尿検査の読み

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尿検査の読み

検査・画像・処置β版・逐条レビュー継続中

2026-09-13更新
β版用量は適用前に一次資料と院内採用を確認。

施設プロファイル: 二次救急/当直帯の尿検査は定性(試験紙)のみ。沈渣は夜間に見られない。導尿はできる(2026-09-14 確認)。
尿路感染症の診断ロジックは尿路感染症、学校検尿の手順は血尿・蛋白尿を参照。このシートは「1枚の尿検査から何を読むか」を扱う。

30秒要約

  • 尿は、当直で最も安く・速く・多くを教える検査。発熱源不明の乳幼児、意識障害、脱水、黄疸、腹痛、けいれん——この全部で出す価値がある。
  • 当直帯に出せるのは定性(試験紙)まで。沈渣は夜間に見られない(2026-09-14 確認)。だから夜は「試験紙で読める項目」だけで組み立てる——白血球エステラーゼ・亜硝酸塩・蛋白・潜血・糖・ケトン・比重。円柱・赤血球形態・沈渣白血球数は翌日の話。
  • 導尿はできる。これが夜のいちばん大事な手札。抗菌薬を始める前にカテーテル尿を採っておけば、培養だけは翌日に生きる。先に薬を入れると、あとから確かめる手段が消える(導尿・カテーテル採尿)。
  • 採り方で意味が変わる。培養に使えるのはカテーテル尿・中間尿だけ。パック尿(採尿バッグ尿)はコンタミネーションが多く培養診断には使わない(導尿・カテーテル採尿)。
  • 尿蛋白は試験紙で判断しない。尿蛋白/尿Cr比(g/gCr)で評価する。早朝尿で0.15以上を陽性。
  • 乳児では亜硝酸塩が当てにならない。乳児は膀胱内滞留時間が短いため亜硝酸塩が偽陰性になりやすい。
  • 尿糖2+以上・蛋白3+以上・蛋白と潜血がともに2+以上は、それだけで緊急受診の基準(学校検尿の基準。血尿・蛋白尿)。

項目別の読み方

項目陽性のとき考えること次の一手
蛋白腎炎・ネフローゼ・起立性蛋白尿・発熱時の一過性尿蛋白/尿Cr比で定量。3+以上なら当日評価(ネフローゼ症候群)
潜血(血尿)糸球体腎炎・尿路感染・結石・外傷・溶血・横紋筋融解・月経沈渣で赤血球を見る。赤血球がないのに潜血陽性=ヘモグロビン尿かミオグロビン尿(血尿・蛋白尿)
白血球エステラーゼ尿路感染・外陰部炎感度が比較的高い。尿培養へ(尿路感染症)
亜硝酸塩グラム陰性桿菌の存在特異度は高いが感度が低い。乳児では偽陰性になりやすい
糖1型糖尿病・腎性糖尿・尿細管間質性疾患血糖を測る。ケトンとセットで(糖尿病性ケトアシドーシス)
ケトン飢餓・嘔吐・脱水・DKA・周期性嘔吐糖が陰性でケトンのみ=飢餓性。糖陽性+ケトン=DKAを疑う(周期性嘔吐)
ビリルビン直接ビリルビンの上昇=胆汁うっ滞黄疸・肝機能異常
比重脱水(高値)・尿崩症や腎性(低値)脱水の評価の補助(胃腸炎と脱水)
pH尿細管性アシドーシス・感染(アルカリ化)反復する結石・成長障害があれば

沈渣(ここまで見て初めて読める)

所見意味次の一手
赤血球 5/HPF以上血尿円柱の有無と形態へ
変形赤血球・赤血球円柱糸球体性(腎炎)急性糸球体腎炎
非糸球体性の赤血球形態泌尿器科的疾患も考慮結石・腫瘍・外傷
顆粒円柱腎実質の障害腎炎の疑いとして扱う
白血球 5/HPF以上尿路感染症を疑って尿培養を行う(沈渣は当直帯に出ない。夜は定性の白血球エステラーゼで代える)一度は超音波検査(当直帯ではなく、後日)(尿路感染症)
細菌感染またはコンタミ採取法を確認
扁平上皮細胞が多い外陰部からの混入採り直す

当直の場面別「尿で何を見るか」

場面出す項目読むポイント
発熱源不明の乳幼児定性+沈渣+培養(カテーテル尿)抗菌薬投与前の採取が必須(尿路感染症)
生後3か月未満の発熱同上。血液・髄液とセット生後3か月未満の発熱
意識障害・けいれん糖・ケトン+血糖低血糖・糖尿病性ケトアシドーシス
多飲多尿・体重減少糖・ケトン1型糖尿病の初発を外す
嘔吐が続くケトン・比重飢餓性か、DKAか
むくみ蛋白ネフローゼ症候群
赤い尿潜血+沈渣潜血陽性・赤血球なし=溶血か横紋筋融解。食品・薬剤の着色は試験紙が陰性
黄疸ビリルビン・ウロビリノゲン+尿の色黄疸・肝機能異常
脱水比重・ケトン補正の目安に(経口補水・点滴)
腹痛潜血(結石)・白血球急性腹痛
学校検尿の紙を持参早朝尿で定性+沈渣+尿蛋白/尿Cr比血尿・蛋白尿

