チック・トゥレット症

チック・トゥレット症

神経・発達・こころβ版・逐条レビュー継続中

2026-09-13更新
β版用量は適用前に一次資料と院内採用を確認。このβ版について

施設プロファイル: 二次救急/小児神経科・児童精神科の常勤は要確認。「急に始まった変な動き」を診たときの当直の仕事は、トゥレット症の診断をつけることではなく、チックでは説明がつかない所見(意識障害・急性発症の精神症状・けいれん・薬剤性)を外すこと

30秒要約

  • チックは、思わず起こってしまう素早い身体の動きや発声。多くは瞬き・咳払いなど一時的なもので、多くの場合には、そのまま軽快します
  • チックの特徴は「反復性」と「短時間なら止められる」こと。前駆する違和感(むずむず感)があり、随意的に抑えることが短時間可能。この2点が、止められない舞踏運動や、意識が飛ぶてんかん発作との鑑別点になる。
  • トゥレット症は病気であって、しつけの問題ではないストレスや厳しい子育てによる心理的な原因で現れると「誤解」されることがありますが、体質的な疾患で、脳の働き方の違いによって起こるもの
  • 当直で見逃してはいけないのは「チックらしくない急性発症」。数週間前の発熱・咽頭炎のあとの急な舞踏運動(シデナム舞踏病)、精神症状+けいれん+意識障害を伴う急性発症(抗NMDA受容体脳炎などの自己免疫性脳炎)、制吐薬・抗精神病薬内服後の急性ジストニア反応は、いずれも「新しいチックが出た」と誤認されやすい。
  • 原典は「トゥレット症」ではなく「チック症」について、4~6歳で発症しやすく、慢性化しても10~12歳をピークにして軽快に向かうことが多いとしている。経過は多様。人口1000人あたり3〜8人、男児に多い。

レッドフラグ → 次の一手

所見があったときにどれだけ急ぐかと、家族に何を伝えるかの対応表。3列目の文言は家族説明ページに同じ言葉で載っているので、画面を見せながら渡せる。

緊急度所見その場で次にやること時間の勝負
119急性発症(3か月未満)の異常運動・ジスキネジアに、意識レベルの低下・けいれん・急な精神行動異常(幻覚・興奮・言語障害)が重なる抗NMDA受容体脳炎などの自己免疫性脳炎を最優先で疑う持てない。画像・髄液検査ができる専門施設へ即時
119けいれん・意識消失を伴う異常運動(発作後にその出来事を覚えていない)てんかん発作として対応(初発の無熱性けいれん・てんかんの入口けいれん重積)。持てない即時
緊急数週間〜数か月前の咽頭炎・発熱のあとに始まった、不規則で予測できない激しい四肢の動き(舞踏運動)シデナム舞踏病(溶連菌感染後・リウマチ熱の一症状)を疑う。咽頭培養・抗原検査・ASOなどの血清学的検索、心合併症の評価(溶連菌感染症当日
緊急制吐薬(メトクロプラミド等)・抗精神病薬の内服後に、眼球上転・口角偏位・舌の突出・頸部後屈・斜頸などの持続する異常肢位薬剤性の急性ジストニア反応を疑う。原因薬を確認し中止を検討。内服中止・補液のみで回復する例が多い当日
当日反復する単純な運動チック・音声チックのみ。意識は清明、前駆する違和感があり短時間は自分で止められる上記の119・urgent所見がないことを確認したうえで、良性のチック・トゥレット症として小児神経科/小児科外来へ数日〜

鑑別:よくあるもの

状態特徴当院の扱い
一過性チック障害症状の持続が4週間以上12カ月未満経過観察。外来フォロー
慢性チック障害12カ月以上持続し、3カ月以上持続してチックが消失することがない小児神経科紹介(要確認:紹介先)
トゥレット症同様の持続期間でかつ多彩な運動チックと一つまたはそれ以上の音声チックがある小児神経科・小児精神科紹介
常同運動(stereotypy)運動のパターンがいつも一定であることが多い点がチックと異なる。自閉スペクトラム症児で目立つことがある(発達の相談発達相談へ
生理的な瞬き・咳払い・鼻すすり一時的で、多くは自然に軽快する経過観察でよい

