耳・鼻の異物

耳・鼻の異物

耳鼻・眼β版・逐条レビュー継続中

2026-09-13更新
β版用量は適用前に一次資料と院内採用を確認。このβ版について

施設プロファイル: 二次救急/当直帯に院内の耳鼻咽喉科はいない(2026-09-14 確認)。
飲み込んだもの(食道・胃・腸)は消化管異物、気道に入ったものは気道異物を見る。このシートは耳・鼻に入れた(入った)異物だけを扱う。

30秒要約

  • 分岐は「何が入ったか」で、日本小児科学会が家庭向けに二段階の受診目安を示している耳に入れたものが、ボタン電池やネオジム磁石、鋭利なもの、生きた虫であれば速やかに受診してくださいBB弾やビーズなどの玩具であれば、日中に耳鼻科を受診しましょう。鼻も同じ区分(鼻に入れたものは無理に自宅で取ろうとせず受診をしてください)。
  • ボタン電池は鼻・耳のどちらでも急ぐ。国内症例のまとめでは鼻腔異物となったボタン電池16例中14例で鼻中隔穿孔などの合併症が認められ,合併症を認めなかったのは2例のみであった鼻腔異物摘出まで4時間だった症例でも鼻中隔穿孔をおこした例がある
  • 磁石は複数個・両鼻がとくに危険。日本小児科学会の傷害速報は、磁石そのものの組織傷害性はボタン電池ほど高くないとしつつも、磁石同士が鼻中隔を挟んで圧迫し穿孔に至りうる例を挙げている(実例:10歳児が両鼻にネオジム磁石を入れ2時間で強い痛みが出現、圧迫解除後は大事に至らず)。
  • 無理に取り出そうとしない。消費者庁は「多くは取り出せれば大きなけがにはなりませんが、異物を無理に取り出そうとすると、奥に入ってしまい取れなくなったり、内部を傷つけてしまう危険性があります」としている。水で膨張・接着するビーズ玩具は、点耳薬や耳洗浄でかえって悪化しうる(下記)。
  • 家庭向けの対処法(鼻をかませる・光で虫を誘導する)は日本小児科学会が明示しているが、当院で同じことを医療者が行うか、器具で摘出するかは要確認

レッドフラグ → 次の一手

所見があったときにどれだけ急ぐかと、家族に何を伝えるかの対応表。3列目の文言は家族説明ページに同じ言葉で載っているので、画面を見せながら渡せる。

緊急度所見その場で次にやること時間の勝負
119気道症状(誤嚥様の咳嗽・喘鳴・呼吸苦)を伴う耳・鼻内異物気道へ落ちた可能性。気道異物に準じて対応即時
緊急ボタン電池が耳または鼻に入っている(挿入が疑われる時点で含む)摘出を試みず、気づいた時刻を記録して直ちに耳鼻咽喉科へ連絡時間とともに悪化しうる
緊急磁石が複数、または左右の鼻に分かれて入っている磁石同士が鼻中隔などの組織を挟み込む。持てない数時間で症状が強くなりうる
緊急鋭利なもの・生きた虫学会の区分でも速やかに受診の対象速やかに
緊急耳内異物で鼓膜が見えない、または鼓膜まで達している無理に触ると鼓膜穿孔・内耳障害。持てない当日
緊急摘出を試みて出血した、または異物が奥に押し込まれたそれ以上触らない。追加処置をしない当日
当日BB弾・ビーズなどの玩具で視認でき出血なく本人が落ち着いている学会の区分では日中受診でよい対象。当院で試みるかは要確認当日
当日水で膨張・接着するビーズ玩具(PVA製など)が耳に無理に鑷子で繰り返し触らない。点耳薬・耳洗浄はしない(下記)当日〜。摘出困難なら鎮静・全身麻酔を要しうる
当日目撃がなく、片側の悪臭鼻汁・鼻づまりで気づかれた鼻腔異物の見逃しサイン。対側もあわせて確認し異物を探す発見が遅れるほど悪化

