扁桃炎・咽頭炎(溶連菌以外)

扁桃炎・咽頭炎(溶連菌以外)

耳鼻・眼β版・逐条レビュー継続中

2026-09-13更新
β版用量は適用前に一次資料と院内採用を確認。このβ版について

施設プロファイル: 二次救急/当直帯に院内の耳鼻咽喉科はいない(2026-09-14 確認)。
溶連菌(GAS)は溶連菌によるのどの感染症、EBVは伝染性単核症、扁桃周囲膿瘍・咽後膿瘍は扁桃周囲膿瘍・咽後膿瘍(深頸部感染)、気道緊急は急性喉頭蓋炎、ヘルパンギーナ・手足口病は手足口病・ヘルパンギーナ、アデノウイルスの咽頭結膜熱は咽頭結膜熱(プール熱)に別シートがある。本シートはそれ以外——多くを占めるウイルス性の咽頭炎・扁桃炎と、そこから上記4疾患を見分ける分岐だけを扱う。

30秒要約

  • 咽頭炎・扁桃炎の原因で最も多いのはウイルス。「急性気道感染症の原因微生物の約 9 割はライノウイルスやコロナウイルスといったウイルスであることが報告されている」。小児の急性咽頭炎でGAS陽性は国内報告で16.3%にとどまる。
  • 当院の仕事は溶連菌を探すことではない。まず急性喉頭蓋炎扁桃周囲膿瘍・咽後膿瘍伝染性単核症(EBV)の脾破裂・気道閉塞川崎病の4つを除外する。
  • 咳・鼻汁・結膜炎・嗄声・下痢があればウイルス性を示唆。逆に「突然発症・発熱・頭痛・嘔気・嘔吐・腹痛・圧痛を伴う前頸部リンパ節腫脹・猩紅熱様皮疹」はGASを示唆し溶連菌を検討する。
  • 3歳未満はGAS自体が稀。「GAS による急性咽頭炎は、5 歳から 12 歳で頻度が高く、3 歳未満児においては稀である」。年齢を見てから検査の適応を考える。
  • 想定した自然経過より治りが悪い、または軽快後に再増悪(二峰性)したら考え直す。ウイルス性の経過を外れたら精査。

レッドフラグ → 次の一手

所見があったときにどれだけ急ぐかと、家族に何を伝えるかの対応表。3列目の文言は家族説明ページに同じ言葉で載っているので、画面を見せながら渡せる。

緊急度所見その場で次にやること時間の勝負
119吸気性喘鳴・sniffing/tripod position(前傾姿勢)・流涎・くぐもり声咽頭を覗かない・仰臥位にしない・刺激しない。安全に気道確保できる施設へ連絡(急性喉頭蓋炎即時
119開口障害・唾液を飲み込めない(流涎)・片側性の激しい咽頭痛・口蓋垂偏位扁桃周囲膿瘍・咽後膿瘍を疑う。当院に耳鼻科なし。当直帯に造影CTも無い(2026-09-14 確認)=確かめずに耳鼻科のある施設へし送る(深頸部感染即時〜当日
119咽頭炎の経過中に左上腹部痛・ショック(脾破裂を疑う)外科のある施設へ緊急(伝染性単核症即時
緊急抗菌薬(ペニシリン系)を内服後に全身の皮疹EBVによる薬疹を疑う。溶連菌迅速陽性でもEBVを否定しない。抗菌薬を中止し血算・肝機能(伝染性単核症当日
緊急発熱5日以上+眼球結膜充血・口唇紅潮/いちご舌・四肢末端の変化・発疹・頸部リンパ節腫脹川崎病を鑑別する。GAS陰性または抗菌薬に反応しない発熱では特に(川崎病当日
緊急経口摂取ができない・脱水徴候輸液を当院で開始し、入院適応を判断(経口補水・点滴当日
当日想定される自然経過に比べ改善が乏しい、または軽快後の再増悪(二峰性の経過)「症状軽快後の再増悪等の二峰性の経過をたどる場合は精査を検討する」。深頸部感染・EBV・他の細菌感染を考え直す数日

鑑別:よくあるもの

病態見分け当院の扱い
ウイルス性咽頭炎・扁桃炎(かぜ)「結膜炎・咳嗽・嗄声・鼻汁・筋肉痛・下痢」を伴う。9割はこれ対症療法。当院で完結
ヘルパンギーナ・手足口病軟口蓋・口腔内の水疱、夏季に流行別シート(手足口病・ヘルパンギーナ
咽頭結膜熱(プール熱)結膜炎を伴う発熱+咽頭炎、アデノウイルス別シート(咽頭結膜熱
マイコプラズマ咽頭痛・発熱・頭痛の数日後に乾性咳嗽が出てくる経過咳が主体になれば別シート(マイコプラズマ
PFAPA症候群「発熱や咽頭、口腔痛、リンパ節腫脹を繰り返す」。1回の急性エピソードでは診断しない反復例のみ疑う(要確認:下記)

