炎症性腸疾患を疑うとき(潰瘍性大腸炎・クローン病)

緊急

炎症性腸疾患を疑うとき(潰瘍性大腸炎・クローン病)

消化器β版・逐条レビュー継続中

2026-10-02更新
β版用量は適用前に一次資料と院内採用を確認。

施設プロファイル: 二次救急/小児内視鏡なし・小児IBD診療の経験なし。

30秒要約

  • 当直で診断する病気ではない。「疑って、送る」ための病気。ただし劇症・中毒性巨大結腸症・大量出血・穿孔は今夜の話になる。
  • 小児IBDは成人と同じではない。潰瘍性大腸炎は「一般に成人に比して短期間で全大腸炎型へ進展しやすい、重症化しやすいなどの特徴があり、成長障害にも配慮した治療が必要」。
  • クローン病は消化器症状で来ないことがある。「小児では消化器症状を主訴とせず、体重増加不良・成長障害・不明熱・鉄欠乏性貧血などの消化管外症状が先行することがある」。ここが最大の落とし穴。
  • 成長曲線を描く。身長・体重の評価には成長曲線が有用。「最近やせた」ではなく、曲線から外れたのはいつかを見る。
  • PUCAI(小児潰瘍性大腸炎活動指数)はその場で点数がつけられる。PUCAI 50以上の中等症は重症例と同じ扱い。

レッドフラグ → 次の一手

所見があったときにどれだけ急ぐかと、家族に何を伝えるかの対応表。3列目の文言は家族説明ページに同じ言葉で載っているので、画面を見せながら渡せる。

緊急度所見その場で次にやること時間の勝負
119腹部膨満+発熱+頻脈+腹痛(既知のUC/血性下痢が続いている)中毒性巨大結腸症。直ちに緊急手術を行う対象になりうる。腹部X線。当院で持てない(腹部X線)即時
119腹膜刺激症状・遊離ガス大腸穿孔。持てない(急性腹痛)即時
119大量下血+ショック輸血と外科が要る。持てない(小児の血便)即時
119重症例で全身状態不良劇症に準じた扱い。持てない即時
緊急PUCAI 65〜85(重症)入院・輸液・全身管理。持てない当日
緊急PUCAI 50以上の中等症重症例と同じ扱いとする当日
緊急血便+体重減少+発熱が2週間以上IBDとして動く。便培養で感染性腸炎を外しつつ紹介(細菌性腸炎とHUS)数日
緊急成長曲線から外れている/二次性徴が遅れているクローン病を疑う。身長・体重・骨年齢数日
緊急肛門周囲の膿瘍・痔瘻・皮垂(小児で)クローン病の肛門病変。単なる痔として扱わない数日
緊急6歳未満の発症超早期発症型IBD(VEO-IBD)。原発性免疫不全症をはじめとする単一遺伝子異常に伴う腸炎(monogenic IBD)との鑑別を要する場合があり、予後不良例も少なくない当日
当日原因不明の鉄欠乏性貧血+腹痛/下痢便潜血・CRP・アルブミン。便中カルプロテクチンの可否を確認数日
当日反復する口内炎・関節痛・結節性紅斑・ぶどう膜炎腸管外合併症。消化器症状を聞き直す数日

疑う入口(ここを外すと何年も遅れる)

入口具体的になぜ効くか
血便・粘血便が2週間以上感染性腸炎なら普通はここまで続かないUCの典型
成長障害・体重増加不良成長曲線から外れた時期を特定する診断時に10〜40%の患者で既に成長障害を認める(クローン病)
不明熱感染源が見つからない発熱が続く消化管外症状が先行することがある(不明熱)
鉄欠乏性貧血食事で説明がつかない、鉄剤で治りきらない同上(鉄欠乏性貧血)
肛門病変膿瘍・痔瘻・深い裂肛・皮垂本邦の小児クローン病は、欧米に比して上部病変や肛門病変を伴う患者が多い
夜間の腹痛・下痢で目が覚める機能性腹痛との差器質的疾患のサイン(反復性腹痛)
二次性徴の遅れ思春期に入らない成長のスパートが起きる思春期に発症する患者が多い