鑑別:よくあるもの

異物特徴当院の扱い
耳:おもちゃの鉄砲の玉・ビーズ・綿棒の先・イヤホンのイヤーピース学会の解説が挙げる代表例。耳の異物ではおもちゃの鉄砲の玉、ビーズ、綿棒の先、イヤホンのイヤーピース、昆虫などがあります視認でき出血なく本人が落ち着いていれば、家庭と同じ範囲の方法を当院で試せるかは要確認
鼻:BB弾・ビーズ・豆類・ラムネ・ゼリー状の装飾品鼻の異物は小児の場合が多く、おもちゃなどに限らず、鼻の穴に入るものなら何でも多種多様です。実例:ラムネ(消費者庁)、ゼリー状の窓用装飾(消費者庁)詰まっていない側を押さえて強く鼻をかませる・くしゃみを誘うのを当院で試せるかは要確認
耳:ピアスのキャッチ痛みや聞こえの変化がなく長期間気づかれないことがある(消費者庁の事故報告で、耳掃除中に2つ発見、うち1つは鼓膜に入り込んでいた例がある)鼓膜近くまで入っていれば無理をしない
耳・鼻:生きた虫暴れて外耳道・鼓膜や鼻粘膜を傷つけうる学会の区分でも速やかに受診の対象。当院で光による誘導を試みるかは要確認

鑑別:見逃してはいけないもの

異物何が危険か当院の扱い
ボタン電池(鼻・耳)国内症例のまとめで16例中14例で鼻中隔穿孔などの合併症が認められ,合併症を認めなかったのは2例のみであった鼻腔異物摘出まで4時間だった症例でも鼻中隔穿孔をおこした例がある持てない。摘出を試みず直ちに耳鼻咽喉科へ
磁石が複数、または左右の鼻に分かれている日本小児科学会の傷害速報:磁石そのものの組織傷害性はボタン型電池よりも高くないが、鼻中隔穿孔に至った国内外の報告があり、穿孔のリスクは磁力の強さと圧迫時間に依存すると推察されている持てない
水で膨張・接着するビーズ玩具(PVA製など)の外耳道異物日本小児科学会の傷害速報:鼓膜に接着した場合には摘出時に穿孔を合併する可能性がある。実例は鎮静下摘出に1時間を要し、左鼓膜穿孔を伴っていた無理に鑷子で繰り返し試みない。点耳薬・耳洗浄はしない(下記)
検査用綿棒の破損による医原性鼻腔異物日本小児科学会の傷害速報:抗原検査の綿棒が鼻腔内で折れて残存し、全身麻酔下摘出を要した1歳児の実例がある当院自身の検査手技の予防策として確認(エスカレーション参照)
気道症状を伴う耳・鼻内異物誤って気道へ落ちる・誤嚥するリスク気道異物に準じる
目撃がなく、片側性の悪臭鼻漏・鼻づまり・難聴・耳漏だけで気づかれた異物発見までの時間が長いほど組織障害・炎症が進む。耳の場合には大きな問題は起こりにくいのですが、鼻の場合は放っておくと鼻炎を起こして臭いはなが出るようになります対側鑑別とあわせて異物を探す

治療ワークフロー(当院でやること)

手順やること
0分何を、いつ、どちらの耳・鼻に入れたかを聞く。目撃がなくても、片側の悪臭鼻汁・耳漏・聞こえにくさから疑う
0分まずボタン電池か、磁石が2個以上かを確認する。疑いがあれば気づいた時刻を記録し、以降の操作を増やさない
0〜5分耳鏡・前鼻鏡(あれば内視鏡)で異物を確認する。鼓膜が見えるか、鼓膜まで達していないかを見る。水に濡れた形跡のあるビーズ(PVA製など)は無理に鑷子で繰り返し触らない
判断ボタン電池/磁石2個以上/鼓膜近接・接着/出血/気道症状 → 持てない。直ちに耳鼻咽喉科へ連絡し、それ以上の摘出操作をしない
判断視認できて出血がなく本人が落ち着いている → 学会が示す家庭と同じ範囲の方法を1回だけ当院で試せるかは要確認(鼻:反対の鼻を押さえて強くかませる・くしゃみを誘う。耳の虫:暗くして光で誘導し20〜30分待つ)
試みた後取れなければそれ以上追加しない。無理に押し込むと悪化する
送る前異物の種類・左右・気づいた時刻・試みた処置をセットで申し送る

