黄疸・肝機能異常(新生児と年長児)
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施設プロファイル: 二次救急/小児外科・肝移植なし/当直帯に腹部エコー・CT・MRIは使えない(2026-09-14 確認)。
30秒要約
- 年齢で別の病気になる。新生児・乳児の黄疸は「胆道閉鎖症を外す」が最優先。年長児の黄疸は溶血・肝炎・胆道に分かれる。
- 生後14日を超えて続く黄疸は、生理的ではない。新生児の90%に見られる生理的黄疸は生後14日までに肉眼上消失する。消失せずに持続する、あるいは一旦消失したものが再び現れてきたら病的。
- 便の色を自分で見る。淡黄色便は胆道閉鎖症を疑う最も重要な症状。母子健康手帳に便色カードが綴じ込まれている。1〜3番なら異常。
- 淡黄色便の児は、ただちに入院・精査・治療の必要がある。理由は胆道閉鎖症だけではない。すべての胆汁うっ滞でビタミンK欠乏による頭蓋内出血の危険がある。
- 手術時期が予後を決める。術後20年生存率は生後60日以内なら43%、61〜90日で33%、91〜120日で25%、121〜150日で7%、151日以降は0。それでも生後60日以内に手術を受ける患児は全体の約40%にすぎない。
レッドフラグ → 次の一手
所見があったときにどれだけ急ぐかと、家族に何を伝えるかの対応表。3列目の文言は家族説明ページに同じ言葉で載っているので、画面を見せながら渡せる。
| 緊急度 | 所見 | その場で次にやること | 時間の勝負 |
|---|---|---|---|
| 119 | 乳児の黄疸+突然の哺乳力低下・意識レベルの低下・けいれん・大泉門膨隆 | ビタミンK欠乏性頭蓋内出血。持てない。頭部画像と凝固(意識障害) | 即時 |
| 119 | 黄疸+意識障害・羽ばたき振戦・出血傾向 | 急性肝不全・肝性脳症。持てない。アンモニア・PT-INR | 即時 |
| 119 | 生後24時間以内に出現した黄疸 | 病的黄疸。溶血・感染。当院の新生児管理体制を確認して搬送判断 | 即時 |
| 119 | 黄疸+発熱+腹痛+ショック(年長児) | 胆管炎・敗血症(小児敗血症) | 即時 |
| 119相当 | 淡黄色便(便色カード1〜3番) | ただちに入院・精査・治療。胆道閉鎖症の疑いとして小児外科のある施設へ。「様子を見て1か月健診で」にしない | 即日 |
| 緊急 | 生後14日を超えて続く黄疸 | 直接型ビリルビンを含めた採血。便色を必ず見る | 当日 |
| 緊急 | 一旦消えた黄疸が再び出てきた | 同上。生理的黄疸の再燃という概念はない | 当日 |
| 緊急 | 濃黄色尿・暗褐色尿(乳児) | 病初期から認められる症状。胆汁うっ滞 | 当日 |
| 緊急 | 直接型ビリルビン1.5 mg/dL以上、またはD/T比20%以上 | 胆汁うっ滞。持てない | 当日 |
| 緊急 | 黄疸+貧血+網状赤血球増加+間接ビリルビン優位 | 溶血。血液型不適合・遺伝性球状赤血球症・G6PD | 当日 |
| 緊急 | 年長児の黄疸+AST/ALT著増 | 急性肝炎。PT-INRを必ず測る(劇症化の指標) | 当日 |
| 当日 | 乳児の突然の腹痛・嘔吐・黄疸・発熱 | 先天性胆道拡張症のタンパク栓。当直帯はエコーが無いので、この4つが揃った時点で相談に回す | 当日 |
| 当日 | 健診でAST/ALTのみ軽度上昇、黄疸なし、元気 | 再検と原因検索(薬剤・肥満・筋疾患・ウイルス) | 数日 |
新生児・乳児:胆道閉鎖症を外す
押さえる数字と事実
- 胆道閉鎖症は、新生児および乳児の肝外胆管が、原因不明の硬化性炎症によって閉塞するために、肝から腸へ胆汁を排出できない疾患。
- 出生9,000人に1人が罹患する稀な疾患だが、同年齢の肝・胆道系疾患の中では死亡率が最も高い。日本小児外科学会の解説では約1万人に1人、日本では男児に比べて女児に多く発生。
- 主な3つの症状は、生後14日以降も続く黄疸、淡黄色便、濃黄色尿。
- 生後1か月頃の患児の黄疸は皮膚やしろめの部分がくすんだ黄色なので見逃されやすく注意が必要。