PUCAI(小児潰瘍性大腸炎活動指数)— その場で点数がつく

項目活動度スコア
腹痛痛みなし0
我慢できる痛み5
我慢できない痛み10
直腸出血なし0
少量のみの出血が排便回数の50%未満にみられる10
少量の出血がほぼ毎回の排便にみられる20
多量の出血(便量の50%以上)30
便の性状有形0
部分的に有形5
完全に無形10
1日の排便回数0〜2回0
3〜5回5
6〜8回10
9回以上15
夜間の排便(夜間覚醒)なし0
あり10
活動度活動制限なし0
ときに活動に制限あり5
著しい活動制限あり10
合計判定
<10寛解
10〜30軽症
35〜60中等症
65〜85重症

小児ではPUCAI 10未満を臨床的寛解とする。
中等症で炎症反応のある場合(PUCAI 50以上)は重症例と同じ扱いとし、重症例のうち全身状態不良の場合は、劇症に準じた扱いとする。

鑑別:よくあるもの(先に外す)

病態見分け次の一手
感染性腸炎(細菌性)急性発症、発熱、集団発生、渡航歴便培養。IBDを疑う前に必ず外す(細菌性腸炎とHUS)
抗菌薬関連腸炎(C. difficile)抗菌薬歴便中トキシン
アメーバ赤痢・結核性腸炎渡航歴・曝露歴専門施設
裂肛・若年性ポリープ少量の鮮血、全身状態良好、体重減少なし小児の血便
食物蛋白誘発胃腸炎(乳児)哺乳との関連小児の血便
機能性腹痛・過敏性腸症候群夜間に目が覚めない、体重減少なし、血液検査正常、成長曲線は正常反復性腹痛
IgA血管炎(腹部型)紫斑・関節痛紫斑・出血斑
セリアック病・乳糖不耐食事との関連専門施設
神経性やせ症体重減少はあるが炎症所見なし専門施設

鑑別:見逃してはいけないもの

病態見逃しの形当院の扱い
中毒性巨大結腸症腹部膨満を「ガス」で済ませる直ちに緊急手術の対象。持てない
大腸穿孔・大量出血既知のUCの増悪として様子を見る持てない
超早期発症型IBD(VEO-IBD)6歳未満のIBDを通常のIBDとして扱う持てない。原発性免疫不全症候群の遺伝子解析を考慮する
クローン病の肛門病変「痔」として軟膏を出して終わる専門施設
腸結核IBDとして免疫抑制療法を始めてしまう開始前に結核の評価
悪性リンパ腫慢性下痢・体重減少をIBDと決めつける持てない(白血病を疑うとき)
免疫抑制療法中の重症感染症発熱を「いつもの増悪」として扱う持てない。主治医へ連絡(小児敗血症)

治療ワークフロー(当院でやること)

当院は院内「重症度をつけて、感染性腸炎を外して、送る」まで。寛解導入の薬物治療は専門施設。

順やること
1バイタル+腹部所見。腹膜刺激症状・腹部膨満の有無
2PUCAIを計算する(既知UCでも初診でも)。数字で申し送れる
3成長曲線を描く(母子手帳・学校の記録)。身長・体重の評価には成長曲線が有用
4採血:血算(貧血・血小板)、CRP、赤沈、アルブミン、総蛋白、鉄・フェリチン、肝機能、電解質
5便培養・便中C. difficileトキシン。IBDと決める前に感染性腸炎を外す
6腹部X線(中毒性巨大結腸症・遊離ガス。夜間も撮れる・当直医が読む(2026-09-25 確認))。腹部エコーは当直帯に当てられない
7肛門周囲を必ず見る(膿瘍・痔瘻・皮垂・深い裂肛)
8口腔内(アフタ)、皮膚(結節性紅斑・壊疽性膿皮症)、関節、眼
9重症度で分ける。PUCAI 50以上/全身状態不良 → 今日のうちに専門施設へ
10帰す場合:再受診の条件と紹介先の予約をその場で決める
11やらないこと:診断がつく前にステロイドを始めない。止痢薬を出さない(中毒性巨大結腸症を誘発しうる)

免疫抑制療法を始める前に確認すること(紹介状に書く情報)

