」「血行障害を伴わない腸閉塞では、脱水補正目的の輸液、腸管蠕動を止めるお薬の投与や、鼻から小腸までチューブを挿入留置して小腸内の減圧をおこなう方法でまず治療します。5日から1週間経過しても腸閉塞の改善が認められない場合には手術による治療を考慮しなければなりません」。表1「生直後に腸閉塞を来す疾患」・表2「生直後以降に発生する腸閉塞」は本文の表に転記した。
病態・根拠9章
病態:通過障害と、血流障害を分けて考える

腸閉塞は内容物が先へ流れなくなる状態である。腸回転異常に伴う中腸軸捻転では、腸がねじれることで閉塞だけでなく血流も障害され、腸管壊死につながりうる。脱水を補正して見た目が改善しても、捻転が解除されたことにはならない。緑色嘔吐と全身状態の変化は、外科評価を急ぐ理由となる。[1][2]

鑑別:黄色い嘔吐と胆汁性嘔吐を混同しない

警戒する胆汁性嘔吐は濃い緑色であり、保護者の「黄色だった」という言葉だけで分類せず、写真や色の確認を行う。緑色嘔吐は消化管閉塞を否定できるまで緊急外科疾患として扱う。腹部膨満、間欠痛、排便・排ガス、手術歴、鼠径部腫脹、血便から、捻転、腸重積、嵌頓ヘルニア等を考える。下痢や直前の排便があっても、疑いの強い閉塞をそれだけで否定しない。[1][2]

検査:正常画像という言葉に頼らない

画像は通過障害の場所と原因、ねじれ等を調べる目的で選ぶ。単純X線、超音波、上部消化管造影等はそれぞれ役割が異なり、一つの検査で全病態を除外するものではない。電解質や腎機能は嘔吐・循環不全の影響を示すが、早期の腸管虚血の否定検査にはならない。検査の順番は、疑う病態と小児外科の体制に合わせる。[1][2]

治療と紹介:改善を待つ前に外科へ連絡する

経口摂取を控え、気道・循環の評価、必要な静脈路、補液・鎮痛を行う。胃管減圧が必要な場合は経験ある担当者と受入外科で相談し、処置の完遂のために搬送を遅らせない。捻転では緊急手術が必要となり、感染・虚血の懸念に応じた抗菌薬も受入先と調整する。[1]

当院の夜間画像・外科処置の制約があるため、緑色嘔吐、腹膜刺激、循環不良、痛みや膨満の進行では画像がそろう前に相談する。制吐後の軽快だけで帰宅させない。家族には、点滴は循環を支える処置であり、ねじれや閉塞そのものの治療は別に必要となることを説明する。[1][2]

出典と適用範囲

すべての腸閉塞原因や画像診断プロトコルを網羅しない。検査法と抗菌薬は小児外科が病態に応じて選ぶ。

臨床医が迷う場面
吐き気止めで吐かなくなった。腸閉塞は否定できる?

制吐薬への反応では閉塞を否定できない。胆汁性嘔吐、腹部膨満、排便・排ガス、手術歴、局在する痛みや血便を確認する。疑えば絶飲食、輸液・必要な減圧と外科相談を行う。症状を隠して飲水させ、診断を先送りにしない。

出典:RCH 小児嘔吐(海外)

胆汁性嘔吐は、腹部がまだ軟らかくても緊急?

濃緑色の嘔吐は閉塞、とくに中腸軸捻転を考える。初期に腹部所見が乏しくても否定できず、外科へ速やかに連絡する。ショック・血便・強い持続痛は虚血を疑い、画像がそろうのを待たない。胆汁の色が不明なら現物や写真などで確認する。

出典:RCH 小児嘔吐(海外)

手術歴があり軽い嘔吐を繰り返す。下剤で様子を見る?

癒着による通過障害を検討し、排便があることだけで部分閉塞を否定しない。腹部膨満、疼痛、脱水と画像を評価し、外科へ相談する。閉塞が疑わしい段階で下剤や食事負荷を自己判断で追加せず、悪化や血行障害の徴候を反復して診る。

出典:RCH 小児嘔吐(海外)

同じ場面のシート

ほかに開く

スペースで絞り込み(例:夜尿症 休薬)↑↓ 移動 / Enter 開く