耳・鼻の異物—無理に取り出さない
分岐は何が入ったかで決まる。ボタン電池・複数個の磁石・鋭利なもの・生きた虫は速やかに受診、BB弾やビーズなどの玩具は日中受診でよい。無理に取り出そうとすると奥に押し込んで悪化させるため、ボタン電池と磁石2個以上は摘出を試みず直ちに耳鼻咽喉科へ。
始める前に
- 何を、いつ、どちらの耳・鼻に入れたかを聞く。目撃がなくても片側の悪臭鼻汁・耳漏・聞こえにくさから疑う。
- まずボタン電池か、磁石が2個以上かを確認する。疑いがあれば気づいた時刻を記録し、以降の操作を増やさない。
- 個数を確認する(磁石は特に。1個か複数か、左右両方にないか)。
- 要確認:耳鏡・前鼻鏡・鼻用内視鏡の院内在庫と、使える職種。
手順
- 1
耳鏡・前鼻鏡(あれば内視鏡)で異物を確認する。鼓膜が見えるか、鼓膜まで達していないかを見る。水に濡れた形跡のあるビーズ(PVA製など)は無理に鑷子で繰り返し触らない
- 2
ボタン電池/磁石2個以上/鼓膜近接・接着/出血/気道症状があれば、持てないと判断し直ちに耳鼻咽喉科へ連絡、それ以上の摘出操作をしない
- 3
視認でき出血なく本人が落ち着いていれば、学会が示す家庭と同じ範囲の方法を1回だけ試す(鼻:反対の鼻を押さえて強くかませる・くしゃみを誘う。耳の虫:暗くして光で誘導し20〜30分待つ)
要確認:当院でこれを医療者が試みる方針を採るか、全例耳鼻咽喉科へ送るか未確定
- 4
試みて取れなければそれ以上追加しない
無理に押し込むと悪化する
- 5
送る前に、異物の種類・左右・気づいた時刻・試みた処置をセットで申し送る
やってはいけない
- 入ったものが何であってもピンセットなどで取り出そうとしない(あやまって奥へ押し込んでしまう可能性がある)
- ボタン電池・複数磁石は摘出を試みない
- 水で膨張・接着するビーズ玩具(PVA製など)を無理に鑷子で繰り返し触らない。点耳薬による前処置や摘出目的の耳洗浄はしない
- 一度試みて出血した、または異物が奥に押し込まれたら、それ以上触らない・追加処置をしない
この場で持てない・送る
- 119:気道症状(誤嚥様の咳嗽・喘鳴・呼吸苦)を伴う耳・鼻内異物は気道異物に準じて対応
- urgent:ボタン電池が耳または鼻に入っている(挿入が疑われる時点で含む)。摘出を試みず気づいた時刻を記録して直ちに耳鼻咽喉科へ
- urgent:磁石が複数、または左右の鼻に分かれて入っている。磁石同士が鼻中隔などの組織を挟み込むため持てない
- urgent:鋭利なもの・生きた虫
- urgent:耳内異物で鼓膜が見えない、または鼓膜まで達している。無理に触ると鼓膜穿孔・内耳障害
- urgent:摘出を試みて出血した、または異物が奥に押し込まれた
- 要確認:耳鼻咽喉科の当直・オンコールがあるか。無ければ夜間の搬送先
- 要確認:ボタン電池・複数磁石を119区分とするか、urgent区分とするか(当院の耳鼻科搬送体制次第)
- 要確認:当院で家庭レベルの摘出(鼻をかませる・光で虫を誘導する等)を医療者が試みる方針を採るか。回数・時間の上限
- 要確認:視認できる異物への鑷子等を使った摘出を当院で行うか
- 要確認:小児の鎮静が要る場合の体制。水で膨張・接着するビーズ玩具など摘出に難渋する例は鎮静下摘出・全身麻酔が必要になりうる
- 要確認:当院の抗原検査(COVID・インフルエンザ等)の綿棒挿入手技を、傷害速報No.133の予防策に照らして見直すか(医原性の鼻腔異物予防)
手順・適応・禁忌はすべて本シートの正本の記載のみ。院内の器材・採用薬・搬送先は施設ごとに違うため、適用前に院内ルールを確認すること。