髄液検査(腰椎穿刺)

髄液検査(腰椎穿刺)

検査・画像・処置β版・逐条レビュー継続中

2026-09-13更新
β版用量は適用前に一次資料と院内採用を確認。このβ版について

施設プロファイル: 二次救急/脳外科なし/当直帯に頭部CT・MRIは撮れない腰椎穿刺も、髄液の測定(細胞数・糖・蛋白・グラム染色)も当院でできる(2026-09-14 確認)。培養だけは夜間に提出できない

30秒要約

  • 細菌性髄膜炎の確定診断は腰椎穿刺による髄液検査のみで可能。やるかやらないかで迷ったら、禁忌がないかだけを確認する
  • 頭部CTや臨床所見より脳ヘルニアが疑われず、かつ髄液検査の禁忌でない限り、腰椎穿刺による髄液検査(髄液細胞数、髄液糖濃度、血清糖、髄液蛋白量、グラム染色)を速やかに行う。ただし、検査を行うことで治療開始が1時間以上遅れる場合にはこの限りではない(推奨グレードB)。
  • CTは全例に要らない必ずしも全例で行う必要はない。意識障害、神経巣症状、痙攣発作、乳頭浮腫、免疫不全患者、60歳以上の患者では、頭部CTが推奨される。ただし、頭部CTのために治療開始が1時間以上遅れるような場合にはこの限りではない(推奨グレードB)。
  • 禁忌は「所見」で決まる視神経乳頭浮腫、一側・または両眼の瞳孔固定または散大、除脳・除皮質肢位、Cheyne–Stokes呼吸、固定した眼球偏位は脳ヘルニアの徴候であり腰椎穿刺は禁忌(推奨グレードB)。
  • 穿刺できないときは血液培養頭蓋内圧亢進などにより髄液検査が施行不可能な場合は血液培養の結果が起炎菌同定に重要

やる/やらないの判断(当直で迷わない順番)

確認することYesなら
1脳ヘルニアの徴候はあるか(下の禁忌の5つ)腰椎穿刺は行わずに速やかに抗菌薬治療を開始する
2出血傾向はあるか(血小板著減・抗凝固薬・DIC)穿刺しない。専門施設と相談
3穿刺部位に皮膚感染はあるか穿刺しない
4循環・呼吸が不安定か安定させるのが先。体位で悪化する
5頭部CTの適応か(意識障害・神経巣症状・痙攣発作・乳頭浮腫・免疫不全)当直帯の当院にCTは無いので、この行は「先に抗菌薬」に固定される。CTが要る状態=搬送の理由であって、当院で待つ理由にはならない
6上のどれもなければ速やかに腰椎穿刺ただし検査で治療開始が1時間以上遅れるならこの限りではない

「抗菌薬を先に打つと培養が出なくなる」は事実だが、1時間を超えて治療を遅らせる理由にはならない。 その場合は血液培養を採ってから抗菌薬を開始し、後で穿刺する細菌性髄膜炎)。

レッドフラグ → 次の一手

所見があったときにどれだけ急ぐかと、家族に何を伝えるかの対応表。3列目の文言は家族説明ページに同じ言葉で載っているので、画面を見せながら渡せる。

緊急度所見その場で次にやること
119視神経乳頭浮腫腰椎穿刺は禁忌。血液培養→抗菌薬→搬送
119一側・または両眼の瞳孔固定または散大同上
119除脳・除皮質肢位同上
119Cheyne–Stokes呼吸同上
119固定した眼球偏位同上
119大泉門膨隆(乳児)+意識障害頭蓋内圧亢進。穿刺しない
緊急髄液初圧が200 mmCSFを超える髄液圧測定を中止し、速やかに髄液採取を行うと同時にグリセオール点滴を行うのが望ましい
緊急穿刺後の頭痛・悪心低髄圧症状。臥床・補液
緊急穿刺後に意識レベルが低下脳ヘルニアを疑う。119

髄液の正常値と各種髄膜炎の所見(そのまま使う表)

