創処置と縫合の適応

創処置と縫合の適応

検査・画像・処置β版・逐条レビュー継続中

2026-09-13更新
β版用量は適用前に一次資料と院内採用を確認。このβ版について

当院では縫合ができない(2026-09-14 確認)。このシートの使い道は「縫合の適応を決めること」ではなく、「縫わずにやることを全部やって、縫える施設へ、縫える時間内に着かせること」になる。
下に出てくる顔面24時間/体幹・四肢6〜12時間は、当院にとって治療の期限ではなく搬送の期限。ここを過ぎると、送った先でも一期縫合ができなくなる。

施設プロファイル: 二次救急/形成外科・手外科なし/縫合ができない/軟部組織を見る画像(X線・エコー)も当直帯に使えない(2026-09-14 確認)。洗浄・デブリードマン・被覆・破傷風予防・鎮痛は当院でできる
咬傷は動物咬傷・虫刺され、熱傷は熱傷を参照。

30秒要約

  • 洗う。消毒しない。 創傷部に消毒薬の使用は必ずしも必要ではない(グレードC2)感染予防を目的とした創傷内の消毒は行わない。
  • 水道水でよい水道水による洗浄は有効である(グレードB)。小児の四肢のsimple lacerationで水道水と生理食塩水で術後48時間の感染率に差がなかったというRCTがある。
  • 縫うまでの時間は部位で違う一般的に顔面、頭頸部であれば24時間前後で、体幹、四肢は6〜12時間以内に縫合するのが望ましい(グレードC1)
  • 抗菌薬はルーチンでは要らない汚染や深部組織の損傷・露出がなく基礎疾患や合併症のない創傷に対しての予防的抗生物質投与は必ずしも必要ではない(グレードC2)
  • 破傷風は毎回考える年齢、創の状態、ワクチン接種歴、糖尿病合併の有無などを考慮し破傷風予防を行うことは有効である(グレードC1またはB)

レッドフラグ → 次の一手(縫う前に止まる)

所見があったときにどれだけ急ぐかと、家族に何を伝えるかの対応表。3列目の文言は家族説明ページに同じ言葉で載っているので、画面を見せながら渡せる。

緊急度所見その場で次にやること
119拍動性の出血・大量出血直接圧迫。持てない
119頭部の創+意識障害・嘔吐・陥没頭蓋内損傷(頭部打撲
1192歳未満の頭部の咬創皮膚損傷が軽微でも頭蓋内穿通創がありうる動物咬傷
緊急腱・神経・血管・関節・骨に達する疑い縫わない持てない。専門施設へ
緊急手指の創(特に屈側)腱・神経の評価が要る。手外科へ
緊急知覚・運動の異常(指が曲がらない・しびれる)神経・腱損傷。持てない
緊急眼瞼・涙小管・鼻・耳・口唇(赤唇縁をまたぐ)整容と機能。形成外科へ
緊急異物が残っている可能性(ガラス・木片・砂利)残すと感染・刺青X線は夜間も撮れるので、金属・ガラスは撮れば写る木片・植物片はX線に写らないうえ、当直帯にエコーも無い。写らない異物を否定できないまま閉じない——洗って開けたまま送る
緊急創縁の緊張が強い/腫脹・浮腫による循環不全が危惧される一期的縫合は困難。専門施設へ
緊急受傷機転と創が合わない/年齢に合わない部位虐待を疑う歩かない・手足を動かさない
当日汚染が強い・受傷から時間が経っている適切な創処置を行ったのちに縫合すべき。無理に一期縫合しない。当院では縫合そのものを行わないので、洗浄・デブリードマンまでを当院で済ませ、閉創は送り先に委ねる
当日単純な切創・裂創、深部構造に達していない、全身状態良好洗う。ただし当院では縫えない。テープ・被覆材・組織接着剤で足りる創かを見極め、足りないなら時間内に縫える施設へ(顔面24時間/体幹・四肢6〜12時間)

縫うまでの時間(部位で違う)

部位目安
顔面・頭頸部24時間前後
体幹・四肢6〜12時間以内

これらは創の汚染の程度、壊死付着などの条件で大きく左右され、特に受傷から時間が経過した場合は適切な創処置を行ったのちに縫合すべきである(グレードC1)。

ガイドラインの解説より:

