気道異物・窒息

気道異物・窒息

外科的緊急β版・逐条レビュー継続中

2026-09-10更新
β版用量は適用前に一次資料と院内採用を確認。このβ版について

施設プロファイル: 二次救急/外科的処置なし・硬性気管支鏡なし。摘出は当院で持てない。

30秒要約

  • 完全閉塞か、不完全閉塞かで対応がまったく違う。声が出る・咳ができるなら咳を妨げない
  • 乳児に腹部突き上げは行わない
  • 異物が見えないのに、やみくもに指を入れて探らない。押し込んで完全閉塞にする。
  • 咳込みのあとに症状が消えても否定できない。異物が末梢に落ちると無症状期に入り、後から肺炎・無気肺で見つかる。
  • 腹部突き上げを行った患者は、内臓損傷の可能性があるため必ず医師の診察を受けさせる。搬送時に「実施した」と伝える。

レッドフラグ

所見があったときにどれだけ急ぐかと、家族に何を伝えるかの対応表。3列目の文言は家族説明ページに同じ言葉で載っているので、画面を見せながら渡せる。

緊急度所見その場で次にやること時間の勝負
119話せない・声が出ない・チアノーゼ・呼吸ができない(完全閉塞)ただちに異物除去手技。反応がなくなればCPRを開始秒単位
119反応がなくなった心停止に対する心肺蘇生の手順を開始する。異物を探すために胸骨圧迫を中断しない秒単位
緊急突然の咳込み・喘鳴・呼吸困難(不完全閉塞)咳を妨げない。泣かせない・不用意に口腔内を触らない。気管支鏡のできる施設へ連絡完全閉塞に移行しうる
緊急目撃のある誤嚥後に症状が消えた無症状期に入っただけのことがある。否定しない後から肺炎・無気肺
緊急片側の呼吸音低下・局所的な喘鳴気管支異物を疑う。画像へ
当日原因のはっきりしない遷延する咳・反復する肺炎気道異物の既往を疑って問診し直す

異物除去の手技(JRC蘇生ガイドラインに基づく)

年齢手技
乳児(1歳未満)腹部突き上げは行わない。背部叩打と胸部突き上げを組み合わせて繰り返す
1歳以上の小児・成人まず背部叩打。除去できなければ腹部突き上げを行う

背部叩打法: 患者の後ろから、手のひらの基部で左右の肩甲骨の中間あたりを力強く何度も叩く。乳児では片腕にうつぶせに乗せ、手のひらであごを支えて頭を体より低く保ち、背中の真ん中を叩く。

腹部突き上げ法: へそを確認し、握りこぶしをへその上方に当て、すばやく手前上方に向かって突き上げる。妊婦や乳児には行わない

やってはいけないこと

  • 異物が見えない場合に、やみくもに指を入れて探らない
  • 異物を探すために胸骨圧迫を中断しない
  • 口腔内に異物が見える場合は、可能なら指で取り除く(見えないときは探すことに時間を使わない)

事後: 腹部突き上げ法を実施した場合は、腹部の内臓を傷める可能性があるため、救急隊にその旨を伝えるか、すみやかに医師の診察を受けさせる

出典間の食い違い(要確認): 乳児の手技について、JRC蘇生ガイドライン系の記載は「背部叩打と胸部突き上げを組み合わせる」だが、日本医師会「救急蘇生法」のページは「乳児では腹部突き上げ法は行いません。背部叩打法のみ行います」としている。院内のBLSコースがどちらを教えているかに合わせること。両者に共通するのは「乳児に腹部突き上げを行わない」点。

鑑別

疾患見分け落とし穴
クループ犬吠様咳嗽、嗄声、吸気性喘鳴。夜間に増悪、経過が数日気道異物は突然発症で先行感染がない
喘息発作呼気性喘鳴、両側性、既往、吸入への反応気道異物は片側性の所見を取ることがあり、吸入に反応しない
細気管支炎乳児、先行する鼻汁・咳、両側の喘鳴、流行期同上
喉頭蓋炎・咽後膿瘍発熱、流涎、嚥下困難、前傾姿勢気道緊急という点では同じ。触らない
食道の異物が気道症状を出している食道入口部の異物は喘鳴・咳嗽・呼吸困難で発症することがあるX線に頸部を含める消化管異物

