アナフィラキシーとアドレナリン注射(エピペン)

アナフィラキシーとアドレナリン注射(エピペン)

アレルギー・皮膚β版・逐条レビュー継続中

2026-07-31更新
β版用量は適用前に一次資料と院内採用を確認。このβ版について

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30秒要約

  • 気道・循環・繰り返す嘔吐を伴う全身アレルギーはアドレナリンが第一。抗ヒスタミンやステロイドで時間を稼がない。
  • エピペンは太ももの前外側。1本使ったら119。二相性がありうるので観察。
  • 用量は書かない。持参デバイスの有無を確認。

レッドフラグ

所見があったときにどれだけ急ぐかと、家族に何を伝えるかの対応表。3列目の文言は家族説明ページに同じ言葉で載っているので、画面を見せながら渡せる。

緊急度所見家族に伝えること
119呼吸苦、声のかすれ、ぐったり、反復嘔吐を伴う全身反応エピペン後も119
緊急症状が一度消えて再燃二相性反応。いったん治まっても数時間後に再燃しうることを家族に伝え、再燃したら119

問診チェック

初期プラン(コア)

  1. 気道・循環。臥位、下肢挙上は循環に応じて。
  2. アドレナリン筋注が第一(施設プロトコル)。抗ヒスタミン先行はしない。
  3. エピペン使用後は必ず救急搬送・観察。
  4. 家族説明を渡す。

家族に渡す一文

「息が苦しい、声がおかしい、ぐったり、吐いてぐったり、はアドレナリンの場面です。持っているエピペンを太ももの外側に打って、119番してください。」
https://ampl-kids-health-guide.pages.dev/patient/アナフィラキシーとアドレナリン注射(エピペン)について_患者説明_2026-07-30.html

エスカレーション

  • アナフィラキシー、気道緊急 → 119 / 上級医

出典

  • Family Guide anaphylaxis-epipen と整合

計算

kgこのシートの計算すべてに反映。タブを閉じるまで保持されるので、患者が変わったらクリアする。
計算

アドレナリン筋注量・エピペン区分

kg

大腿部中央の前外側に筋注(殿部・上腕皮下は吸収が不確実で不可)。投与時刻を記録し、治療抵抗性なら5〜15分毎に反復する。「1回打ったら終わり」ではない。

いつ使う

アナフィラキシーを疑った時点で直ちに。診断は「皮膚粘膜症状+呼吸/循環/消化器のいずれか」または「既知アレルゲン曝露後の急な血圧低下・気管支攣縮・喉頭症状」。体重が分かっていれば年齢区分より体重換算(0.01mg/kg)を優先する(肥満・低体重児で年齢区分と実体重が乖離するため)。

落とし穴
  • エピペンには体重15kg未満の承認用量区分が無い。15kg未満への0.15mg処方は適応外使用にあたり過量投与のおそれ — アンプルでの用量調整を検討する
  • 逆に体重が増えた患児の処方が0.15mgのまま更新されていないかを確認する
  • 投与部位の誤り(殿部・上腕皮下)は吸収が不安定・遅延する
  • 症状消失直後の帰宅 — 二相性反応は小児で最大11%、その約半数が6〜12時間以内。複数回投与例・重症例・投与が遅れた例では観察を延長する
  • エピペン処方だけで終わらせない。実技指導と学校・保育所の生活管理指導表までがセット
次の一手

投与後は仰臥位+下肢挙上、酸素・輸液路の確保、院内観察へ(本シート§2)。βブロッカー投与中でアドレナリン反応不良ならグルカゴンを考慮(小児20〜30μg/kg・最大1mg)。帰宅時はエピペン処方+実技指導+生活管理指導表まで。

出典

アナフィラキシーガイドライン2022(日本アレルギー学会)/エピペン注射液0.15mg・0.3mg 添付文書(2026年3月改訂 第6版)の用法・用量および警告(9)。全出典URLは本シート詳細リファレンス参照。