項目正常値(小児・成人)正常値(乳児)細菌性髄膜炎ウイルス性髄膜炎結核性髄膜炎
髄液初圧(mmCSF)50〜180100>180<180>180
細胞数(/mm³)≦5≦81,000〜5,000100〜1,00025〜500
多形核球比率(%)060≧800<50
髄液蛋白(mg/dL)≦4520〜170100〜50050〜100>50
髄液糖(mg/dL)45〜8034〜119≦40正常域≦40
髄液糖/血糖比0.60.81<0.4>0.6<0.5

細胞数の正常上限は年齢で変わる満期出産新生児は22/mm³、生後0〜8週の乳児では30/mm³、生後8週以上では5/mm³

髄液糖/血糖比は同時血糖の0.6以下が異常値で、0.4以下の場合は細菌性髄膜炎が強く疑われる。生後2か月の細菌性髄膜炎では、髄液糖/血糖比が0.4以下の場合、感度80%、特異度98%との報告がある。

髄液蛋白量は成人では40 mg/dL以下で、新生児では150 mg/dL以下。髄液蛋白量の上昇は細菌性髄膜炎でも上昇するが、非特異的所見である。

細菌性髄膜炎の髄液初圧は200〜500 mmCSFを示すことが多いが、小児ではこれより低くなる。

典型から外れる型(ここで落とす)

  • 新生児細菌性髄膜炎の髄液検査でしばしば典型的な細胞増多、蛋白高値、髄液糖濃度低値を示さない症例に遭遇する。
  • B群レンサ球菌(GBS)による髄膜炎ではその30%が髄液細胞数増多を示さないことが知られている。

「髄液所見が軽いから髄膜炎ではない」は、新生児・乳児では成立しない。

何を出すか(オーダーの型)

検体項目備考
髄液(必須)初圧・細胞数と分画・髄液糖・髄液蛋白量・グラム染色と鏡検髄液検査では、髄液初圧、細胞数と分画、髄液糖、髄液蛋白量、グラム染色と鏡検は行われるべきである
髄液細菌培養培養には3〜4 mLが必要で最終判断には48時間ほどかかる採取量が多いほど、また遠心(1,500〜2,500×g、15分)を行うほど検出率は高くなる。しかし、遠心を高度にかけすぎると細胞や細菌が壊れて検出しにくくなるので留意する
同時血液(必須)血糖(髄液糖/血糖比のため)髄液糖だけ出しても読めない
血液(必須)血液培養細菌性髄膜炎を疑った場合には、血液培養を行うことが強く推奨される血液培養
髄液(可能なら)細菌PCR、肺炎球菌莢膜抗原定性(髄液)2013年7月1日より保険収載肺炎球菌ワクチン接種後は偽陽性を示す可能性があり、ワクチン接種後5日間は検査を行わないことが推奨されている
髄液(グラム染色陰性時)ラテックス凝集法による細菌抗原検査結果が15分ほどで得られ、髄液検査前に抗菌薬投与が行われていた場合でも陽性に検出が可能対象菌が限られ、耐性菌の判別が不可能な点と偽陽性が出る点が欠点
髄液(保存)残検体を凍結保存ウイルスPCR・自己抗体の追加に備える

採取された髄液は速やかに検査室に送るべきである。髄液を遠心分離器にかけることで検出感度が大きく改善されることが知られている。

グラム染色と培養の読み方(数字を持っておく)

検査感度・陽性率
グラム染色感度50〜90%、特異度60〜90%、最小検出感度は10⁵ cfu/mL
菌別のグラム染色検出感度肺炎球菌90%/インフルエンザ菌86%/髄膜炎菌75%/リステリア菌50%以下
抗菌薬の影響抗菌薬使用前の髄液では75〜90%の検出感度だが、髄液検査前に抗菌薬が使用された場合には40〜60%に低下した
髄液培養の陽性率未治療では70〜80%だが、抗菌薬治療群では50%以下
肺炎球菌尿中抗原(Binax NOW)感度64〜86%、特異度95%

→ 抗菌薬を先に打つと、グラム染色は40〜60%、培養は50%以下に落ちる。だからこそ、可能なら培養を先に採る。ただし1時間を超える遅れは作らない。

実際の髄液所見の分布(「典型でない」を知っておくため)

細菌性髄膜炎でみられた髄液所見(アイスランド1997年 n=132/オランダ2004年 n=696):

