クループ(犬が吠えるような咳)

緊急

クループ(犬が吠えるような咳)

呼吸器β版・逐条レビュー継続中

2026-10-02更新
β版用量は適用前に一次資料と院内採用を確認。

家族説明を開く

当院の当直帯に頸部CTは撮れない。単純X線は撮れる(2026-09-14 確認)。気道確保の専門体制は無い。
クループの重症度は吸気性喘鳴・陥没呼吸・意識・チアノーゼで決まり、すべて画像なしで評価できる。
画像が要るのは急性喉頭蓋炎・細菌性気管炎との鑑別で、そこは当院で確かめられない。流涎・高熱・前傾姿勢・急な悪化があれば、確かめずに気道を扱える施設へ(急性喉頭蓋炎・細菌性気管炎)。

30秒要約

  • 犬吠様咳嗽・嗄声・吸気性喘鳴。多くはウイルス性で聴診と視診で診断。
  • 夜に悪化しやすい。興奮させない。のどの奥を無理に覗かない。
  • 流涎・開口制限・急な吸気苦(異物や喉頭蓋炎・アナフィラキシー)をクループに誤らない。

レッドフラグ

所見があったときにどれだけ急ぐかと、家族に何を伝えるかの対応表。3列目の文言は家族説明ページに同じ言葉で載っているので、画面を見せながら渡せる。

緊急度所見家族に伝えること
119チアノーゼ、反応不良、会話不能、強い陥没家族ページの「受診の目安」に載っている。画面を見せて指差しで渡す
緊急安静時の吸気性喘鳴の増悪、水分不可、吸入後の再悪化家族ページの「受診の目安」に載っている。画面を見せて指差しで渡す
緊急流涎・開口制限・異物/アレルギー様の急な吸気苦家族ページの「受診の目安」に載っている。画面を見せて指差しで渡す(別疾患)

問診チェック

初期プラン(コア)

  1. 落ち着かせる。無理に咽頭を展開しない。
  2. 典型例は画像・採血は不要なことが多い。
  3. ステロイド内服、必要ならアドレナリン吸入は施設プロトコル。量は診察で決める。
  4. 市販の総合感冒薬・咳止め・抗ヒスタミンは勧めない。
  5. 家族説明 → Family Guide「クループ」。夜の見守り、再受診サイン。

家族に渡す一文

「犬が吠えるような咳の多くはかぜの延長です。できるだけ落ち着かせて、のどの奥は無理に見ないでください。唇が青い、陥没が強い、よだれで飲めないときはすぐ連絡してください。夜に強くなりやすいです。」
→ https://ampl-kids-health-guide.pages.dev/patient/クループ(犬が吠えるような咳)について_患者説明_2026-07-30.html

エスカレーション

  • 気道緊急、非典型(流涎・開口制限・異物)、吸入後再燃 → 上級医

計算

kgこのシートの計算すべてに反映。タブを閉じるまで保持されるので、患者が変わったらクリアする。
スコア

Westley クループスコア

吸気性喘鳴(stridor)

陥没呼吸

呼吸音(air entry)

チアノーゼ

意識レベル

合計 0 / 17点

  • 重症度: —(軽症≦2/中等症3〜5/重症6〜11/呼吸不全切迫≧12。国際分類を院内採用)
いつ使う

クループ症候群の重症度の定量化。実務上の治療分岐は「安静時に吸気性喘鳴があるか」(あればデキサメタゾン±アドレナリン吸入の適応を判断)。中等症以上で入院考慮、重症で気管内挿管考慮。

落とし穴
  • 喘鳴・呼吸音が「静かになる」ことは改善とは限らない — 陥没呼吸・意識の悪化を伴う減弱は閉塞進行の危険サイン
  • スコア化の前に、急性喉頭蓋炎・細菌性気管炎・気道異物・アナフィラキシーの除外(本シート§1)。喉の視診・啼泣誘発は避ける
  • 生後6か月未満・気道の基礎疾患がある児はスコアが低くても入院閾値を下げる(院内方針院内)
次の一手