  • 顔面等の血流のよい部位では受傷時間から経過していても汚染創でなければ縫合を試みてもよいと思われる。一方体幹、四肢、特に下肢では十分な創管理を行いつつ受傷後6〜12時間以内に縫合するのがよいと思われる。
  • 「6時間ルール」の根拠:軍隊での縫合は"Six-Hours-Rule"が主流であったが、近年それを見直す報告が多く出ている。オランダの前向き研究(成人408人)では6時間以内での縫合と6時間以上での縫合における感染の有意差はみられなかった
  • 汚染創での一期的縫合受傷後6〜8時間以内に十分な洗浄・デブリードマンが行われた場合には、一期的縫合が有効である(グレードB)。ただし創縁の緊張が強い場合や縫合後の腫脹・浮腫による循環不全が危惧される場合には、一期的縫合は困難である

洗浄と消毒(ここを間違えると治りが悪くなる)

項目推奨
創内の消毒創傷部に消毒薬の使用は必ずしも必要ではない(グレードC2)感染予防を目的とした創傷内の消毒は行わない
創周囲の消毒縫合前の処置として創傷周囲の健常な皮膚組織を消毒することはある。ただし不用意に消毒薬が創傷内に接触しないように注意する
なぜ消毒しないか消毒薬は組織毒性があるため、菌濃度を低下させる一方で正常組織を損傷し結果的に感染を引き起こす可能性があると考えられている
洗浄液創内の洗浄についても水道水や生理食塩水で十分であり、消毒薬を用いた洗浄は必ずしも有益ではない
水道水の可否水道水による洗浄は有効である(グレードB)洗浄水の水道水、生理食塩水使用の違いについて記載したシステマティックレビューでは両者に相違ない
大量の流水による洗浄
目的洗浄の目的は壊死組織および異物などの感染の足場になる異物のドレナージ

根拠になった試験

  • 救急科を受診した531例のRCT:縫合前に生理食塩水、1%ポビドンヨード溶液、プルロニックF-68で洗浄した3群で、感染率はそれぞれ6.9%、4.3%、5.6%であり統計学的有意差はなかった
  • 小児病院救急科のRCT手以外の四肢のsimple laceration 46例で、水道水で洗浄した症例と生理食塩水で洗浄した症例では術後48時間における感染率に差がなかった(simple laceration=筋肉、骨、関節に達しないlaceration免疫不全状態や犬咬傷などの症例は除外)。

擦過創(すりむき)は異物を取り切る

感染予防ならびに外傷性刺青の予防目的で創が上皮化する前に可及的速やかに異物を洗浄、除去すべきである(グレードC1)。

  • 対象になる異物は通常砂、アスファルト粒子等
  • 感染予防目的、外傷性刺青予防目的で可及的速やかにブラッシングを行うこと、大量の生理食塩水や水道水で洗浄することを述べている。
  • 特に感染創、広範囲受傷、golden hour(8時間)を超えた症例では麻酔下にも異物除去を徹底する。
  • 上皮化が完了したあとの外傷性刺青はその除去に難渋するため、受傷早期に異物を除去すべきである。

「痛がるから軽く流して終わり」にすると、一生残る刺青になる。 痛みを取る手段(処置時の鎮静・鎮痛)を先に用意する。

予防的抗菌薬

汚染や深部組織の損傷・露出がなく基礎疾患や合併症のない創傷に対しての予防的抗生物質投与は必ずしも必要ではない(グレードC2)。

  • 咬傷以外のsimple woundsのメタアナリシスでは抗生剤の予防的投与の効果はないと結論(汚染のある創傷や腱・神経・骨の損傷・露出がある創傷、糖尿病を合併している症例やステロイド投与中である症例などは除外)。
  • minor limb lacerationsのRCT抗生剤投与群と非投与群で創感染率はそれぞれ11.5%と21%であったが、統計学的有意差は見られなかった
  • 感染リスクが高い条件(同RCT):糖尿病合併例、圧力による受傷、下肢の創傷、長さ5〜8 cm、挫滅した創傷、異物が存在する創傷、皮膚に緊張がある場合
  • ルーチンの予防的抗生剤投与は推奨しないが、創の状態や合併症、基礎疾患の有無等によっては予防的抗生剤投与を考慮してもよい。
  • 局所抗生剤投与はそれのみでは有効でない、むしろ耐性菌の出現を誘導する可能性がある(グレードC2)。