項目分布
初圧 0〜180 mmCSF4/31例(13%)初圧が正常でも否定できない
初圧 181〜30012/31例(39%)
初圧 >30015/31例(48%)
細胞数 0〜100/mm³16/102例(16%)細胞数が少なくても否定できない
細胞数 101〜10,00066/102例(64%)
細胞数 >10,00020/102例(20%)
細胞数 <100(オランダ)47/645例(7%)
蛋白 >50 mg/dL82/97例(85%)
糖 <9 mg/dL83/93例(89%)
塗抹陽性率57/100例(57%)
培養陽性率88/110例(80%)

手技(当院で行う場合)

本シートは手技の細部(体位・穿刺部位・針のサイズ・局所麻酔)について一次資料を確認していない。以下は運用上の注意にとどめ、院内手順書に従うこと(下の医師確認事項)。

やること
1禁忌の確認(上の5徴)。眼底または瞳孔所見を必ず取る
2同意。何のために、何が起こりうるかを説明
3モニタ装着(SpO2・心拍)。体位で呼吸が止まりうるので、抑える人と見る人を分ける
4血液培養を先に採る血液培養
5同時血糖のための採血を忘れない
6清潔操作で穿刺。初圧を測る(測れる体位で)
7初圧が200 mmCSFを超えたら測定を中止し、速やかに採取+グリセオール点滴
8検体を速やかに検査室へ。培養用は3〜4 mL
9穿刺後は意識と呼吸を観察意識レベルの低下は脳ヘルニアを疑う
10結果を待って抗菌薬を決めるのではない。細菌性髄膜炎を疑うなら抗菌薬は先細菌性髄膜炎

髄膜炎以外の適応(当直で出会うもの)

目的状況備考
ウイルス性髄膜炎・脳炎の診断発熱+頭痛・意識障害細菌性との区別(上の表)
くも膜下出血の確認突然の激しい頭痛でCT陰性小児ではまれ
Guillain-Barré症候群進行する筋力低下蛋白細胞解離
急性散在性脳脊髄炎(ADEM)感染後の多巣性神経症状持てない
白血病の中枢神経浸潤・髄注当院では持てない白血病を疑うとき

送る/持つ(当院=二次救急・脳外科なし)

状態当院の扱い
脳ヘルニアの徴候あり穿刺しない。血液培養→抗菌薬→搬送
出血傾向・血小板著減穿刺しない。搬送
禁忌なし・細菌性髄膜炎を疑う当院で穿刺して抗菌薬を開始し、搬送細菌性髄膜炎
髄液所見がウイルス性で全身状態良好入院そのものは当直帯でも可能(小児科病床あり。2026-09-14 確認)。抱えるかどうかの方針は要確認
鎮静が必要な年齢・体格鎮静体制が要る処置時の鎮静・鎮痛
新生児・早期乳児所見が典型でない。閾値を下げて搬送

エスカレーション(施設オーバーレイで上書き)

  • 要確認:夜間に髄液の細胞数・糖・蛋白・グラム染色を何分で出せるか。ここが遅いと「速やかに」が成立しない
  • 確定(2026-09-14)培養は夜間に受け付けられない採取量(3〜4 mL)・遠心の有無・翌朝までの保管方法は要確認
  • 要確認:肺炎球菌莢膜抗原定性(髄液)・ラテックス凝集法の院内採用
  • 要確認:グリセオールの院内在庫と小児用量
  • 要確認:当院の腰椎穿刺の手順書(体位・穿刺部位・針・局所麻酔・鎮静の要否)
  • 確定(2026-09-14):夜間に頭部CTは撮れない。ステップ5は常に「先に抗菌薬」
  • 確定(2026-09-14)夜間に髄液の細胞数・糖・蛋白・グラム染色は測定できる穿刺・測定とも当院で完結する
  • 要確認:細菌性髄膜炎の経験的抗菌薬細菌性髄膜炎と共通の宿題)

家族に渡す一文

背中から細い針を刺して、脳と脊髄のまわりを流れている液(髄液)を少し取る検査です。髄膜炎かどうかは、この検査でしか確かめられません。細菌による髄膜炎は、早く見つけて早く治療を始めることが結果を大きく変える病気です。検査のあと、頭痛や吐き気が出ることがありますが、しばらく横になっていると軽くなることがほとんどです。まれに、検査のあとで具合が悪くなることがあるので、検査後も様子を見せていただきます。なお、検査より先にお薬(抗菌薬)を始めることがあります。これは、検査で治療が遅れることのほうが危ないと判断した場合です。」

