肘内障をその場で整復する
変形・腫脹・末梢循環障害があれば肘内障にしない。骨折・阻血を除外する。典型例なら整復前レントゲンは不要で麻酔も不要、整復は数秒で終わる。
始める前に
- 阻血と骨折を除外してから整復。
- 腫脹・変形・皮下出血・強い圧痛がある例、受傷機転が不明/不自然な例、整復操作を2〜3回試みても成功しない例では肘関節X線(2方向、必要に応じ健側比較)を撮影し、上腕骨顆上骨折・外側顆骨折・脱臼を除外する
- 臨床的に単純な橈骨頭亜脱臼と判断される場合は処置前X線は不要であり、麻酔も不要で直ちに整復を行ってよい
- 整復手技は施設で習った方法のみ。不成功・非典型は上級医。
- 要確認:肘内障整復の実施者・実施場所(一般外来 or 整形外科紹介が原則か)
- 要確認:整復前X線・超音波の運用方針(撮影可否・読影体制、被曝低減の観点での超音波活用可否)
手順
- 1
患側肘を90°屈曲位に保ち、片手の母指を橈骨頭上に当てて固定、もう一方の手で手関節を把持し、急速に前腕を過回内させる(過回内法・第一選択)
エビデンスの質は「低」だが、過回内法は回外屈曲法より初回整復の不成功率が有意に低い(9.2% vs 26.4%、リスク比0.35[95%CI 0.25-0.50])ため第一選択とされる
- 2
整復成功を橈骨頭部でのクリック音・触知可能なはじける感覚で確認する
多くは整復直後〜数分で疼痛が消失し腕を使い始める
- 3
過回内法が無効なら、同じ把持で前腕を1回の連続動作で急速にしっかり回外させたのち、肘関節を完全屈曲位まで持っていく(回外屈曲法・第二選択)
過回内法が不成功だった場合のクロスオーバー(切替)手技として有効とする報告があり、いずれか一方が無効でも他方を試す価値がある
- 4
整復後の固定は行うことも行わないこともある
固定の要否は一律のGL推奨がなく施設判断
やってはいけない
- 腫脹・変形がある例への整復操作の先行(骨折を整復操作で悪化させるリスク。先にX線で除外する)
- 機転不明・非典型例に対する画像評価を経ない反射的な整復試行
- 整復不成功のまま繰り返し無理な整復操作を反復すること(2〜3回不成功なら画像評価・整形外科紹介に切り替える)
- 鎮静・麻酔のルーチン使用(典型例では通常不要な処置であり、過剰医療になる)
終わったあと
- 整復後30分〜数時間経っても腕を使わない・挙げない、痛がる様子が続く場合は再受診
- 腕の腫れ・変色(蒼白/紫色)・冷感・しびれが出てくる場合は再受診
- 同じ側の肘内障を短期間に繰り返す場合は再受診
- 整復が成功すれば通常は速やかに(多くは30分以内に)疼痛が消え、いつも通り腕を使い始める。整復後の活動制限は基本的に不要で、登園・登校の制限も不要
- 予防として、腕(手首より肘・肩側)を強く引っ張らない、遊びや着替えの際に急に腕を引き上げないよう養育者に説明する
この場で持てない・送る
- 整復操作(過回内法・回外屈曲法)を2〜3回試みても整復に至らない非典型例・反復例 → 整形外科紹介
- 腫脹・変形・機転不明でX線上骨折/脱臼が疑われる、または除外しきれない例 → 整形外科紹介・専門的画像評価
- 受傷機転が不自然、または短期間での頻回反復で虐待が懸念される場合 → 院内の虐待対応フロー・関連部門(要確認)に沿って評価
- 神経血管障害の所見を伴う例 → 整形外科・救急対応
- 要確認:整復不成功時・非典型例の整形外科紹介先・連携フロー(愛育内 or 近隣専門施設)
- 要確認:受傷機転が不自然な例・虐待が疑われる例の院内対応フロー(連絡先・記録様式)
手順・適応・禁忌はすべて本シートの正本の記載のみ。院内の器材・採用薬・搬送先は施設ごとに違うため、適用前に院内ルールを確認すること。