安静時喘鳴あり→薬物治療の適応判断(§4)。アドレナリン吸入を使ったら院内で経過観察(rebound注意)。帰宅時は再受診サインの説明へ。

出典

Westley CR, et al. Am J Dis Child 1978;132:484-487(原著)。国際分類を当院で採用(本シート§2)。

参考計算・参考判定です。適用は添付文書・現行ガイドライン・院内採用・患者個別要因を確認のうえ医師が判断してください。

処方

処方

処方の考え方

第一選択は安静時に吸気性喘鳴があるときに適応する。上のWestleyスコアから重症度が入る。スコアを付ける前に、急性喉頭蓋炎・細菌性気管炎・気道異物・アナフィラキシーを外す(本シート§1)。

重症度(Westley)

抗菌薬の適応はない(大部分がウイルス性。ただし急性喉頭蓋炎を疑うなら入院のうえ静注抗菌薬)。加湿空気の吸入は有効性を支持するエビデンスがないとされる。鎮静薬・オピオイド系鎮咳薬は、呼吸窮迫のある児の代償性努力呼吸を抑えて気道閉塞を悪化させうる。市販の総合感冒薬・抗ヒスタミン薬含有製剤は乳幼児で有効性のエビデンスがなく眠気の危険が指摘されている。

この数字の意味

体重換算の考え方であって処方箋ではない。実際の剤形・力価(ドライシロップ10%/20%等)と採用薬は施設ごとに違い、本シートの「院内ローカルルール」(§6)は未確定のまま。g・包数への換算は院内採用を確認したうえで行う。

薬剤名だけで用量が出ないものは、正本にその記載が無いということ。推測の数字は出さない。

参考計算・参考判定です。適用は添付文書・現行ガイドライン・院内採用・患者個別要因を確認のうえ医師が判断してください。

病態・根拠15章
病態から診療を組み立てる

吸気性喘鳴は、声門下の狭窄を示す

クループでは主にウイルスによる喉頭・声門下の炎症と浮腫が空気の通り道を狭める。犬吠様咳嗽、嗄声、吸気性喘鳴がその組み合わせである。気管支の平滑筋収縮を主に扱う喘息とは閉塞の場所と機序が違う。小さい児では同程度の浮腫でも気道への影響が大きく、啼泣や興奮による呼吸需要の増加が症状を悪化させるため、保護者の膝上など楽な姿勢で、まず見て評価する。[25][26]

呼吸音の静けさとSpO2で、重症を見逃さない

吸気性喘鳴は安静時か、啼泣時だけかを区別する。陥没、呼吸数、空気の入り、覚醒、顔色も同時に確認する。音が弱まっても、空気が入らない・疲れて胸が動かない場合は改善としない。低酸素は上気道閉塞の遅い徴候になりうるため、正常SpO2だけで強い陥没や傾眠を軽症へ下げない。切迫例は気道管理のできる人員・施設へ早く相談し、不要な移動・処置を避ける。[26]

赤旗は「別の上気道閉塞」への分岐

高熱と毒性、流涎、嚥下困難、前傾姿勢では喉頭蓋炎や細菌性気管炎、深頸部感染を考える。細菌性気管炎はアドレナリン吸入への反応が乏しい場合もある。突然発症や誤嚥エピソードは気道異物、蕁麻疹・顔面浮腫・循環障害を伴う急な狭窄はアナフィラキシーへ分岐する。典型的な発症年齢から外れる、反復・長期化する場合は構造的な気道疾患などを専門医と検討する。[13][25][26]

検査の利益より、刺激による悪化を先に考える

典型例は臨床診断で、頸部X線の所見を確認することやウイルスを特定することは必須ではない。血液検査や画像が必要な非典型例でも、舌圧子で無理に咽頭を観察したり、仰臥位を強いたりして閉塞を悪化させない。当院の夜間は単純X線が可能だが、CTや熟練者による超音波はできない。喉頭蓋炎など切迫する閉塞疑いでは、検査を完了する前に安全な気道管理と搬送先を調整する。[25][26]

アドレナリンの速い改善と、炎症の持続を分けて理解する

アドレナリン吸入は浮腫による閉塞を一時的に軽減するが、その反応だけで病態が治ったとはいえない。作用が薄れると狭窄症状が再び見えてくる可能性があり、必ずしも投与前を超える「反跳」を意味するわけではない。デキサメタゾンは炎症を抑えて、その後の経過を支える。適応・用量・再投与の扱いは下記の院内手順を用い、海外での全重症度へのステロイド推奨を当院の軽症例へ自動的に広げない。典型的なウイルス性クループに抗菌薬を常用せず、気管支拡張薬にも通常は適応がない。[13][25]

