けいれん重積・無熱性けいれん

緊急

けいれん重積・無熱性けいれん

救急・外傷・中毒β版・逐条レビュー継続中

2026-09-12更新
β版用量は適用前に一次資料と院内採用を確認。

施設プロファイル: 二次救急/人工呼吸管理・小児集中治療なし。第三選択薬に進む段階は当院で持てない。

30秒要約

  • 強直間代発作が5分続いたら、そこが治療開始の時刻(t1)。「もう少し様子を」で時計を進めない。
  • 30分が神経学的後遺症を残しうる時間(t2)。5分・10分・30分で段が変わる。
  • 血糖を測る。ガイドラインのアルゴリズムでも初期対応に「血糖測定(必要ならブドウ糖投与)」が明記されている。低血糖なら薬より先にブドウ糖。
  • 静脈ルートが取れなくても第一選択薬は投与できる(承認内はミダゾラム口腔用液=ブコラム〔当院の採用は未確定〕。ほかにミダゾラムの頬粘膜・鼻腔内・筋注〔いずれも適応外〕、ジアゼパムの直腸内)。ルート確保に時間を溶かさない。
  • 当院は院内第三選択薬(持続静注・人工呼吸管理)に進めない。第二選択薬を使う段階で、受け入れ先に連絡する。

時間の定義(日本小児神経学会 2023)

病型治療開始のタイミング(t1)神経学的後遺症を残しうる時間(t2)
けいれん性SE(強直間代発作重積状態)5分30分
非けいれん性SE(焦点意識減損発作重積状態)10分60分
非けいれん性SE(欠神発作重積状態)10〜15分不明
段階経過時間やること
早期SE(Early SE)5〜10分病院前治療、または第一選択薬
確定したSE(Established SE)10〜30分第二選択薬へ進む
難治性SE(RSE)30〜60分(以上)第三選択薬へ進む=当院で持てない
超難治性SE(SRSE)24時間以上専門施設

レッドフラグ

所見があったときにどれだけ急ぐかと、家族に何を伝えるかの対応表。3列目の文言は家族説明ページに同じ言葉で載っているので、画面を見せながら渡せる。

緊急度所見その場で次にやること時間の勝負
119けいれんが5分以上続いている第一選択薬を投与。時刻を記録。受け入れ先へ第一報5分で治療開始
119呼吸抑制・チアノーゼ・SpO2低下気道確保と酸素。ベンゾ投与後の呼吸抑制に備える待たない
119発作が止まっても意識が戻らない非けいれん性重積の可能性。脳波が要る=当院で持てない30分
緊急無熱性の初発発作熱性けいれんと同じ扱いにしない。低血糖・電解質・頭蓋内・中毒を外す—
緊急頭部外傷後・嘔吐を伴う・意識が悪い頭蓋内病変。画像(頭部打撲)—
緊急片側性の発作・発作後麻痺(Todd麻痺)局在性病変を疑う—
緊急生後6か月未満・6歳以上の初発熱性けいれんの典型年齢から外れる。別疾患を疑う—
当日短時間で自然に止まり、意識が戻り、神経学的に正常誘因の検索と再発時の指導。再受診条件を紙で渡す—

初期対応(発作が続いている場面)

  1. 時刻を確認して記録する。ここが全部の起点。
  2. バイタルを評価。呼吸循環の安定化、発作型の評価。
  3. 呼吸循環モニタリング、酸素投与、静脈ルート確保。
  4. 血糖測定(必要ならブドウ糖投与)。
  5. 5分を超えたら第一選択薬。ルートが取れないなら非静脈ルートで投与する。
  6. 10〜30分で止まらなければ第二選択薬。この時点で受け入れ先に連絡する(当院は院内第三選択薬に進めない)。
  7. 画像検査を検討。

薬剤の段階(用量は「考え方」。適用前に一次資料と院内採用を確認すること)

第一選択薬(静脈ルートあり)