IBD患者に免疫抑制療法を開始する際には、日本小児科学会が推奨するすべての予防接種を、同学会が推奨する接種スケジュールを参考とし、実施しておくことが望まれる。特に、麻疹・風疹・ムンプス・水痘に未罹患・未接種の場合や、十分な抗体が獲得されていない場合には、免疫抑制療法を開始する前に該当する生ワクチンを接種しておくことが望ましい。ただし、すでに免疫抑制療法を開始している場合、生ワクチンは、ワクチン株による感染症発現の可能性が否定できないため、原則として行わない。一方、不活化ワクチンは、効果が減弱する可能性はあるが接種可能であり、積極的な接種が勧められる。

→ 当院でできること:初診の時点でワクチン歴と麻疹・風疹・ムンプス・水痘の罹患歴を記録して紹介状に書く。 これは専門施設の治療開始を早める。

治療の原則(家族への説明と、申し送りのため)

潰瘍性大腸炎

  • 腸管炎症に伴う消化器症状を改善して、活動期には早期に寛解へ導入し、さらに長期間にわたり寛解を維持することが治療の目標となる。そのためには、臨床症状の消失(臨床的寛解)とともに、内視鏡的に腸管粘膜の炎症所見が改善した状態(内視鏡的寛解)すなわち粘膜治癒を目指した治療が求められる。同時に小児では、二次性徴を含めた正常な身体的発育と精神面での発達を達成することも重要な目標である。
  • 発症後、直腸炎型が全大腸炎型に進展しやすいなど、成人に比して病変の広範囲化、重症化が見られやすい。そのため小児では、急性期には成人よりも積極的な治療が望ましく、かつ輸液を含めた適切な全身管理を必要とする。
  • 重症例で十分量のステロイド薬投与でも効果不十分の場合は、早期に難治例に対する内科的治療や外科治療を検討すべきである。難治例(ステロイド抵抗性、ステロイド依存性)の治療は経験豊富な施設で行うことが望ましく、外科治療の判断を誤らないようにする。
  • 成長障害の原因となるステロイド薬の使用は極力短期間とし、寛解維持の目的には使用しない。
  • 身長・体重・二次性徴・骨年齢などの成長の指標を定期的に確認する必要がある。

クローン病

  • 小児クローン病患者の診療では、栄養療法、薬物治療、外科治療、心理面の支援が中心となる。
  • 治療目標は、腸管炎症に伴う消化器症状を改善し、腸管内外の合併症や外科手術を回避するとともに、二次性徴を含めた正常な身体的発育と精神面での発達を達成することである。
  • 小児クローン病では診断時の病変範囲がより広範かつ重症であり、病変が進展することが多いとの報告がある。
  • 診断基準は厚生労働科学研究班により作成されており、小児クローン病の診断においても適用できる。しかし小児では、成人と異なる特有の鑑別すべき疾患の存在、経過の違いなどに特に留意する必要がある。

検査

検査何がわかるか読み方
血算貧血・血小板増多血小板増多は慢性炎症のサイン。鉄欠乏性貧血が入口になる
CRP・赤沈炎症正常でもIBDは否定できない(特に小腸型・直腸炎型)
アルブミン・総蛋白蛋白漏出・低栄養低下は重症度と相関
鉄・フェリチン鉄欠乏炎症でフェリチンは上がるので注意
便培養・C. difficileトキシン感染性腸炎IBDと決める前に必ず
便中カルプロテクチン腸管炎症活動性を知る上で有用であるが、寛解の判定においては補助的な位置づけ
腹部X線中毒性巨大結腸症・遊離ガス急変時に必須(腹部X線)
腹部エコー腸管壁肥厚・膿瘍当直帯は当院で撮れない(日勤帯の可否は要確認)(腹部エコー)
内視鏡+生検診断の確定当院で持てない
MRI(MR enterography)小腸病変専門施設
IGRA(結核)免疫抑制療法の前専門施設で行うが、聞いておく

問診チェック

  • 下痢・血便の期間と回数(夜間に目が覚めるか)
  • 腹痛の性状と時間帯
  • 体重の変化(母子手帳・学校の身体測定の記録を持って来てもらう)
  • 身長の伸び(成長曲線が描けるデータを集める)
  • 二次性徴(初経・声変わり・陰毛)
  • 肛門の症状(痛み・腫れ・膿)
  • 口内炎の頻度、皮疹(結節性紅斑)、関節痛、眼の症状
  • 家族歴(IBD・自己免疫疾患)
  • 抗菌薬歴・渡航歴・集団発生
  • ワクチン歴と麻疹・風疹・ムンプス・水痘の罹患歴(免疫抑制療法の前に要る)
  • 既知のIBDなら:現在の薬(生物学的製剤・免疫調節薬・ステロイド)、最終投与日、主治医、直近の増悪