処置後の再評価と、夜間に戻る可能性を含む帰宅説明

当院の吸入後3〜4時間観察、2回目の吸入が必要なら入院という方針の中で、安静時の喘鳴・陥没が再燃しないかを確認する。安静時の呼吸が楽、飲水可能、家族が再燃を認識でき再受診できることを揃えて帰宅を検討する。夜間に悪化しやすいこと、流涎・飲めない・顔色不良・強い陥没や眠り込みがあればすぐ受診することを伝える。年齢が低い、処置後の再燃、診断不確実、受診手段が乏しい場合は観察を延長する。CPS/RCHは海外指針であり、当院の観察時間・再投与方針はそのまま保持する。[13][25][26]

0. 一目でわかるフロー
受診(犬吠様咳嗽・嗄声・吸気性喘鳴、多くは先行する鼻汁・咳・発熱が12-48時間先行)
  → レッドフラグ評価(急性喉頭蓋炎疑い・重度陥没呼吸・SpO2低下・意識障害)
      該当あり → 視診・啼泣誘発を避け気道確保を最優先、上位施設・麻酔科/耳鼻科へ即連携
  → 重症度判定(Westleyスコア的評価:吸気性喘鳴・陥没呼吸・air entry・意識レベル・チアノーゼ)
  → 検査(原則不要・臨床診断。レントゲン等は気道確保を妨げない範囲でのみ)
  → 治療(安静時喘鳴ありならデキサメタゾン内服 ±アドレナリン吸入〈中等症以上〉)
  → アドレナリン使用時は院内で経過観察(reboundに注意)
  → 帰宅指導(再受診サイン説明)・入院/紹介基準の判断
1. レッドフラグ(見逃し厳禁)
  • 急性喉頭蓋炎を疑うサイン: 流涎(ほぼ必発)、三脚位/嗅ぐ姿勢(sniffing position)、強い咽頭痛・嚥下痛、急性かつ劇症的な発症、犬吠様咳嗽が目立たない、全身状態不良(SIRS様)。Hibワクチン未接種歴があればより疑う。突然の呼吸停止に至り得る致死的疾患であり、無治療では生命予後不良[6][7]。
  • 細菌性気管炎を疑うサイン: 呼吸障害が強く、デキサメタゾン・アドレナリン吸入に反応しづらい(黄色ブドウ球菌が主な原因菌)[6]。
  • 切迫する気道閉塞・挿管を要する状態のサイン: 安静時の著明な陥没呼吸、呼吸音の低下・消失、意識レベルの低下、チアノーゼの出現、発熱によらない頻脈、呼吸筋疲労の徴候。これらがあれば気管内挿管の適応として速やかに気道確保の準備を行う[5]。
  • SpO2低下(酸素投与下でも改善しない低酸素)。
  • 意識障害(不機嫌からの急な変化、傾眠・意識朦朧)。
  • アナフィラキシーを疑うサイン: 発熱を欠く急性発症の吸気性喘鳴で、蕁麻疹・血管浮腫・摂食または虫刺されのエピソードを伴う場合はまずアナフィラキシーを除外する。クループとして扱いネブライザーアドレナリン・デキサメタゾンのみで対応すると管理を誤る。疑えば筋注アドレナリン(0.01mg/kg、大腿外側)を最優先する[8][9]。
  • 咽後膿瘍・扁桃周囲膿瘍を疑うサイン: 発熱・流涎・くぐもった声(hot potato voice)・頸部硬直や斜頸・開口障害。犬吠様咳嗽を欠くことが多い。疑えば頸部造影CT・耳鼻科への緊急相談を検討する[8]。
  • 気道異物を疑うサイン: 先行する鼻汁・咳等のウイルス性前駆症状を欠く突然発症の吸気性喘鳴、無熱、窒息・誤嚥エピソード歴(約9割で聴取可能)。これらがあればクループとして治療する前に気道異物を疑い、画像検査や耳鼻科/小児外科への緊急相談を優先する[9]。

⚠ 喘鳴・呼吸音が「静かになる」ことは改善のサインとは限らない: 陥没呼吸や意識レベル低下など他の努力呼吸所見が同時に悪化していれば、喘鳴・呼吸音が弱くなる/消えることは気道閉塞の進行(完全閉塞に近い状態)を示す危険サインである。「静かになった」ことだけを安心材料にしない[10][11]。