鑑別:見逃してはいけないもの

病態見分け当院の扱い
抗NMDA受容体脳炎などの自己免疫性脳炎口の周りの異常な動き、四肢の不規則な運動、異常な突っ張り、ぴくつきに、精神症状・けいれん・意識障害・自律神経症状が加わる。以下の6つの主要徴候のうち少なくとも4つの急性発症(3か月未満):異常(精神)行動もしくは認知機能障害/言語障害/けいれん/異常運動・ジスキネジア・固縮・異常姿勢/意識レベルの低下/自律神経障害もしくは中枢性低換気持てない。画像・髄液・脳波検査ができる専門施設へ
てんかん発作(特に非けいれん性)チックは反復性で正確に同じ動きを繰り返すのが鑑別点。発作性の病態だが、患者は完全に話されたことを覚えている(意識は保たれる)のがチック。意識が飛ぶ・記憶がないなら発作を疑う持てない初発の無熱性けいれん・てんかんの入口
シデナム舞踏病(溶連菌感染後)後天性舞踏運動の原因としては最多。学童期に多く、溶連菌感染症後には、舞踏病以外にもチックや他の不随意運動も起こりえる。数か月以上経てから発症することもあり病歴が重要循環器評価を含め専門施設と相談。持てないことが多い(要確認)
薬剤性の急性ジストニア反応(制吐薬・抗精神病薬)眼球上転、口角偏位、舌の突出、頸部後屈、斜頸など、主に顔面と頸部にジストニア反応複数回薬剤投与後24~72時間に多い原因薬中止で当院対応可能かは要確認
瀬川病(ドパ反応性ジストニア)著明な日内変動を示す四肢優位のジストニア10歳以下の小児期に初発し、片足の姿勢ジストニア(内反足)が初発症状として多い。チックの中にも持続的な筋収縮を示す「ジストニア様チック」があり紛らわしい早期の正確な診断が大切。小児神経科へ(持てない

検査

疑い当院でできること
シデナム舞踏病咽頭培養・ASOなどの血清学的検索は当院でオーダー可能かは要確認。心エコー・循環器評価は紹介
抗NMDA受容体脳炎などの自己免疫性脳炎頭部画像(CT/MRI)・血液検査はできても、確定診断に必要な髄液での自己抗体測定(cell-based assay)は保険外検査で、専門施設との連携が前提(要確認)
てんかん発作脳波の当直での実施可否は要確認(脳波は心電図。脳波専用ページは未整備)
良性のチック特別な検査は不要。丁寧な病歴聴取と行動観察から得られた情報に基づいて診断するのが原則

所見の取り方

見るポイント何を見るか
反復性正確な反復性(同じ動きを繰り返す)はチックの鑑別点。舞踏運動は不規則で毎回パターンが違う
意識動いている間、名前を呼んで反応するか。チックでは意識は保たれる。発作なら反応が乏しい・その後の記憶がない
止められるか「少しの間、我慢できる?」と聞いてみる。チックは短時間なら随意的に抑えることが可能
前駆する違和感むずむず感・締め付けられる感じ・力を入れたい衝動があるか(前駆衝動)。年少児では自覚がはっきりしないこともある
眼球運動異常な眼球運動を伴うことがあるのは、チックの特徴の1つ(一方向への瞬時の動き・持続性の共同偏視など)
睡眠中の有無ほとんどの不随意運動は睡眠中には認められない。逆に睡眠中も持続する動きなら他の病態を疑う
随伴症状発熱・咽頭痛の先行、精神症状(幻覚・妄想・行動変化)、けいれん、自律神経症状(血圧・脈拍・体温の異常)の有無

問診チェック

  • いつから、どのくらいの期間続いているか(4週間未満/4週間〜12か月/12か月以上)
  • 運動チックか音声チックか、単純性か複雑性か単純性運動性チックは瞬き、首振り、顔しかめなど、複雑性運動性チックは物にさわる、物をける、飛び上がるなど。単純性音声チックは発声、咳払い、鼻鳴らしなど、複雑性音声チックは汚言、反響言語など
  • 数週間〜数か月前の発熱・咽頭炎の既往(シデナム舞踏病を疑う)
  • 内服薬(制吐薬・抗精神病薬など、薬剤性ジストニアを疑う手がかり)
  • 最近の急な精神行動の変化・幻覚・言動の変化の有無(自己免疫性脳炎を疑う手がかり)
  • 家族歴(チック・トゥレット症・強迫症・ADHD)
  • 注意欠如多動症(ADHD)と強迫症(OCD)の併存の有無。自閉スペクトラム症など他の神経発達症の併存も多い
  • 学校・家庭での困りごと、本人の自覚と気にし方(チックを本人の特徴の一つとし、些細な変化で動揺しないようにするという支援の前提を家族と共有する材料になる)