鑑別:見逃してはいけないもの

疾患見分け当院の扱い
溶連菌性咽頭炎(GAS)突然発症・発熱・頭痛・嘔気・嘔吐・腹痛・圧痛を伴う前頸部リンパ節腫脹・猩紅熱様皮疹。咳がないほうがGASらしい迅速抗原検査へ(溶連菌
伝染性単核症(EBV)耳介後部・後頸部リンパ節腫脹、脾腫、抗菌薬内服後の薬疹伝染性単核症
扁桃周囲膿瘍・咽後膿瘍開口障害・口蓋垂偏位・頸部腫脹・頸部可動域制限持てない深頸部感染
急性喉頭蓋炎高熱・流涎・吸気性喘鳴・前傾姿勢、急速進行持てない急性喉頭蓋炎
川崎病発熱5日以上+主要症状。猩紅熱様皮疹・いちご舌と紛らわしい川崎病

治療ワークフロー(当院でやること)

やること注意
1気道を評価する。喘鳴・流涎・体位・くぐもり声危うければ以降を飛ばして応援と搬送
2口腔内・頸部を見る。口蓋垂偏位・開口障害・頸部可動域・リンパ節の部位(前頸部か耳介後部・後頸部か)開口障害があるときに無理に開けさせない
3咳・鼻汁・結膜炎・嗄声・下痢の有無を確認するあればウイルス性を示唆。GAS迅速検査の事前確率が下がる
4年齢を確認する。3歳未満ならGAS検査は原則不要「GAS による急性咽頭炎は、5 歳から 12 歳で頻度が高く、3 歳未満児においては稀である」
5事前確率が高ければGAS迅速抗原検査(院内在庫は要確認)陽性なら溶連菌へ切り替え
6脾腫の触知・皮疹の性状を確認する脾腫や薬疹歴があれば伝染性単核症を考える
7対症療法(解熱鎮痛・水分)。抗菌薬は投与しないGASが検出されていなければ「抗菌薬投与を行わないことを推奨する」
8保護者に自然経過と再受診の目安を説明する「保護者に病状と疾患の自然経過を説明し、再受診の目安について情報提供を行うことが重要である」

問診チェック

  • 咳・鼻汁・結膜炎の有無(ウイルス性を示唆)
  • 発症のしかた(突然か、数日かけてか)
  • 発熱の日数(5日以上→川崎病を考える)
  • 周囲の流行(GAS・アデノウイルス・ヘルパンギーナ・手足口病)
  • 年齢(3歳未満はGAS自体が稀)
  • 経口摂取・水分・尿量
  • 抗菌薬の使用歴とその後の皮疹の有無(EBVの薬疹)
  • 同様の咽頭痛・発熱を繰り返していないか(PFAPA症候群の可能性)

送る/持つ(当院=二次救急・当直帯に耳鼻咽喉科なし)

状態当院の扱い
ウイルス性咽頭炎・扁桃炎(9割)当院で対応。対症療法と自然経過の説明
GAS陽性溶連菌のワークフローへ
開口障害・口蓋垂偏位・頸部腫脹持てない深頸部感染
吸気性喘鳴・流涎・前傾姿勢持てない急性喉頭蓋炎
脾腫・薬疹・中枢神経症状伝染性単核症へ切り替え
発熱5日以上+川崎病の所見川崎病を鑑別、紹介を検討
経口摂取不能・脱水輸液は当院で開始、入院適応を判断
改善が乏しい・二峰性の再増悪精査(上記4疾患を考え直す)

エスカレーション(施設オーバーレイで上書き)

  • 要確認:GAS迅速抗原検査・アデノウイルス迅速抗原検査の院内在庫と適応運用(溶連菌と共通)
  • 要確認:耳鼻咽喉科の夜間・休日の紹介先(開口障害・口蓋垂偏位時)
  • 要確認:小児科・小児循環器への紹介先(川崎病疑い時)
  • 要確認:血算・EBV抗体の外注体制(伝染性単核症と共通)
  • 要確認:脱水時の輸液基準(経口補水・点滴と整合させるか)

家族に渡す一文

「のどの痛みや扁桃の腫れの多くは、風邪と同じでウイルスによるものです。抗菌薬は効かず、自然に良くなります。ただし、唾を飲み込めない・口が大きく開かない・息が苦しそうなときは、のどの奥に膿がたまっていることがあるのですぐに連絡してください。熱が5日以上続く場合や、目が赤い・唇が赤くひび割れる・手足に変化が出るときは、別の病気がないか調べます。水分がとれずぐったりしているときも早めにご連絡ください。」

医師確認事項(要・岡本判断)