⚠ 喉の視診・喉頭刺激は気道閉塞を誘発するリスク: 診察で児を啼泣させたり、舌圧子で喉頭を刺激したりすると気道閉塞症状が急激に増悪することがあるため極力避ける。クループ症候群は原則臨床診断であり、頸部正面X線でのペンシルサイン確認や側面レントゲン撮影は必須ではない[1][6]。急性喉頭蓋炎を疑った場合は、口腔内診察・採血・レントゲン検査よりも気道確保を優先し、手術室で麻酔科医と協働で気道確保することを最優先する(検査のために気道刺激・体位変換・啼泣を招くことは避ける)[6]。

  • その他確認事項: 異物誤飲のエピソード、予防接種歴(Hib)[1]。気道熱傷がクループ様症状を呈することがある点にも留意(2025年の症例報告での指摘)[6]。
2. 重症度・病型の判定

Westley croup score(代表的な重症度スコア、5項目・最大17点)[3][4]

項目0点1点2点3点4点5点
意識レベル正常意識障害・意識朦朧
チアノーゼなし興奮時安静時
吸気性喘鳴(stridor)なし興奮時のみ安静時も出現
呼吸音(air entry)正常減弱著明に減弱
陥没呼吸なし軽度中等度高度
  • 合計点の判定: 2点以下=軽症/3〜5点=中等症/6〜11点=重症/12点以上=呼吸不全切迫(国際分類。原著: Westley CR, et al. Am J Dis Child. 1978;132:484-487)。
  • 陥没呼吸とair entryは臨床転帰予測における主要因子とされる(個別因子としてのばらつきは吸気性喘鳴・陥没呼吸で比較的小さい)。
  • 中等症以上で入院を考慮し、重症では気管内挿管を考慮する[4]。救急受診したクループ症候群のうち気管内挿管を要するのは1%未満と報告されている[4]。
  • 院内方針院内:国際分類を採用。旧版は出典[3][4](医師個人コラム・単一施設の症例報告)に基づき中等症3〜7点/重症8点以上としていたため、6〜7点は旧版では中等症・新基準では重症になる。

病型(鑑別を含む)[6]

  • ウイルス性クループ(多くはパラインフルエンザウイルス、次いでRSウイルス・アデノウイルス・インフルエンザウイルス、新型コロナウイルスの報告も海外である): 最も頻度が高く、多くは軽症だが興奮・啼泣で急激に悪化し得る。
  • 痙性クループ(spasmodic croup): 夜間に急性発症することが多い。重症例では嗄声・著明な努力呼吸(陥没呼吸)・呼吸苦を呈する。アレルギーとの関連が示唆されている。
  • (除外すべき重症疾患として)急性喉頭蓋炎、細菌性気管炎 — 頻度は低いが急速に増悪し無治療では生命予後不良なため必ず鑑別する。

実務上の分岐点: 安静時に吸気性喘鳴が聴取されるかどうかが、薬物治療(アドレナリン吸入・デキサメタゾン)の適応を判断する目安となる[1]。

3. 検査
  • 必要:
  • SpO2モニタリング(低酸素・切迫所見がある場合)。
  • バイタルサイン評価(呼吸数・脈拍・意識状態)。
  • 不要・過剰になりがち:
  • 頸部正面X線(ペンシルサイン確認)・側面レントゲンは、典型的なクループでは診断に必須ではない(臨床診断が原則)[1]。
  • 血液検査・迅速抗原検査は診断のための日常検査としては不要。
  • 異物誤飲や細菌性疾患が疑われる非典型例でのみ画像検査を考慮する(実施する場合も、検査のために気道を刺激する体位・啼泣を招かないこと。急性喉頭蓋炎疑い時は検査より気道確保を優先する)[1][6]。
4. 治療
  • 第一選択(安静時吸気性喘鳴がある場合に適応)[1][2][6]:
  • デキサメタゾン内服: 体重換算の考え方として0.15〜0.6mg/kg/回・単回投与という報告があり、国内の小児呼吸器感染症診療ガイドラインでは中等症・重症の喉頭気管支炎(仮性クループ)に対して0.15mg/kg単回経口投与を推奨している(最大量10mg)[2][23][24]。効果発現は投与後30分〜2時間、効果持続は24〜48時間とされる。軽症では0.15mg/kgと0.6mg/kgで効果差を認めないが、中等症以上では効果に差があるとの報告がある[2]。国内ではデキサメタゾンエリキシル(0.1mg/mL)が使用されることが多く、体重が大きい場合は投与量(mL)が増え製剤中エタノール含有(5%)にも留意が必要とされる[2]。

