熱中症

熱中症

救急・外傷・中毒β版・逐条レビュー継続中

2026-09-12更新
β版用量は適用前に一次資料と院内採用を確認。このβ版について

施設プロファイル: 二次救急/小児集中治療なし。冷却は当院で始め、重症は送る。

30秒要約

  • 深部体温が測れなくても重症は判定できる。2024年版は「qⅣ度=表面体温40.0℃以上(または皮膚に明らかな熱感)かつGCS≦8(またはJCS≧100)」を、深部体温の測定不要で使える基準として置いた。
  • 熱中症は除外診断。感染症、悪性症候群による中枢性高体温、甲状腺クリーゼなどを外したうえで診断する。
  • 小児は冷やしすぎる。0〜10歳は体重に対する体表面積が大きく、冷却効果が高い反面、急速な体温低下の可能性に注意が要る。
  • 冷却は蒸散冷却法が、合併症が少なく局所冷却(アイスパック)より速い(0.31℃/分)。
  • 胃洗浄・膀胱洗浄は小児では水中毒や誤嚥のリスクを勘案する必要がある。

レッドフラグ

所見があったときにどれだけ急ぐかと、家族に何を伝えるかの対応表。3列目の文言は家族説明ページに同じ言葉で載っているので、画面を見せながら渡せる。

緊急度所見その場で次にやること時間の勝負
119qⅣ度: 表面体温40.0℃以上(または皮膚に明らかな熱感)+GCS≦8(またはJCS≧100)ただちに冷却を開始しながら搬送手配。深部体温の測定を待たない待たない
119Ⅳ度: 深部体温40.0℃以上かつGCS≦8同上。集中治療のある施設へ待たない
119けいれん・意識障害が続く冷却と並行して意識障害の枠でも評価待たない
緊急自力で水分がとれない「自分で上手に水分補給ができない場合は大変危険な状態」。輸液へ当日
緊急声をかけても反応がない・おかしな返答をする・体がひきつけを起こすこども家庭庁が挙げる危険サイン待たない
当日めまい・立ちくらみ・こむら返り・大量の発汗のみで意識清明涼しい場所、冷却、経口補水。再受診条件を渡す

診断(日本救急医学会 熱中症診療ガイドライン2024)

診断基準(原文): 「暑熱環境に居る、あるいは居た後」の症状として、めまい、失神(立ちくらみ)、生あくび、大量の発汗、強い口渇感、筋肉痛、筋肉の硬直(こむら返り)、頭痛、嘔吐、倦怠感、虚脱感、意識障害、痙攣、せん妄、小脳失調、高体温等の諸症状を呈するもので、感染症や悪性症候群による中枢性高体温、甲状腺クリーゼ等、他の原因疾患を「除外」したもの

重症度(2024年改訂): 2015年分類の最重症群からⅣ度を分離した。

基準
Ⅳ度深部体温 40.0℃以上 かつ GCS≦8
qⅣ度表面体温 40.0℃以上(もしくは皮膚に明らかな熱感あり)かつ GCS≦8(もしくは JCS≧100)。深部体温の測定不要
Ⅲ度(2024)Ⅳ度に該当しないⅢ度(2015)

腋窩温だけで軽く見ない。重症度の判定には正確な体温の評価が要る、というのがガイドラインの立場。

鑑別(「除外したもの」が診断の条件)

病態見分け
感染症(敗血症・髄膜炎)暑熱環境の有無、経過、感染徴候。発熱と高体温を混同しない
中枢性高体温(悪性症候群・悪性高熱症)薬剤歴(抗精神病薬・麻酔)
甲状腺クリーゼ頻脈、甲状腺腫
脱水・胃腸炎嘔吐下痢の先行
てんかん・けいれん体温上昇の前後関係
中毒曝露歴(急性中毒

所見の取り方

  • 体温は測り方を記録する(腋窩か、深部か)。腋窩温で重症度を決めない。
  • 意識レベルを数字で(GCSまたはJCS)。qⅣ度の判定に直結する。
  • 皮膚の熱感・発汗の有無。
  • 環境(気温・湿度・閉め切った室内・車内・運動中)。
  • 自力で水分がとれるか、を実際に試す。

