腸重積症

腸重積症

外科的緊急β版・逐条レビュー継続中

2026-09-10更新
β版用量は適用前に一次資料と院内採用を確認。このβ版について

施設プロファイル: 二次救急/外科的処置なし/当直帯は超音波を当てられない。確診の手段が夜間に無く、整復が不成功でも開腹できない。だから当直帯の主題は「いつ整復を試みるか」ではなく、疑った時点でどこへ送るかだけになる。

30秒要約

  • 間欠的な腹痛(不機嫌)だけで疑診が成立する。三主徴を待たない。ガイドラインの診断基準で「腹痛ないし不機嫌が間欠的な場合はそれだけで疑診」と明記されている。
  • 血便が無いことは否定の根拠にならない。発症12時間以内に自然に血便を出すことはまれ。
  • 数分の腹痛のあと15〜20分は機嫌よく遊べる。痛くない時間帯に診察して「元気だから違う」と判断するのが典型的な見逃し方
  • 当直帯の当院では、この診断は確定できない。超音波が当てられないので確診(C項目)に届かない。だが疑診は「腹痛ないし不機嫌が間欠的」ならそれだけで成立する。したがって疑診が立った時点が搬送の起点になる。
  • 48時間が分岐点。48時間を超えると整復率が下がり腸管壊死が増える。前医で入院後24時間を超えてから移送された例は手術率52%(24時間以内なら39%)。外科のない当院では、疑った時点で送る先を決める

レッドフラグ

所見があったときにどれだけ急ぐかと、家族に何を伝えるかの対応表。3列目の文言は家族説明ページに同じ言葉で載っているので、画面を見せながら渡せる。

緊急度所見その場で次にやること時間の勝負
119ショック状態で急速輸液に反応しない整復を試みない。ルート確保のうえ緊急移送。受け入れ先へ第一報待たない
119腹膜刺激症状/腹部X線で遊離ガス(穿孔疑い)非観血的整復の絶対禁忌。整復せず外科のある施設へ待たない
緊急全身状態不良、顔面蒼白、ぐったりして不活発腸管壊死を疑う所見。整復を試みず緊急移送の判断へ待たない
緊急発症48時間以上+発熱+6か月未満穿孔リスクが高い群。整復を当院で試みる判断は特に慎重に48時間超で悪化
緊急間欠的な啼泣+嘔吐(3か月〜2歳)これだけで疑診が成立する。当直帯はエコーが無く確診に進めない。血便も画像も待たず、整復可能施設へ電話する早いほど整復成功
当日整復後の再発を疑う症状(帰宅後の再啼泣・嘔吐)再発は約10%、その1/3は最初の48時間に起きる。当直帯は確認手段が無いので、整復した施設に戻す当日

鑑別:紛れやすい(この診断に辿り着けなくなる相手)

疾患拾う所見決め手落とし穴
急性胃腸炎初期に下痢を認めるものが10%程度、感冒様症状を呈するものが20%程度ある経過が合わない(痛みが間欠、腹部膨満、血便)流行期に紛れ込む。胃腸炎症状が前面に出ていても本症を否定できない
便秘腹痛と不機嫌浣腸で痛みが完全に消えるか浣腸で出た反応便に血が混じったら、便秘でなく腸重積の所見
急性虫垂炎(年長児)年長児は腹痛のみの訴えで受診することがあるエコーで両方を見る(当直帯は当院で撮れない=送り先での検査になる年長児の腸重積は少ないがゼロではない。むしろ病的先進部の頻度が上がる
「なんとなく元気がない」で来た乳児理由なく泣いてばかりいる、寝てばかりいる保護者の直感を初期症状として扱う意識障害様の所見は進行例だけでなく初期にも出る

鑑別:見逃してはいけない(併存・背景)