参考計算・参考判定です。適用は添付文書・現行ガイドライン・院内採用・患者個別要因を確認のうえ医師が判断してください。

処方

処方

処方の考え方

アナフィラキシーはアドレナリン筋注(0.01mg/kg、大腿部前外側、最大:成人0.5mg・小児0.3mg)が第一選択で、迷ったらすぐ打つ。エピペンは添付文書の体重区分(15kg未満は承認用量なし、15〜30kg未満は0.15mg、30kg以上は0.3mg)で選ぶ。抗ヒスタミン薬・ステロイドは補助薬でアドレナリン投与を遅らせる理由にならない。

場面

この数字の意味

体重換算の考え方であって処方箋ではない。実際の剤形・力価(ドライシロップ10%/20%等)と採用薬は施設ごとに違い、本シートの「院内ローカルルール」(§6)は未確定のまま。g・包数への換算は院内採用を確認したうえで行う。

薬剤名だけで用量が出ないものは、正本にその記載が無いということ。推測の数字は出さない。

参考計算・参考判定です。適用は添付文書・現行ガイドライン・院内採用・患者個別要因を確認のうえ医師が判断してください。

詳細リファレンス8章(正本より)

出所: 正本「アナフィラキシーのアドレナリン筋注_2026-07-30.md」(起草→敵対的検証→一次資料照合→独立再検証済み)。同期日: 2026-08-14。
用量・基準は「考え方」の記載であり、適用前に一次資料と院内採用・添付文書を確認すること。「医師確認事項」に残る論点は未確定。

  • 区分: 外来編/外来手技・治療
  • 記録日: 2026-07-30
  • 状態: 下書き(要・本人確認)
  • 対象: 小児外来(愛育病院)

⚠ 本ファイルはAIが最新の文献・ガイドラインをWeb検索して起草した下書き。最終的な臨床判断は医師(岡本)が確認して確定する。用量は体重換算の「考え方」のみ・個別患者値や患者情報は書かない。

0. 要点(3行)
  • アナフィラキシーは「皮膚粘膜症状+呼吸/循環/消化器のいずれか」または「既知アレルゲン曝露後の急な血圧低下・気管支攣縮・喉頭症状」で診断し、疑った時点で直ちにアドレナリン筋注(0.01mg/kg、大腿前外側)が第一選択[1]。
  • 抗ヒスタミン薬・ステロイドはあくまで補助薬で、皮膚症状の緩和以外に確立したエビデンスはなく、アドレナリン投与を遅らせる理由にならない[1]。仰臥位(下肢挙上)を保ち、急な起立・座位変換は避ける(empty vena cava/ventricle syndrome)[1]。
  • エピペンは体重区分(目安:15kg未満は0.15mgでも過量、15〜30kg未満で0.15mg、30kg以上で0.3mg)を取り違えない[2]。二相性反応(小児最大11%)に備えて数時間の院内観察を行い、エピペン処方は使い方の実技指導・学校/保育所への生活管理指導表とセットで完結させる[1]。
1. いつ使う・いつ使わない(適応/非適応)
  • 使う(適応): 日本アレルギー学会診断基準1・2のいずれかを満たす場合[1]
  • 基準1: 皮膚・粘膜症状(全身性の蕁麻疹、瘙痒または紅潮、口唇・舌・口蓋垂の腫脹など)が急速に(数分〜数時間で)発症し、さらに次のいずれか1つを伴う
  • A. 気道/呼吸:呼吸困難、呼気性喘鳴・気管支攣縮、吸気性喘鳴、PEF低下、低酸素血症など
  • B. 循環器:血圧低下または臓器不全に伴う症状(筋緊張低下[虚脱]、失神、失禁など)
  • C. その他:重度の消化器症状(重度の痙攣性腹痛、反復性嘔吐など[特に食物以外のアレルゲンへの曝露後])
  • 基準2: 典型的な皮膚症状を伴わなくても、当該患者にとって既知のアレルゲン(またはその可能性がきわめて高いもの)に曝露された後、血圧低下*または気管支攣縮または喉頭症状#が急速に(数分〜数時間で)発症した場合
  • *血圧低下の定義:乳児・10歳以下=収縮期血圧が[70+(2×年齢)]mmHg未満、または平時比30%超の低下/成人=収縮期血圧90mmHg未満、または平時比30%超の低下
  • #喉頭症状:吸気性喘鳴、嗄声、嚥下痛
  • 使わない・過剰になりがち:
  • 局所の蕁麻疹のみ・軽度の皮膚症状のみでバイタル異常や呼吸器/循環器/消化器症状を伴わない例(抗ヒスタミン薬で経過観察可)
  • 喘息発作単独(蕁麻疹・血管性浮腫・腹痛・血圧低下を伴わない)
  • 不安発作/パニック発作(蕁麻疹・血管性浮腫・喘鳴・血圧低下を伴わない)
  • 純粋な血管迷走神経反射(臥位で軽快、蒼白と発汗を伴うが蕁麻疹・皮膚紅潮・呼吸器症状・消化器症状を伴わない)
  • 部分的な発疹・瘙痒のみなど、皮膚症状はあってもA(気道/呼吸)・B(循環器)・C(重度消化器)のいずれも伴わない場合はアナフィラキシーと判断しない。※「グレード」(表11の重症度分類、グレード1〜3)は診断基準1・2とは別建ての分類で、診断後の治療強度を決めるための軸であり、「グレード2以上・複数臓器でなければ診断しない」という追加の閾値は基準1・2には存在しない。皮膚・粘膜症状にA/B/Cのいずれか1つでも急速に伴えば、その症状の重症度(グレード)を問わずアナフィラキシーと診断し、アドレナリンを投与する[1]
2. 実際(初期対応・アドレナリン投与・エピペン・観察)

