腰椎穿刺で髄液検査を行う
細菌性髄膜炎の確定診断は腰椎穿刺による髄液検査のみで可能。頭部CTや臨床所見より脳ヘルニアが疑われず、かつ禁忌でない限り、速やかに腰椎穿刺による髄液検査を行う。ただし、検査を行うことで治療開始が1時間以上遅れる場合にはこの限りではない(推奨グレードB)。
始める前に
- 禁忌の確認(上の5徴)。眼底または瞳孔所見を必ず取る
- 同意。何のために、何が起こりうるかを説明する
- モニタ装着(SpO2・心拍)。体位で呼吸が止まりうるので、抑える人と見る人を分ける
- 循環・呼吸が不安定なら、安定させるのが先。体位で悪化する
- 頭部CTの適応か(意識障害・神経巣症状・痙攣発作・乳頭浮腫・免疫不全)を確認する。ただしCTのために治療開始が1時間以上遅れるなら、先に抗菌薬
- 血液培養を先に採る
- 同時血糖のための採血を忘れない(髄液糖/血糖比を出すため)
手順
- 1
清潔操作で穿刺し、初圧を測る(測れる体位で)
- 2
初圧が200 mmCSFを超えたら測定を中止し、速やかに髄液採取+グリセオール点滴を行う
細菌性髄膜炎の髄液初圧は200〜500 mmCSFを示すことが多いが、小児ではこれより低くなる
- 3
髄液検査では初圧・細胞数と分画・髄液糖・髄液蛋白量・グラム染色と鏡検を行う
- 4
培養用に3〜4 mLを確保する
採取量が多いほど、また遠心を行うほど検出率は高くなるが、遠心を高度にかけすぎると細胞や細菌が壊れて検出しにくくなる
- 5
同時血糖のための採血を行う
髄液糖だけ出しても読めない
- 6
血液培養を行う
頭蓋内圧亢進などにより髄液検査が施行不可能な場合は血液培養の結果が起炎菌同定に重要
- 7
採取した検体は速やかに検査室へ送る
髄液を遠心分離器にかけることで検出感度が大きく改善される
- 8
穿刺後は意識と呼吸を観察する
意識レベルの低下は脳ヘルニアを疑う
- 9
結果を待たずに、細菌性髄膜炎を疑うなら抗菌薬を先に開始する
やってはいけない
- 視神経乳頭浮腫、一側・または両眼の瞳孔固定または散大、除脳・除皮質肢位、Cheyne–Stokes呼吸、固定した眼球偏位は脳ヘルニアの徴候であり腰椎穿刺は禁忌(推奨グレードB)
- 脳ヘルニアが起きていると疑われた場合には、腰椎穿刺は行わずに速やかに抗菌薬治療を開始すべきである
- 「抗菌薬を先に打つと培養が出なくなる」は事実だが、1時間を超えて治療を遅らせる理由にはならない
- (本シートが独自に追加した基準・ガイドラインCQ4-3は脳ヘルニア徴候のみを規定)出血傾向(血小板著減・抗凝固薬・DIC)があれば穿刺しない
- (同上・本シート独自の追加)穿刺部位に皮膚感染があれば穿刺しない
終わったあと
- 穿刺後の頭痛・悪心は低髄圧症状。臥床・補液
- 穿刺後に意識レベルが低下したら脳ヘルニアを疑い、119
- 家族へ:検査のあと、頭痛や吐き気が出ることがあるが、しばらく横になっていると軽くなることがほとんど。まれに検査のあとで具合が悪くなることがあるので、検査後も様子を見せてもらう
- 家族へ:検査より先にお薬(抗菌薬)を始めることがある。検査で治療が遅れることのほうが危ないと判断した場合
この場で持てない・送る
- 脳ヘルニアの徴候あり → 穿刺しない。血液培養→抗菌薬→搬送
- 出血傾向・血小板著減 → 穿刺しない。搬送
- 新生児・早期乳児は所見が典型でない(GBS髄膜炎の30%は髄液細胞数増多を示さない)。閾値を下げて搬送
- 髄液所見がウイルス性で全身状態良好 → 入院管理の可否は要確認
- 鎮静が必要な年齢・体格 → 鎮静体制が要る(要確認)
- 要確認:当院で腰椎穿刺を行うか、行わずに搬送するか。行うなら誰が(当直医/小児科医)、どの年齢までを決めておく必要がある
- 要確認:穿刺後1〜2時間の仰臥位安静について。広く行われているが、本シートは一次資料を確認していない
- 要確認:夜間に髄液の細胞数・糖・蛋白・グラム染色を何分で出せるか。ここが遅いと「速やかに」が成立しない
- 要確認:髄液培養の提出方法(3〜4 mL・遠心の有無・夜間の受付)
- 要確認:肺炎球菌莢膜抗原定性(髄液)・ラテックス凝集法の院内採用
- 要確認:グリセオールの院内在庫と小児用量
- 要確認:夜間の頭部CTの可否と読影体制
- 要確認:細菌性髄膜炎の経験的抗菌薬
- 要確認:当院の腰椎穿刺の手順書(体位・穿刺部位・針・局所麻酔・鎮静の要否)
手順・適応・禁忌はすべて本シートの正本の記載のみ。院内の器材・採用薬・搬送先は施設ごとに違うため、適用前に院内ルールを確認すること。