糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)

糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)

内分泌・代謝・血液β版・逐条レビュー継続中

2026-09-12更新
β版用量は適用前に一次資料と院内採用を確認。このβ版について

施設プロファイル: 二次救急/小児集中治療なし。初期輸液は当院で始め、管理は送る前提。

30秒要約

  • 腹痛・嘔吐で来る。ガイドラインにも「急性腹症と誤診されることもある」と明記されている。1型糖尿病の初発がDKAで来る。
  • 多飲・多尿・体重減少+嘔吐を見たら血糖を測る。1〜2日の経過で進む。
  • 小児ではインスリンをボーラスで打たない。輸液を十分に行い、少なくとも1時間たってから持続投与を開始する。ボーラスや初期の大量投与は脳浮腫のリスク
  • カリウムが3.3 mEq/L未満ならインスリンを始めない・増やさない。先に補充する。
  • 急激な浸透圧低下は脳浮腫を招く。血糖を下げ急がない(期待される低下速度は50〜75 mg/dL/時)。

レッドフラグ

所見があったときにどれだけ急ぐかと、家族に何を伝えるかの対応表。3列目の文言は家族説明ページに同じ言葉で載っているので、画面を見せながら渡せる。

緊急度所見その場で次にやること時間の勝負
119意識障害・ショックABC。等張晶質液で循環を立て直す。受け入れ先へ第一報待たない
119治療中の頭痛・嘔吐・意識悪化・徐脈+高血圧脳浮腫を疑う。輸液速度を見直し、緊急で集中治療のある施設へ分単位
緊急Kussmaul呼吸(深く速い呼吸)・呼気のアセトン臭血糖・血液ガス・尿ケトン時間単位
緊急腹痛・嘔吐で来た子に多飲多尿・体重減少がある血糖を測る。急性腹症として扱わない時間単位
緊急K < 3.3 mEq/Lインスリンを始めない。カリウムを先に補充治療の順番
当日血糖高値だがpH正常・ケトン軽度DKAではない高血糖。専門外来へつなぐ

診断基準

DKA=インスリンの欠乏と拮抗ホルモンの増加により、次の3つをきたした状態。

項目基準
高血糖250 mg/dL 超
ケトーシスβ-ヒドロキシ酪酸の増加(小児では 3,000 μmol/L 以上が HCO3⁻ 18 mEq/L 未満に相当)
アシドーシス動脈血 pH 7.30 以下、HCO3⁻ 18 mEq/L 以下

正常血糖DKA: 血糖 250(または200)mg/dL 以下でもDKAはありうる(SGLT2阻害薬使用中・妊娠中など)。血糖が高くないことを否定の根拠にしない。

臨床像(ガイドライン原文の表現)

「1〜2日の経過で、急激な口渇、多飲、多尿、倦怠感が出現し、脱水、種々の程度の意識障害、体重減少を呈する。腹痛、悪心を伴うこともあり、急性腹症と誤診されることもある。代謝性アシドーシスを補正するための過呼吸(Kussmaul呼吸)、呼気のアセトン臭、口腔粘膜の乾燥、低血圧、頻脈などを認める。」

鑑別

病態見分け
急性胃腸炎嘔吐+腹痛が共通。多飲多尿・体重減少・深い呼吸があれば血糖を測る
急性腹症(虫垂炎など)同上。ガイドラインが誤診を明記している(急性腹痛
過換気症候群深い呼吸が共通。血液ガスと血糖で分かれる
髄膜炎・脳症意識障害が共通。血糖・血液ガスを先に
高血糖高浸透圧症候群アシドーシスが軽くケトンが乏しい
敗血症併存しうる。どちらも見る

検査

  1. 血糖(最優先)
  2. 血液ガス(pH・HCO3⁻)
  3. 尿ケトン/血中β-ヒドロキシ酪酸
  4. 電解質(カリウムを必ず)、腎機能、血算
  5. 感染の検索(誘因になる)

初期治療の考え方(適用前に一次資料と院内プロトコルを確認すること)

輸液

  • 生理食塩水を、通常 500〜1,000 mL/時(あるいは 15〜20 mL/kg/時) で開始する。全身状態・尿量により調節する。
  • 以降は循環動態に応じて 250〜500 mL/時を目安に調整。
  • 急激な浸透圧低下による脳浮腫に注意する。血糖値が 250〜300 mg/dL となればブドウ糖を含む低張電解質輸液へ。

インスリン

  • 小児では治療開始時のボーラス投与の効果は示されておらず、ボーラス投与や初期のインスリン大量投与は脳浮腫のリスクとなる可能性があるため行わない
  • 輸液を十分に行って、少なくとも1時間たってからインスリン持続投与を開始する。
  • 速効型インスリンを生理食塩水に混注し、小児では 0.05〜0.1 単位/kg/時を目安に持続静注。
  • 50〜75 mg/dL/時の速度で血糖が低下することが期待される。