治療ワークフロー(当院でやること)

当院の仕事は「危険な鑑別を外して、そうでなければ焦らず専門紹介につなぐ」。

時間やること
0分バイタル・意識レベル。意識が保たれているかを最優先で確認
0〜5分動きをよく観察する(可能なら保護者同意のうえ動画記録)。反復性・律動性・部位・左右差・眼球運動異常の有無
5〜10分「少しの間、我慢できる?」と本人に聞き、抑制可能かどうかを見る
10分内服歴(制吐薬・抗精神病薬)、数週間〜数か月前の発熱・咽頭炎の既往を聴取
10〜15分精神症状(幻覚・興奮・行動変化)・けいれん・自律神経症状の有無を確認
判断119・urgent相当の所見があるか? なければ良性のチックとして対応
紹介時該当があれば専門施設へ。なければ小児神経専門医に相談することをお勧めしますという学会の方針どおり、外来紹介の形でよい

送る/持つ(当院=二次救急・専門的な神経評価は限定的)

状態当院の扱い
抗NMDA受容体脳炎などの自己免疫性脳炎疑い持てない。集中治療管理・免疫療法ができる専門施設へ
てんかん発作持てない初発の無熱性けいれん・てんかんの入口
シデナム舞踏病疑い循環器評価を含め持てないことが多い(要確認)
瀬川病など特異的治療のあるジストニア持てない。早期診断が予後を左右するため専門施設へ
薬剤性の急性ジストニア反応原因薬を中止し、当院で経過観察できるかは要確認
良性の一過性チック・慢性チック・トゥレット症(119/urgent所見なし)当院で急性期対応の必要はない。行動療法(ハビットリバーサル)や薬物療法の導入は小児神経科・小児精神科の外来へ(要確認:紹介先)

エスカレーション(施設オーバーレイで上書き)

  • 要確認:小児神経科・児童精神科の紹介先(夜間・休日、平日外来とも)
  • 確定(2026-09-14)頭部MRIは当直帯に撮れない。腰椎穿刺と髄液の一般検査はできる(自己抗体は別)。脳波の当直実施可否と、自己抗体測定(cell-based assay)ができる連携先は引き続き要確認
  • 当直帯の帰結:自己免疫性脳炎を疑っても、当院では夜のうちに何ひとつ確かめられない。だからこのシートの当直の仕事(チックで説明がつかない所見を外すこと)で「外せない」と分かった時点が、そのまま搬送の判断になる
  • 要確認:シデナム舞踏病を疑ったときの咽頭培養・ASO等の血清学的検査と、小児循環器科への相談体制
  • 要確認:薬剤性の急性ジストニア反応を疑ったときの当院での経過観察の可否
  • 要確認:ハビットリバーサル療法(認知行動療法)を行える窓口の有無

家族に渡す一文

「チックは、思わず起こってしまう素早い体の動きや声のことです。瞬きや咳払いなど、多くの子どもに一時的に見られるもので、多くはそのまま自然に軽くなっていきます。長く続いたり、いろいろな動きや声が重なって1年以上続く場合は、トゥレット症と呼ばれることがあります。トゥレット症は、体質的な病気で、脳の働き方の違いによって起こるものです。しつけが厳しい、育て方が悪い、といった心理的な原因で起こるのではありません。今日の診察では、チックとは違う病気(発作や、他の病気による体の動き)が隠れていないかを確認しました。今後、動きの様子が急に変わったり、意識がぼんやりする、様子がおかしいと感じることがあれば、すぐに受診してください。」

医師確認事項(要・岡本判断)