医師確認事項(要・岡本判断)

  • 確定(2026-09-14)当院で腰椎穿刺は行える。残るのは誰が(当直医/小児科医)、どの年齢までの線引き。
  • 要確認:穿刺の手技(体位・レベル・針のゲージ・局所麻酔・EMLA)と穿刺後の安静時間本シートは意図的に書いていない。「細菌性髄膜炎診療ガイドライン2014」は手技の細部を扱っておらず、検索で出てきた看護向けサイト(看護roo!等)は一次資料ではないため採用しなかった。院内手順書が要る。
  • 要確認:「穿刺後1〜2時間の仰臥位安静」について。広く行われているが、本シートでは一次資料を確認していない。院内の運用を決めるなら別の根拠が要る。
  • 要確認:本シートが引用した推奨は「細菌性髄膜炎診療ガイドライン2014」であり、CQ4-2の「60歳以上」は成人向けの記載。小児では年齢要件は当てはまらない。小児で頭部CTの閾値をどこに引くかは判断が要る。
  • 要確認:出血傾向・穿刺部位の皮膚感染が禁忌であることは広く認められているが、本ガイドラインのCQ4-3は脳ヘルニアの徴候のみを挙げている。本シートは実務上それらを加えて書いており、その旨を明示している。
  • 要確認:鎮静を使うか。使うなら処置時の鎮静・鎮痛の体制と一体で決める必要がある。
  • 要確認:グリセオールの小児用量。本シートは用量を書いていない。