所見の取り方

所見取り方所見があったら次にどうする
異物の視認耳鏡・前鼻鏡で確認する。光沢のある円盤状のものはボタン電池を疑うボタン電池疑いなら操作を止めて送る判断へ
鼓膜見えるか、発赤・穿孔・異物の接着がないか穿孔・接着があれば持てない
粘膜の変色・出血鼻中隔・外耳道の接触部が黒く変色していないか変色は組織障害のサイン。持てない
悪臭・片側性鼻漏鼻の異物が放置されているサイン。実例では3日後に右の鼻から膿のような液が出たため受診し、鼻の穴の奥にボタン型電池が発見された(3歳児)対側もあわせて確認し、異物を探す
気道症状呼吸音・咳嗽・喘鳴あれば気道異物に準じる

検査

  • X線:ボタン電池を疑うが視認で確認できない場合に有用。症例報告では頭部単純レントゲン側面像で右鼻腔内に二重輪郭像の陰影が認められる異物を確認し,ボタン電池と思われた
  • プラスチック・木片・ビーズ・豆類など非金属の異物はX線に写らないことが多く、視診が中心になる。
  • 鼻用内視鏡・耳用内視鏡があれば視認の助けになるが、当院の在庫は要確認(エスカレーション参照)。

問診チェック

  • 何を、いつ、どちらの耳・鼻に入れたか(目撃がなければ症状からの逆算になる
  • 個数(磁石は特に。1個か複数か、左右両方にないか
  • ボタン電池を使う製品が家にあり、電池が紛失していないか
  • 自分で取ろうとしたか(ピンセット等で押し込んでいないか
  • 出血・痛み・聞こえにくさ・耳鳴りの有無
  • 呼吸器症状の有無
  • 気づいてからの経過時間(ボタン電池ならここが最重要
  • (鼻の場合)直近で当院の抗原検査(COVID・インフルエンザ等)を受けたか。綿棒の破損による医原性異物の実例がある

送る/持つ(当院=二次救急・当直帯に耳鼻咽喉科なし)

状態当院の扱い
ボタン電池(鼻・耳)持てない。摘出を試みず直ちに耳鼻咽喉科へ。気づいた時刻を伝える
磁石が複数、または左右の鼻に分かれている持てない
鼓膜に達している、鼓膜が見えない、または鼓膜に接着した耳内異物持てない
視認でき出血なく本人が落ち着いている軽微な異物学会が示す家庭と同じ範囲の方法を試せるかは要確認。取れなければ送る
生きた虫光で誘導して20〜30分待つ運用を当院で採るかは要確認。出てこなければ送る
一度試みて出血した、または奥に入ったそれ以上触らず送る

エスカレーション(施設オーバーレイで上書き)