→ 抗菌薬より、洗浄と異物除去のほうが効く。

破傷風予防(毎回、母子手帳を見る)

切創、裂創、刺創、異物創、擦過創に対して、年齢、創の状態、ワクチン接種歴、糖尿病合併の有無などを考慮し破傷風予防を行うことは有効である(グレードC1またはB)。

創のリスク区分

  • Clean, minor wound:清潔で浅い創。
  • それ以外のすべて泥や糞尿、唾液などで汚染された創、刺創、剥脱創、飛び道具による創傷、圧挫創、熱傷、凍傷など(これらに限らない)。

ACIPのガイドライン(同ガイドラインが紹介しているもの)

過去のトキソイド接種3回未満3回以上
Clean, minor woundTTの接種を推奨最終接種から10年以上経過している例ではTTの接種を推奨
それ以外のすべてTTの接種とTIGの投与を推奨最終投与から5年以上経過している例ではTTの接種を推奨

日本の定期接種(判断の前提)

沈降精製百日せきジフテリア破傷風混合ワクチン(DPT)を生後3か月〜7歳半(標準は生後3〜12か月)までの間に3回、3回目の翌年に1回の計4回接種する基礎免疫と、11〜12歳に沈降ジフテリア破傷風混合トキソイド(DT)を1回接種する追加免疫。

定期接種を受けている小児なら、基礎免疫は済んでいることが多い母子手帳で回数と最終接種日を確認するのが最短。

破傷風菌の芽胞は熱や酸素だけでなく消毒薬を含む化学物質に耐性である。そのため破傷風菌は広く土壌に存在し、家畜の腸内や糞中にも生息する。「消毒したから大丈夫」は成立しない。

トキソイドの供給状況は動物咬傷・虫刺されの注記を参照(供給不足の影響を受けている可能性がある)。

治療ワークフロー(当院でやること)

やること
1止血(直接圧迫)。拍動性なら持てない
2受傷機転・時刻・場所(土・水・動物)を聞く説明と創が合うかを確認
3深部構造の評価:知覚・運動・血流・関節可動域。縫う前に必ず
4痛みを取る(局所麻酔・表面麻酔)。鎮静だけで痛い処置をしない処置時の鎮静・鎮痛
5大量の流水(水道水でよい)で洗う。異物を取り切る
6創内は消毒しない。周囲の健常皮膚のみ、創内に入らないように
7必要ならデブリードマン
8「テープ・被覆材で足りるか」「縫える施設へ送るか」を決める(部位と時間、汚染、深部構造、緊張)。当院で縫うという選択肢は無い。送るなら受傷時刻から逆算して、時間内に着けるかを先に確認する
9破傷風:母子手帳で接種歴を確認し、必要なら接種
10抗菌薬:ルーチンでは出さない。条件を満たす場合のみ
11再診日を決める(感染徴候の確認)。抜糸は縫った施設で行うか、当院に戻すかを先に取り決める(要確認)
12家族に感染徴候(赤み・腫れ・熱・痛みの増強・膿)を具体的に渡す

「縫わない」選択肢も持つ(当院ではこれが主力になる

縫えない以上、この表が当院の治療そのもの。ここで足りる創を正しく見分けられるほど、不要な搬送が減る。組織接着剤・皮膚接合テープの院内採用を確かめておくことが、他の施設より重い(下の要確認)。

状況代替
浅い直線創で緊張がない創傷被覆材・テープ固定
頭皮の小さな裂創毛髪を用いた結紮・組織接着剤(院内の採用による)
汚染が強く時間が経っている開放のまま洗浄・処置を繰り返し、後日閉創(当院で追えるかを確認)
深部構造の損傷を疑う縫わずに送る。縫うと評価が遅れる
テープ・接着剤では足りないが、深部構造は無傷当院で縫えないので送る洗浄・デブリードマン・被覆・鎮痛・破傷風までは当院で済ませてから送ると、先方はそのまま縫える