- 胆道閉鎖症の患児の70〜80%は生後4週までに便の黄色調がうすくなって淡黄色になり、残りの20〜30%も多くは生後2か月までに淡黄色便を発症する。
- 葛西手術後の5年生存率が90.0%、5年自己肝生存率が56.7%(2023年 日本胆道閉鎖症研究会 全国調査)。約30%の患者が5年以内に肝移植を受けている。
便色カードの使い方(母子健康手帳)
| 記載番号 | 判定 | 次の一手 |
|---|---|---|
| 1〜3番 | 異常 | 1日も早く受診させる。便を持参してもらう。医師自身が便と便色カードを見比べる |
| 4〜7番 | 正常範囲 | 黄疸の有無を確認。黄疸があれば経過観察ではなく評価へ |
日中の明るい部屋で、オムツについた便に便色カードを近づけて色を見比べる。
濃い黄色尿があればより確実(胆道閉鎖症の疑いが強まる)。
生後4か月くらいまでは、便の色に注意が必要。
便色カードは母子保健法施行規則の一部を改正する省令(平成23年12月28日厚生労働省令第158号)により、母子健康手帳に掲載することが義務付けられている。
正常な新生児・乳児の便色(知らないと判定できない)
| 時期 | 便 |
|---|---|
| 生後48時間以内 | 胎便。羊水・腸管分泌物・胆汁色素・脂肪・コレステロールが主成分で、粘稠、無臭で、緑がかった黒色 |
| 生後2〜4日目頃 | 移行便。黒緑色の胎便と黄色便の入り混ざった便。次第に黄色みが強くなる |
| その後 | 黄色から茶色の顆粒便(正常便)。一時は一日に何度も便が出ることもある |
便色は栄養法によって異なり、母乳栄養のみの児の便色は、人工栄養児に比べて黄色みがやや強い。母乳栄養でも人工栄養でも緑色の便が出ることがあるが、これは胆汁色素である黄色のビリルビンが、腸内で酸化されて緑色のビリベルジンになるためで、児の機嫌がよく、食欲があれば心配いらない。
淡黄色便の意味は「胆道閉鎖症」だけではない
淡黄色便は胆道閉鎖症、先天性胆道拡張症のような胆管の閉塞のある児で認められる。これらを放置すると肝硬変を来すので早期手術を必要とする。淡黄色便は新生児肝炎(症候群)、アラジール症候群、シトリン欠損症、敗血症・尿路感染症、先天性代謝異常、染色体異常、進行性家族性肝内胆汁うっ滞など、肝内胆汁うっ滞により胆汁排泄機能が低下する児でも認められる。これらのすべての疾患において、ビタミンKが腸から吸収されにくい病態を持つため、ビタミンK欠乏による頭蓋内出血の危険がある。よって注意すべきことは、淡黄色便を認める児は、ただちに入院・精査・治療の必要があるということである。
→ 「胆道閉鎖症ではなさそうだから帰す」は成立しない。淡黄色便それ自体が入院適応。
鑑別:新生児・乳児の黄疸
| 病態 | ビリルビンの型 | 見分け | 次の一手 |
|---|---|---|---|
| 生理的黄疸 | 間接 | 生後14日までに肉眼上消失。新生児の90%に見られる | 経過観察 |
| 母乳性黄疸(遷延性) | 間接 | 母乳栄養児、元気、体重増加良好、便色は正常 | 診断は除外してから。直接ビリルビンを測る |
| 胆道閉鎖症 | 直接 | 生後14日以降も続く黄疸・淡黄色便・濃黄色尿 | 持てない。小児外科へ |
| 先天性胆道拡張症 | 直接 | 突然の腹痛・嘔吐・黄疸・発熱(タンパク栓)。胎児期エコーや腹部腫瘤で見つかることも | 持てない。エコー・MRCP |
| 新生児肝炎症候群 | 直接 | 胆道閉鎖症との鑑別が難しい | 持てない |
| アラジール症候群 | 直接 | 特異的顔貌・心雑音(末梢性肺動脈狭窄)・椎骨異常 | 持てない |
| シトリン欠損症(NICCD) | 直接 | 低出生体重・脂肪肝・低血糖 | 持てない。新生児マススクリーニング |
| 尿路感染症・敗血症 | 直接/両方 | 発熱がなくても黄疸だけで来ることがある | 尿検査を必ず(尿路感染症) |
| 甲状腺機能低下症 | 間接 | 遷延性黄疸・便秘・哺乳不良 | 新生児マススクリーニングの結果 |