  • 確定(2026-09-14 確認)当直帯に院内の耳鼻咽喉科はいない摘出が要るものは夜間の搬送先へ(施設名・番号は保留中)
  • 要確認:耳鏡・前鼻鏡・鼻用内視鏡の院内在庫と、使える職種
  • 要確認:当院で家庭レベルの摘出(鼻をかませる・光で虫を誘導する等)を医療者が試みる方針を採るか。試みる場合の回数・時間の上限
  • 要確認:視認できる異物への鑷子等を使った摘出を当院で行うか(行わない前提なら明記)
  • 要確認:ボタン電池・複数磁石を119(救急要請)区分とするか、urgent(当院からの即時紹介)区分とするか(下の医師確認事項)
  • 要確認:当院の抗原検査(COVID・インフルエンザ等)の綿棒挿入手技。日本小児科学会の傷害速報が挙げる予防策(頭部をしっかり固定する・綿棒の挿入は必ず鼻腔底に沿わせる・抵抗があれば反対側の鼻腔で行う・後咽頭に達する最低限の長さで把持する)を院内マニュアルに反映するか
  • 要確認:小児の鎮静が要る場合の体制処置時の鎮静・鎮痛)。水で膨張・接着するビーズ玩具など摘出に難渋する例は鎮静下摘出や全身麻酔が必要になりうる

家族に渡す一文

「耳や鼻に入ったものの種類によって、急いで取り出す必要があるものと、少し様子を見てよいものがあります。ボタン電池と、磁石が複数入っている場合は、急いで取り出す側です。ボタン電池は、短い時間しか入っていなくても、周りの組織を傷つけることがあります。当院ではこの摘出ができないので、できる病院にすぐお願いします。ご家庭では、綿棒やピンセットなどで無理に取り出そうとしないでください。かえって奥に入ってしまうことがあります。同じ製品が家にあれば、それも一緒に持って行ってください。」

医師確認事項(要・岡本判断)

  • 要確認:本シートは、ボタン電池の症例報告1件を除き診療ガイドラインではない。一次資料は日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会・日本小児科学会・日本中毒情報センター・消費者庁の一般向け解説と、日本小児科学会の傷害速報(症例報告)である。
  • 要確認:鼻・耳のボタン電池と複数磁石を「urgent」としたのは本シートの判断。日本小児科学会の家庭向け資料は「速やかに受診」という定性的な表現であり、消化管異物の食道停留電池のような「30分〜1時間」という分単位の一次資料は、鼻・耳については確認できていない。119(救急要請)にすべきか、urgent(当院からの即時紹介でよい)かは、当院の耳鼻科搬送体制次第でもあるため判断がいる。
  • 要確認:磁石が鼻に複数入った場合の時間的緊急性について、傷害速報No.78は実例(2時間の圧迫で強い痛み、解除後は大事に至らず)を示すのみで、消化管異物の磁石ほど明確な時間の一次資料はない。準じさせてよいか。
  • 要確認:水で膨張・接着するビーズ玩具(PVA製など)による外耳道異物について、傷害速報No.116は「点耳薬による前処置や摘出目的の耳洗浄を行わないこと」という専門的知見を示している。当直でこの区別ができるか、全例耳鼻咽喉科へ送る運用にするか。
  • 要確認:当院で「家庭と同じ範囲の摘出」(鼻をかませる、光で虫を誘導する)を医療者が試みてよいか、それとも全例耳鼻咽喉科へ送るか。
  • 要確認:鑷子・吸引器を使った摘出を当院で行う設備・技術があるか
  • 確定(2026-09-14 確認)当直帯に院内の耳鼻咽喉科はいない
  • 要確認:当院の抗原検査の綿棒挿入手技を、傷害速報No.133の予防策に照らして見直すか。