病態これがあれば疑う確認法当院の扱い
病的先進部(Meckel憩室・ポリープ・悪性リンパ腫・重複腸管・IgA血管炎)年長児、2回以上の再発整復時のエコーで積極的に検索5歳以上では先進部の頻度が約60%に上がる。年長発症は小児外科へ紹介
悪性リンパ腫3歳以上、平均10歳前後で腸重積として発症する例がある画像で先進部を探す専門施設での精査へ
腸管壊死全身状態不良、発症48時間超、回腸回腸結腸型、ドプラで血流所見の異常整復を試みる前に判断する整復せず緊急移送

所見の取り方

  • 触診は腹痛の間欠期に行う。泣いている最中の腹部は評価にならない。
  • 腹部腫瘤(ソーセージ様)は右季肋部に触れるのが半数程度、慎重に触診して85%程度。触れないことは否定材料にならない
  • Dance徴候の出現頻度は10%程度で、診断的意義は少ない。無いことを根拠にしない。
  • 時間を置いて2回診る。間欠期に当たると印象が変わる。
  • 便は自分で見る。浣腸で出た反応便に血が混じるかを確認する。

問診チェック

検査

当院の当直帯では 1〜4 のいずれも実施できない(超音波・透視・CTが夜間に使えない。2026-09-14 確認)。以下はガイドラインの推奨であり、送り先で行われる検査として読む。当院で使えるのは 5 の診断基準だけで、それだけで搬送は起動できる

  1. 超音波が第一選択(推奨度A)。感度85〜100%・特異度88〜100%。短軸のtarget sign、長軸のpseudokidney signを確認する。
  2. 腹部単純X線(推奨度B)。診断ではなく、遊離ガス(穿孔)と小腸閉塞像の確認のために撮る。遊離ガスは整復の絶対禁忌。
  3. 注腸造影は超音波に習熟したスタッフがいない場合や、超音波が不確実な場合の選択肢(推奨度A)。
  4. CTは被曝の問題があり第一選択にならない。小腸小腸型を疑う場合に限って有用(推奨度B)。
  5. 診断基準(試案): A項目=腹痛/不機嫌・血便(浣腸含む)・腹部腫瘤/膨満。B項目=嘔吐・顔面蒼白・ぐったりして不活発・ショック・X線での腸管ガス分布異常。C項目=画像の特徴的所見。疑診はA2つ、A1つ+B1つ、B3つ以上。ただし腹痛/不機嫌が間欠的ならそれだけで疑診。確診は疑診+C。

初期プラン(コア)

  1. 全身状態とショックの有無を先に評価する。
  2. 当直帯は確診を取りにいかない(超音波が無い)。疑診のまま動く。血便・腫瘤・三主徴を待たない
  3. X線で遊離ガスを外す(夜間も撮れる。2026-09-14 確認)。あれば整復は絶対禁忌。いずれにせよ外科のある施設へ。当直帯に当院で撮れる唯一の腹部画像がこれなので、送り先に渡す情報として意味がある。
  4. 輸液ルートを確保する(軽症例でも推奨度B。整復時の穿孔に備える)。
  5. 発症からの時間を計算し、48時間を超えていれば重症側に倒して判断する。

送る/持つ(当院=二次救急・外科的処置なし・当直帯は超音波なし)

ガイドラインの移送基準(推奨度A)を、外科のない施設の言葉に置き換えると次になる。当直帯は3行とも同じ結論(即移送)になる。整復の前提である「整復できなければ外科的対応が可能な施設へ」を当院が満たせないため、重症度で分岐しない。

状態ガイドラインの推奨当院での意味
重症(全身状態不良、腸管壊死疑い)非観血的整復を施行せずに、外科的対応を含む集中治療が可能な施設へ緊急移送整復を試みない。すぐ送る
中等症(全身状態良好だが腸管虚血の可能性)慎重な整復を要し、整復できなければ外科的対応が可能な施設へ速やかに移送当直帯は整復に進めない(確診の手段が無く、不成功時の外科的対応も持てない)。即移送
軽症(全身状態良好・虚血は軽度)非観血的整復が第一選択。整復できなければ移送同上

非観血的整復の絶対禁忌(この所見があれば整復を試みず、直ちに移送)