本文は国内2022GLに忠実に適応を「安静時吸気性喘鳴あり(中等症・重症)」に限定しているが、海外文献の中でも位置づけは一様ではない。RCH Melbourneは「吠えるような咳のみで喘鳴の既往がない例にはステロイドは不要」と明記しており、喘鳴の存在または危険因子がある場合に投与を検討するとしている。NICE CKSは重症度を問わず単回投与を基本とする記載がみられるが、Cochraneレビューはステロイドの有効性を重症度横断的に示す効果研究のまとめであり「軽症を含む全例への推奨」を直接述べたものではない。院内方針院内は国内2022GLどおり中等症以上に限り、軽症には投与しない(出典: RCH Melbourne Clinical Practice Guidelines “Croup”, 確認日 2026-09-25)。

  • アドレナリン吸入(中等症・重症): 国内の小児呼吸器感染症診療ガイドラインでは中等症・重症の喉頭気管支炎に対しアドレナリン吸入を推奨している[2]。

> 孫引き元では「体重換算0.01mL/kg」「添付文書上は1回投与量0.3mL/kg以内」という体重換算表現が併存していたが、採用製剤(ボスミン外用液0.1%)の添付文書をPMDA情報で直接確認したところ、体重換算(mg/kgやmL/kg)の規定は一切なく、1回の投与量はアドレナリンとして0.3mg(0.3mL)以内という固定上限である[18]。国内のクループ診療で行われる「0.01mL/kg」等の体重換算運用は適応外使用の慣行であり、添付文書の絶対上限0.3mLを超えてはならない。国際標準(ラセミック体2.25% 0.05mL/kg 最大0.5mL、L型1:1000 0.5mL/kg 最大5mLなど)は桁が異なるため混同しないこと[19]。 院内方針院内:0.01mL/kg(上限0.3mL)を生理食塩水で希釈して吸入。

  • 使用量の考え方(0.1%L型アドレナリンを生理食塩水で希釈しネブライザー投与)は上記の絶対上限0.3mL以内に収める前提で施設プロトコルを確定する。

効果発現は10〜30分、効果持続は概ね2時間程度とされる[6]。
> 再投与間隔について、添付文書は「2〜5分経過して効果不十分でももう一度吸入するのが限度で、続けて吸入する場合は少なくとも4〜6時間の間隔を空ける」ことを不整脈・心停止防止の観点から規定している[18]。従来「30分以上の間隔で再投与可能[6]」としていたのは、クループに対する適応外使用の実臨床(効果減弱・約2時間、reboundを踏まえた運用)に基づく二次資料の記載であり、添付文書の安全域(4〜6時間)とは乖離がある。院内方針院内:2回目が必要になった時点で入院(または搬送)を決め、再投与はモニター下で30分以上あけて行う。