出典

  • 一般社団法人日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会.耳・鼻・のど・くび:どの部位にも起こる病気(異物).https://www.jibika.or.jp/modules/disease/index.php?content_id=27 (2026-09-13閲覧)。「耳の異物ではおもちゃの鉄砲の玉、ビーズ、綿棒の先、イヤホンのイヤーピース、昆虫などがあります。鼻の異物は小児の場合が多く、おもちゃなどに限らず、鼻の穴に入るものなら何でも多種多様です。耳の場合には大きな問題は起こりにくいのですが、鼻の場合は放っておくと鼻炎を起こして臭いはなが出るようになります。」「異物を放っておくと重症の炎症を起こす場合がありますので早めの摘出をおすすめします。」
  • 一般社団法人日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会.耳の症状.https://www.jibika.or.jp/modules/disease/index.php?content_id=15 (2026-09-13閲覧)。「外傷や外耳道異物、腫瘍などでも痛みを生じる場合があります。」
  • 一般社団法人日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会.鼻の症状.https://www.jibika.or.jp/modules/disease/index.php?content_id=16 (2026-09-13閲覧)。「また、幼児では鼻に異物を入れ膿性鼻漏が続くことがあります。いずれも耳鼻咽喉科でしっかりした治療が必要です。」
  • 公益社団法人日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会.主治医からのひとこと「耳・鼻に入ったものがとれない」(家庭での事故〈傷害〉予防のポイント・応急処置のポイント).https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/sho_jiko_g_16.pdf (2026-09-13閲覧・全文PDF)。「耳であれば、耳垂れや出血、痛みなどが、鼻であれば片側からの臭いがする鼻水や、鼻詰まりや、鼻血が長く続くことなどがあれば受診を検討しましょう。」「鼻に入れたものは無理に自宅で取ろうとせず受診をしてください。また、鼻をかませると逆に吸い込んでしまうことがあります。」「耳に入れたものが、ボタン電池やネオジム磁石、鋭利なもの、生きた虫であれば速やかに受診してください。BB弾やビーズなどの玩具であれば、日中に耳鼻科を受診しましょう。」「受診の際は、入れてしまったものと同じものがあれば持参してください。」「6歳以下のこどもには、耳や鼻に入るサイズのものを与えないようにしましょう」。実際にあった事例として「10歳男児がネオジム磁石を鼻に入れて遊んでいたところ、両鼻に入ってしまい、間の仕切り(鼻中隔)を挟んで接着してしまった。自力で取り外すことができず、2時間が経過して痛みが強くなりったため、医療機関を受診。接着を解除し除去することができ、大事には至らなかった。」(原文ママ。「強くなりった」は原文の表記、Injury Alert No.78の要約)。
  • 公益社団法人日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会.Injury Alert(傷害速報)No.78 強力マグネットの鼻腔異物.日本小児科学会雑誌 123(4): 781-782, 2019. https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/injuryalert/0078.pdf (2026-09-13閲覧・全文PDF)。10歳女児、100円ショップのネオジム磁石4個入りのうち複数個が両鼻腔に入り鼻中隔を挟んで接着、2時間後に痛みが強くなり受診、鼻鏡を用いて接着を解除し除去、鼻中隔穿孔なしという症例。「子どもの異物関連事故において,鼻は口に次いで 2 番目に多い侵入経路であり,小児の鼻腔異物は日常診療でしばしば遭遇する.」「磁石そのものの組織傷害性はボタン型電池よりも高くなく,両側鼻中隔粘膜の間に軟骨が存在するため,鼻中隔穿孔に至るまでの閾値は消化管粘膜に比べると高い.」「穿孔のリスクは磁力の強さと圧迫された状態での経過時間の長さに依存すると推察されている」(原文はこの語のあとに脚注番号と句点が続く)。(原文は読点「,」・句点「.」を用いる学術表記のまま引用した)。
