胃食道逆流症・乳児の嘔吐

胃食道逆流症・乳児の嘔吐

消化器β版・逐条レビュー継続中

2026-09-12更新
β版用量は適用前に一次資料と院内採用を確認。このβ版について

施設プロファイル: 二次救急/外科的処置なし。この病気の大半は「生理的」で、当院の仕事は病的なものを拾うこと外科疾患を外すこと

30秒要約

  • 溢乳は乳児期に生理的に高頻度で認められる多くは1歳までに自然に良くなる。吐くこと自体は病気ではない。
  • 「逆流」と「逆流症」は違う。「逆流によって、様々な症状や合併症が生じた状態」が胃食道逆流
  • 警告徴候があるかで分ける。体重が増えにくい/吐いたものに血が混じる/肺炎を繰り返す/哺乳を嫌がる/過度に泣く/背中を反らせる/咳・喘鳴。
  • 緑〜黄色の胆汁性嘔吐はこの病気ではない中腸軸捻転を最優先で外す。
  • 生後2〜8週の非胆汁性・噴水状嘔吐肥厚性幽門狭窄症を考える。

レッドフラグ → 次の一手

所見があったときにどれだけ急ぐかと、家族に何を伝えるかの対応表。3列目の文言は家族説明ページに同じ言葉で載っているので、画面を見せながら渡せる。

緊急度所見次の一手
119胆汁性(緑〜黄色)嘔吐この病気ではない中腸軸捻転を最優先で外す。小児外科へ
119ぐったり・ショック全身評価を優先(最初の5分
緊急吐いたものに血が混じる警告徴候。食道炎・潰瘍。上部消化管の評価が要る
緊急体重が増えにくい・るいそう栄養障害。生理的逆流では説明できない
緊急肺炎を繰り返す誤嚥性肺炎。GERDの合併症
緊急咳や喘鳴などで呼吸が苦しそう呼吸器症状としての逆流。喘息と紛れる
緊急生後2〜8週の非胆汁性・噴水状嘔吐+体重増加不良肥厚性幽門狭窄症当直帯はエコーが無いので電解質と脱水の評価から入る
緊急血便を伴う小児の血便。食物蛋白誘発胃腸炎も考える
緊急大泉門膨隆・意識の変化を伴う嘔吐頭蓋内圧亢進。意識障害
当日哺乳時に飲むのを嫌がる/過度に泣く(不機嫌)/背中を反らせる警告徴候。生理的逆流として片付けない
当日溢乳のみで、体重増加が順調、元気生理的な逆流。生活指導と経過観察

生理的な逆流と、病的なGERDの線引き

胃食道逆流とは、胃の中のミルクや食べ物、胃酸が食道に逆流する現象です。いわゆる"溢乳"で乳児期には生理的に高頻度で認められます
「一方で、胃食道逆流"症"とは逆流によって、様々な症状や合併症が生じた状態を指します」
多くは、1歳までに自然に良くなります

なぜ乳児で起きやすいか(小児特有の4つの要因)

  1. 下部食道括約筋(LES)の未熟性
  2. 食道が短く His角が鈍角
  3. 臥位で過ごす時間が長く、液体(ミルク)が主要な食事
  4. 胃の容量が小さいが、一回の哺乳量は体格の割に多い

警告徴候(逐語)

哺乳時に飲むのを嫌がる、過度に泣く(不機嫌)、背中を反らせたり、咳や喘鳴などで呼吸が苦しそうである、肺炎を繰り返す、体重が増えにくい、吐いたものに血が混じったりするなどがある場合には、逆流による症状や合併症である可能性があります」

症状の整理

系統症状
消化器嘔吐、吐血、摂食障害、胸痛(胸焼け)、口臭、う歯
呼吸器誤嚥性肺炎、咳嗽発作、喘息など
その他栄養障害(体重増加不良、るいそう)、貧血

ハイリスク群(GERDを疑う閾値を下げる)

食道閉鎖症や横隔膜ヘルニアなどの先天性疾患の術後、食道裂孔ヘルニア、重症心身障害児

鑑別(乳児の嘔吐で外すもの)

疾患見分け次の一手
中腸軸捻転・腸回転異常症胆汁性嘔吐。腹部は平坦〜陥凹が多い最優先で外す中腸軸捻転
肥厚性幽門狭窄症生後2〜8週の非胆汁性・噴水状嘔吐。吐いた直後に欲しがるエコー・血液ガス(肥厚性幽門狭窄症
食物蛋白誘発胃腸炎哺乳開始後の不活発・腹部膨満・血便。消化器症状がなく体重増加不良だけのことが20%程度治療乳への変更(小児の血便
腸重積間欠的啼泣。3か月〜2歳未満当直帯はエコーが無い=疑った時点で電話腸重積
尿路感染症発熱を伴う嘔吐検尿尿路感染症
頭蓋内圧亢進大泉門膨隆、意識、眼位画像
代謝疾患反復する嘔吐+意識障害+低血糖・アシドーシス血糖・血液ガス・アンモニア(低血糖
副腎皮質過形成低Na・高K・アシドーシス電解質