  • 第二選択・無効時:
  • 酸素投与(低酸素がある場合)。
  • 切迫する気道閉塞徴候(1章のレッドフラグ)があれば気道確保の準備を並行して進める。気管内挿管の適応となり得るサイン: 呼吸音の消失、意識レベルの低下、チアノーゼの出現、著明な陥没呼吸、発熱によらない頻脈、呼吸筋疲労[5]。
  • (参考知見)デキサメタゾン投与後の効果発現までの補助療法として、屋外の冷気(10℃未満)に30分曝露することで軽症〜中等症のクループ症状が改善したとするRCTが報告されている(2023年)。本邦での標準治療としての位置づけは確立していない参考情報[6]。
  • やってはいけない/非推奨:
  • 抗菌薬投与(クループ症候群の大部分はウイルス性であり抗菌薬の適応はない。ただし急性喉頭蓋炎が疑われる場合は入院の上で静注抗菌薬が必要)[1]。
  • 加湿空気の吸入(有効性を支持するエビデンスはないとされる)[1]。
  • 診察時に児を啼泣させる、舌圧子で喉頭を刺激する(気道閉塞症状の増悪リスク。1章参照)[1]。
  • 鎮静薬・オピオイド系鎮咳薬の投与(呼吸窮迫のある児への鎮静は代償性の努力呼吸・興奮を抑制し、呼吸抑制・意識低下により気道閉塞を悪化させ得る)[20]。
  • 市販の総合感冒薬・抗ヒスタミン薬含有製剤(乳幼児には有効性のエビデンスがなく、眠気による危険性が指摘されている)[20][21]。
5. 再診・帰宅指導・保護者説明
  • 再受診すべきサイン(保護者に伝える)[1]:
  • 努力呼吸・起坐呼吸が出現したとき。
  • 安静にしていても呼吸が苦しそうなとき、症状が今より悪化したとき。
  • 水分がとれない、活気がない、呼びかけへの反応が乏しいとき。
  • クループは夜間に悪化しやすいため、自宅では夜間の様子を特によく観察するよう伝える[1]。
  • 経過の見通し: 多くは数日から1週間程度で自然軽快する[1][6]。ウイルス性クループ・痙性クループは一般に予後良好[6]。
  • アドレナリン吸入後の観察(reboundの注意): アドレナリン吸入による症状改善は一過性であり、効果が切れた後に症状が再燃(rebound)するリスクがあるため、帰宅後の悪化に注意が必要である[6]。アドレナリン吸入を行った場合は、院内で一定時間の経過観察を行い、症状の再燃がないことを確認したうえで帰宅可否を判断する。

> 院内方針院内:一次ガイドラインに明記された数値は無いため、症状再燃なしを確認できるまで最低3〜4時間、かつスコアがベースラインに戻ったことを再評価してから帰宅判断する保守的デフォルトを置く[6]。