  • 公益社団法人日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会.Injury Alert(傷害速報)No.116 ビーズ玩具による外耳道異物・鼓膜穿孔.日本小児科学会雑誌 126(11): 1540-1541, 2022. https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/injuryalert/0116.pdf (2026-09-13閲覧・全文PDF)。4歳8か月男児、ポリビニルアルコール(PVA)製ビーズ玩具(直径5mm)が左外耳道異物となり、ケタミン鎮静下に鑷子・耳鏡で摘出したが左鼓膜穿孔を合併、2か月後に閉鎖を確認した症例。「直径約 5 mm の複数個のビーズを様々な形に並べ,霧吹きで水をかけた後に乾燥させるとビーズ同士が接着して作品となる玩具である.」「鼓膜に接着した場合には摘出時に穿孔を合併する可能性がある.」「ケタミンを経静脈投与した鎮静・鎮痛下で,鑷子,耳鏡を使用し摘出した.摘出はビーズの鼓膜との癒着や出血により難渋し,鎮静開始から終了まで 1 時間を要し」「PVA 製品の外耳道異物では,親水性と接着力による周囲組織や鼓膜への接着を防ぐため,点耳薬による前処置や摘出目的の耳洗浄を行わないこと」。製品の注意書きとして「ビーズを絶対に耳に入れないでください.取り出すことが難しくなる場合があります.万一,耳に入れた場合には直ちに医師に相談してください.」
  • 公益社団法人日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会.Injury Alert(傷害速報)No.133 新型コロナウイルス抗原検査キットによる鼻腔異物.日本小児科学会雑誌 127(11): 1459-1461, 2023. https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/injuryalert/0133.pdf (2026-09-13閲覧・全文PDF)。1歳2か月男児、医療機関での抗原検査中に検体採取用綿棒が鼻腔内で破損し先端が残存、全身麻酔下に摘出した症例。「検体採取用の綿棒を児の鼻腔に挿入した.本児が大きく暴れることはなかったが,採取用の綿棒が途中で折れて先端が鼻腔に残った.」「鼻腔異物は鼻腔内に異物を挿入してしまう傷害で,2~3 歳頃に最も頻度が高く,1~6 歳でよく見られる」。予防策として「①不測の動きに備えて児の頭部をしっかり固定する②綿棒の挿入は必ず鼻腔底に沿わせる③綿棒の挿入に少しでも抵抗がある時は反対側の鼻腔で行う④後咽頭に達する最低限の長さで綿棒を把持するが挙げられる.」
  • 山口宗太,大木幹文,大久保はるか,石井祥子,櫻井秀一郎,大越俊夫.ボタン型リチウム電池による鼻腔異物の1例〜ボタン電池の危険性〜.小児耳鼻咽喉科 31(1): 7-11, 2010.https://www.jstage.jst.go.jp/article/shonijibi/31/1/31_7/_pdf/-char/ja (2026-09-13閲覧・全文PDF)。4歳女児、お祭りで買ったおもちゃ用のボタン型リチウム電池を右鼻腔に挿入、挿入後6時間で全身麻酔下に摘出し鼻中隔穿孔などの合併症は認めなかった症例報告。「ボタン電池が異物となった場合,早期に組織障害を引き起こす。そのためより早い摘出が必要である。」「アルカリボタン電池,リチウム一次電池などのボタン電池は早急に摘出すべき異物であり,摘出が遅れるとより重大な合併症が起こりうる。」「ボタン電池が鼻腔異物となった例は国内で検索しえた範囲では16例報告されている。16例中13例はアルカリボタン電池による鼻腔異物例であり,本例のようにリチウム一次電池による鼻腔異物の報告例は1例のみであった。16 例中 14 例で鼻中隔穿孔などの合併症が認められ,合併症を認めなかったのは 2 例のみであった。」(原文はこれらの文の一部に脚注番号が挟まる学術表記。脚注番号を省いて引用した)。「鼻腔異物摘出まで 4 時間だった症例でも鼻中隔穿孔をおこした例があるが,より早い摘出が合併症を引き起こさない最大のポイントであることは言うまでもない。」画像診断は「頭部単純レントゲン側面像で右鼻腔内に二重輪郭像の陰影が認められる異物を確認し,ボタン電池と思われた」(原文はこの後に図番号が続く)。摘出後の処置について「生理食塩水による洗浄はアルカリとの中和熱が発生し組織障害がすすむ可能性があると言われている。」との記載がある(当院での摘出後処置は想定していないため本文には反映していない)。