2-1. 初期対応の手順(GL記載の10ステップの要旨)[1]

  1. アナフィラキシーを認識し、院内の緊急時プロトコールに沿って迅速に対応する
  2. 可能なら曝露要因を除去する(原因薬剤の点滴投与中なら中止など)
  3. 気道/呼吸/循環、精神状態、皮膚、体重を評価する
  4. 応援を呼ぶ(院内蘇生チームまたは救急隊)
  5. 大腿部中央の前外側に0.1%アドレナリン(1:1,000[1mg/mL]溶液)0.01mg/kgを直ちに筋注(最大量:成人0.5mg、小児0.3mg)。投与時刻を記録し、必要なら5〜15分毎に再投与する(ほとんどの患者は1〜2回の投与で効果が得られる)
  6. 患者を仰臥位にする(呼吸困難・嘔吐がある場合は楽な体位)。下肢を挙上させる。突然立ち上がったり座ったりした場合、数秒で急変することがある
  7. 必要な場合、フェイスマスクか経口エアウェイで高流量(6〜8L/分)の酸素投与を行う
  8. 留置針・カテーテル(14〜16Gの太いもの)で静脈路を確保し、0.9%等張食塩水1〜2Lの急速輸液を考慮(例:成人は最初の5〜10分で5〜10mL/kg、小児は10mL/kg)
  9. 必要に応じ胸部圧迫法で心肺蘇生を行う
  10. 頻回かつ定期的に血圧・心拍数・心機能・呼吸状態・酸素濃度を評価する(可能なら持続的モニタリング)

2-2. アドレナリン筋注:体重換算の考え方[1]

  • 通常量:0.01mg/kg(1mg/mL=1:1000溶液を使用)
  • 最大投与量:成人0.5mg、小児0.3mg
  • 効果発現:筋注後10分程度で血中濃度が最高になり、40分程度で半減する。効果が短時間で消失するため、症状が治療抵抗性なら5〜15分毎に反復投与する
  • 投与経路:筋肉内注射が原則(静脈内投与は心停止/心停止に近い状態以外は推奨されない。不整脈・高血圧などの有害事象リスクがあるため)
  • 投与部位:大腿部中央の前外側(殿部や他部位は不可・吸収が不確実)
  • 妊娠中の患者でも母体循環動態を守ることが胎児を守ることにつながるため筋注の適応となる
  • 既知または疑いのある心血管疾患患者でも、アドレナリン使用の絶対禁忌は存在しない(ベネフィットとリスクのバランスで判断)