| 血液型不適合・遺伝性球状赤血球症・G6PD欠損 | 間接 | 貧血+網状赤血球増加 | 血液型・クームス・末梢血液像 |
| 頭血腫・消化管出血の吸収 | 間接 | 分娩歴 | 経過観察 |
年長児の黄疸・肝機能異常を分ける
| 病態 | 見分け | 次の一手 |
|---|---|---|
| 急性ウイルス性肝炎(A・B・E・EBV・CMVなど) | 発熱・倦怠感・食欲不振→黄疸 | PT-INRを必ず測る。伝染性単核症 |
| 薬剤性肝障害 | 服薬歴(市販薬・サプリ・漢方を含む) | 被疑薬の中止 |
| アセトアミノフェン過量 | 内服歴。初期は無症状 | 中毒として扱う(急性中毒) |
| 溶血性貧血 | 間接ビリルビン優位・貧血・脾腫 | 末梢血液像・網状赤血球 |
| 自己免疫性肝炎 | 女児、他の自己免疫疾患 | 抗核抗体・IgG。専門施設 |
| Wilson病 | 学童期以降の原因不明の肝障害。Kayser-Fleischer輪・神経症状 | セルロプラスミン・尿中銅。専門施設 |
| 胆石・胆管炎 | 右季肋部痛・発熱・黄疸 | エコー(腹部エコー) |
| 体質性黄疸(Gilbert症候群) | 絶食・感冒時に間接ビリルビンのみ上昇。他は正常 | 経過観察でよい |
| 筋疾患によるAST/ALT上昇 | CK高値。黄疸なし | CKを測れば分かる |
| 非アルコール性脂肪性肝疾患 | 肥満 | 肥満 |
| 心不全・ショックによる肝障害 | 循環不全 | 原疾患の治療 |
治療ワークフロー(当院でやること)
乳児(黄疸で来た/健診で指摘された)
| 順 | やること |
|---|---|
| 1 | 日齢を確認する。生後14日を超えているか |
| 2 | 母子健康手帳の便色カードの記載番号を見る。記載がなければその場で便を見せてもらう(おむつごと、明るい部屋で) |
| 3 | 自分で便色カードと見比べる。1〜3番なら入院・精査 |
| 4 | 尿の色を見る(濃黄色尿・暗褐色尿) |
| 5 | 黄疸の程度を明るい自然光で。皮膚と強膜(しろめ)。生後1か月頃はくすんだ黄色で見逃されやすい |
| 6 | 採血:総ビリルビン・直接型ビリルビン・AST・ALT・γGTP・ALP・PT-INR・血算。尿検査(尿路感染) |
| 7 | PT-INRの延長=ビタミンK欠乏のサイン。頭蓋内出血のリスクとして扱う |
| 8 | 腹部エコー(肝・胆嚢・胆管)。当直帯は当てられないので翌日に回す。ただし直接ビリルビン優位の乳児黄疸(胆道閉鎖の疑い)は、エコーを待つ病気ではない——日齢が勝負なので、疑った時点で専門施設に相談する |
| 9 | 1〜3番の便色、または直接型ビリルビン上昇があれば、その日のうちに小児外科のある施設へ紹介 |
| 10 | 紹介状に書く:日齢、便色カードの番号、黄疸の出現と経過、尿色、総/直接ビリルビン、AST/ALT、PT-INR、ビタミンK2シロップの投与歴 |
年長児(黄疸・肝機能異常)
| 順 | やること |
|---|---|
| 1 | 意識状態を見る。羽ばたき振戦・傾眠は肝性脳症 |
| 2 | 採血:総/直接ビリルビン・AST・ALT・γGTP・ALP・LDH・CK・アンモニア・PT-INR・血糖・血算・網状赤血球 |
| 3 | PT-INRと意識状態が予後を決める。AST/ALTの高さではない |
| 4 | 服薬歴をすべて聞く(市販薬・サプリ・漢方・他院の処方・友人の薬) |
| 5 | 腹部エコー |
| 6 | ウイルス(HAV・HBV・EBV・CMV)の検査を出す |
| 7 | PT-INR延長+意識障害があれば、急性肝不全として搬送 |
検査
| 検査 | 何がわかるか | 読み方 |
|---|---|---|
| 総ビリルビン・直接型ビリルビン | 間接優位か直接優位か | 直接型1.5 mg/dL以上、D/T比20%以上は胆汁うっ滞(便色カード活用マニュアルの記載) |
| AST・ALT | 肝細胞障害 | 高さは重症度と一致しない |
| γGTP・ALP | 胆汁うっ滞 | 小児のALPは年齢で高い |