  • 紹介・入院の閾値:
  • Westleyスコアで中等症(3〜5点)以上を入院の目安とし、重症(6点以上)では気管内挿管も考慮する(国際分類・2026-09-25 院内採用)。
  • 1章のレッドフラグ(急性喉頭蓋炎疑い、切迫する気道閉塞徴候、SpO2低下、意識障害)に該当する場合は、院内での経過観察に固執せず速やかに上位施設・気道確保が可能な体制への連携を判断する。
  • 生後6ヶ月未満の乳児、または挿管歴・上気道狭窄の基礎疾患がある児は気道径が小さく急速に増悪しやすい独立したリスク因子であり、Westleyスコアが低くても入院・慎重な経過観察の閾値を下げることを検討する[9]。 院内方針院内:閾値を下げる。
  • 反復するクループ(recurrent croup)、6ヶ月未満または学童期以降(6歳以上)での初発、症状が1週間以上遷延する非典型例は、喉頭軟化症・声門下狭窄・血管輪などの器質的気道疾患の除外のため耳鼻咽喉科へ紹介する[22]。
7. 出典
  1. 厚生労働科学研究(宮入班)「抗微生物薬適正使用の手引きの改正内容(たたき台)」クループ症候群の項. https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/shiryo2_2.pdf (2026年7月アクセス確認)
  2. 小児呼吸器感染症診療ガイドライン作成委員会(日本小児呼吸器学会・日本小児感染症学会)『小児呼吸器感染症診療ガイドライン2022』CQ2(アドレナリン吸入)・CQ3(ステロイド投与). 一次資料は書籍(協和企画刊)のため、CQ内容の要約引用元として: つだ小児科クリニック「小児呼吸器感染症診療ガイドライン2022のCQ.」 https://tsudashonika.com/disease-cat/respiratory/child-respiratory-infections-guideline/ (2026年7月アクセス確認)。デキサメタゾン0.15mg/kg単回投与の数値は独立した2件の印刷物(出典23・24)で同一数値を確認済み。2022年版原著(協和企画刊)そのものはオンライン全文が無く未入手。同ガイドラインは電子版で少なくとも2024年に部分改訂があり(肺炎章は学会誌に「2022(2024年改訂版)」として別掲載)、クループ章がその改訂対象かは未確認(2026-09-26確認)。
  3. 日本医事新報社「クループ症候群[私の治療]」(Westleyクループスコアの点数配分). https://www.jmedj.co.jp/blogs/product/product_23811 (2026年7月アクセス確認)
  4. 原佑太朗ほか「気管内挿管を要した重症クループ症候群の1例」仙台市立病院医学雑誌(Westley croup score表、気管内挿管の適応、第217回日本小児科学会宮城地方会2014年発表). https://hospital.city.sendai.jp/pdf/p053-056%2035.pdf (2026年7月アクセス確認)
  5. 同上4(気管内挿管の適応、引用元: Fleisher G. Infectious disease emergencies. Textbook of Pediatric Emergency Medicine, 5th ed, 2006, p783-851)
  6. 今日の臨床サポート(エルゼビア・ジャパン)「クループ症候群(小児科)」黒澤照喜(両国キッズクリニック)著/絹巻暁子(東京大学医学部小児科学教室)監修、著者校正/監修レビュー済2026/04/22。参考ガイドライン: 日本小児呼吸器学会『小児の咳嗽診療ガイドライン2025』、日本小児呼吸器学会・日本小児感染症学会『小児呼吸器感染症診療ガイドライン2022』. https://clinicalsup.jp/jpoc/contentpage.aspx?diseaseid=1583 (2026年7月アクセス確認。本文後半は契約者限定のため、無料閲覧範囲+検索結果スニペットの範囲での引用)
  7. MSDマニュアル プロフェッショナル版「Table: 喉頭蓋炎とクループの鑑別」. https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/multimedia/table/喉頭蓋炎とクループの鑑別 (2026年7月アクセス確認)
  8. JUCM "Acute Stridor in Children". https://www.jucm.com/acute-stridor-children/ (2026年7月アクセス確認)
  9. StatPearls "Stridor in Children" (NBK525995). https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK525995/ (2026年7月アクセス確認)
  10. EMRA "Barking Up the Wrong Tree: Not all Stridor is Croup". https://www.emra.org/emresident/article/barking-up-the-wrong-tree-not-all-stridor-is-croup (2026年7月アクセス確認)
  11. AMBOSS "Airway obstruction". https://www.amboss.com/us/knowledge/airway-obstruction (2026年7月アクセス確認、要契約者確認)
  12. MDCalc "Westley Croup Score". https://www.mdcalc.com/calc/677/westley-croup-score (2026年7月アクセス確認)
  13. CPS "Acute management of croup in the emergency department". https://cps.ca/en/documents/position/acute-management-of-croup (2026年7月アクセス確認)
  14. Westley CR, et al. "Nebulized racemic epinephrine by IPPB for the treatment of croup." Am J Dis Child. 1978;132(5):484-487.(原著論文。本ファイルでは孫引きのみで原文未確認)
  15. NICE CKS "Croup" guidance(2026年7月時点の検索結果に基づく要約。原文の直接確認が望ましい)
  16. RCH Melbourne Clinical Practice Guidelines: "Croup (Laryngotracheobronchitis)". https://www.rch.org.au/clinicalguide/guideline_index/croup_laryngotracheobronchitis/ (2026年7月アクセス確認)
  17. Cochrane "Glucocorticoids for croup in children" (CD001955). https://www.cochrane.org/evidence/CD001955_glucocorticoids-croup-children (2026年7月アクセス確認)
  18. ボスミン外用液0.1%添付文書(第一三共株式会社)、PMDA医薬品医療機器情報検索. https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/1_2451700Q1032_1_09 (2026年7月WebSearchで用法用量記載を確認:気管支痙攣の緩解に対し1回0.3mg以内・体重換算規定なし・反復投与は4〜6時間以上の間隔)
  19. droracle.ai racemic epinephrine dosing summary(国際標準の参考値。一次資料での直接確認が望ましい)
  20. Pharmaceutical Journal "Croup: diagnosis and management". https://pharmaceutical-journal.com/article/ld/croup-diagnosis-and-management (2026年7月アクセス確認)
  21. Mayo Clinic "Croup". https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/croup/diagnosis-treatment/drc-20350354 (2026年7月アクセス確認)
  22. StatPearls "Laryngotracheobronchitis" (NBK519531). https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK519531/ (2026年7月アクセス確認)
  23. 『小児呼吸器感染症診療ガイドライン2017』p.54(CQ一覧表)・p.69(CQ推奨文・解説)
  24. 『小児の薬の選び方・使い方 改訂5版』p.260