簡易換算の目安(GL表14より)[1]:

年齢の目安用量の目安(1mg/mL[1:1000])
体重10kg以下の乳幼児0.01mL/kg = 0.01mg/kg
1〜5歳の小児0.15mg(0.15mL)
6〜12歳の小児0.3mg(0.3mL)
13歳以上・成人0.5mg(0.5mL)

※あくまで体重換算(0.01mg/kg、最大成人0.5mg・小児0.3mg)の考え方の補助であり、年齢だけで機械的に決めない。体重が判明している場合は年齢区分より体重換算(0.01mg/kg)を優先する(肥満・低体重児では年齢区分どおりだと実体重との乖離が生じうるため)。年齢と体重の区分が食い違う境界例(例:体重上は0.15mg相当だが年齢は6〜12歳など)でも、体重を優先して判断する。

2-3. エピペン(アドレナリン自己注射薬)の体重区分[2]

添付文書(エピペン注射液0.15mg/0.3mg。2026年3月改訂第6版が現行最新〔前版は2025年11月改訂第5版〕。以下の用法・用量・警告の記載内容自体は旧版から一貫しているが、運用前に必ず最新版原文で再確認すること)の用法・用量:「通常、アドレナリンとして0.01mg/kgが推奨用量であり、患者の体重を考慮して、アドレナリン0.15mg又は0.3mgを筋肉内注射する」「通常、成人は0.3mg製剤を使用し、小児は体重に応じて0.15mg製剤又は0.3mg製剤を使用する」。

  • 警告(9)に明記された過量投与の目安:0.01mg/kgを超える用量となるのは、0.15mg製剤では体重15kg未満、0.3mg製剤では体重30kg未満の患者。この場合は過量投与となるおそれがあるため十分な注意が必要で、それ以外のアドレナリン製剤(アンプル等)の使用も含めて検討し、患者の症状を観察した上で慎重に判断する。
  • 実地の目安(上記から逆算):15kg以上30kg未満=0.15mg/30kg以上=0.3mgエピペンには体重15kg未満に対応する承認用量区分が存在せず、15kg未満への処方は適応外使用に相当する(過量投与のおそれを伴うため通常は行わず、必要な場合は通常のアドレナリン注射液(アンプル)での用量調整を検討する)。
  • 「小児等への投与」:低出生体重児・新生児・乳児を対象とした臨床試験は実施しておらず、安全性は確立していない。
  • 禁忌(添付文書に明記):イソプレナリン・ノルアドレナリン等のカテコールアミン製剤、アドレナリン作動薬を投与中の患者(ただし、蘇生等の緊急時はこの限りでない)。GL2022が述べる「アドレナリン使用に絶対禁忌は存在しない」は心血管疾患既往を理由に投与をためらうべきでない、というアナフィラキシー治療全般の考え方であり、エピペン添付文書上のこの禁忌とは矛盾しない(他のカテコールアミン投与中という限定的な状況のみが対象)。
  • 投与部位:大腿部の前外側のみ(殿部やその他の部位への注射は避ける)。衣服の上からでも投与可能。
  • 使用方法:オレンジ色のニードルカバー先端を大腿前外側に垂直に「カチッ」と音がするまで強く押し付け、太腿に押しつけて注射する。押しつけ時間:GL2022の解説図(図14)は「5秒間」と明記している[1]。一方、現行のPMDA添付文書(後述、直近改訂版)は「数秒間強く押し付けて注射する」という記載にとどまり、具体的な秒数を明記していない可能性がある。実技指導では「数秒間(目安5秒程度)しっかり押しつける」という運用とし、指導時は必ずその時点の添付文書原文の秒数表現を確認すること。
  • 一度注射すると再注射できない仕組み(同一の製剤での二度注射は不可)。効果不十分・症状再燃時は次回投与量の医療用アドレナリン(施設内の製剤)または追加のエピペンで対応する。
  • 患者・保護者への交付時は、必ずインフォームドコンセントを実施し、保存方法・使用方法・使用時発現しうる副作用等を理解したことを確認した上で交付する。