送る/持つ(当院=二次救急・形成外科なし)

状態当院の扱い
腱・神経・血管・関節・骨に達する持てない
手指の創(屈側・深い)持てない(手外科)
眼瞼・涙小管・口唇の赤唇縁・耳介軟骨持てない(形成外科・眼科)
顔面の大きな創・整容が問題になる創持てない(当院で縫えない)。受傷から24時間以内に形成外科へ着かせる
頭部外傷を伴う創画像評価(頭部打撲)→必要なら搬送
咬傷動物咬傷・虫刺されの縫合基準に従う
熱傷熱傷
単純な切創・裂創(体幹・四肢、深部構造に達しない)テープ・被覆材・組織接着剤で閉じられるなら当院で対応縫合が要るなら受傷後6〜12時間以内に送る
擦過創当院で異物除去まで行う

エスカレーション(施設オーバーレイで上書き)

  • 確定(2026-09-14)当院で縫合は行わない。当院の範囲は洗浄・デブリードマン・被覆・鎮痛・破傷風予防まで
  • 要確認:局所麻酔薬・表面麻酔薬の院内採用(小児の最大量を含む)。本シートは薬剤名・用量を書いていない
  • 要確認:組織接着剤・皮膚接合テープの院内採用縫えない当院では、ここが「創を閉じる唯一の手段」なので最優先で埋めたい
  • 要確認:破傷風トキソイド・TIGの院内在庫動物咬傷と共通の宿題)
  • 要確認:形成外科・手外科・眼科の紹介先(夜間・休日)
  • 要確認:抜糸の場所当院は縫わないので、縫った施設で抜くか当院に戻すかを先方と取り決める必要がある
  • 確定(2026-09-14)軟部組織のエコーは当直帯に撮れない。X線は撮れる(ガラス・金属は写るが、木片は写らない)
  • 要確認:縫合ができる施設の夜間・休日の受け入れ先(顔面24時間/体幹・四肢6〜12時間という期限に間に合う先)

家族に渡す一文

「傷の手当てでいちばん大事なのは、たくさんの水でよく洗うことです。消毒は、かえって傷の治りを悪くすることがあるので、傷の中には使いません。水道水で洗っても、生理食塩水で洗っても、感染しやすさは変わらないことが研究でわかっています。すりむき傷では、砂やアスファルトの粒が残ったまま皮膚ができてしまうと、黒い点が一生残ってしまう(外傷性刺青)ので、痛くても早いうちに取り切ります。抗生物質の飲み薬は、きれいな傷では必要ありません破傷風の予防が要るかどうかを決めるので、母子手帳を見せてください。おうちに帰ってから、赤みが広がる・腫れが強くなる・痛みが増す・熱が出る・膿が出る、このどれかがあれば、予定より早く来てください。」

医師確認事項(要・岡本判断)

  • 要確認:本シートは「急性創傷診療ガイドライン」(日本形成外科学会・日本創傷外科学会・日本頭蓋顎顔面外科学会、2015年 第1版)に基づく。2015年の版であり、より新しい版の有無を確認していない
  • 要確認:引用したエビデンスの多くが成人対象(オランダ408人は成人、minor limb lacerationsのRCTも成人)。小児対象は水道水 vs 生理食塩水のRCT(46例)のみ。小児にそのまま当てはめる際の留保が要る。
  • 要確認:局所麻酔の方法と最大量。本シートは書いていない。小児では体重あたりの上限が重要なので、院内で決める必要がある。当院は縫わないので、局所麻酔が要るのは洗浄・デブリードマンの場面に限られる
  • 要確認:抜糸の時期(部位別)。本シートには載せていない。
  • 要確認:顔面の創を当院で縫うか。整容の問題があり、「縫えるが縫わない」選択も含めて方針が要る。
  • 要確認:組織接着剤(皮膚用接着剤)の採用。小児では有用だが、本シートは院内採用を前提にしていない。
  • 要確認:「縫わない」選択肢(開放創として後日閉創)を当院で運用できるか。毎日の処置に通える体制が要る。
  • 要確認:破傷風予防の判断表はACIPのもの(同ガイドラインが紹介)。日本感染症学会の資料(動物咬傷の出典)と整合しているかを一度突き合わせたい。