| PT-INR | 肝合成能・ビタミンK欠乏 | 最も大事な予後指標。ビタミンK投与で補正されるか見る |
| アンモニア | 肝性脳症 | 意識障害があれば |
| 血算・網状赤血球・末梢血液像 | 溶血 | 間接優位なら |
| 血液型・クームス試験 | 血液型不適合 | 新生児期 |
| 尿検査・尿培養 | 尿路感染症 | 乳児の黄疸では必ず(尿路感染症) |
| CK | 筋疾患 | AST/ALT上昇で黄疸がないとき |
| 腹部エコー | 胆嚢・胆管拡張・肝の性状 | 当直帯は当院で撮れない(日勤帯の可否は要確認)(腹部エコー) |
| 肝胆道シンチグラフィー・十二指腸液検査 | 胆道閉鎖症 | 当院で持てない |
| 血糖 | 代謝性疾患・肝不全 | 乳児では必ず |
所見の取り方
| 所見 | 取り方 | 所見があったら次にどうする |
|---|---|---|
| 黄疸 | 自然光で。皮膚と強膜。蛍光灯下では見落とす。生後1か月頃は「くすんだ黄色」 | 日齢と便色 |
| 便色 | おむつを開けて自分で見る。便色カードと並べる | 1〜3番=入院 |
| 尿色 | おむつの尿の色。濃黄色・暗褐色 | 胆汁うっ滞 |
| 肝腫大 | 右季肋部。乳児は肋弓下2 cmまでは触れうる | 腫大+黄疸は精査 |
| 脾腫 | 左季肋部 | 溶血・門脈圧亢進 |
| 腹部腫瘤 | 先天性胆道拡張症 | エコー |
| 出血斑・注射部位の出血 | ビタミンK欠乏 | PT-INR |
| 大泉門 | 膨隆・緊満 | 頭蓋内出血。119 |
| 顔貌・心雑音 | アラジール症候群 | 専門施設 |
問診チェック
乳児
- 日齢、出生体重、在胎週数、分娩歴
- 黄疸がいつ出て、消えたか、いつ再び出たか
- 便の色の変化(いつから薄くなったか)
- 尿の色
- ビタミンK2シロップの投与歴(何回、いつまで)
- 母乳/人工乳/混合、哺乳量、体重増加
- 新生児マススクリーニングの結果
- 母の血液型、児の血液型
- 家族歴(肝疾患・血液疾患・近親婚)
年長児
- 発熱・倦怠感・食欲不振・関節痛の経過
- 服薬(市販薬・サプリ・漢方を含むすべて)
- アセトアミノフェンの累積量
- 渡航歴・生の魚介・生肉の摂取、ワクチン歴(A型・B型肝炎)
- 家族歴(肝疾患・Wilson病・自己免疫疾患)
- 学業成績の低下・不器用さ・振戦(Wilson病)
送る/持つ(当院=二次救急・小児外科なし)
| 状態 | 当院の扱い |
|---|---|
| 便色カード1〜3番/淡黄色便 | 持てない。ただちに入院・精査・治療。小児外科のある施設へ(日本胆道閉鎖症研究会施設会員が望ましい) |
| 直接型ビリルビン上昇(胆汁うっ滞) | 持てない |
| ビタミンK欠乏性頭蓋内出血 | 持てない。119 |
| 急性肝不全(PT-INR延長+意識障害) | 持てない。肝移植が要りうる |
| 先天性胆道拡張症 | 持てない。手術が要る |
| 生理的黄疸の範囲・母乳性黄疸で便色正常・直接型正常 | 当院でフォロー可。再受診の条件を渡す |
| 年長児の急性肝炎(PT正常・意識清明) | 当院で経過観察しうる。PT-INRを追う |
| 溶血性貧血の疑い | 初期評価は当院。輸血・専門治療は要確認 |
| Gilbert症候群 | 当院で説明・経過観察 |
エスカレーション(施設オーバーレイで上書き)
- 要確認:小児外科(胆道閉鎖症)の紹介先。マニュアルは日本胆道閉鎖症研究会施設会員への紹介を望ましいとしている。当院の第一紹介先を決めておく
- 要確認:夜間・休日に直接型ビリルビン・PT-INR・アンモニアを測れるか
- 要確認:当院に便色カードの実物を置いてあるか(母子手帳を持参していない家族のために)
- 要確認:当院で新生児の光線療法を行うか、行うなら適応基準をどの表で判断するか(本シートは光線療法の基準を扱っていない)
- 要確認:肝移植ができる施設への経路
- 要確認:ビタミンK2シロップの当院での投与プロトコル(出生施設が他院の児への対応を含む)
家族に渡す一文