2-4. 第二選択薬(アドレナリン以外)の位置づけ[1]

薬剤臨床的意義(GL要旨)推奨度
H1抗ヒスタミン薬(クロルフェニラミン・ジフェンヒドラミン静注、セチリジン経口など)瘙痒感・紅斑・蕁麻疹・鼻漏などを軽減するが、気道閉塞や血圧低下/ショックを防止・改善できないため救命効果はないC
β2アドレナリン受容体刺激薬(サルブタモール吸入など)喘鳴・咳嗽・息切れなど下気道症状を軽減するが、上気道閉塞や血圧低下/ショックには無効C
グルココルチコイド(ヒドロコルチゾン・メチルプレドニゾロン静注、プレドニゾロン経口など)作用発現に数時間を要し、アナフィラキシー発症後最初の数時間は救命効果がない。遷延性/二相性反応の防止・緩和を意図して使用されるが、その効果は立証されていないC
  • 第一選択薬であるアドレナリンが最優先。第二選択薬はいずれも推奨度C(比較研究などの非実験的記述研究、または無作為化対照試験もしくは準実験的研究からの類推)にとどまる。
  • H1/H2抗ヒスタミン薬の急速静注は血圧低下を、グルココルチコイドの急速静注は喘息発作等の過敏症状の発現を招く可能性があり好ましくない。
  • アドレナリンに反応しない患者、特にβブロッカー投与中の患者にはグルカゴンが有効な可能性がある(成人1〜5mg、小児20〜30μg/kg、最大1mgをゆっくり5分以上かけて静注。必要に応じ5〜10分毎に1mgずつ反復、または5〜15μg/分で持続点滴)[1]。
  • グルカゴンは日本では抗アナフィラキシー適応で未承認(適応外使用):GL2022自身が「日本での適応疾患は、動揺病、メニエール症候群に限られる」と明記しており[1]、アナフィラキシー・β遮断薬抵抗性への使用は適応外使用である旨をカルテ記載・インフォームドコンセントの観点で明示すること。

2-5. 体位[1]

  • 明らかな血圧低下がなくても、発症時は仰臥位かトレンデレンブルグ体位が望ましい。血圧が著明に低下している場合は下肢挙上が短時間でも血圧上昇に効果的。
  • 呼吸困難がある場合は座位、妊娠中は左側を下にして半仰臥位、意識消失時は回復体位にする。
  • 血管内に血液量が維持されていない病態で急に立位・坐位にすると、心室内・大静脈内が十分に充満していない"Empty"な状態(empty vena cava / empty ventricle syndrome)に陥る。この状態でアドレナリンを投与しても心臓は空打ちとなり薬効が不十分なばかりか、心拍出量低下や心室細動など不整脈誘発のリスクがある。

2-6. 二相性反応と観察時間[1]