  • 公益財団法人日本中毒情報センター.ボタン電池(ボタン形電池、コイン形リチウム電池)による小児の事故.https://www.j-poison-ic.jp/general-public/accidents/button-battery/ (2026-09-13閲覧)。事例3「父親が交換後の古い電池を放置した。3日後に右の鼻から膿のような液が出たため受診し、鼻の穴の奥にボタン型電池が発見され、摘出した。(3歳男児)」「特に誤飲事故は6ヵ月~2歳に、鼻に入れる事故は2歳以上に多く起こっています。」「電池が体内に留まって電流が流れると、周囲の組織を傷つけるので(写真参照)、電池がなくなったことに気づかず、電池が食道にひっかかったまま、あるいは鼻や耳に入ったままで発見が遅れると、重症化する危険性があります。」「2歳を過ぎたら、ボタン電池が危険なもので、口や鼻に入れてはいけないことを教える。」
  • 公益社団法人日本小児科学会.こどもの救急(ONLINE-QQ)事故と対策「異物」.https://kodomo-qq.jp/jiko/index.php?pname=jiko_ibutsu (2026-09-13閲覧)。「入ったものが何であってもピンセットなどで取り出そうとしないようにしましょう。あやまって奥へ押し込んでしまう可能性があります。」「BB弾・ビーズなどの小さなおもちゃや豆類は、耳たぶを後ろ上方に引っ張って下向きにし、反対側の頭の横を軽く叩くと出てくることがあります。」「虫の場合、暗くした部屋で耳たぶを後ろ上方に引っ張って懐中電灯をあててみましょう。小さい虫なら出てくることがあります。大きい虫ではこの方法では難しいことが多いため、20〜30分待って出てこない場合は受診しましょう。」「詰まっていない方の小鼻を押さえて鼻を強くかませてみたり、コヨリで鼻をくすぐってクシャミをさせたりしてみましょう。」
  • 消費者庁.みんなの消費生活安全ナビ Vol.601 耳や鼻などに異物が詰まる事故にご注意!.https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/child/project_001/mail/20220829/ (2026-09-13閲覧)。「ゼリー状の窓用の小さな装飾(約5mm)を鼻の穴に入れてしまった。自分で取ろうとして奥に入ってしまったため受診した。摘出を試みたが、鼻血が出て困難だった。」(2歳)「ボタン電池を鼻の穴に入れて遊んでいたところ見つからなくなった。誤飲を疑い受診したところ、レントゲン検査で鼻腔内に電池が見つかり摘出した。摘出まで短時間だったが、鼻中隔穿孔のおそれがあるため、耳鼻科に通院することとなった。」(3歳)「水でくっつくビーズのおもちゃで上の子どもと遊んでいたところ、耳の穴に入れたと言ったため、保護者が確認して1つは取り出せた。奥にもう1つあり取れないため病院を受診して取り出した。」(4歳)「多くは取り出せれば大きなけがにはなりませんが、異物を無理に取り出そうとすると、奥に入ってしまい取れなくなったり、内部を傷つけてしまう危険性があります。無理に取り出そうとせず、医療機関を受診しましょう。」
  • 消費者庁.みんなの消費生活安全ナビ Vol.508 耳や鼻に異物が詰まる事故にご注意ください.https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/child/project_001/mail/20200618 (2026-09-13閲覧)。「子どもの耳や鼻の中に異物が入っているのが分かっても、無理に取り出そうとすると、どんどん奥へ入っていき、内部を傷つけてしまう危険性があります。」「子どもの耳掃除をしたときに、耳の中にピアスのキャッチが入っていることに気が付いた。いつ入れたかは不明。痛がらないし、聞こえてはいる様子。医療機関を受診すると2つ入っており、1つは鼓膜に入り込んでいた。」(3歳)

