食物アレルギー(診断と日常管理)

食物アレルギー(診断と日常管理)

アレルギー・皮膚β版・逐条レビュー継続中

2026-09-12更新
β版用量は適用前に一次資料と院内採用を確認。このβ版について

施設プロファイル: 二次救急。診断の入口と、間違った除去を止めることが当院の仕事。

30秒要約

  • 特異的IgE陽性=食物アレルギーではない。「感作の証明だけで除去を安易に指導しないようにする」。
  • 確定には食物経口負荷試験(OFC)が要る。「特異的IgE抗体陽性だけでは診断確定とはならず、食物除去試験で症状が改善し、食物経口負荷試験で症状誘発を確認することが必要」。
  • 管理の原則は必要最小限の除去。「食物アレルギー患者の多くは(検査で陽性となった)食品の除去を必要としない」。
  • 「念のため除去」をしない。栄養とQOLを損なう。
  • 食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FDEIA)は、食べただけ・運動しただけでは起きない。食後2時間以内の運動が大部分だが、食後最大4時間を経過して発症した報告もある

レッドフラグ → 次の一手

所見があったときにどれだけ急ぐかと、家族に何を伝えるかの対応表。3列目の文言は家族説明ページに同じ言葉で載っているので、画面を見せながら渡せる。

緊急度所見次の一手
119皮膚・粘膜症状+気道/呼吸・循環器・重度消化器症状のいずれかアナフィラキシー。アドレナリン筋注(エピペン
緊急運動中・運動後のアナフィラキシーで、直前に食事をしているFDEIAを疑う。原因食物(小麦・甲殻類・果物が多い)と運動の組み合わせを聞く
緊急複数の食品を「念のため」除去していて、体重増加不良・成長障害がある不要な除去の可能性。専門外来へつなぎ、負荷試験で食べられる範囲を確定する
当日血液検査で特異的IgEが陽性だが、食べても症状が出たことがない除去しない。感作と発症は別。検査陽性だけで除去を指導しない
当日保護者が「検査してほしい」と言う何を食べて何が起きたかを先に聞く。症状のない食品を網羅的に測らない
当日園・学校でどう対応するか相談された学校生活管理指導表(アレルギー疾患用)を書く。エピペンの保管と使用の取り決めを園・学校と確認する

診断の枠組み

この3つが揃って初めて診断が確定する

  1. 食べて症状が出たという病歴
  2. 食物除去試験で症状が改善する
  3. 食物経口負荷試験(OFC)で症状誘発を確認する

特異的IgE抗体陽性は「感作」の証明にすぎない。これだけで診断も除去指導もしない。

OFCの3つの目的

  • 確定診断
  • 安全摂取可能量の決定
  • 耐性獲得の確認(食べられるようになったかの確認)

実施の条件: 「試験により得られる患者の利益が症状誘発のリスクより大きいと判断できる場合に」実施する。実施体制は「一般の医療機関」「日常的に実施している医療機関」「専門の医療機関」の3段階に分かれる。

要確認: 当院がこの3段階のどこに当たるか。OFCを当院で実施するか、専門施設へ回すかを決めておく必要がある。

管理の原則

管理の原則は必要最小限の除去である
正しい診断に基づいた必要最小限の原因食物の除去
食物アレルギー患者の多くは(検査で陽性となった)食品の除去を必要としない

  • 負荷試験で確認した「食べられる範囲」の中で摂取を続けるのが現在の考え方。全面除去を既定にしない。
  • 栄養士との連携とQOLへの配慮が明記されている。

食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FDEIA)

項目内容
病態特定の食物摂取後の運動負荷によってアナフィラキシーが誘発される
原因食物小麦、甲殻類と果物が多い
タイミング食後2時間以内の運動による発症が大部分。ただし食後最大4時間を経過して発症したとする報告もある
頻度中学生約6,000人に1人
初回発症年齢10〜20歳代がピーク
管理運動2〜4時間前の原因食物の摂取禁止を指導する。「不適切な食事・運動制限で患者のQOLを損なわないよう注意する
閾値を下げる因子NSAIDs・アルコール摂取

当直で拾うポイント: 体育・部活のあとに来たアナフィラキシーで、「昼に何を食べたか」を必ず聞く。食物単独でも運動単独でも起きないため、本人も原因に気づいていないことが多い。

園・学校への共有

  • 学校生活管理指導表(アレルギー疾患用)(公益財団法人日本学校保健会、令和元年度改訂)を医師が記載し、保護者経由で学校に提出する運用。
  • エピペンの携帯・保管、園や学校での使用の取り決めは、この指導表と学校側の体制に基づく。