「赤ちゃんの黄疸(皮膚やしろめが黄色くなること)は、生まれて2週間くらいまでに消えるのがふつうです。2週間を過ぎても続く、いったん消えたのにまた出てきた、このどちらかは、調べる必要がある黄疸です。いちばん大事な手がかりはうんちの色です。母子健康手帳に便色カード(1番から7番の色見本)が付いています。明るい部屋で、おむつのうんちにカードを近づけて見比べてください。1番から3番に近い色なら、その日のうちに、うんちのついたおむつを持って受診してください。おしっこが濃い黄色や茶色いときも同じです。胆道閉鎖症という病気は、手術が早いほど結果がよくなります。だから「1か月健診まで待とう」ではなく、気づいた日に来ていただきたいのです。」
医師確認事項(要・岡本判断)
- 要確認:新生児高ビリルビン血症(間接型)の光線療法・交換輸血の基準を本シートは扱っていない。愛育病院は産科併設で新生児を扱うため、別シートに切り出すか、本シートに追加するかの判断が要る。基準表(村田・井村基準、神戸大基準、森岡らの新基準など)は施設で採用を決める必要がある。
- 要確認:直接型ビリルビンの閾値。本シートは便色カード活用マニュアル(平成24年)の「直接型ビリルビン値の上昇(1.5 mg/dL以上)、直接型対総ビリルビン比(D/T比)20%以上」を採っている。当院の検査室の測定法・基準と整合するか確認が要る。
- 要確認:便色カードの実物の院内配備。母子手帳を持参しない受診が当直では普通に起きる。
- 要確認:「生後24時間以内の黄疸は病的」は本シートで一次資料を確認していない(広く用いられる基準だが、引用元を示していない)。載せ続けるなら裏取りが要る。
- 要確認:乳児の黄疸で尿路感染症を必ず外すという運用も、本シートでは一次資料を示していない。便色カード活用マニュアルは淡黄色便を来す疾患として「敗血症・尿路感染症」を挙げているが、「黄疸を見たら尿を出す」という手順そのものは本シートの実務上の整理。
- 要確認:年長児の急性肝炎をどこまで当院で持つか。PT-INRを何時間ごとに追うか、どの値で搬送するかの閾値を決めておきたい。
出典
- 平成23年度厚生労働科学研究費補助金(成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業)「小児慢性特定疾患の登録・管理・解析・情報提供に関する研究」研究代表者 松井陽.胆道閉鎖症早期発見のための便色カード活用マニュアル(平成24年〈2012〉年3月).こども家庭庁サイト掲載 https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/909390f5-d0c0-47b9-9b9e-c343b88bde66/aa6c5af7/20230401_policies_boshihoken_techou_09.pdf (2026-09-13閲覧)。「胆道閉鎖症等の早期発見のための便色カードは、母子保健法施行規則の一部を改正する省令(平成23年12月28日厚生労働省令第158号)により、母子健康手帳に掲載することが義務付けられました」「生後48時間以内に新生児から排泄される便を胎便といい……粘稠、無臭で、緑がかった黒色をしています」「生後2〜4日目頃は……移行便」「便色は栄養法によって異なり、母乳栄養のみの児の便色は、人工栄養児に比べて黄色みがやや強いと言われています。逆に母乳栄養でも人工栄養でも、緑色の便が出ることがあります。これは胆汁色素である黄色のビリルビンが、腸内で酸化されて緑色のビリベルジンになるためです。児の機嫌がよく、食欲があれば心配いりません」「出生9,000人に1人が罹患する稀な疾患ですが、同年齢の肝・胆道系疾患の中では死亡率が最も高いのです」「胆道閉鎖症の主な3つの症状は生後14日以降も続く黄疸、淡黄色便、濃黄色尿です。新生児の90%に見られる生理的黄疸は生後14日までに肉眼上消失しますが、胆道閉鎖症の黄疸は消失せずに持続する、あるいは一旦消失したものが再び現れてきます。