カリウム

  • インスリン開始前や投与時に血清カリウムが 3.3 mEq/L 未満の場合は、インスリンの開始や増量を行わず20〜30 mEq/時を目安に 3.3 mEq/L 以上になるまで補充したあとで開始・増量する。

やらないこと

  • HCO3⁻の投与やリンの補充が生命予後や病態の改善に寄与するという報告はない

送る/持つ(当院=二次救急・小児集中治療なし)

状態当院の扱い
初期輸液とカリウム補正当院で始める。送り先に着くまでの時間を無駄にしない
インスリン持続静注の管理院内でどこまで行うか要確認。持続投与中のモニタリング体制が要る
脳浮腫を疑う持てない。集中治療のある施設へ緊急
意識障害・ショック持てない。初期蘇生後に搬送
1型糖尿病の初発診断後の導入教育は専門施設。当院は急性期の安定化まで

送ると決めた時点でやること

  1. 受け入れ先へ血糖・pH・HCO3⁻・カリウム・意識レベルをセットで伝える
  2. 開始した輸液の種類・量・開始時刻、インスリンを始めたか(始めていないなら、その理由も)
  3. 搬送中に血糖を下げ急がない。脳浮腫のリスクを申し送る

エスカレーション(施設オーバーレイで上書き)

  • 要確認:小児集中治療のある施設の夜間・休日の受け入れ先と直通番号
  • 要確認:当院でインスリン持続静注を行うか、輸液のみで搬送するか
  • 確定(2026-09-14)夜間に血液ガス・電解質は測れるβ-ヒドロキシ酪酸の可否は未確認(出ないなら尿ケトンで代える)
  • 要確認:院内のDKAプロトコルの有無

家族に渡す一文

「インスリンが足りなくなって、血液が酸性に傾いた状態です。吐き気やお腹の痛みで来られることが多く、胃腸炎と間違われやすい病気です。治療は点滴から始めますが、血糖を急に下げると脳がむくむ危険があるので、ゆっくり確実に下げます。集中的な管理が必要なので、設備のある病院へ移っていただきます。」

医師確認事項(要・岡本判断)

  • 要確認:当院でインスリン持続静注まで行うか。行わないなら「輸液とカリウム補正だけして送る」と明記する必要がある
  • 要確認:本シートの輸液量(500〜1,000 mL/時、15〜20 mL/kg/時)は成人を主体としたガイドラインの記述で、小児の体格での適用は院内プロトコルで確認が要る。
  • 要確認:小児DKAの重症度3段階分類(軽症/中等症/重症)は、今回参照した国内一次資料には見当たらなかった。ISPAD準拠の分類を院内で採るかどうか。
  • 要確認:小児DKAの発症率の国内数値は原著未特定のため本シートには記載していない。

出典

  • 日本糖尿病学会.糖尿病診療ガイドライン2024 第20章 糖尿病における急性代謝失調・シックデイ.https://www.jds.or.jp/uploads/files/publications/gl2024/20.pdf (2026-09-12閲覧・PDF原文を確認)。臨床像(急性腹症との誤診を含む)、診断基準(高血糖250 mg/dL超・動脈血pH 7.30以下・HCO3⁻ 18 mEq/L以下)、β-ヒドロキシ酪酸の小児カットオフ(3,000 μmol/L以上)、正常血糖DKA、初期輸液(500〜1,000 mL/時、15〜20 mL/kg/時、以降250〜500 mL/時)、脳浮腫への注意と血糖250〜300 mg/dLでのブドウ糖併用、小児でのボーラス投与を行わず輸液後1時間以上たってからインスリン持続投与を開始すること、インスリン0.05〜0.1単位/kg/時と期待される血糖低下速度50〜75 mg/dL/時、カリウム3.3 mEq/L未満でのインスリン非開始と20〜30 mEq/時の補充、HCO3⁻投与とリン補充の有用性を示す報告がないこと。

処方

kgこのシートの計算すべてに反映。タブを閉じるまで保持されるので、患者が変わったらクリアする。
処方

処方の考え方

小児ではインスリンのボーラス投与を行わない(脳浮腫のリスク)。輸液を十分に行って少なくとも1時間たってからインスリン持続投与を開始する。急激な浸透圧低下による脳浮腫に注意し、血糖250〜300 mg/dLでブドウ糖を含む低張電解質輸液へ切り替える。

段階

この数字の意味

体重換算の考え方であって処方箋ではない。実際の剤形・力価(ドライシロップ10%/20%等)と採用薬は施設ごとに違い、本シートの「院内ローカルルール」(§6)は未確定のまま。g・包数への換算は院内採用を確認したうえで行う。

薬剤名だけで用量が出ないものは、正本にその記載が無いということ。推測の数字は出さない。

参考計算・参考判定です。適用は添付文書・現行ガイドライン・院内採用・患者個別要因を確認のうえ医師が判断してください。

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