送る/持つ(当院=二次救急・小児内視鏡なし)

状態当院の扱い
中毒性巨大結腸症・穿孔・大量出血持てない。外科のある施設へ
PUCAI 65〜85(重症)/PUCAI 50以上の中等症持てない
初発のIBD疑い(全身状態良好)当院でスクリーニングして紹介。診断は専門施設
6歳未満のIBD疑い(VEO-IBD)持てない。小児IBDの診療経験のある施設に相談し治療を進めることが望ましい
既知のIBDの軽度増悪主治医に連絡するのが先。自己判断で薬を変えない
免疫抑制療法中の発熱免疫抑制療法中の発熱は治療内容・がん/移植歴・直近ANC・カテーテルを確認し、主治医・上級医へ速やかに連絡。FN疑い・不安定例は緊急経路へ進む。安定した既知IBDでも観察・搬送・抗菌薬を主治医との合意で決め、一律の翌朝待機や帰宅にしない。
クローン病の肛門病変持てない(小児外科・IBD専門施設)
感染性腸炎と判明した当院で対応(細菌性腸炎とHUS)

エスカレーション(施設オーバーレイで上書き)

  • 要確認:小児IBDを診る紹介先(日本小児栄養消化器肝臓学会・日本小児IBD研究会の関連施設)
  • 要確認:小児の内視鏡ができる施設(小児の血便と共通の課題)
  • 要確認:便中カルプロテクチンを当院で出せるか、外注なら日数
  • 確定(2026-09-25 確認):夜間の腹部X線(当直医が読む)・アルブミン・CRPは出せる
  • 要確認:既知のIBD患者が当院に来たときの、主治医への連絡経路
  • 要確認:成長曲線を当直帯で描ける環境(電子カルテの機能・紙の曲線)

家族に渡す一文

「腸に慢性の炎症が起きる病気(炎症性腸疾患)の可能性を考えています。子どもの場合、大人と違って、お腹の症状よりも先に『体重が増えない』『身長が伸びない』『原因のわからない熱が続く』『貧血がなおらない』といった形で出ることがあります。診断には内視鏡の検査が要るので、専門の病院にお願いします。今日までの母子手帳と、学校の身体測定の記録を必ず持って行ってください。いつから成長の線から外れたかが、とても大事な情報になります。それまでの間、お腹がパンパンに張る、強い腹痛、高い熱、便に大量の血が混じる、ぐったりする、このどれかがあれば、時間を待たずに来てください。」