治療ワークフロー(3段階)

ステップ内容
ステップ1体位療法・げっぷ・とろみ等の生活指導。2週間以上試行する
ステップ2薬物療法(プロトンポンプ阻害薬・H2ブロッカー・六君子湯・モサプリド等)
ステップ3外科的治療=噴門形成術。適応は「難治性の食道炎や繰り返す誤嚥性肺炎、成長障害がある場合、重症化して生命を脅かす場合

まずステップ1を2週間以上やる。いきなり薬から入らない。

診断(症例により組み合わせ): 上部消化管造影検査/24時間食道pHモニタリング/pH-インピーダンス(MII-pH)/上部消化管内視鏡検査・生検

送る/持つ(当院=二次救急・外科的処置なし)

状態当院の扱い
溢乳のみ・体重増加良好当院で生活指導。1歳までに軽快することを伝える
警告徴候がある評価が要る。当院でどこまで行うかは要確認
24時間pHモニタリング・内視鏡が要る持てない。専門施設へ
噴門形成術持てない
胆汁性嘔吐だった別疾患。緊急搬送中腸軸捻転
ハイリスク群(術後・重症心身障害児)主治医・専門施設と連携

エスカレーション(施設オーバーレイで上書き)

  • 要確認:上部消化管造影・24時間pHモニタリング・内視鏡ができる施設の紹介先
  • 要確認:当院でステップ2(薬物療法)まで行うか、警告徴候があれば全例紹介か
  • 要確認:とろみ剤・治療乳の院内採用

家族に渡す一文

「赤ちゃんが吐くのは、胃と食道のつなぎ目がまだ未熟なためで、多くは1歳までに自然に良くなります。まずは、飲ませ方や姿勢、げっぷの出し方を工夫して2週間ほど見ていきます。ただし、体重が増えない・吐いたものに血が混じる・肺炎を繰り返す・飲むのを嫌がる・ひどく泣いて背中を反らせる、こうした様子があるときは、ただの溢乳ではない可能性があるので調べます。吐いたものに緑色がついたときは別の病気の可能性があるので、すぐに教えてください。」

医師確認事項(要・岡本判断)

  • 要確認:当院で薬物療法(ステップ2)まで行うか。警告徴候があれば全例紹介にするか。
  • 要確認:「胆汁性嘔吐」をGERDの警告徴候として明記した日本小児外科学会の一次記述は、参照したページからは確認できなかった。本シートは他疾患(腸回転異常症・食物蛋白誘発胃腸炎)の一次資料を根拠に、鑑別として最上位に置いている。
  • 要確認:本シートは日本小児外科学会の一般向け解説ページに基づく。日本小児栄養消化器肝臓学会の小児GERD診療ガイドラインは確認していない

出典

  • 日本小児外科学会.胃食道逆流症http://www.jsps.or.jp/archives/sick_type/i-shokudou-gyakuryushou (2026-09-12閲覧・httpでアクセス)。「胃食道逆流とは…いわゆる"溢乳"で乳児期には生理的に高頻度で認められます」「胃食道逆流"症"とは逆流によって、様々な症状や合併症が生じた状態を指します」「多くは、1歳までに自然に良くなります」、小児特有の4つの要因(LESの未熟性・食道が短くHis角が鈍角・臥位で過ごす時間が長く液体が主要な食事・胃の容量が小さいが一回の哺乳量は体格の割に多い)、警告徴候の逐語、症状の整理(消化器・呼吸器・その他)、ハイリスク群(食道閉鎖症や横隔膜ヘルニアなどの術後・食道裂孔ヘルニア・重症心身障害児)、診断法、治療の3ステップ(生活指導を2週間以上→薬物療法→噴門形成術)と手術適応
  • 国立成育医療研究センター.新生児-乳児食物蛋白誘発胃腸炎 診断治療指針(2017/11/11版).https://www.ncchd.go.jp/hospital/sickness/children/allergy/shokakan_shishin20171111.pdf (2026-09-12閲覧)。哺乳開始後の症状に胆汁性嘔吐が含まれること、消化器症状がなく非特異的症状のみが20%程度あること。
  • 未確認: 日本小児栄養消化器肝臓学会による小児GERD診療ガイドライン、「胆汁性嘔吐」をGERDの警告徴候として明記した日本小児外科学会の一次記述。

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