  • 二相性反応は成人の最大23%、小児の最大11%に発生する。
  • 二相性反応の約半数は最初の反応後6〜12時間以内に出現する。
  • アドレナリン投与の遅れ(発症から30分以上)は二相性反応の出現に関連する
  • 遅延反応でアドレナリン投与を要したのは9.2%(中央値1.7時間、14分〜30時間)、うち76%は4時間以内だが7.4%は4〜10時間のうちに重篤な反応を来している。
  • GL2022自体に「◯時間観察してから帰宅」という一律の数値基準の明記はない。上記の疫学(二相性反応の約半数が6〜12時間以内に出現、アドレナリン投与の遅れが二相性反応と関連)を踏まえ、症状が治療に良好に反応し軽快した単回投与例でも数時間(目安4〜6時間)の院内観察を行い、アドレナリン複数回投与例・重症例(グレード3)・喘息合併例・アドレナリン投与が遅れた例では、より長時間(6時間超〜一晩)の観察または入院を検討するのが実地臨床の考え方。
3. 鑑別・拾える疾患/注意すべき病態[1]
  • 気道症状:喘息増悪(発作)、異物誤嚥・窒息、過換気症候群、不安発作/パニック発作
  • 精神・神経症状:血管迷走神経反射(神経調節性失神・たちくらみ)、てんかん、解離性(転換性)障害
  • 循環器症状:急性冠症候群(急性心筋梗塞、不安定狭心症)、肺血栓塞栓症、心不全、褐色細胞腫(奇異反応)、全身性毛細血管漏出症候群
  • 皮膚が紅潮する疾患:カルチノイド症候群、レッドマン症候群(バンコマイシン)、閉経周辺期、甲状腺疾患
  • 食事・食物関連:仮性アレルゲンによる中毒症状(ヒスタミン中毒=サバ・マグロなどの常温保存不良、セロトニン中毒、チラミン中毒)、生物由来の中毒(フグ・貝類・スイセンなど)
  • 血管性浮腫:非アレルギー性血管性浮腫(遺伝性I〜III型、ACE阻害薬・NSAIDs・経口エストロゲン等の医薬品関連)
  • その他:好酸球性消化管疾患、マスト(肥満)細胞症/クローン性マスト細胞異常(アナフィラキシーのリスクが高く、アナフィラキシーが本疾患の初発症状にもなりうる点に注意)、好塩基球性白血病
  • 見落とし注意:患児があまりにも頻繁にアナフィラキシー様症状や喉頭症状を訴えている場合は、保護者による代理ミュンヒハウゼン症候群も鑑別に留意する
4. 忘れがちポイント・落とし穴 ★
  • 抗ヒスタミン薬・ステロイドを先に投与してアドレナリンを遅らせる:最も典型的で危険な誤り。両薬剤とも推奨度Cで救命効果は証明されておらず、アドレナリン投与の遅れ(発症30分以降)は二相性反応の増加と関連する[1]。
  • 筋注部位の誤り:大腿前外側以外(殿部・上腕皮下など)は吸収が不安定・遅延する。エピペンの添付文書でも「大腿部の前外側以外の尻や身体の他の部分に注射しない」と明記されている[2]。
  • 血圧低下が目立たない初期のショックを見逃す:ショックの初期には血圧低下が目立たないことがあり、仰臥位でも低血圧を示さないことがある。経時的な全身観察・モニタリングを怠らない[1]。
  • 急な体位変換による急変:立位や坐位への急な変換でempty vena cava/ventricle syndromeに陥り、数秒で急変することがある。「動けそうだから座らせる/立たせる」を避ける[1]。
  • エピペンの体重区分の取り違え:15kg未満に0.15mg、30kg未満に0.3mgを投与すると0.01mg/kgを超える過量投与になりうる。逆に体重が大きい患児に0.15mgのままにしていないかも確認する。エピペンには15kg未満に対応する承認区分がなく、その処方自体が適応外使用にあたる点も併せて説明・記録する[2]。
  • 心血管疾患既往・高齢を理由に投与をためらう:アドレナリン使用に絶対禁忌は存在しない。アドレナリンを使用しなくてもアナフィラキシー自体が急性冠症候群を来しうる[1]。
  • 「1回打ったら終わり」の誤解:アドレナリンの効果は短時間で消失するため、治療抵抗性なら5〜15分毎に反復投与する。多くは1〜2回の投与で効果が得られるが、反復投与を躊躇しない[1]。
  • 症状消失直後の安易な帰宅:二相性反応は小児でも最大11%、その約半数が6〜12時間以内に出現する。特にアドレナリン複数回投与例・重症例・アドレナリン投与が遅れた例では観察を延長する[1]。