出典

  • 虻川大樹、ほか(日本小児栄養消化器肝臓学会・日本小児IBD研究会 小児炎症性腸疾患治療指針作成委員会).小児潰瘍性大腸炎治療指針[2019].日本小児栄養消化器肝臓学会雑誌.https://www.jspghan.org/guide/doc/shounikaiyou_chiryou_guide_2019.pdf (2026-09-13閲覧)。「小児潰瘍性大腸炎は、一般に成人に比して短期間で全大腸炎型へ進展しやすい、重症化しやすいなどの特徴があり、成長障害にも配慮した治療が必要である」「潰瘍性大腸炎の診断基準に関しては、厚生労働科学研究班により作成された診断基準が小児潰瘍性大腸炎の診断においても適用できる。しかし小児では、成人と異なる小児特有の鑑別すべき疾患の存在、臨床経過の相違などに特に留意する必要がある」「小児ではPUCAI 10未満を臨床的寛解とする」「発症後、直腸炎型が全大腸炎型に進展しやすいなど、成人に比して病変の広範囲化、重症化が見られやすい。そのため小児では、急性期には成人よりも積極的な治療が望ましく、かつ輸液を含めた適切な全身管理を必要とする。中等症で炎症反応のある場合(PUCAI 50以上)は重症例と同じ扱いとし、重症例のうち全身状態不良の場合は、劇症に準じた扱いとする」「重症例で十分量のステロイド薬投与でも効果不十分の場合は、早期に難治例に対する内科的治療や外科治療を検討すべきである。難治例(ステロイド抵抗性、ステロイド依存性)の治療は経験豊富な施設で行うことが望ましく、外科治療の判断を誤らないようにする」「身長・体重・二次性徴・骨年齢などの成長の指標を定期的に確認する必要がある。身長・体重の評価には成長曲線が有用である。成長障害の原因となるステロイド薬の使用は極力短期間とし、寛解維持の目的には使用しない」「IBD患者に免疫抑制療法を開始する際には、日本小児科学会が推奨するすべての予防接種を、同学会が推奨する接種スケジュールを参考とし、実施しておくことが望まれる。特に、麻疹・風疹・ムンプス・水痘に未罹患・未接種の場合や、十分な抗体が獲得されていない場合には、免疫抑制療法を開始する前に該当する生ワクチンを接種しておくことが望ましい。ただし、すでに免疫抑制療法を開始している場合、生ワクチンは、ワクチン株による感染症発現の可能性が否定できないため、原則として行わない。一方、不活化ワクチンは、効果が減弱する可能性はあるが接種可能であり、積極的な接種が勧められる」「便中カルプロテクチンなどのバイオマーカーは潰瘍性大腸炎の活動性を知る上で有用であるが、寛解の判定においては補助的な位置づけとなっており、参考に留める」、表1 Pediatric Ulcerative Colitis Activity Index (PUCAI) の全項目・配点と判定(<10 寛解/10〜30 軽症/35〜60 中等症/65〜85 重症)、中毒性巨大結腸症(直ちに緊急手術を行う)、外科治療の絶対的適応(大腸穿孔、大量出血、中毒性巨大結腸症)。
  • 新井勝大、ほか(日本小児栄養消化器肝臓学会・日本小児IBD研究会 小児IBD治療指針作成委員会).小児クローン病治療指針[2019].日本小児栄養消化器肝臓学会雑誌.https://www.jspghan.org/guide/doc/shouni_clone_chiryou_gyude_2019_02.pdf (2026-09-13閲覧)。「小児クローン病は、診断時の病変範囲が成人より広範かつ重症で、肛門病変を合併することも少なくない」「診断の留意点としては、小児では消化器症状を主訴とせず、体重増加不良・成長障害・不明熱・鉄欠乏性貧血などの消化管外症状が先行することがある」「本邦の小児クローン病の前方視的レジストリ研究により、欧米に比して、上部病変や肛門病変を伴う患者が多いことがわかっている」「小腸病変が存在する頻度が高く、診断時に10〜40%の患者で既に成長障害を認めるとされる。成長のスパートが起きる思春期に発症する患者が多いことから、的確な成長の評価を行いながら治療を選択する必要がある」「6歳未満で診断された超早期発症型炎症性腸疾患(very early onset inflammatory bowel disease : VEO-IBD)の診療にあたっては、原発性免疫不全症をはじめとする単一遺伝子異常(慢性肉芽腫症、X連鎖リンパ増殖症2型、IL-10/IL-10受容体異常症など)に伴う腸炎(monogenic IBD)との鑑別を要する場合があり、予後不良例も少なくないため、小児IBDの診療経験のある施設に相談し治療を進めることが望ましい」「小児クローン病患者の診療では、栄養療法、薬物治療、外科治療、心理面の支援が中心となる」「治療目標は、腸管炎症に伴う消化器症状を改善し、腸管内外の合併症や外科手術を回避するとともに、二次性徴を含めた正常な身体的発育と精神面での発達を達成することである」「診断基準は厚生労働科学研究班により作成されており、小児クローン病の診断においても適用できる。しかし小児では、成人と異なる特有の鑑別すべき疾患の存在、経過の違いなどに特に留意する必要がある。そのため、ESPGHANが報告しているRevised Porto Criteriaが用いられることが多い」。

免疫抑制中の発熱の適用範囲

免疫抑制療法中の発熱は治療内容・がん/移植歴・直近ANC・カテーテルを確認し、主治医・上級医へ速やかに連絡。FN疑い・不安定例は緊急経路へ進む。安定した既知IBDでも観察・搬送・抗菌薬を主治医との合意で決め、一律の翌朝待機や帰宅にしない。
小児FNガイドラインの主対象はがん・造血細胞移植患者であり、IBDの免疫抑制薬使用だけで同一レジメンを自動適用しない。小児FN2023を対象範囲確認に用いる。