薬剤用量
ジアゼパム IV0.3〜0.5 mg/kg(最大10 mg)
ロラゼパム IV0.05 mg/kg(最大4 mgまで)。0.05 mg/kgの追加可。総量0.1 mg/kgを超えない
ミダゾラム IV0.15 mg/kg。0.1〜0.3 mg/kgの追加可。総量0.6 mg/kgを超えない

第一選択薬(静脈ルートが取れないとき)

経路用量
ミダゾラム 筋肉内投与0.2〜0.5 mg/kg
ミダゾラム 鼻腔内投与0.2 mg/kg
ミダゾラム 頬粘膜投与0.2〜0.5 mg/kg
ジアゼパム注射液 直腸内投与0.3〜0.5 mg/kg

第二選択薬: ホスフェニトイン IV 22.5 mg/kg / フェニトイン IV 15〜20 mg/kg / フェノバルビタール IV 15〜20 mg/kg / レベチラセタム IV 20〜60 mg/kg。フェニトインは15〜20分かけて緩徐に静脈投与する必要があり即効性に欠ける。強アルカリ性で血管外漏出時に組織壊死やpurple glove syndromeを生じることがある。

第三選択薬(=当院で持てない): ミダゾラム持続静注 0.05〜0.4 mg/kg/時、チオペンタール、チアミラール、プロポフォール、ケタミン。人工呼吸管理・昇圧剤・脳波モニタリングが前提。

日本では第二選択薬のうちバルプロ酸とクロナゼパムの注射製剤は使用できない。

鑑別:けいれんに見えるもの

病態見分け
熱性けいれん発熱を伴い、年齢・病型が典型(熱性けいれん)
低血糖必ず測る。薬より先にブドウ糖
失神(けいれん様の動きを伴うことがある)誘因・前駆症状・回復の速さ(失神)
憤怒けいれん(泣き入りひきつけ)泣いた直後、短時間、回復が速い
中毒薬・化学物質の曝露(急性中毒)
電解質異常(低Na・低Ca)採血
頭蓋内病変(外傷・出血・腫瘍)頭部外傷歴、局在徴候、頭痛の先行
細菌性髄膜炎発熱+意識障害+髄膜刺激徴候
心原性(不整脈)運動中・臥位発症・家族歴(失神)

問診チェック

送る/持つ(当院=二次救急・人工呼吸管理なし)

状態当院の扱い
第三選択薬に進む段階(30〜60分以上)持てない。人工呼吸管理・脳波モニタが要る
第二選択薬を使った時点受け入れ先に連絡する。止まらなければそのまま搬送
発作が止まっても意識が戻らない非けいれん性重積の可能性。脳波が要る=持てない
無熱性の初発発作で、止まって意識清明当院で精査の入口まで。てんかん初発として専門外来へつなぐ

送ると決めた時点でやること

  1. 発作開始時刻・投与した薬剤と時刻・投与量を時系列で記録して渡す
  2. 気道を確保し、ベンゾ投与後の呼吸抑制に備える
  3. 血糖・電解質の結果を添える

エスカレーション(施設オーバーレイで上書き)

  • 要確認:小児の人工呼吸管理・脳波モニタができる施設の夜間・休日の受け入れ先と直通番号
  • 要確認(未確定):当院で採用している第一選択薬の剤形(ミダゾラム口腔用液〈ブコラム〉の採用、ミダゾラムの頬粘膜・鼻腔内投与が可能か、ジアゼパム坐剤/注射液の在庫)。ブコラムは効能・効果が「てんかん重積状態」で、静脈路が取れないときの承認内の選択肢(小児てんかん重積状態・けいれん重積状態治療ガイドライン2023のアルゴリズム図。2026-09-27 追記)
  • 要確認:ホスフェニトイン・レベチラセタム注の院内採用
  • 確定(2026-09-14):夜間に血糖・電解質・血液ガスは出せる

家族に渡す一文

「けいれんは、5分を超えると止めるお薬を使います。止まったあとに意識が戻るかどうかが大事なので、しばらく様子を見せていただきます。熱がないけいれんは、熱があるときのけいれんとは調べることが変わります。当院では続けて治療できない段階があるので、その場合は設備のある病院へ移ります。」