定性検査の性能(過信しない)

尿路感染症の詳細リファレンスより:

  • 白血球エステラーゼまたは亜硝酸塩のいずれか陽性で「尿定性陽性」とみなし、培養(カテーテル尿/膀胱穿刺)に進む。
  • 白血球反応・亜硝酸塩ともに陰性:LR 0.20(95%CI 0.16〜0.26)。新鮮尿(採取後1時間以内)でLE・亜硝酸塩ともに陰性なら、UTIの可能性は低い(<0.3%との報告)が、確実な除外にはならない。
  • 乳児は膀胱内滞留時間が短いため亜硝酸塩が偽陰性になりやすい。

→ 「定性が陰性だからUTIではない」は、乳児では言えない。

採り方で結果の意味が変わる

採取法培養に使えるか
カテーテル尿○(推奨)。排尿が自立していない乳幼児の標準法
中間尿○(排尿が自立している児)
パック尿(採尿バッグ)×。定性検査には使えるが、コンタミネーションが多く培養診断には用いるべきではない。陽性ならカテーテル尿で再確認してから治療判断
膀胱穿刺○。通常は推奨されない。本邦では一般的でない

抗菌薬投与前の採取が必須:投与後は多くの薬剤が速やかに尿を無菌化し、UTIの確定診断が困難になる。ill-appearingで即時投与が必要な場合でも、投与前にカテーテル尿を確保してから投与する。

詳しくは導尿・カテーテル採尿。

早朝尿を正しく採る(外来で蛋白を評価するとき)

  1. 前日の夜に過度な運動を避け、就寝直前に排尿して膀胱を空にする。
  2. 前彎負荷の体位(腰を前に突き出す姿勢)を避け、起床してすぐに採尿する。寝床から便所まではそっと移動する。
  3. 出始めの尿はとらずに、途中からの尿(中間尿)を容器にとる。

生理や感冒時などの検尿は避ける。

参考値(学校検尿の基準から)

項目目安
尿蛋白/尿Cr比(早朝尿)0.15以上を陽性
尿カルシウム/尿Cr比>0.25 は高カルシウム尿症とみなす
尿β2ミクログロブリン/尿Cr幼稚園 0.5 μg/mgCr・小学生 0.35 μg/mgCr・中学生以降 0.30 μg/mgCr 以下を目安
沈渣赤血球4/HPF以下は精査不要/5/HPF以上で評価へ
沈渣白血球5個/HPF以上で尿路感染症を疑って尿培養

落とし穴

落とし穴実際
「パック尿で細菌が出たからUTI」培養診断に使えない。カテーテル尿で採り直す
「定性が陰性だからUTIではない」(乳児)亜硝酸塩は偽陰性になりやすい
「潜血陽性だから血尿」沈渣に赤血球がなければヘモグロビン尿・ミオグロビン尿(溶血・横紋筋融解・HUS)
「蛋白1+だから腎臓が悪い」発熱・運動・脱水で一過性に出る。落ち着いてから早朝尿で再検
「尿糖が出たから糖尿病」腎性糖尿・尿細管間質性疾患もある。ただし血糖を測るまでは糖尿病を外さない
「尿が濃いから脱水」比重だけで脱水は決まらない。臨床所見と合わせる
抗菌薬を出してから培養を採る確定診断ができなくなる
女児の白血球尿外陰部炎、帯下などの除外が必要な場合は外陰部洗浄や中間尿採取などの工夫をする

送る/持つ(当院=二次救急)

状態当院の扱い
尿定性当直帯も当院で対応
尿沈渣当直帯は出ない。翌日に回す
尿培養検体は当直帯にも採れる(導尿可)。抗菌薬を始める前に採る。夜間に提出できるか・保存して翌朝出すかは要確認
尿糖2+以上/多飲多尿血糖・ケトン・血ガス。DKAなら持てない(糖尿病性ケトアシドーシス)
蛋白3+以上・低アルブミン血症(初発・合併症なし)決定=当院で夜間入院管理し、日勤帯に専門施設と治療導入を相談する(ネフローゼ症候群、2026-09-25決定)。循環血漿量減少性ショックは初期輸液のみ当院・その先は持てない。血栓症・腹膜炎の疑い、腎生検適応(血尿・高血圧・腎機能低下・低補体・1歳未満発症)があれば持てない
赤血球円柱+高血圧(尿量が保たれている典型例)決定=当院で夜間入院管理し、日勤帯に専門施設と相談する(急性糸球体腎炎、2026-09-25決定)。高血圧性脳症は降圧開始のうえ搬送。無尿・著明な乏尿を伴う急性腎障害、高カリウム血症の透析適応、肺水腫の人工呼吸/透析適応、腎生検適応(低補体遷延・ネフローゼ域蛋白尿)があれば持てない
ヘモグロビン尿・ミオグロビン尿溶血・横紋筋融解・HUSの評価。多くは持てない
尿路感染症尿路感染症の基準に従う
学校検尿の3次検査初期評価(尿沈渣・腎機能等)は当院で行い、異常があれば小児腎臓科へ紹介する