  • 要確認:本シートの中核(NCNP病院「チック症・トゥレット症」)は、www.ncnp.go.jp のサイトリニューアルにより現在は自動転送されるだけで、同一内容の現行ページを本シートでは新サイト(hsp.ncnp.go.jp)上に確認できていない。本シートはInternet Archive(Wayback Machine)に残る2026-01-06キャプチャから引用した。内容の現行性は要確認。
  • 要確認:佐々木征行「不随意運動の診かたと対応」(日本重症心身障害学会誌, 2010)の「表3 てんかん発作と不随意運動との一般的鑑別点」は、PDFの図表がテキスト抽出できず、本シートでは具体的な鑑別項目を確認していない。本文では代わりに、同論文および梶論文の文章中の記載(反復性・意識の保持)のみを使っている。
  • 要確認:シデナム舞踏病・薬剤性急性ジストニア反応について、当院での検査(ASO・咽頭培養)と経過観察の可否。二次救急・外科的処置なしという施設プロファイルからは「持てない」可能性が高いが、程度によっては当院対応もありうるため要相談。
  • 要確認:トゥレット症の薬物治療(アリピプラゾール・リスペリドンなど)は、NCNP資料に薬剤名の記載はあるが、本シートでは意図的に用量を書いていない。当院で導入するのか、専門施設に委ねるのかの方針。
  • 要確認:小児神経専門医・児童精神科医の当院常勤・紹介体制。学会Q&Aは「小児神経専門医に相談することをお勧めします」としているが、当院からの紹介先動線は未確認。
  • 要確認:汚言症(コプロラリア)・反響言語などの複雑チックが、乱暴・非常識な言動と誤解されないよう家族・学校への説明をどう当院として支援するか発達の相談との連携含む)。