出典

  • 日本小児神経学会(小児てんかん重積状態・けいれん重積状態治療ガイドライン改訂ワーキンググループ 編).小児てんかん重積状態・けいれん重積状態治療ガイドライン2023.診断と治療社、2023年2月14日発行.第1章 本文PDF: https://www.childneuro.jp/uploads/files/about/SE2023GL/03SE_vol01.pdf (2026-09-12閲覧・原文を直接読了)。てんかん重積状態の定義(けいれん性SEのt1=5分・t2=30分、焦点意識減損発作重積状態のt1=10分・t2=60分、欠神発作重積状態のt1=10〜15分)、病期区分(早期5〜10分/確定10〜30分/難治性30〜60分以上/超難治性24時間以上)、初期対応(バイタル評価・呼吸循環モニタリング・静脈ルート確保・酸素投与・血糖測定〈必要ならブドウ糖投与〉・画像検査の検討)、第一〜第四選択薬の枠組みと用量、フェニトインの投与速度と血管外漏出のリスク、日本でバルプロ酸・クロナゼパム注射製剤が使用できないこと。ガイドライン一覧: https://www.childneuro.jp/about/6436/ / Minds: https://minds.jcqhc.or.jp/summary/c00759/
  • ジアゼパム点鼻液(スピジア点鼻液)について、日本小児神経学会は2026年2月24日に推奨情報を公開し、「病院前治療および静脈ルート確保が困難な場合における治療選択肢」と位置づけている。https://www.childneuro.jp/wp/wp-content/uploads/2023/09/SE2023GL-Spydia20260224.pdf (2026-09-12閲覧・本文未読了。院内採用の有無とあわせて要確認)

処方

kgこのシートの計算すべてに反映。タブを閉じるまで保持されるので、患者が変わったらクリアする。
処方

処方の考え方

けいれんが5分以上続けば重積として扱い、薬に進む。用量は「考え方」であり、適用前に一次資料と院内採用を確認すること。日本では第二選択薬のうちバルプロ酸とクロナゼパムの注射製剤は使用できない。

静脈ルート

この数字の意味

体重換算の考え方であって処方箋ではない。実際の剤形・力価(ドライシロップ10%/20%等)と採用薬は施設ごとに違い、本シートの「院内ローカルルール」(§6)は未確定のまま。g・包数への換算は院内採用を確認したうえで行う。

薬剤名だけで用量が出ないものは、正本にその記載が無いということ。推測の数字は出さない。

参考計算・参考判定です。適用は添付文書・現行ガイドライン・院内採用・患者個別要因を確認のうえ医師が判断してください。

病態・根拠10章
発作を早く止める理由

けいれんが続くと自然停止しにくくなり、呼吸・循環、代謝への負担と神経障害の危険が増す。強直間代発作が5分続く、または意識が戻らず発作を反復する場合は、長時間になるまで待たず治療する。開始時刻が不明で発作が続いている時も、時計の確認を理由に初期治療を遅らせない。[1][2]

発作の制御と原因評価を並行する

気道・換気・酸素化、循環を確保し、血糖を速やかに確認する。発熱、中枢神経感染、低血糖・電解質異常、中毒、外傷、服薬中断などを検討する。発作の型、左右差、持続、意識の回復、既往と救急薬の計画を聴き、家族・救急隊が既に投与した薬剤と時刻を必ず引き継ぐ。[1][2]

段階的治療と薬剤の重複防止

第一段階では適切な経路のベンゾジアゼピンを院内手順・個別計画に従って用い、呼吸抑制への準備を同時に行う。静脈路がないことだけで治療を止めず、使用可能な非静脈経路を確認する。投与歴を数えず同じ薬を重ねると呼吸抑制を増すおそれがあるため、病院前の投与も治療経過に含める。[1][2]

十分な初期治療でも発作が続けば第二段階へ進み、上級医と集中治療施設に早く連絡する。第三段階の麻酔・人工呼吸管理を持たない当院では、第二段階の結果がすべて出てから搬送相談を始めない。採用薬、投与法・監視と搬送中の対応を相談先と共有する。[1][2]