要確認: 指導表本文のエピペン携帯に関する記載、および教職員によるエピペン使用の法的整理(医師法との関係)について、本シートでは一次資料での確認ができていない。複数の教育委員会マニュアルに同趣旨の記載があるが、文科省・厚労省の一次通知そのものは未確認。園・学校から質問された場合は、自治体の教育委員会のマニュアルを確認すること。

鑑別(食物アレルギーでないもの)

病態見分け
食物不耐症(乳糖不耐など)免疫機序でない。腹部症状が主で、皮膚・呼吸器症状を伴わない
口腔アレルギー症候群口腔・咽頭の違和感に限局。花粉との交差反応
食中毒・ヒスタミン中毒同じものを食べた複数人に発症
感作のみ(無症状)食べても症状が出ない。検査陽性だけで診断しない
消化管アレルギー(新生児・乳児)嘔吐・血便・体重増加不良。IgE非依存性のことが多い

送る/持つ(当院=二次救急)

状態当院の扱い
アナフィラキシーの急性期当院でアドレナリンエピペン
診断の入口(病歴聴取・特異的IgE)当院で行える
食物経口負荷試験当院で実施するかは要確認。3段階の実施体制のどこに当たるかによる
不要な除去の見直し専門外来へ。負荷試験で食べられる範囲を確定する必要がある
FDEIAの確定診断負荷試験(運動負荷を含む)が要る。専門施設へ

エスカレーション(施設オーバーレイで上書き)

  • 要確認:当院で食物経口負荷試験を実施するか。しないなら「診断は専門外来で」と明記する
  • 要確認:小児アレルギー専門外来の紹介先
  • 要確認:学校生活管理指導表の記載を当院で行うか
  • 要確認:エピペンの処方を当院で行うか

家族に渡す一文

血液検査で『陽性』と出ただけでは、食物アレルギーとは決まりません。食べて症状が出るかどうかが大事で、それを確かめる検査(食物経口負荷試験)を専門の外来で行います。心配だからと念のために除去すると、栄養が偏ったり、かえって食べられるようになる機会を逃したりします。いまの考え方は『必要最小限の除去』です。食べられる範囲を確かめて、その範囲で食べ続けるのが目標です。運動のあとに症状が出たことがある場合は、その前に何を食べたかを教えてください。特定の食べ物と運動の組み合わせでだけ起こるタイプがあります。」

医師確認事項(要・岡本判断)

  • 要確認:当院が食物経口負荷試験の実施体制3段階のどこに当たるか。ここが決まらないと、紹介の線引きが書けない。
  • 要確認:学校生活管理指導表のエピペン携帯に関する記載、および教職員によるエピペン使用の法的整理は、本シートで一次資料を確認できていない
  • 要確認:特異的IgEをどこまで当院で測るか(網羅的な測定をしない方針を明記するか)。
  • 要確認:本シートは食物アレルギー診療ガイドライン2021のダイジェスト版(Web公開)に基づく。書籍版本文は未確認。

出典

  • 日本小児アレルギー学会.食物アレルギー診療ガイドライン2021 ダイジェスト版(監修:海老澤元宏・伊藤浩明・藤澤隆夫、2021年11月13日発行).
  • 第8章・第9章 https://www.jspaci.jp/guide2021/jgfa2021_8.htmlhttps://www.jspaci.jp/guide2021/jgfa2021_9.html (2026-09-12閲覧)。「感作の証明だけで除去を安易に指導しないようにする」「特異的IgE抗体陽性だけでは診断確定とはならず、食物除去試験で症状が改善し、食物経口負荷試験で症状誘発を確認することが必要である」、OFCの定義と3つの目的(確定診断・安全摂取可能量の決定・耐性獲得の確認)、実施条件、実施体制の3段階。
  • 第10章 食物アレルギーの管理 https://www.jspaci.jp/guide2021/jgfa2021_10.html (2026-09-12閲覧)。「管理の原則は必要最小限の除去である」「正しい診断に基づいた必要最小限の原因食物の除去である」「食物アレルギー患者の多くは記載した食品の除去を必要としない」
  • 第13章 https://www.jspaci.jp/guide2021/jgfa2021_13.html (2026-09-12閲覧)。FDEIAの定義、原因食物(小麦・甲殻類・果物が多い)食後2時間以内の運動による発症が大部分だが食後最大4時間を経過して発症した報告もあること発症頻度は中学生約6,000人に1人、初回発症年齢のピークは10〜20歳代、運動2〜4時間前の原因食物の摂取禁止、不適切な食事・運動制限でQOLを損なわないこと、NSAIDs・アルコールの閾値低下作用。
  • 公益財団法人日本学校保健会.学校生活管理指導表(アレルギー疾患用)令和元年度改訂.https://www.gakkohoken.jp/books/archives/232 (2026-09-12閲覧)。発行団体・改訂年度と、医師記載→保護者経由で学校提出という運用のみ確認。本文の逐語は未確認