冷却(当院でやること)

  • 蒸散冷却法(体表に水をかけて送風する)は、合併症が少なく、局所冷却法(アイスパック)より冷却速度も速く(0.31℃/分)、効果的と考えられている。
  • 0〜10歳の小児は体重に対する表面積が大きいので、十分な冷却効果が期待できる反面、急速な体温低下の可能性に注意を要する。冷やしっぱなしにしない。
  • 胃洗浄・膀胱洗浄は、小児では採用文献がなく、水中毒や誤嚥などのリスクを勘案する必要がある
  • 目標体温については、小児のエビデンス不足を理由にガイドラインがCQからFRQへ変更している。「38.0℃まで下げる」といった数値を機械的に適用しない。

送る/持つ(当院=二次救急・小児集中治療なし)

状態当院の扱い
Ⅳ度・qⅣ度持てない。冷却を開始しながら集中治療のある施設へ
意識障害が続く・臓器障害を疑う持てない
経口摂取ができず輸液が要る当院で対応しうる
意識清明・自力で水分がとれる当院で冷却・経口補水。再受診条件を渡す

送ると決めた時点でやること

  1. 冷却を止めずに搬送する(搬送中も継続できるか確認)
  2. 体温(測定部位つき)・意識レベル(GCS/JCS)・環境と曝露時間を伝える
  3. 過冷却に注意する(小児は下がりすぎる)

エスカレーション(施設オーバーレイで上書き)

  • 要確認:集中治療のある施設の夜間・休日の受け入れ先と直通番号
  • 要確認:当院で深部体温(直腸温・膀胱温)を測れるか。測れないならqⅣ度で運用する
  • 要確認:蒸散冷却(送風・噴霧)の器材が救急外来にあるか
  • 要確認:搬送中の冷却継続の可否

家族に渡す一文

「暑さで体温が上がり、体の調整が追いつかなくなった状態です。声をかけても反応が鈍い、おかしな返答をする、ひきつけを起こす、自分で水が飲めない — このどれかがあれば危険な状態なので、すぐに知らせてください。冷やす処置をしますが、お子さんは大人より体が冷えやすいので、下げすぎにも注意しながら行います。」

医師確認事項(要・岡本判断)

  • 要確認:当院で深部体温を測れるか。測れない場合、qⅣ度を運用の基準にするという明記が要る。
  • 要確認:蒸散冷却の器材と手順を院内で決めるか。
  • 要確認:小児の冷却目標体温はガイドラインがエビデンス不足としてFRQに変更している。院内で目安を置くかどうか。
  • 要確認:2015年分類のⅠ度・Ⅱ度・Ⅲ度の度数別症状定義は、PDFの表組みが崩れて完全には取得できていない。Ⅰ〜Ⅲ度の運用基準は原本で補う必要がある

出典

  • 日本救急医学会.熱中症診療ガイドライン2024.2024年7月25日公表.https://www.jaam.jp/info/2024/files/20240725_2024.pdf (2026-09-12閲覧・PDF原文を確認)。診断基準(暑熱環境+症状+他疾患の除外)、Ⅳ度・qⅣ度・Ⅲ度(2024)の定義、蒸散冷却法の冷却速度0.31℃/分と局所冷却との比較、0〜10歳の小児での急速な体温低下への注意、胃洗浄・膀胱洗浄の小児でのリスク、小児の目標体温がエビデンス不足によりFRQへ変更されたこと、腋窩温と重症度判定。疫学(熱中症死亡者数が毎年1,000人超、2023年の全国搬送者数91,467人)。
  • こども家庭庁.みんなで見守り「こどもの熱中症」を防ぎましょう! https://www.cfa.go.jp/policies/child-safety-actions/cases/netchusho (2026-09-12閲覧)。こどもの熱中症による救急搬送人員(令和5年5〜9月で10,384人、前年比2,180人増、直近5年で最多)、危険サイン(声をかけても反応がない・おかしな返答をする・体がひきつけを起こす・自分で上手に水分補給ができない場合は大変危険な状態)。