出典

  • 「細菌性髄膜炎診療ガイドライン」作成委員会(日本神経学会・日本神経治療学会・日本神経感染症学会 監修).細菌性髄膜炎診療ガイドライン2014.「4.細菌性髄膜炎の検査」.https://www.neurology-jp.org/guidelinem/pdf/zuimaku_guide_2014_05.pdf /全文 https://www.neuroinfection.jp/pdf/guideline101.pdf (2026-09-13閲覧)
  • CQ4-1「細菌性髄膜炎を疑った場合の検査はどうするのか」:「頭部CTや臨床所見より脳ヘルニアが疑われず、かつ髄液検査の禁忌でない限り、腰椎穿刺による髄液検査(髄液細胞数、髄液糖濃度、血清糖、髄液蛋白量、グラム染色)を速やかに行う。ただし、検査を行うことで治療開始が1時間以上遅れる場合にはこの限りではない(グレードB)」。「細菌性髄膜炎の確定診断は腰椎穿刺による髄液検査のみで可能」「髄液検査では、髄液初圧、細胞数と分画、髄液糖、髄液蛋白量、グラム染色と鏡検は行われるべきである」「新生児細菌性髄膜炎の髄液検査でしばしば典型的な細胞増多、蛋白高値、髄液糖濃度低値を示さない症例に遭遇する。B群レンサ球菌(GBS)による髄膜炎ではその30%が髄液細胞数増多を示さないことが知られている」「細菌性髄膜炎の髄液初圧は200〜500 mmCSFを示すことが多いが、小児ではこれより低くなる。初圧が200 mmCSFを超える場合は髄液圧測定を中止し、速やかに髄液採取を行うと同時にグリセオール点滴を行うのが望ましい」「満期出産新生児の髄液細胞数正常上限は22/mm³で、生後0〜8週の乳児では30/mm³、生後8週以上では5/mm³である」「同時血糖の0.6以下が異常値で、0.4以下の場合は細菌性髄膜炎が強く疑われる。生後2ヵ月の細菌性髄膜炎では、髄液糖/血糖比が0.4以下の場合、感度80%、特異度98%との報告がある」「グラム染色は簡易で速やかに結果が得られる検査であり、髄膜炎を疑うすべての患者に推奨される。感度50〜90%、特異度60〜90%、最小検出感度は10⁵ cfu/mL」「肺炎球菌では90%、インフルエンザ菌では86%、髄膜炎菌では75%、リステリア菌では50%以下」「抗菌薬使用前の髄液では75〜90%の検出感度だが、髄液検査前に抗菌薬が使用された場合には40〜60%に低下した」「細菌性髄膜炎を疑った場合には、血液培養を行うことが強く推奨される。特に、頭蓋内圧亢進などにより髄液検査が施行不可能な場合は血液培養の結果が起炎菌同定に重要となる。髄液培養の陽性率は、未治療では70〜80%だが、抗菌薬治療群では50%以下」「培養には3〜4 mLが必要で最終判断には48時間ほどかかる」「採取量が多いほど、また遠心(1,500〜2,500×g、15分)を行うほど検出率は高くなる。しかし、遠心を高度にかけすぎると細胞や細菌が壊れて検出しにくくなるので留意する」「肺炎球菌ワクチン接種後は偽陽性を示す可能性があり、ワクチン接種後5日間は検査を行わないことが推奨されている」。表1「髄液の正常値と各種髄膜炎の髄液所見」(Roos KL, Tunkel AR (eds). Handbook of Clinical Neurology, Vol. 96, 3rd series, Bacterial Infections, p37 より改変)と表2「細菌性髄膜炎でみられる髄液検査所見」(アイスランド1997年 n=132/オランダ2004年 n=696)の数値は本文の表に転記した。
  • CQ4-2「どのような場合に頭部CTを実施したほうがよいのか」:「必ずしも全例で行う必要はない。意識障害、神経巣症状、痙攣発作、乳頭浮腫、免疫不全患者、60歳以上の患者では、頭部CTが推奨される。ただし、頭部CTのために治療開始が1時間以上遅れるような場合にはこの限りではない(グレードB)」「多くのretrospective studyは、細菌性髄膜炎が疑われた患者の腰椎穿刺前にルーチンで頭部CTを行う必要はないことを示唆している」「腰椎穿刺前の頭部CTの結果から脳ヘルニアの発生を予測することについては、困難とするretrospective studyが多い」「一部のretrospective studyで小児の場合には、腰椎穿刺と脳ヘルニアとの間に有意な関係があるとする報告もある」。
  • CQ4-3「どのような場合に腰椎穿刺を行ってはいけないのか」:「視神経乳頭浮腫、一側・または両眼の瞳孔固定または散大、除脳・除皮質肢位、Cheyne–Stokes呼吸、固定した眼球偏位は脳ヘルニアの徴候であり腰椎穿刺は禁忌となる(グレードB)」「細菌性髄膜炎による脳ヘルニアの危険率は6〜8%」「腰椎穿刺による脳ヘルニアの発生頻度は成人、小児ともに1%との報告がある」「髄液検査後に脳ヘルニアを起こした1,053例のうち418例は視神経乳頭浮腫を伴っていた」「小児の場合には腰椎穿刺は脳ヘルニアの危険因子であるとの報告がある」「脳ヘルニアが起きていると疑われた場合には、腰椎穿刺は行わずに速やかに抗菌薬治療を開始すべきである」。

手技

手技

腰椎穿刺で髄液検査を行う

細菌性髄膜炎の確定診断は腰椎穿刺による髄液検査のみで可能。頭部CTや臨床所見より脳ヘルニアが疑われず、かつ禁忌でない限り、速やかに腰椎穿刺による髄液検査を行う。ただし、検査を行うことで治療開始が1時間以上遅れる場合にはこの限りではない(推奨グレードB)。

始める前に

  • 禁忌の確認(上の5徴)。眼底または瞳孔所見を必ず取る
  • 同意。何のために、何が起こりうるかを説明する
  • モニタ装着(SpO2・心拍)。体位で呼吸が止まりうるので、抑える人と見る人を分ける
  • 循環・呼吸が不安定なら、安定させるのが先。体位で悪化する
  • 頭部CTの適応か(意識障害・神経巣症状・痙攣発作・乳頭浮腫・免疫不全)を確認する。ただしCTのために治療開始が1時間以上遅れるなら、先に抗菌薬
  • 血液培養を先に採る
  • 同時血糖のための採血を忘れない(髄液糖/血糖比を出すため)

手順

  1. 1

    清潔操作で穿刺し、初圧を測る(測れる体位で)