出典

  • 日本形成外科学会・日本創傷外科学会・日本頭蓋顎顔面外科学会.急性創傷診療ガイドライン.2015年4月10日 第1版第1刷(金原出版).https://jsprs.or.jp/docs/guideline/keiseigeka2.pdf (2026-09-13閲覧)
  • CQ2 切創、裂創、擦過創、刺創、異物創に消毒は必要か?:「創傷部に消毒薬の使用は必ずしも必要ではない(グレードC2)」「縫合前の処置として創傷周囲の健常な皮膚組織を消毒することはあるが、感染予防を目的とした創傷内の消毒は行わない。創傷周囲の健常な皮膚組織を消毒する場合も、不用意に消毒薬が創傷内に接触しないように注意する。消毒薬は組織毒性があるため、菌濃度を低下させる一方で正常組織を損傷し結果的に感染を引き起こす可能性があると考えられている」「創内の洗浄についても水道水や生理食塩水で十分であり、消毒薬を用いた洗浄は必ずしも有益ではない」。Direらの531例RCT(生理食塩水6.9%、1%ポビドンヨード溶液4.3%、プルロニックF-68 5.6%で統計学的有意差なし)、Bansalらの小児RCT(手以外の四肢のsimple laceration 46例、水道水と生理食塩水で術後48時間における感染率に差がなかった。simple lacerationは筋肉、骨、関節に達しないlacerationと定義、免疫不全状態や犬咬傷などの症例は除外)。
  • CQ4 切創、裂創、刺創、異物創に予防的抗生物質投与は有効か?:「汚染や深部組織の損傷・露出がなく基礎疾患や合併症のない創傷に対しての予防的抗生物質投与は必ずしも必要ではない(グレードC2)」。Cummingsらのメタアナリシス(抗生剤の予防的投与の効果はない)、Stamouらのランダム化比較試験(抗生剤投与群と抗生剤非投与群では創感染率はそれぞれ11.5%と21%であったが、統計学的有意差は見られなかった、および感染リスク因子の列挙)、「ルーチンの予防的抗生剤投与は推奨しないが、創の状態や合併症、基礎疾患の有無等によっては予防的抗生剤投与を考慮してもよい」。
  • CQ5 切創、裂創、擦過創、刺創、異物創に破傷風予防は有効か?:「年齢、創の状態、ワクチン接種歴、糖尿病合併の有無などを考慮し破傷風予防を行うことは有効である(グレードC1またはB)」。破傷風菌の性質(芽胞は熱や酸素だけでなく消毒薬を含む化学物質に耐性)、日本の定期接種(DPTを生後3カ月〜7歳半(標準は生後3〜12カ月)までの間に3回、3回目の翌年に1回の計4回接種する基礎免疫と、11〜12歳にDTを1回接種する追加免疫)、ACIPのガイドライン(Clean, minor woundでは接種3回未満または3回以上だが最終接種から10年以上でTT/それ以外のすべての創(泥や糞尿、唾液などで汚染された創、刺創、剥脱創、飛び道具による創傷、圧挫創、熱傷、凍傷など)では3回未満でTT+TIG、3回以上だが最終投与から5年以上でTT)、2008年現在年間患者報告数は100例程度感染症発生動向調査における破傷風発症患者の報告数は45歳以上が90%以上
  • CQ6 切創・裂創は何時間以内に縫合すべきか?:「一般的に顔面、頭頸部であれば24時間前後で、体幹、四肢は6〜12時間以内に縫合するのが望ましい。これらは創の汚染の程度、壊死付着などの条件で大きく左右され、特に受傷から時間が経過した場合は適切な創処置を行ったのちに縫合すべきである(グレードC1)」「軍隊での縫合は"Six-Hours-Rule"が主流であったが、近年それを見直す報告が多く出ている」「顔面等の血流のよい部位では受傷時間から経過していても汚染創でなければ縫合を試みてもよいと思われる。一方体幹、四肢、特に下肢では十分な創管理を行いつつ受傷後6〜12時間以内に縫合するのがよいと思われる」。
  • CQ7 擦過創は異物を除去すべきか?:「感染予防ならびに外傷性刺青の予防目的で創が上皮化する前に可及的速やかに異物を洗浄、除去すべきである(グレードC1)」「感染予防目的、外傷性刺青予防目的で可及的速やかにブラッシングを行うこと、大量の生理食塩水や水道水で洗浄すること」「特に感染創、広範囲受傷、golden hour(8時間)を超えた症例では麻酔下にも異物除去を徹底する」「上皮化が完了したあとの外傷性刺青はその除去に難渋するため、受傷早期に異物を除去すべきである」。
  • CQ10 水道水による洗浄は有効か?:「水道水による洗浄は有効である(グレードB)」「挫滅創・汚染創における明らかな異物や壊死組織は創傷治癒および感染予防のために可及的早期の除去が望ましく、大量の流水による洗浄、具体的には水道水による創洗浄は有用と考えられる。洗浄の目的は壊死組織および異物などの感染の足場になる異物のドレナージである」「創治癒過程における洗浄水の水道水、生理食塩水使用の違いについて記載したシステマティックレビューでは両者に相違なく」。
  • CQ11 局所抗生剤投与は有効か?:「局所抗生剤投与はそれのみでは有効でない、むしろ耐性菌の出現を誘導する可能性がある(グレードC2)」。
  • CQ13 一期的縫合は有効か?:「受傷後6〜8時間以内に十分な洗浄・デブリードマンが行われた場合には、一期的縫合が有効である(グレードB)」「しかしながら、創縁の緊張が強い場合や縫合後の腫脹・浮腫による循環不全が危惧される場合には、一期的縫合は困難である」。