手技

手技

熱中症は深部体温を待たずに重症度を判定し、冷やしながら送る

熱中症は感染症・悪性症候群による中枢性高体温・甲状腺クリーゼなどを除外して診断する除外診断。2024年版は深部体温が測れなくても「表面体温40.0℃以上(または皮膚に明らかな熱感)+GCS≦8(またはJCS≧100)」=qⅣ度で最重症を判定できる基準を置いた。冷却は当院で始めるが、小児は冷やしすぎることに注意する。

始める前に

  • 感染症、悪性症候群による中枢性高体温、甲状腺クリーゼなど他の原因疾患を除外したうえで熱中症と診断する(『暑熱環境に居る、あるいは居た後』の症状として…感染症や悪性症候群による中枢性高体温、甲状腺クリーゼ等、他の原因疾患を「除外」したもの)
  • 体温は測り方(腋窩か深部か)を記録する。腋窩温だけで重症度を軽く見ない(体温は測り方を記録する(腋窩か、深部か)。腋窩温で重症度を決めない)
  • 意識レベルを数字で(GCSまたはJCS)評価する。qⅣ度の判定に直結する(意識レベルを数字で(GCSまたはJCS)。qⅣ度の判定に直結する)
  • 自力で水分がとれるか、実際に試す(自力で水分がとれるか、を実際に試す)

手順

  1. 1

    qⅣ度(表面体温40.0℃以上または皮膚に明らかな熱感+GCS≦8またはJCS≧100)に該当すれば、深部体温の測定を待たずに冷却を開始しながら搬送手配する

    深部体温の測定不要で使える最重症判定基準として2024年版が置いた

  2. 2

    冷却は蒸散冷却法(体表に水をかけて送風する)を行う

    合併症が少なく、局所冷却法(アイスパック)より冷却速度も速い(0.31℃/分)

  3. 3

    0〜10歳の小児では冷却中、急速な体温低下に注意する(冷やしっぱなしにしない)

    体重に対する体表面積が大きく、十分な冷却効果が期待できる反面、急速な体温低下の可能性がある

  4. 4

    搬送を決めたら、冷却を止めずに搬送する(搬送中も継続できるか確認する)

  5. 5

    搬送時は体温(測定部位つき)・意識レベル(GCS/JCS)・環境と曝露時間を伝える

やってはいけない

  • 深部体温が測れないことを理由に重症度判定を待たない(qⅣ度は深部体温測定不要)
  • 腋窩温だけで重症度を軽く見ない(重症度の判定には正確な体温の評価が要る)
  • 小児の目標体温を「38.0℃まで下げる」のように数値で機械的に適用しない(小児のエビデンス不足を理由にガイドラインがCQからFRQへ変更している)
  • 胃洗浄・膀胱洗浄は、小児では採用文献がなく、水中毒や誤嚥などのリスクを勘案する必要がある(正本は明確な禁止を述べていない。院内で方針を決める)
  • 冷却中は過冷却に注意する(小児は下がりすぎる)

終わったあと

  • 意識清明で自力で水分がとれる場合は、涼しい場所、冷却、経口補水で対応し、再受診条件を渡す

この場で持てない・送る

  • Ⅳ度・qⅣ度は持てない。冷却を開始しながら集中治療のある施設へ
  • 意識障害が続く・臓器障害を疑う場合も持てない
  • 要確認:集中治療のある施設の夜間・休日の受け入れ先と直通番号
  • 要確認:当院で深部体温(直腸温・膀胱温)を測れるか。測れないならqⅣ度で運用する
  • 要確認:蒸散冷却(送風・噴霧)の器材が救急外来にあるか
  • 要確認:搬送中の冷却継続の可否
  • 要確認:2015年分類のⅠ度・Ⅱ度・Ⅲ度の度数別症状定義は、正本ではPDFの表組みが崩れて完全には取得できていない。Ⅰ〜Ⅲ度の運用基準は原本で補う必要がある

手順・適応・禁忌はすべて本シートの正本の記載のみ。院内の器材・採用薬・搬送先は施設ごとに違うため、適用前に院内ルールを確認すること。

同じ場面のシート

ほかに開く

↑↓ 移動 / Enter 開く / Esc 閉じる