滲出性中耳炎

滲出性中耳炎

耳鼻・眼β版・逐条レビュー継続中

2026-09-12更新
β版用量は適用前に一次資料と院内採用を確認。このβ版について

施設プロファイル: 二次救急/耳鼻咽喉科なし。手術は当院でできないが、この病気の大半は「待つ」ことが治療

30秒要約

  • 鼓膜の病的変化がなければ、発症から3カ月間は経過観察(watchful waiting)が推奨される(ガイドラインCQ1)。焦って動かない。
  • 抗菌薬は推奨しない(CQ2)。急性中耳炎と同じ扱いにしない。
  • 痛がらない・熱が出ない。だから見つかりにくい。「聞こえが悪い」「呼んでも振り向かない」「テレビの音が大きい」で来る。
  • チューブ留置の適応は2つ。①鼓膜の病的変化が出現した ②良聴耳の聴力が30 dBを超える。いずれも3カ月以上遷延する両側性が前提。
  • ダウン症・口蓋裂は別扱い。ガイドラインが独立した章を設けている。

レッドフラグ → 次の一手

所見があったときにどれだけ急ぐかと、家族に何を伝えるかの対応表。3列目の文言は家族説明ページに同じ言葉で載っているので、画面を見せながら渡せる。

緊急度所見次の一手
緊急鼓膜のアテレクタシスや癒着などの病的変化(鼓膜緊張部もしくは弛緩部の高度な内陥、耳小骨の破壊、癒着性の鼓膜内陥)経過観察の対象から外れる。耳鼻科へ紹介(チューブ留置の適応・強く推奨)
緊急良聴耳の聴力が30 dBを超える聴力障害耳鼻科へ紹介(チューブ留置の適応・推奨)
緊急一側性で成人・年長児、鼻閉・鼻出血を伴う上咽頭の器質的病変を除外する必要がある。耳鼻科へ
当日ダウン症・口蓋裂ガイドラインが別章で扱う高リスク群。通常の経過観察の枠で扱わない。耳鼻科へ
当日3カ月以上遷延している両側性チューブ留置の適応判断が要る。耳鼻科へ
当日発症3カ月未満・鼓膜に病的変化なし経過観察でよい。抗菌薬を出さない
当日言語発達の遅れ・学習への影響が疑われる聴力評価を優先し、耳鼻科と相談

治療ワークフロー(当院=耳鼻科なし)

やること判断
1鼓膜を見る。液体貯留の所見と、病的変化の有無(内陥・癒着・耳小骨の破壊)病的変化あり → 経過観察せず耳鼻科へ
2発症(または診断)からの期間を確定する3カ月が分岐点
3片側か両側かを記録するチューブ留置の適応は両側性が前提(一側性は別CQ)
4聴力の見当をつける(年齢に応じて。正確な評価は耳鼻科)30 dB超が分岐点。25〜30 dBは「留置を行ってもよいが、適応をより慎重に検討すべき」
5抗菌薬を出さないただし鼻副鼻腔炎を合併している場合はマクロライド系の少量長期投与療法が別途検討される(下記)
63カ月の経過観察を家族と共有し、再評価の日を決める「様子を見ましょう」で終わらせない
7ダウン症・口蓋裂なら最初から耳鼻科へ別章の対象

ガイドラインの推奨(逐語)

  • CQ1 経過観察期間: 「小児滲出性中耳炎は鼓膜の病的変化がなければ、発症から3カ月間は経過観察(watchful waiting)が推奨される。」
  • CQ2 抗菌薬: 「小児滲出性中耳炎には抗菌薬投与は推奨しない。ただし、鼻副鼻腔炎を合併している小児滲出性中耳炎に対しては、マクロライド系抗菌薬投与(クラリスロマイシン:CAM 少量長期投与療法)…」
  • CQ6 鼓膜換気チューブ留置の適応: 「発症あるいは診断から3カ月以上遷延する、両側性の小児滲出性中耳炎症例で下記のような症例に適応となる。①鼓膜のアテレクタシスや癒着などの病的変化が出現した場合(推奨の強さ:強く推奨)②良聴耳の聴力が30 dBを超える聴力障害を示す場合(エビデンスの質:B、推奨の強さ:推奨)」
  • 補足: 「25〜30 dBでは、チューブ留置を行ってもよいが、適応をより慎重に検討すべきである」「チューブ留置が必要な鼓膜の病的変化とは、鼓膜緊張部もしくは弛緩部の高度な内陥、耳小骨の破壊、癒着性の鼓膜内陥を指す