手技

手技

傷を洗浄し、縫うかどうかを決める

洗う。消毒しない。 創傷部への消毒薬使用は感染予防目的では行わず、消毒薬は組織毒性でかえって治りを悪くしうる。水道水による洗浄は有効(グレードB)で、生理食塩水と感染率に差はない。縫うタイミングは顔面・頭頸部は24時間前後、体幹・四肢は6〜12時間以内が目安で、部位・汚染・深部構造・創縁の緊張で「縫わない」選択も持つ。

始める前に

  • 止血(直接圧迫)。拍動性の出血・大量出血なら持てない
  • 受傷機転・時刻・場所(土・水・動物)を聞く。説明と創が合うかを確認する
  • 深部構造の評価(知覚・運動・血流・関節可動域)を縫う前に必ず行う
  • 痛みを取る(局所麻酔・表面麻酔)。鎮静だけで痛い処置をしない
  • 腱・神経・血管・関節・骨に達する疑い、手指の創(特に屈側)、眼瞼・涙小管・鼻・耳・口唇(赤唇縁をまたぐ)、異物残存の可能性、創縁の緊張が強い/循環不全の懸念がないかを確認する

手順

  1. 1

    大量の流水(水道水でよい)で創を洗い、異物を取り切る

    水道水による洗浄は有効であり、水道水と生理食塩水で感染率に差はない

  2. 2

    創内は消毒しない。周囲の健常皮膚のみ消毒し、消毒薬が創内に入らないよう注意する

    消毒薬は組織毒性があり、菌濃度を下げる一方で正常組織を損傷し感染を引き起こしうる

  3. 3

    擦過創は砂・アスファルト粒子などの異物を、創が上皮化する前に可及的速やかに洗浄・除去する

    外傷性刺青を防ぐため。上皮化後は除去に難渋する

  4. 4

    必要ならデブリードマンを行う

  5. 5

    部位・時間・汚染・深部構造・創縁の緊張を踏まえて縫うか縫わないかを決める

  6. 6

    『縫わない』選択肢も持つ:緊張のない浅い直線創は創傷被覆材・テープ固定、頭皮の小さな裂創は毛髪結紮や組織接着剤(院内採用による)、汚染が強く時間が経った創は開放のまま洗浄を繰り返し後日閉創(当院で追えるか確認)、深部構造の損傷を疑う創は縫わずに送る