検査の順序と限界

採血や画像で発作停止を遅らせない。神経診察や経過に応じて血液ガス・電解質、感染・中毒、画像を選ぶ。けいれんが見えなくなっても意識が回復しない場合は、薬剤作用だけでなく非けいれん性重積や原因疾患を考える。脳波と集中治療が必要な状況を専門施設へ伝える。[1][2]

安定後の引継ぎ

発作開始・停止、全投薬の名称・経路・量・時刻、呼吸循環の変化、血糖補正と反応を時系列で記録する。家族には原因精査と再発時の救急薬計画が別に必要であると説明し、今回止まったことだけで帰宅方針を決めない。[1][2]

出典・適用範囲

[1]は国内小児神経学会GL2023総論、[2]は豪州小児専門施設の急性管理GL。病院前薬を含む用量・投与上限と国内承認は院内手順・最新添付文書に従う。本詳細に新たな固定用量を追加しない。 確認日:2026-10-23。

臨床医が迷う場面
救急隊や家庭で薬を使っている。院内で初回量からやり直す?

すでに投与した薬名・経路・量・時刻を必ず確認する。院外投与も累積量と呼吸抑制の評価に含め、投与歴不明のままベンゾジアゼピンを重ねない。発作が続けば気道管理の準備と第二選択薬・搬送相談を並行し、治療の時計を来院時にリセットしない。

出典:日本小児神経学会 小児けいれん重積GL2023

けいれんの動きが止まったのに反応が戻らない。薬が効いたと判断する?

呼吸・血糖・循環を再確認し、投与薬の鎮静に加えて非けいれん性重積を疑う。眼球偏倚や微細な反復運動の有無も見て、脳波と原因評価が可能な施設へ相談する。外見上の停止だけで治療終了とせず、意識が回復する方向かを経時的に記録する。

出典:日本小児神経学会 小児けいれん重積GL2023

第二選択薬を使い切ってから搬送を探せばよい?

当院は院内持続麻酔・人工呼吸管理へ進めないため、第二選択薬を検討する段階で受入先へ連絡する。薬剤の準備・投与中も呼吸循環を監視し、搬送に必要な情報を揃える。難治化してから連絡すると気道管理や次段階治療が遅れるため、相談と治療を同時に進める。

出典:日本小児神経学会 小児けいれん重積GL2023

同じ場面のシート

BRUE(乳児の短時間の危急事態)・無呼吸発作救急・外傷・中毒こどもの熱傷(やけど)救急・外傷・中毒チアノーゼ・動脈管依存性心疾患を疑うとき救急・外傷・中毒ビタミンK欠乏性出血症を疑うとき救急・外傷・中毒意識障害・反応が悪い救急・外傷・中毒医療的ケア児・重い基礎疾患のある子の急変救急・外傷・中毒虐待・ネグレクトを疑った時救急・外傷・中毒急性中毒・誤飲(薬・洗剤・たばこ・石油製品)救急・外傷・中毒血栓症・DICを疑うとき救急・外傷・中毒最初の5分 — 小児を診るときの初期評価と次の一手救急・外傷・中毒出生直後の状態不良・新生児蘇生の入口救急・外傷・中毒徐脈・伝導障害・遺伝性不整脈を疑うとき救急・外傷・中毒小児・思春期の性被害 初期対応救急・外傷・中毒小児の心不全・心筋症を疑うとき救急・外傷・中毒心筋炎を疑うとき救急・外傷・中毒心雑音・先天性心疾患救急・外傷・中毒低体温(偶発性低体温症)救急・外傷・中毒溺水救急・外傷・中毒電撃傷(感電・落雷)救急・外傷・中毒頭を打ったとき(頭部打撲)救急・外傷・中毒動物咬傷・ハチ刺傷・虫刺され救急・外傷・中毒動悸・上室頻拍を疑うとき救急・外傷・中毒熱性けいれん救急・外傷・中毒熱中症救急・外傷・中毒

ほかに開く

スペースで絞り込み(例:夜尿症 休薬)↑↓ 移動 / Enter 開く