手技

手技

耳・鼻の異物—無理に取り出さない

分岐は何が入ったかで決まる。ボタン電池・複数個の磁石・鋭利なもの・生きた虫は速やかに受診、BB弾やビーズなどの玩具は日中受診でよい。無理に取り出そうとすると奥に押し込んで悪化させるため、ボタン電池と磁石2個以上は摘出を試みず直ちに耳鼻咽喉科へ。

始める前に

  • 何を、いつ、どちらの耳・鼻に入れたかを聞く。目撃がなくても片側の悪臭鼻汁・耳漏・聞こえにくさから疑う。
  • まずボタン電池か、磁石が2個以上かを確認する。疑いがあれば気づいた時刻を記録し、以降の操作を増やさない。
  • 個数を確認する(磁石は特に。1個か複数か、左右両方にないか)。
  • 要確認:耳鏡・前鼻鏡・鼻用内視鏡の院内在庫と、使える職種。

手順

  1. 1

    耳鏡・前鼻鏡(あれば内視鏡)で異物を確認する。鼓膜が見えるか、鼓膜まで達していないかを見る。水に濡れた形跡のあるビーズ(PVA製など)は無理に鑷子で繰り返し触らない

  2. 2

    ボタン電池/磁石2個以上/鼓膜近接・接着/出血/気道症状があれば、持てないと判断し直ちに耳鼻咽喉科へ連絡、それ以上の摘出操作をしない

  3. 3

    視認でき出血なく本人が落ち着いていれば、学会が示す家庭と同じ範囲の方法を1回だけ試す(鼻:反対の鼻を押さえて強くかませる・くしゃみを誘う。耳の虫:暗くして光で誘導し20〜30分待つ)

    要確認:当院でこれを医療者が試みる方針を採るか、全例耳鼻咽喉科へ送るか未確定

  4. 4

    試みて取れなければそれ以上追加しない

    無理に押し込むと悪化する

  5. 5

    送る前に、異物の種類・左右・気づいた時刻・試みた処置をセットで申し送る

やってはいけない

  • 入ったものが何であってもピンセットなどで取り出そうとしない(あやまって奥へ押し込んでしまう可能性がある)
  • ボタン電池・複数磁石は摘出を試みない
  • 水で膨張・接着するビーズ玩具(PVA製など)を無理に鑷子で繰り返し触らない。点耳薬による前処置や摘出目的の耳洗浄はしない
  • 一度試みて出血した、または異物が奥に押し込まれたら、それ以上触らない・追加処置をしない

この場で持てない・送る

  • 119:気道症状(誤嚥様の咳嗽・喘鳴・呼吸苦)を伴う耳・鼻内異物は気道異物に準じて対応
  • urgent:ボタン電池が耳または鼻に入っている(挿入が疑われる時点で含む)。摘出を試みず気づいた時刻を記録して直ちに耳鼻咽喉科へ
  • urgent:磁石が複数、または左右の鼻に分かれて入っている。磁石同士が鼻中隔などの組織を挟み込むため持てない
  • urgent:鋭利なもの・生きた虫
  • urgent:耳内異物で鼓膜が見えない、または鼓膜まで達している。無理に触ると鼓膜穿孔・内耳障害
  • urgent:摘出を試みて出血した、または異物が奥に押し込まれた
  • 要確認:耳鼻咽喉科の当直・オンコールがあるか。無ければ夜間の搬送先
  • 要確認:ボタン電池・複数磁石を119区分とするか、urgent区分とするか(当院の耳鼻科搬送体制次第)
  • 要確認:当院で家庭レベルの摘出(鼻をかませる・光で虫を誘導する等)を医療者が試みる方針を採るか。回数・時間の上限
  • 要確認:視認できる異物への鑷子等を使った摘出を当院で行うか
  • 要確認:小児の鎮静が要る場合の体制。水で膨張・接着するビーズ玩具など摘出に難渋する例は鎮静下摘出・全身麻酔が必要になりうる
  • 要確認:当院の抗原検査(COVID・インフルエンザ等)の綿棒挿入手技を、傷害速報No.133の予防策に照らして見直すか(医原性の鼻腔異物予防)

手順・適応・禁忌はすべて本シートの正本の記載のみ。院内の器材・採用薬・搬送先は施設ごとに違うため、適用前に院内ルールを確認すること。

同じ場面のシート

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