手技

手技

食物アレルギーを「陽性だから除去」で診断・指導しない

特異的IgE陽性は「感作」の証明にすぎず、食物アレルギーの診断ではない。診断確定には食物除去試験での症状改善と、食物経口負荷試験(OFC)での症状誘発確認が要る。管理の原則は必要最小限の除去で、食物アレルギー患者の多くは検査陽性食品の除去を必要としない。

始める前に

  • 保護者が「検査してほしい」と言ったら、まず「何を食べて何が起きたか」を先に聞く。症状のない食品を網羅的に測らない
  • 運動後のアナフィラキシーでは、体育・部活のあとでも「昼に何を食べたか」を必ず聞く。食物単独でも運動単独でも起きないため、本人も原因に気づいていないことが多い
  • OFCは「試験により得られる患者の利益が症状誘発のリスクより大きいと判断できる場合に」実施する
  • 当院がOFC実施体制の3段階(一般の医療機関/日常的に実施している医療機関/専門の医療機関)のどこに当たるかを、実施前に把握しておく

手順

  1. 1

    食べて症状が出たという病歴を確認する

    診断確定の3要件の1つ目

  2. 2

    特異的IgE検査の結果だけで除去を指導しない

    特異的IgE抗体陽性は「感作」の証明にすぎない

  3. 3

    食物除去試験で症状が改善するか確認したうえで、食物経口負荷試験(OFC)で症状誘発を確認する

  4. 4

    確定後は、OFCで確認した「食べられる範囲」の中で摂取を続けるよう指導する

    全面除去を既定にしない

  5. 5

    運動中・運動後のアナフィラキシーで直前に食事をしていたらFDEIAを疑い、原因食物(小麦・甲殻類・果物が多い)と運動の組み合わせを聞く

  6. 6

    FDEIAでは運動2〜4時間前の原因食物の摂取禁止を指導する

    不適切な食事・運動制限で患者のQOLを損なわないよう注意する

  7. 7

    園・学校での対応を相談されたら、学校生活管理指導表(アレルギー疾患用)を記載し、エピペンの保管・使用の取り決めを園・学校と確認する

やってはいけない

  • 特異的IgE陽性=食物アレルギーではない。感作の証明だけで除去を安易に指導しないようにする
  • 「念のため除去」をしない。栄養とQOLを損なう
  • 血液検査で特異的IgEが陽性でも、食べても症状が出たことがなければ除去しない。検査陽性だけで除去を指導しない
  • 症状のない食品を網羅的に測らない
  • 不適切な食事・運動制限で患者のQOLを損なわないよう注意する

終わったあと

  • 血液検査で「陽性」と出ただけでは食物アレルギーとは決まらないと伝える
  • 心配だからと念のために除去すると、栄養が偏ったり、かえって食べられるようになる機会を逃したりすることを伝える
  • いまの考え方は「必要最小限の除去」であり、食べられる範囲を確かめてその範囲で食べ続けるのが目標だと伝える
  • 運動のあとに症状が出たことがある場合は、その前に何を食べたかを教えてほしいと伝える

この場で持てない・送る

  • アナフィラキシーの急性期は当院でアドレナリン(エピペン)
  • 当院で食物経口負荷試験を実施するかは要確認。実施しないなら「診断は専門外来で」と明記する
  • 不要な除去の見直しは専門外来へ。負荷試験で食べられる範囲を確定する必要がある
  • FDEIAの確定診断には運動負荷を含む負荷試験が要る。専門施設へ
  • 要確認:小児アレルギー専門外来の紹介先、学校生活管理指導表の記載を当院で行うか、エピペンの処方を当院で行うか
  • 要確認:学校生活管理指導表のエピペン携帯に関する記載、および教職員によるエピペン使用の法的整理について、本シートは一次資料での確認ができていない(複数の教育委員会マニュアルに同趣旨の記載はあるが、文科省・厚労省の一次通知そのものは未確認)
  • 要確認:特異的IgEをどこまで当院で測るか(網羅的な測定をしない方針を明記するか)
  • 要確認:本シートは食物アレルギー診療ガイドライン2021のダイジェスト版(Web公開)に基づく。書籍版本文は未確認

手順・適応・禁忌はすべて本シートの正本の記載のみ。院内の器材・採用薬・搬送先は施設ごとに違うため、適用前に院内ルールを確認すること。

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