※ 点数・GLは改定される。運用前に最新版を確認。出典2(デキサメタゾン0.15mg/kg等の中核用量)は出典23・24(独立した2件の印刷物)で0.15mg/kg・最大10mgを確認済み(2026-09-26)。『小児呼吸器感染症診療ガイドライン2022』原著書籍(協和企画刊)そのものはオンライン全文が無く未入手。同ガイドラインの2024年部分改訂がクループ章に及ぶかは未確認のまま残る。

  1. 厚生労働省.抗微生物薬適正使用の手引き 第四版 医科・外来編.2026-01-16.第9章「クループ症候群」pp.69–71.https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001630903.pdf (2026-10-02公開PDF本文確認。声門下狭窄の臨床像・鑑別・刺激を避ける診察・臨床診断・抗菌薬非適応)
  2. Royal Children's Hospital Melbourne. Croup (Laryngotracheobronchitis). https://www.rch.org.au/clinicalguide/guideline_index/croup_laryngotracheobronchitis/ (2026-10-02本文確認。気道狭窄の重症評価・低酸素の限界・再評価・帰宅。海外の用量・観察時間は院内オーダーへ転用しない)

上記13のCPS本文は2026-10-02再確認。アドレナリンの一時的作用とステロイドの役割、作用消失後の再評価を参照。国内の既存投与数値は本追補で変更していない。

臨床医が迷う場面

2026-10-27追記。海外指針の評価の考え方は参考とし、国内承認用量・既存の院内方針院内と区別する。

デキサメタゾンを飲んで30分、まだ咳がある。追加する?

咳だけで追加しない。抗炎症効果の臨床的改善は通常2〜3時間からで、単回投与後24〜48時間続く。安静時の喘鳴・陥没・飲水を再評価し、閉塞が強ければ効果待ちだけにせずアドレナリン吸入と気道管理を検討する。当院は院内中等症以上への単回投与方針を維持する。

出典:CPS:クループ救急診療(2026年改訂・海外指針)

アドレナリン吸入で改善したらすぐ帰してよい?

効果は一時的で、約2時間で薄れるため直後の改善だけでは帰宅不可。当院では最後の吸入後3〜4時間観察し、安静時の喘鳴・陥没が再燃しないこと、飲水と再受診手段を確認する。夜間、受診が難しい家庭、再燃歴では観察を延ばす。2回目が必要なら当院方針どおり入院・搬送を決める。

出典:CPS:クループ救急診療(2026年改訂・海外指針) / RCH:クループ(海外指針)

繰り返すクループには毎回同じ薬でよい?

6か月未満、反復・遷延、通常より重い経過では声門下狭窄など気道の背景疾患を疑う。急性期の閉塞を治療したうえで、耳鼻科・小児呼吸器へ評価を依頼する。既往の重症クループや基礎の気道狭窄があれば、同じ見た目でも慎重に観察する。

出典:CPS:クループ救急診療(2026年改訂・海外指針) / RCH:クループ(海外指針)

吸入が効かず、高熱と流涎がある。次も吸入?

細菌性気管炎、喉頭蓋炎、深頸部感染を疑う。無理な咽頭診察や仰臥位を避け、本人が楽な姿勢で気道管理ができる上級医・搬送先を直ちに確保する。画像や検査の完了を優先せず、クループとして吸入を繰り返すだけで経過を見ない。

出典:CPS:クループ救急診療(2026年改訂・海外指針) / RCH:クループ(海外指針)

気管支拡張薬や抗菌薬を足すと咳が早く止まる?

典型的なウイルス性クループの主病変は声門下の浮腫で、通常はSABAや抗菌薬を追加しない。呼気性喘鳴が別にある、細菌感染を疑う高熱・毒性所見がある場合は診断を分けて考える。鎮静を伴う鎮咳薬で症状を隠したり、家庭の加湿を気道閉塞の治療代わりにしたりしない。

出典:CPS:クループ救急診療(2026年改訂・海外指針) / RCH:クループ(海外指針)

軽症の扱いが海外と違うが、どう説明する?

海外では軽症へのステロイドを広く勧める指針もあるが、当院は院内安静時喘鳴のある中等症以上に投与する既存方針で運用する。軽症でも年齢・背景疾患・受診アクセスでリスクを再評価し、迷う場合は上級医へ相談する。帰宅時は安静時喘鳴、飲めない、陥没、眠り込みの出現で直ちに再受診と伝える。

出典:CPS:クループ救急診療(2026年改訂・海外指針) / RCH:クループ(海外指針)

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