  2. 2

    初圧が200 mmCSFを超えたら測定を中止し、速やかに髄液採取+グリセオール点滴を行う

    細菌性髄膜炎の髄液初圧は200〜500 mmCSFを示すことが多いが、小児ではこれより低くなる

  3. 3

    髄液検査では初圧・細胞数と分画・髄液糖・髄液蛋白量・グラム染色と鏡検を行う

  4. 4

    培養用に3〜4 mLを確保する

    採取量が多いほど、また遠心を行うほど検出率は高くなるが、遠心を高度にかけすぎると細胞や細菌が壊れて検出しにくくなる

  5. 5

    同時血糖のための採血を行う

    髄液糖だけ出しても読めない

  6. 6

    血液培養を行う

    頭蓋内圧亢進などにより髄液検査が施行不可能な場合は血液培養の結果が起炎菌同定に重要

  7. 7

    採取した検体は速やかに検査室へ送る

    髄液を遠心分離器にかけることで検出感度が大きく改善される

  8. 8

    穿刺後は意識と呼吸を観察する

    意識レベルの低下は脳ヘルニアを疑う

  9. 9

    結果を待たずに、細菌性髄膜炎を疑うなら抗菌薬を先に開始する

やってはいけない

  • 視神経乳頭浮腫、一側・または両眼の瞳孔固定または散大、除脳・除皮質肢位、Cheyne–Stokes呼吸、固定した眼球偏位は脳ヘルニアの徴候であり腰椎穿刺は禁忌(推奨グレードB)
  • 脳ヘルニアが起きていると疑われた場合には、腰椎穿刺は行わずに速やかに抗菌薬治療を開始すべきである
  • 「抗菌薬を先に打つと培養が出なくなる」は事実だが、1時間を超えて治療を遅らせる理由にはならない
  • (本シートが独自に追加した基準・ガイドラインCQ4-3は脳ヘルニア徴候のみを規定)出血傾向(血小板著減・抗凝固薬・DIC)があれば穿刺しない
  • (同上・本シート独自の追加)穿刺部位に皮膚感染があれば穿刺しない

終わったあと

  • 穿刺後の頭痛・悪心は低髄圧症状。臥床・補液
  • 穿刺後に意識レベルが低下したら脳ヘルニアを疑い、119
  • 家族へ:検査のあと、頭痛や吐き気が出ることがあるが、しばらく横になっていると軽くなることがほとんど。まれに検査のあとで具合が悪くなることがあるので、検査後も様子を見せてもらう
  • 家族へ:検査より先にお薬(抗菌薬)を始めることがある。検査で治療が遅れることのほうが危ないと判断した場合

この場で持てない・送る

  • 脳ヘルニアの徴候あり → 穿刺しない。血液培養→抗菌薬→搬送
  • 出血傾向・血小板著減 → 穿刺しない。搬送
  • 新生児・早期乳児は所見が典型でない(GBS髄膜炎の30%は髄液細胞数増多を示さない)。閾値を下げて搬送
  • 髄液所見がウイルス性で全身状態良好 → 入院管理の可否は要確認
  • 鎮静が必要な年齢・体格 → 鎮静体制が要る(要確認)
  • 要確認:当院で腰椎穿刺を行うか、行わずに搬送するか。行うなら誰が(当直医/小児科医)、どの年齢までを決めておく必要がある
  • 要確認:穿刺後1〜2時間の仰臥位安静について。広く行われているが、本シートは一次資料を確認していない
  • 要確認:夜間に髄液の細胞数・糖・蛋白・グラム染色を何分で出せるか。ここが遅いと「速やかに」が成立しない
  • 要確認:髄液培養の提出方法(3〜4 mL・遠心の有無・夜間の受付)
  • 要確認:肺炎球菌莢膜抗原定性(髄液)・ラテックス凝集法の院内採用
  • 要確認:グリセオールの院内在庫と小児用量
  • 要確認:夜間の頭部CTの可否と読影体制
  • 要確認:細菌性髄膜炎の経験的抗菌薬
  • 要確認:当院の腰椎穿刺の手順書(体位・穿刺部位・針・局所麻酔・鎮静の要否)

手順・適応・禁忌はすべて本シートの正本の記載のみ。院内の器材・採用薬・搬送先は施設ごとに違うため、適用前に院内ルールを確認すること。

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