出典

  • 国立精神・神経医療研究センター病院.チック症・トゥレット症https://www.ncnp.go.jp/hospital/patient/disease16.html は現在サイトリニューアルにより自動転送のため、Internet Archive(Wayback Machine)キャプチャ https://web.archive.org/web/20260106173429/https://www.ncnp.go.jp/hospital/patient/disease16.html (2026-01-06キャプチャ、2026-09-13閲覧)を一次資料として使用。「チックは、思わず起こってしまう素早い身体の動きや発声です。まばたきや咳払いなどの運動チックや咳払いや鼻すすりなどの音声チックが一時的に現れることは多くの子どもにあることです。多くの場合には、そのまま軽快します」「しかし、症状が治まったチックが再び出現し、強まったり、より複雑な動きや発声がみられたり、ということを繰り返しながら、多彩な運動チック、音声チックが1年以上にわたり強く持続し、日常生活に支障を来すほどになることもあります。その場合にはトゥレット症とよばれます」「トゥレット症は、典型的には、4〜6才に症状が出現し、症状は10〜12歳ぐらいに一番強くなり、成人になると改善するという経過をとりますが、成人期になっても強い症状が持続していたり、成人期になってからの方が悪化するという場合もあり、経過は多様です」「トゥレット症の症状の現れ方は、そのときどきの緊張度によって異なるため、ストレスや厳しい子育てによる心理的な原因で現れると「誤解」されることがあります。トゥレット症は、体質的な疾患で、脳の働き方の違いによって起こるものです。トゥレット症は、人口1000人あたり3〜8人に認められ、男性のほうが女性より2〜4倍多く見られます」「チックが起こる前には、喉が締め付けられるような感じ、体にエネルギーがこみ上げる感じ、体の一部にむずむずとした感じが起こったり、体の特定の場所に力を入れたり、自分に痛みを与えずにはいられないような衝動を感じたりすることがあります」「トゥレット症は、体質的なチックで、その症状を抑制することはごく短時間しかできません」「トゥレット症に有効性が認められた薬(承認薬)は日本にはありませんが、アリピプラゾールやリスペリドンなどの統合失調症の薬が有効であることが知られています」。
  • 発達障害情報・支援センター(国立障害者リハビリテーションセンター・厚生労働省).トゥレット症を含むチック症(金生由紀子・東京大学大学院医学系研究科).2024年8月29日.https://hattatsu.go.jp/supporter/healthcare_health/tourettes_syndrome/ (2026-09-13閲覧)。「運動チックとは、突如として起こる、素早くて、ひきつるような運動の繰り返しです」「半随意性:チックは行おうとして行っているわけではありません。しかし、一時的や部分的であれば、抑えようとして抑えられることがあり、完全に不随意であるとも言い切れません」「前駆衝動をはじめとする感覚現象:チックの前に、ムズムズするとか、身体の中で高まったエネルギーを放出しないとならないなどと感じて、チックが出るとスッキリすることがあり、この感覚が前駆衝動と呼ばれています」「チック症にはしばしば精神疾患が併存し、特にトゥレット症では高率です。代表的な併存症が、注意欠如多動症(Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder: ADHD)と強迫症(Obsessive-Compulsive Disorder: OCD)です」「チック症には生物学的基盤があり、4~6歳で発症しやすく、慢性化しても10~12歳をピークにして軽快に向かうことが多いとされています」「チックを本人の特徴の一つとし、些細な変化で動揺しないようにする」「薬物療法については、日本で正式に承認されたチック症の治療薬ではありませんが、抗精神病薬などのエビデンスが世界的に認められています」。診療ガイドラインではなく、国が運営する発達障害の情報・支援ポータルサイトの専門家解説記事。
  • 一般社団法人日本小児神経学会.Q60:チックの症状について教えてください。2022年10月.https://www.childneuro.jp/general/6527/ (2026-09-13閲覧)。「チックは、突発的で、不規則な、体の一部の速い動きや発声を繰返す状態です。いろいろなチックがあり、まず運動性チックと音声チックに分かれ、それぞれに単純性、複雑性に分かれます。単純性運動性チックは瞬き、首振り、顔しかめなど、複雑性運動性チックは物にさわる、物をける、飛び上がるなどです。単純性音声チックは発声、咳払い、鼻鳴らしなど、複雑性音声チックは汚言(人前や社会的な場で、言うことがはばかられるような汚い言葉をいってしまう)、反響言語(人の言ったことを繰返してしまう)などです」「チック障害は、症状の持続が4週間以上12カ月未満の一過性チック障害、12カ月以上持続し、3カ月以上持続してチックが消失することがない慢性チック障害、同様の持続期間でかつ多彩な運動チックと一つまたはそれ以上の音声チックがあるトゥーレット障害に分類されています」。
  • 一般社団法人日本小児神経学会.Q61:チックの治療について教えてください。2022年10月.https://www.childneuro.jp/general/6528/ (2026-09-13閲覧)。「治療が必要となるチック障害は、その症状により社会的、職業的、または、ほかの重要な領域での機能の著しい障害がひきおこされる場合です。逆に生活にそれほどの支障を来たさないチックは治療の対象にはなりません」「様々な病態が考えられますので、小児神経専門医に相談することをお勧めします」。