  • 要確認:本シートは厚生労働省「抗微生物薬適正使用の手引き 第四版 医科・外来編(一般外来における乳幼児編)」と日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会の一般向けページを一次資料としている。JAID/JSC感染症治療ガイドの該当章(急性扁桃炎・咽頭炎)は有償書籍のため、本シートでは確認していない
  • 要確認:表3(GAS咽頭炎とウイルス性咽頭炎の鑑別所見)は手引き内に感度・特異度の記載がなく、あくまで参考所見。この所見だけで確定診断はできないことを研修医に周知する必要がある。
  • 要確認:PFAPA症候群は日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会のページで小児の反復性咽頭炎の原因として名前が挙がっているのみで、診断基準・周期・当院での対応方針は本シートで一次資料を確認していない。疑った場合に紹介する先(小児科・小児感染症)を決めておく必要がある。
  • 要確認:マイコプラズマの咽頭痛先行の記載はマイコプラズマシートの引用に基づくが、本シートでは独立して一次資料を確認していない。
  • 要確認:当院でのGAS・アデノウイルス迅速抗原検査の在庫・適応運用。

出典

  • 厚生労働省.抗微生物薬適正使用の手引き 第四版 医科・外来編(2026年1月16日公表).https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001630903.pdf (2026-09-13閲覧、pdftotextで本文を確認)。一般外来における乳幼児編より。「急性気道感染症の原因微生物の約 9 割はライノウイルスやコロナウイルスといったウイルスであることが報告されている」(p.21)。「具体的には、細菌性副鼻腔炎や中耳炎に合併する眼窩蜂窩織炎や乳突洞炎、咽頭炎と深頸部膿瘍の鑑別、クループ症候群と急性喉頭蓋炎や細菌性気管炎の鑑別、下気道感染症における細菌性肺炎の鑑別が挙げられる」「想定される自然経過と比べて、改善が乏しい場合あるいは、症状軽快後の再増悪等の二峰性の経過をたどる場合は精査を検討する」「丁寧な問診と診察に基づいて細菌感染症の鑑別を行い、保護者に病状と疾患の自然経過を説明し、再受診の目安について情報提供を行うことが重要である」(p.56-57)。「急性咽頭炎とは、咽頭の発赤、腫脹、滲出物、潰瘍、水疱を伴う急性炎症である」「感染性要因の中で最も多いものは、成人と同様にウイルスである」「急性咽頭炎診療で重要なことは、急性喉頭蓋炎、頸部膿瘍、扁桃周囲膿瘍等の急性上気道閉塞性疾患を見逃さないことと、自然治癒するウイルス性咽頭炎と治療が必要な疾患(例えば GAS 咽頭炎等)とを鑑別し、適切にフォローアップすることである」「急性咽頭炎の診断の目的は、GAS が原因微生物かどうかを判断することである」「咽頭痛や嚥下痛を小児が正確に訴えることは困難で、頭痛や嘔吐を伴う発熱等の非特異的症状で咽頭炎を疑うことが重要である」「急性咽頭炎と診断された小児患者のうち、GAS 陽性例は日本における報告では16.3%」、「海外における報告では 27%とされている」「無症状の児の 10%~30%にGAS 保菌が認められる」「GAS による急性咽頭炎は、5 歳から 12 歳で頻度が高く、3 歳未満児においては稀である」(p.63-64)。表3「A群β溶血性レンサ球菌咽頭炎とウイルス性咽頭炎」(GAS咽頭炎:突然発症・発熱・頭痛・嘔気・嘔吐・腹痛・圧痛を伴う前頸部リンパ節腫脹・猩紅熱様皮疹/ウイルス性咽頭炎:結膜炎・咳嗽・嗄声・鼻汁・筋肉痛・下痢)は本文の表に転記した(p.64)。「急激に全身状態が悪化し、喘鳴、姿勢の異常(sniffing position や tripod position)や流涎が目立つ。これらの疾患においては、短時間で窒息にいたる可能性があり、口腔内の診察はもとより採血やレントゲン検査等の、患児にストレスを与えることは避けて、患児の楽な姿勢のままで、安全に気道確保できる施設への転院を速やかに決断することが重要である」(p.65)。
  • 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会.口・のどの症状https://www.jibika.or.jp/modules/disease/index.php?content_id=17 (2026-09-13閲覧)。「のどの粘膜が腫れた咽頭炎・扁桃腺が腫れた扁桃炎・扁桃のまわりに膿がたまった扁桃周囲膿瘍・のどの奥の喉頭が腫れた喉頭炎・喉頭の入口にある喉頭蓋が腫れた急性喉頭蓋(がい)炎などがあります。小児に多い病気には溶連菌感染症、ヘルパンギーナや手足口病、プール熱などのウィルスによるものや発熱や咽頭、口腔痛、リンパ節腫脹を繰り返すPFAPA症候群などがあります。成人では溶連菌感染症や伝染性単核球症(EBウィルス)などがあります」「扁桃炎や扁桃周囲膿瘍はものを飲みこむときの強い痛みがあります」「急性喉頭蓋炎は強く腫れると気道をふさぎ呼吸困難になることがあるので注意が必要です。のどに痛みがあり、呼吸がつらいと感じたら直ちに耳鼻咽喉科医を受診してください」。
  • JAID/JSC感染症治療ガイド(急性扁桃炎・咽頭炎の章)は有償書籍であり、本シートでは確認していない。

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