病態・根拠7章
腸症状だけでなく成長をみる

IBDでは腸管の炎症が持続し、下痢・腹痛・出血に加えて、栄養吸収の低下や摂取不足、貧血を来す。反復する血便、夜間も続く症状、体重や成長曲線の低下、肛門周囲の痛み・瘻孔は、機能性腹痛として経過をみる前に専門評価が必要な手掛かりである。[1]

血性下痢は感染性腸炎でも生じる。既にIBDと診断されていても、症状悪化をすべて再燃とせず、便の病原体検査やC. difficile検査などを状況に応じて選ぶ。感染の評価を省いて免疫抑制治療を増やさない。[1][2]

検査の役割と専門科に渡す情報

血算・鉄関連は出血と貧血、アルブミンは栄養と蛋白喪失、炎症反応は全身炎症、電解質・腎機能は脱水や治療への影響を調べる。便カルプロテクチンは腸管炎症の手掛かりになるが病名を確定する検査ではなく、健康な就学前児でも高い場合がある。単独の数値でIBDと診断しない。[1][2]

確定と病変の広がりの評価は専門施設で行う。当院には小児内視鏡やIBD診療体制がないため、症状経過、便回数と血液の有無、体重・身長の推移、血液・便検査、服薬と服薬継続状況をまとめて紹介する。受診日までの水分・栄養と再評価の担当も決める。[1][2](当院運用)

強い腹痛や血性下痢に発熱・循環不全、腹部膨満、腹膜刺激、閉塞や膿瘍の疑いが加われば緊急入院評価が必要になる。止痢薬で症状だけを抑えるより、重症大腸炎や外科合併症を評価する。再燃時のステロイドや生物学的製剤の導入・増減は、感染と合併症の評価を踏まえて専門科と相談する。[1][2]

維持薬を自己判断で止めると再燃につながり得る。感染を心配する家族にも、中止・再開は薬剤と病状ごとに主治医へ確認するよう伝える。出血増加、飲めない、尿が減る、痛みや膨満の悪化は予約日を待たない。[1][2]

出典
  1. 海外・NSW Ministry of Health:Paediatric Gastroenterology referral criteria, IBD(p16)(本文確認:2026-10-23)
  2. 海外・Sydney Children’s Hospitals Network:IBD Investigations and medication(本文確認:2026-10-23)

海外資料の薬剤・処置は国内の承認・院内採用を意味しない。本文の施設条件を前提に適用する。

臨床医が迷う場面
下痢がなくても、成長不良と治らない鉄欠乏でIBDを疑う?

小児クローン病では成長障害、体重増加不良、不明熱や貧血が先行することがある。成長曲線、口腔アフタ、肛門病変、腹痛・便の変化を確認し、小児消化器へ相談する。鉄剤や栄養指導だけで長く追い、背景の腸炎を見逃さない。

出典:日本小児栄養消化器肝臓学会 小児UC治療指針2019 / 日本小児栄養消化器肝臓学会 小児クローン病治療指針2019

既知IBDで血便が増えた。残っているステロイドを増やす?

活動性だけでなく感染、服薬状況、薬の副作用を評価する。腹部膨満、強い痛み、多量出血、全身状態不良は緊急相談の対象。主治医へ現在の薬、便回数・血液量、発熱、検査を伝え、患者や一般外来の自己判断で免疫抑制薬を増減しない。

出典:日本小児栄養消化器肝臓学会 小児UC治療指針2019 / 日本小児栄養消化器肝臓学会 小児クローン病治療指針2019

症状が落ち着いたら、身長や思春期の評価は不要?

臨床症状だけで治療目標を満たしたとはいえない。身長・体重の成長曲線、二次性徴、栄養、貧血、学校生活を継続評価する。ステロイドの長期使用は成長にも影響するため寛解維持薬として漫然と続けず、専門医が病勢と治療負担を調整する。

出典:日本小児栄養消化器肝臓学会 小児UC治療指針2019 / 日本小児栄養消化器肝臓学会 小児クローン病治療指針2019

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