  • 腹部単純X線で遊離ガス、または消化管穿孔を疑う場合
  • 腹膜刺激症状
  • 重症のショックで急速輸液に反応しない

送ると決めた時点でやること

  1. 輸液ルート確保・絶食
  2. 受け入れ先へ先に電話(検査を終えてから電話しない)
  3. 発症時刻と、いま何時間目かを明確に伝える(48時間・24時間が相手の判断を変える
  4. 家族に「当院では手術ができないので、必要なら移ります」を検査前に伝えておく
  5. バリウムは使わない(穿孔時に重篤化するため推奨度D)。整復を行う施設側の選択だが、当院から情報として伝える意味はある

エスカレーション(施設オーバーレイで上書き)

  • 確定(2026-09-14):当直帯は超音波が使えず、整復不成功時の外科的対応も持てない。疑診の時点で整復可能施設へ送るが当院の運用
  • 要確認:整復可能施設(透視下/超音波下)の夜間・休日の受け入れ先と直通番号。小児外科は決まった連携先に直接電話する運用(施設名・番号は保留中)
  • 確定(2026-09-14):夜間の腹部エコーは当院で当てられない。このシートは「エコー無しで送る」前提で書いてある
  • 要確認:救急車要請の院内手順と医師同乗の要否

家族に渡す一文

「腸の一部が隣の腸にもぐり込んでしまう病気です。早く見つけて元に戻せば手術は要らないことが多く、時間が経つほど手術が必要になります。お腹の痛みが波のように来て、その合間は機嫌がよい — これがこの病気の出方です。元に戻したあとも、10人に1人くらいは繰り返します。帰宅後に同じ泣き方が戻ったら、すぐ来てください。」

医師確認事項(要・岡本判断)

  • 決着(2026-09-14):当直帯は疑診の時点で搬送する。残るのは、日勤帯(超音波が使える時間帯)に当院で整復を試みる方針を採るか。採るなら媒体(水溶性造影剤か空気か)と実施部門を決める必要がある。
  • 要確認:整復を行う場合の媒体(水溶性造影剤か空気か)と、実施部門(放射線科/小児科)。
  • 要確認:整復後に外来で観察して帰宅させる運用(推奨度C1)を当院で採るか、入院とするか。
  • 要確認:本シートの48時間・24時間という数値は2012年版ガイドラインに基づく。改訂第2版(2022年)での変更有無の照合が未

出典

  • 日本小児救急医学会(監修).エビデンスに基づいた小児腸重積症の診療ガイドライン.2012年10月17日版.http://www.convention-axcess.com/jsep/information/docs/guideline/20121017_Guideline.pdf (2026-09-10閲覧)。診断基準(CQ8・表6-1)、血便が否定材料にならないこと(CQ9)、三主徴が揃うのは10〜50%(CQ8)、触診とDance徴候(CQ13)、超音波の感度・特異度(CQ16)、48時間と腸管壊死・整復率(CQ19・CQ20・CQ26)、移送基準と整復の絶対禁忌(CQ27)、輸液ルート確保(CQ28)、バリウム非推奨(CQ35)、6か月未満の穿孔リスク(CQ41)、再発率(CQ6・CQ43)、疫学(CQ1・CQ2・CQ4)。改訂第2版(2022年7月、へるす出版)が存在し、本シートの数値は第2版と未照合
  • 日本小児外科学会.腸重積症.http://www.jsps.or.jp/archives/sick_type/tyou-jusekishou (2026-09-10閲覧・httpでアクセス)。好発年齢と発症の様子、24時間以内なら約8割が非観血的に整復できること。

手技

手技

腸重積症の初期対応と送るタイミング

間欠的な腹痛(不機嫌)だけで疑診が成立する。三主徴を待たない。血便が無いことは否定の根拠にならず、発症12時間以内に自然に血便を出すことはまれ。48時間が分岐点で、これを超えると整復率が下がり腸管壊死が増える。当直帯は超音波が使えず確診には進めないため、外科のない当院では疑診が立った時点で送る先を決める。