  • エピペン処方だけで終わらせる:使い方の実技指導(打つ場所の再確認、太腿に数秒間〔目安5秒〕しっかり押しつける、使用後は必ず救急要請・医療機関受診)と、学校・保育所への生活管理指導表の連携までがセット[1]。
  • グルカゴンの適応を知らない:βブロッカー内服中でアドレナリンに反応しない患者にはグルカゴンが有効な可能性がある。ただし日本での承認適応は動揺病・メニエール症候群のみで、アナフィラキシーへの使用は適応外使用にあたる[1]。
  • 静脈内投与への安易な切り替え:静脈内投与は心停止/心停止に近い状態以外では不整脈・高血圧などのリスクがあり推奨されない[1]。
5. 患者・保護者への説明(要点)
  • アナフィラキシーは命に関わる急なアレルギー反応。迷ったら「様子を見る」のではなく、すぐに注射薬(エピペン)を使うこと。
  • かゆみ・じんましんだけでなく、息苦しさ・声のかすれ・激しいお腹の痛みや繰り返す吐き気、ぐったり・顔色が悪いなどが一緒に出たら、すぐにエピペンを使う。
  • エピペンは太ももの外側(服の上からでもよい)に、5秒間しっかり押し付けて注射する。
  • 使ったあと症状が良くなったように見えても、必ず救急車を呼んで病院を受診する(数時間後に症状がぶり返すことがあるため)。
  • 立ったり座ったりせず、横になって足を高くして休む。急に立ち上がると急に具合が悪くなることがある。
  • かゆみ止め(抗ヒスタミン薬)は補助の薬であり、それだけで様子を見るのは危険。
  • 学校・保育所には生活管理指導表を提出し、エピペンの保管場所と使い方を先生たちと共有しておく。
6. 院内ローカルルール(愛育・要確認)
  • 要確認:愛育病院で採用しているアドレナリン製剤(アンプル/プレフィルドシリンジ)の規格・保管場所・救急カート内容
  • 要確認:小児科外来でのエピペン初回処方フロー(練習用トレーナーを用いた指導者・指導記録の運用)
  • 要確認:アナフィラキシー発症時の院内救急コール体制・記録用フローチャートの書式
  • 要確認:観察後の帰宅基準/入院基準に関する院内の取り決め(グレード・投与回数別の運用があるか)
  • 要確認:生活管理指導表(アレルギー疾患用)の発行フロー・園/学校連携窓口
7. 出典(日本のGL優先・URL+版年)
  • [1] 一般社団法人日本アレルギー学会 Anaphylaxis対策委員会. 『アナフィラキシーガイドライン2022』. https://www.jsaweb.jp/uploads/files/Web_AnaGL_2023_0301.pdf (2023年3月改訂版・2026-07-30にPDF原本を直接確認。定義・診断基準〔p.2〕、重症度分類表11〔p.18〕、初期対応10ステップ・第一選択薬アドレナリンの用法用量・投与部位〔p.19-22〕、第二選択薬とグルカゴンの日本適応脚注〔p.23〕、体位〔p.20〕、二相性反応の疫学〔p.17〕、エピペンの使い方図14〔p.27〕を参照。数値は原本と突合済み)
  • [2] ヴィアトリス製薬株式会社. 『エピペン注射液0.15mg/エピペン注射液0.3mg』添付文書(日本薬局方 アドレナリン注射液). PMDA医療用医薬品情報検索: https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/671450_2451402G2020_4_07 (2026-07-30にPMDAページを確認したところ、直近改訂は2026年3月〔第6版〕・その前が2025年11月〔第5版〕であり、本稿が従来引用していた2017年2月改訂第11版は既に複数回改訂された旧版。体重区分別用量・警告・禁忌〔他のカテコールアミン製剤投与中は禁忌〕・投与部位の記載は確認したが、押しつけ秒数の逐語表現など細部は本レビューではAI要約経由の確認にとどまるため、運用前に必ずPMDA該当ページで最新版の全文を人手で再確認すること)
  • 運用前に必ず最新版(改訂の有無)を上記URLで確認すること。特にエピペン添付文書は2026年3月改訂第6版が最新(2026-07-30時点)だが、原本PDFでの逐語確認が必須。

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