    縫うと評価が遅れる場合や、一期的縫合が困難な場合がある

  7. 7

    顔面・頭頸部は受傷後24時間前後、体幹・四肢は6〜12時間以内を目安に縫合する。汚染の程度・壊死付着で大きく左右される

  8. 8

    受傷後6〜8時間以内に十分な洗浄・デブリードマンを行えば一期的縫合を検討できる。ただし創縁の緊張が強い、または縫合後の腫脹・浮腫による循環不全が懸念される場合は一期的縫合は困難

    受傷後6〜8時間以内の十分な洗浄・デブリードマンが行われた場合には一期的縫合が有効

  9. 9

    母子手帳で破傷風の接種歴を確認し、必要ならトキソイド(±TIG)を接種する

    年齢・創の状態・接種歴・糖尿病合併の有無を考慮した破傷風予防は有効

やってはいけない

  • 感染予防を目的として創傷内を消毒する(組織を傷め、結果的に感染を引き起こしうる)
  • 汚染が強い・受傷から時間が経った創を無理に一期縫合する
  • 腱・神経・血管・関節・骨に達する疑いのある創を縫う(縫わずに送る)
  • 創縁の緊張が強い、または縫合後の腫脹・浮腫による循環不全が危惧される創を一期的縫合する
  • 汚染や深部組織の損傷・露出がなく基礎疾患のない創にルーチンで予防的抗菌薬を投与する
  • 局所抗生剤をそれのみで感染予防目的に用いる(耐性菌の出現を誘導する可能性がある)
  • 鎮静だけで(局所麻酔・表面麻酔なしに)痛い処置を行う

終わったあと

  • 再診日を決める(感染徴候の確認と抜糸)
  • 感染徴候(赤み・腫れ・熱・痛みの増強・膿)が出たら予定より早く受診するよう具体的に伝える
  • 抗菌薬はきれいな創では基本的に必要ないことを伝える

この場で持てない・送る

  • 拍動性の出血・大量出血 → 直接圧迫。持てない
  • 頭部の創+意識障害・嘔吐・陥没 → 頭蓋内損傷疑い(119)
  • 2歳未満の頭部の咬創 → 皮膚損傷が軽微でも頭蓋内穿通創がありうる
  • 腱・神経・血管・関節・骨に達する疑い → 縫わない。持てない。専門施設へ
  • 手指の創(特に屈側) → 腱・神経の評価が要る。手外科へ
  • 知覚・運動の異常(指が曲がらない・しびれる) → 神経・腱損傷。持てない
  • 眼瞼・涙小管・鼻・耳・口唇(赤唇縁をまたぐ) → 整容と機能の問題。形成外科へ
  • 異物が残っている可能性(ガラス・木片・砂利) → 画像評価。残すと感染・刺青
  • 創縁の緊張が強い/腫脹・浮腫による循環不全が危惧される → 一期的縫合は困難。専門施設へ
  • 受傷機転と創が合わない/年齢に合わない部位 → 虐待を疑う
  • 要確認:当院で縫合を行う範囲(部位・深さ・年齢・鎮静の要否)、局所麻酔薬・表面麻酔薬の院内採用と小児の最大量
  • 要確認:組織接着剤・皮膚接合テープの院内採用、破傷風トキソイド・TIGの院内在庫
  • 要確認:抜糸の場所(当院かかかりつけか)と部位別の抜糸日、軟部組織の異物を探す画像(X線・エコー)を当直帯で撮れるか
  • 要確認:本シートは2015年版『急性創傷診療ガイドライン』に基づく。より新しい版の有無は未確認
  • 要確認:引用したエビデンスの多くは成人対象(オランダ408人・minor limb lacerationsのRCTも成人)。小児対象は水道水vs生理食塩水のRCT(46例)のみで、小児にそのまま当てはめる際は留保が要る
  • 要確認:破傷風予防のACIP判断表が日本感染症学会の資料(動物咬傷シート出典)と整合しているか未確認

手順・適応・禁忌はすべて本シートの正本の記載のみ。院内の器材・採用薬・搬送先は施設ごとに違うため、適用前に院内ルールを確認すること。

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