なお、生後1か月頃の患児の黄疸は皮膚やしろめの部分がくすんだ黄色なので見逃されやすく注意が必要です」「胆道閉鎖症の患児の70〜80%は生後4週までに便の黄色調がうすくなって淡黄色になり、残りの20〜30%も多くは生後2か月までに淡黄色便を発症します」「血液では血清総ビリルビン値の上昇、直接型ビリルビン値の上昇(1.5 mg/dl以上)、直接型対総ビリルビン比(D/T比)20%以上、ASTおよびALT値の上昇、リポプロテイン-X陽性等、検査値の異常を認めます」「術後20年生存率は手術時日齢と負の相関があり、生後60日内であれば43%、61〜90日では33%、91〜120日では25%、121〜150日では7%、151日以降では0になります。……しかし生後60日以内に手術を受ける患児は、今日でも全体の約40%にすぎません」「淡黄色便は胆道閉鎖症、先天性胆道拡張症のような胆管の閉塞のある児で認められます。……淡黄色便は新生児肝炎(症候群)、アラジール症候群、シトリン欠損症、敗血症・尿路感染症、先天性代謝異常、染色体異常、進行性家族性肝内胆汁うっ滞など、肝内胆汁うっ滞により胆汁排泄機能が低下する児でも認められます。これらのすべての疾患において、ビタミンKが腸から吸収されにくい病態を持つため、ビタミンK欠乏による頭蓋内出血の危険があります。よって注意すべきことは、淡黄色便を認める児は、ただちに入院・精査・治療の必要があるということです」「70%近い胆道閉鎖症の患児が生後30日までに淡黄色便を発症しています」「頭蓋内出血では突然の哺乳力低下、意識レベルの低下等の重い神経症状を認めることがあります」、フローチャート(保護者の比色で1〜3番/医師の便色確認で1〜3番/黄疸あり・黄疸持続 → 胆道閉鎖症の疑い → 小児外科で精査・治療〈日本胆道閉鎖症研究会施設会員が望ましい〉/濃い黄色尿があればより確実)、日中の明るい部屋で、オムツについた児の便に便色カードを近づけて色を見比べる。
- 日本小児外科学会.小児外科で治療する病気「胆道閉鎖症」.http://www.jsps.or.jp/archives/sick_type/tandou-heishashou (httpでアクセス。2026-09-13閲覧)。「頻度は、約1万人に1人と稀な病気で、日本では男児に比べて女児に多く発生します」「典型的な症状は黄疸、便色異常(薄い黄色からクリーム色の便)、濃黄色尿、肝臓の腫大です」「便色異常は胆道閉鎖症を疑う最も重要な症状です」「本国では母子健康手帳に便カラーカードが添付されており……便の色がおかしければすぐに医療機関を受診する必要があります」「血液検査では直接ビリルビンという値が上昇することが特徴」「2023年に行われた日本胆道閉鎖症研究会による全国調査によると、葛西手術後の5年生存率が90.0%、5年自己肝生存率が56.7%と報告されており」「約30%の患者さんが5年以内に肝移植を受けていることになります」。
- 日本小児外科学会.小児外科で治療する病気「先天性胆道拡張症」.http://www.jsps.or.jp/archives/sick_type/sentensei-tandoukakutyoushou (httpでアクセス。2026-09-13閲覧)。「胆管が生まれつき拡張しており、膵・胆管合流異常を合併しているものを先天性胆道拡張症と呼びます」「膵液中に溶けているタンパク質が、胆汁と混じることにより固まり(タンパク栓)を作り、それが胆管の途中で詰まると胆汁の流れが悪くなり、腹痛や黄疸などの症状を引き起こします」「胆管の拡張が強い場合には、胎児期の超音波検査で発見されたり、生後すぐに黄疸や腹部腫瘤で気づかれることもあります。乳児期や幼児期に突然腹痛、嘔吐、黄疸、発熱などの症状が起きることがあります」「膵液と胆汁が胆道内で混じる状態が続くと、胆管や胆嚢の粘膜が障害され、将来的に胆道癌を発生しやすくなると考えられています」「超音波検査や腹部CT検査で胆管拡張は診断できますが、膵・胆管合流異常はこれらの検査でははっきりしないことが多く、MRIによる胆管膵管撮影(MRCP)や内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)といった検査が行われることもあります」。