  • 佐々木征行(国立精神・神経センター病院小児神経科).不随意運動の診かたと対応.日本重症心身障害学会誌 第35巻1号 25-29(2010).https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsmid/35/1/35_25/_pdf/-char/ja (J-STAGE、2026-09-13閲覧・PDFダウンロード確認)。教育講演(査読を経た学会誌の招待講演録)で、診療ガイドラインではない。「舞踏運動は、速く大きな動きで身体のどこにでも出る。不規則で非律動的で、非対称性で、突然の短い動きである」「ジストニアは、持続性あるいは間歇性の筋緊張亢進のために、四肢や全身が捻れて異常姿勢をとり、寡動を示すことが多い」「ミオクローヌスは、短時間の筋収縮による短い突然の動きである。チック、舞踏運動、振戦、てんかん発作などとの鑑別が必要となる」「ほとんどの不随意運動は睡眠中には認められない。また精神的な興奮や緊張で増強することが多い」「後天性舞踏運動の原因としては最多である。溶連菌感染後に発症する。学童期に見られやすく、リウマチ熱の一症状である。溶連菌感染症後には、舞踏病以外にもチックや他の不随意運動も起こりえる」「溶連菌感染後の小児自己免疫性神経疾患(PANDAS)として広い概念になりつつある」。瀬川病(ドパ反応性ジストニア)について「本症は、著明な日内変動を示す四肢優位のジストニアである。10歳以下の小児期に初発する。片足の姿勢ジストニア(内反足)が初発症状として多い」「治療はL-ドーパの内服である。早期に治療開始すれば、L-ドーパによって症状は完全に消失する。早期の正確な診断が大切である」「常同運動は運動のパターンがいつも一定であることが多い」。
  • 梶龍兒(徳島大学神経内科).不随意運動の診かた.臨床神経生理学 第43巻4号 122-141(2015).https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscn/43/4/43_122/_pdf/-char/ja (J-STAGE、2026-09-13閲覧・PDFダウンロード確認)。日本臨床神経生理学会の学会誌に掲載された総説(特集)で、診療ガイドラインではない。「運動障害の分類」の表(運動過多:アテトーゼ・ジストニア・舞踏症・ミオクローヌス・チック・バリズム・振戦、運動過小:パーキンソニズム・遮断性チック(blocking tic)等)。「チックは異常な運動(motor tic)と異常な音声(phonic tic)を含み,その両方がみられるときには Gilles de la Tourette または単に Tourette 症候群と呼ぶ。その重症度は年齢を経るに従い変化し,緩解と増悪を示すことが多い」「非常な重症例を除いて,チックは発作性の病態である。一度きりの単純運動チック(simple motor tic)だけでは,他の突発性に起こるミオクローヌスや舞踏症の発作とは区別できないことが多い」「チックではこのような動きが反復性であり,例えば瞬きを数回繰り返したり,何回も片方の肩をすくめてみたりといったことが観察される…この正確な反復性は,ミオクローヌスや舞踏症との鑑別のポイントである」「チックのみられる身体部位の不快感または異常な感覚(感覚チック sensory tic)があり,チックを起こすことでこの不快感・異常感覚が軽減する。したがって随意的に抑えることが短時間可能である」「とくに,チックが長く続いた後や,他のチック症状とは無関係に現れることもある。後者は陰性チック(negative tic)とも呼ぶべき状態で,てんかん発作と鑑別を要する」「これは決して意識障害ではなく,患者は完全に話されたことを覚えている」「異常な眼球運動を伴うことがあるのは,チックの特徴の1つであり」「舞踏運動とは不随意で不規則な目的のない早い運動で1つの身体部位から他所へ流れるようにみえる…後述のジストニアやチック・ミオクローヌスとは異なり,一定の様式(パターン)を持たず,アテトーゼのように予測不可能な(incidental)運動である」。
  • 全日本民主医療機関連合会.副作用モニター情報〈362〉メトクロプラミド(プリンペラン(R)等)による小児の錐体外路障害についてhttps://www.min-iren.gr.jp/news-press/shinbun/20111121_15586.html (2026-09-13閲覧)。医療機関の全国連合組織の機関紙に掲載された副作用モニター報告で、診療ガイドラインではない。「小児へのメトクロプラミドの投与は、急性胃腸炎等の際に鎮吐剤として処方されることが多いが、錐体外路症状が発現しやすいため(特に脱水症状のある時や発熱時)、慎重に投与する必要がある」「小児のメトクロプラミドによる錐体外路障害の症状は、眼球上転、口角偏位、舌の突出、頸部後屈、斜頸など、主に顔面と頸部にジストニア反応が現れることが多い。症状の発現には、複数回薬剤投与後24~72時間が多く…内服中止、補液投与のみで回復している例が多いのも特徴」。用量に関する記載が原文にあるが、本シートでは意図的に転記していない。
  • 東京都立病院機構 神経病院.抗NMDA受容体脳炎(患者さんへ)https://www.tmhp.jp/shinkei/section/medical-department/child-neurology/child-neurology-disease/nmdar.html (2026-09-13閲覧)。「不随意運動:口の周りの異常な動き、四肢の不規則な運動、異常な突っ張り、ぴくつき」「原因不明の急性発症の精神症状あるいは、けいれん・不随意運動・意識変容などで抗NMDA受容体脳炎などの急性脳炎が疑われる場合は、集中管理のできる専門病院で精査加療することをお勧めいたします」。
  • 東京都立病院機構 神経病院.抗NMDA受容体脳炎(医療関係者へ)https://www.tmhp.jp/shinkei/section/medical-department/child-neurology/child-neurology-disease/nmda_iryo.html (2026-09-13閲覧)。Probable診断基準(Gausら, Lancet Neurol. 2016を引用した記載)として「以下の6つの主要徴候のうち少なくとも4つの急性発症(3か月未満)」を要件に挙げ、6項目として「異常(精神)行動もしくは認知機能障害」「言語障害(多弁、発語減少、無言症)」「けいれん」「異常運動、ジスキネジア、固縮、異常姿勢」「意識レベルの低下」「自律神経障害もしくは中枢性低換気」を列挙している(原文は箇条書き)。当院自身の診療ガイドラインではなく、都立病院の疾患解説ページ。

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