急性中耳炎との違い(非専門医が混同しやすい)

滲出性中耳炎急性中耳炎
痛み・発熱ないのが普通ある
気づかれ方聞こえの悪さ、健診、急性中耳炎の治療後耳痛・発熱で受診
抗菌薬推奨しない重症度に応じて適応がある
時間軸3カ月は待つ急性期に判断する

所見の取り方

  • 鼓膜を必ず見る。耳垢で見えないなら、見えるようにしてから判断する。
  • 液体貯留の所見(透見される液面・気泡、鼓膜の色調変化、可動性低下)。
  • 病的変化を探す(内陥の程度、癒着、耳小骨の透見)。ここが経過観察と紹介の分かれ目。
  • 片側か両側か。
  • 鼻・咽頭も見る(鼻副鼻腔炎の合併、アデノイド)。

送る/持つ(当院=二次救急・耳鼻科なし)

状態当院の扱い
発症3カ月未満・鼓膜に病的変化なし当院で経過観察できる。再評価の日を決める
鼓膜の病的変化がある耳鼻科へ紹介
3カ月以上遷延する両側性聴力評価とチューブ留置の適応判断が要る。耳鼻科へ
ダウン症・口蓋裂最初から耳鼻科へ
正確な聴力評価が必要当院で測れるかによる(要確認)

エスカレーション(施設オーバーレイで上書き)

  • 要確認:当院で小児の聴力検査(ティンパノメトリー・純音聴力・遊戯聴力)ができるか。できないなら「3カ月時点で全例紹介」が既定になる
  • 要確認:耳鼻咽喉科の紹介先
  • 要確認:3カ月の経過観察を当院で担うか、初診で紹介するか

家族に渡す一文

「耳の奥に水がたまっている状態です。痛みや熱は出ないので気づきにくく、聞こえの悪さで見つかることが多い病気です。多くは自然に治るので、まず3か月は様子を見るのが標準的な方針で、抗菌薬は使いません。ただし、鼓膜の形が変わってきたときや、聞こえが一定以上悪いときは、耳鼻科で鼓膜に小さなチューブを入れる処置を検討します。様子を見る間も、呼んでも振り向かない・テレビの音が大きい・言葉の遅れが気になる、といった変化があれば早めに教えてください。」

医師確認事項(要・岡本判断)

  • 要確認:当院で3カ月の経過観察を担うか、初診で耳鼻科へ回すか。当院で聴力を測れないなら、実質「測れる施設で経過を見る」ことになる。(当直帯に院内の耳鼻咽喉科はいない(2026-09-14 確認)が、この病気は夜に決める話ではない
  • 要確認:鼻副鼻腔炎合併例へのマクロライド少量長期投与を当院で行うか。本シートは推奨の存在のみ記載し、具体的な投与法は書いていない(要確認)。
  • 要確認:本シートはCQ1・CQ2・CQ6の推奨文を中心に構成している。CQ3(抗菌薬以外の薬物)・CQ4(局所処置・自己通気)・CQ5(鼓膜切開術)・CQ10(一側性)・第4章(ダウン症・口蓋裂)の内容は本シートに反映していない。必要なら追記する。

出典

  • 日本耳科学会・日本小児耳鼻咽喉科学会(編).小児滲出性中耳炎診療ガイドライン 2022年版(第2版).金原出版、2022年9月30日発行.本文PDF: https://www.otology.gr.jp/common/pdf/guideline_otitis2022.pdf (2026-09-12閲覧・PDF原文を確認)。CQ1(鼓膜の病的変化がなければ発症から3カ月間は経過観察が推奨される)、CQ2(抗菌薬投与は推奨しない/鼻副鼻腔炎合併例へのマクロライド少量長期投与)、CQ6(チューブ留置の適応=3カ月以上遷延する両側性で、鼓膜の病的変化〈強く推奨〉または良聴耳30 dB超の聴力障害〈推奨〉)、25〜30 dBでの慎重な適応判断、チューブ留置が必要な鼓膜の病的変化の定義、第4章でダウン症・口蓋裂を別に扱うこと。Minds: https://minds.jcqhc.or.jp/summary/c00744/ / 日本耳科学会 ガイドライン一覧: https://www.otology.gr.jp/about/guideline.php

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