始める前に

  • 触診は腹痛の間欠期に行う。泣いている最中の腹部は評価にならない。
  • 腹部腫瘤(ソーセージ様)は右季肋部に触れるのが半数程度、慎重に触診して85%程度。触れないことは否定材料にならない。
  • Dance徴候の出現頻度は10%程度で、診断的意義は少ない。無いことを根拠にしない。
  • 時間を置いて2回診る。間欠期に当たると印象が変わる。
  • 便は自分で見る。浣腸で出た反応便に血が混じるかを確認する。

手順

  1. 1

    全身状態とショックの有無を先に評価する。

  2. 2

    当直帯は確診を取りにいかない(超音波が無い)。疑診のまま動き、血便・腫瘤・三主徴を待たない。

  3. 3

    X線が撮れるなら遊離ガスを外す(夜間のX線可否は要確認)。あれば整復は絶対禁忌で、いずれにせよ外科のある施設へ。

  4. 4

    輸液ルートを確保する(軽症例でも推奨度B)。

    整復時の穿孔に備える。

  5. 5

    発症からの時間を計算し、48時間を超えていれば重症側に倒して判断する。

  6. 6

    送ると決めたら、輸液ルート確保・絶食を行う。

  7. 7

    受け入れ先へ先に電話する(検査を終えてから電話しない)。

  8. 8

    発症時刻と、いま何時間目かを明確に伝える。

    48時間・24時間が相手の判断を変える。

  9. 9

    家族に「当院では手術ができないので、必要なら移ります」を検査前に伝えておく。

やってはいけない

  • 非観血的整復の絶対禁忌(この所見があれば整復を試みず、直ちに移送):腹部単純X線で遊離ガス、または消化管穿孔を疑う場合。
  • 非観血的整復の絶対禁忌:腹膜刺激症状がある場合。
  • 非観血的整復の絶対禁忌:重症のショックで急速輸液に反応しない場合。
  • バリウムは使わない(穿孔時に重篤化するため推奨度D)。整復を行う施設側の選択だが、当院から情報として伝える意味はある。

終わったあと

  • 整復後の再発を疑う症状(帰宅後の再啼泣・嘔吐)が出たら、当直帯はエコーで確認する手段が無いため、整復した施設に戻す。再発は約10%、その1/3は最初の48時間に起きる。
  • 家族への一文:元に戻したあとも、10人に1人くらいは繰り返す。帰宅後に同じ泣き方が戻ったら、すぐ来てもらう。

この場で持てない・送る

  • 確定(2026-09-14):当直帯は超音波が使えず、整復不成功時の外科的対応も持てない。疑診の時点で整復可能施設へ送るのが当院の運用。
  • 確定(2026-09-14):夜間の腹部エコーは当院で当てられない。このシートは「エコー無しで送る」前提で書いてある。
  • 決着(2026-09-14):当直帯は疑診の時点で搬送する。残るのは、日勤帯(超音波が使える時間帯)に当院で整復を試みる方針を採るか。採るなら媒体(水溶性造影剤か空気か)と実施部門を決める必要がある。
  • 要確認:整復を行う場合の媒体(水溶性造影剤か空気か)と、実施部門(放射線科/小児科)。
  • 要確認:整復可能施設(透視下/超音波下)の夜間・休日の受け入れ先と直通番号。小児外科は決まった連携先に直接電話する運用(施設名・番号は保留中)。
  • 要確認:救急車要請の院内手順と医師同乗の要否
  • 要確認:整復後に外来で観察して帰宅させる運用(推奨度C1)を当院で採るか、入院とするか。
  • 要確認:本シートの48時間・24時間という数値は2012年版ガイドラインに基づく。改訂第2版(2022年)での変更有無の照合が未。

手順・適応・禁忌はすべて本シートの正本の記載のみ。院内の器材・採用薬・搬送先は施設ごとに違うため、適用前に院内ルールを確認すること。

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