エスカレーション(施設オーバーレイで上書き)

  • 要確認:当院で出せる尿検査項目(尿蛋白/尿Cr比、尿沈渣の赤血球形態、尿β2ミクログロブリン、尿カルシウム/尿Cr)と、外注の場合の日数。いずれも当直帯には出ない前提で、日勤帯に何が出るかを埋めたい
  • 確定(2026-09-14):夜間に尿沈渣は見られない。当直帯は定性のみで組み立てる
  • 確定(2026-09-14):尿培養は夜間に検査室へ提出できない。検体は採れる(導尿可)ので、抗菌薬の前に採って保管し、翌朝提出する
  • 要確認:採った尿の翌朝までの保管方法(冷蔵か・保存剤入り容器か)。ここが決まらないと「抗菌薬の前に採る」が実務にならない
  • 確定(2026-09-14):導尿は当院でできる。残るのは物品(サイズ・潤滑剤)と実施者(導尿・カテーテル採尿)
  • 要確認:採尿バッグの運用(定性のみに使う、というルールを明文化するか)

家族に渡す一文

「おしっこの検査は、体の中でいま何が起きているかを、いちばん早く教えてくれる検査のひとつです。ばい菌がいないか、腎臓が傷んでいないか、脱水になっていないか、糖が出ていないかを、一度に調べられます。赤ちゃんの場合、おむつに貼る袋で採った尿は、雑菌が混じりやすいため、ばい菌の種類を調べる検査(培養)には使えません。その場合は、細い管を尿道から入れて、きれいな尿を採らせていただくことがあります。また、たんぱくを正確に見るには「朝いちばんの尿」が必要です。前の晩は激しい運動を避け、寝る直前におしっこをして、朝は起きたらすぐ、腰を反らさずにそっとトイレへ行き、出始めではなく途中の尿を採ってください。」

出典

  • 岡山県医師会・岡山県教育委員会.岡山県検尿マニュアル -適正な学校検尿・3歳児検尿のために- 令和6年度改訂.https://www.pref.okayama.jp/uploaded/life/561663_8926830_misc.pdf (2026-09-13閲覧)。尿蛋白は尿蛋白/尿Cr比 g/gCrで評価、早朝尿で0.15以上を陽性、早朝尿の3条件、沈渣赤血球4/HPF以下は精査不要・5/HPF以上で評価、白血球5個/HPF以上で尿培養、一度は超音波検査、外陰部炎、帯下などの除外が必要な場合は外陰部洗浄や中間尿採取などの工夫をする、尿カルシウム/尿Cr比>0.25は高カルシウム尿症、尿β2ミクログロブリン/尿Crは幼稚園0.5・小学生0.35・中学生以降0.30 μg/mgCr以下を目安、尿沈渣での赤血球形態が非糸球体性の場合は泌尿器科的疾患も考慮、緊急受診の基準(糖2+以上/蛋白3+以上/蛋白・潜血ともに2+以上)、生理や感冒時などの検尿は避ける。
  • 本サイト「尿路感染症」の詳細リファレンス(正本「尿検査とUTI診断_2026-07-30.md」、JAID/JSC 2015・AAP 2011・AAP 2021に基づく)より:培養に使えるのはカテーテル尿・中間尿だけで、パック尿(採尿バッグ尿)はコンタミネーションが多く培養診断には使わない、乳児は膀胱内滞留時間が短いため亜硝酸塩が偽陰性になりやすい、白血球反応・亜硝酸塩ともに陰性でLR 0.20(95%CI 0.16〜0.26)、新鮮尿(採取後1時間以内)でLE・亜硝酸塩ともに陰性ならUTIの可能性は低い(<0.3%との報告)が、確実な除外にはならない、抗菌薬投与前の採取が必須(投与後は多くの薬剤が速やかに尿を無菌化し、UTIの確定診断が困難になる)、ill-appearingで即時投与が必要な場合でも、投与前にカテーテル尿を確保してから投与する。
  • 日本小児腎臓病学会.患者、ご家族、一般の方向けQ&A「血尿」「蛋白尿」(Copyright © 2021).https://jspn01.umin.jp/kanja/files/kanja-syojo-02.pdf / https://jspn01.umin.jp/kanja/files/kanja-syojo-01.pdf (2026-09-13閲覧)。「試験紙法で陽性と指摘されても、定量法の測定値を尿中クレアチニン濃度で補正した結果、異常なし、と判断される場合もあります」「尿路系の代表は、(出血性)膀胱炎です。アデノウイルスが原因となることが多いです」「小児では尿路系の悪性腫瘍(癌)は非常に希です」。

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