所見の取り方

  • まず「声が出るか」。話せる・泣ける・咳ができるなら不完全閉塞で、咳を妨げないのが最善。
  • 不完全閉塞では不用意に口腔内を触らない・泣かせない。完全閉塞に変わる。
  • 呼吸音は左右を比べる。片側の低下・局所的な喘鳴は気管支異物を示唆する。
  • 吸入への反応を見る(気道異物は反応しない)。

問診チェック

検査

  • 胸部X線。ただし多くの誤嚥物はX線に写らない。写らないことは否定にならない。
  • 間接所見を探す(片側の過膨張、無気肺、縦隔偏位)。呼気時撮影や側臥位撮影で差が出ることがある。撮影法の詳細は本シートでは国内一次情報を確認できていないため、放射線科と相談して決める(要確認)
  • 食道異物を疑う要素があれば、頸部から骨盤までのX線消化管異物)。

送る/持つ(当院=二次救急・外科的処置なし・硬性気管支鏡なし)

摘出は持てない。疑った時点で気管支鏡のできる施設へ連絡する。

  1. 完全閉塞はその場で手技。搬送を待たない。
  2. 不完全閉塞は咳を妨げず、刺激しないまま搬送を手配する。処置で完全閉塞に変えない。
  3. 受け入れ先へ伝えること: 何を・いつ・目撃の有無・現在の閉塞の程度・すでに行った手技
  4. 腹部突き上げを行っていれば、その旨を必ず伝える(内臓損傷の評価が要る)。

エスカレーション(施設オーバーレイで上書き)

  • 要確認:気管支鏡(硬性・軟性)のできる施設の夜間・休日の受け入れ先と直通番号
  • 要確認:院内のBLSコースが乳児の手技をどう教えているか(上記の食い違いに合わせる)
  • 要確認:気道異物を疑うときのX線撮影法(呼気時・側臥位)の院内での実施可否
  • 要確認:搬送中に完全閉塞に移行した場合の手順(同乗の要否)

家族に渡す一文

「のどや気管にものが詰まった可能性があります。声が出て咳ができているうちは、咳を止めないことがいちばん大事です。むやみに口の中に指を入れないでください。取り出す処置は当院ではできないので、できる病院にお願いします。」

医師確認事項(要・岡本判断)

  • 要確認:乳児の異物除去手技について、JRCの記載(背部叩打+胸部突き上げ)と日本医師会のページ(背部叩打のみ)が食い違っている。院内でどちらを採るか決める必要がある。
  • 要確認:気道異物のX線撮影法(呼気時撮影・両側側臥位)について、国内の一次情報を確認できていない。放射線科と詰める必要がある。
  • 要確認:気管支鏡のできる受け入れ先。決まっていないことがこのシートで最大のリスク

出典

  • JRC蘇生ガイドライン(日本蘇生協議会).小児の蘇生(PLS).https://www.jrc-cpr.org/wp-content/uploads/2022/07/JRC_0151-0229_PLS.pdf (2026-09-10閲覧)。気道異物除去法は一次救命処置「異物による気道閉塞の解除」を参照する構成であること、乳幼児の窒息が誤嚥事故の背景にあること。乳児に腹部突き上げを行わず背部叩打と胸部突き上げを組み合わせること、1歳以上ではまず背部叩打を行い除去できなければ腹部突き上げを行うこと、異物を探すために胸骨圧迫を中断せず盲目的に指で探らないことは、JRC蘇生ガイドラインの記載としてWeb検索結果経由で確認しており、一次救命処置章の原文は未確認。最新版はJRC蘇生ガイドライン2025:https://www.jrc-cpr.org/jrc-guideline-2025/本シートが2025年版と整合するかは未照合)。
  • 日本医師会.救急蘇生法「気道異物除去の手順」.https://www.med.or.jp/99/kido.html (2026-09-10閲覧)。背部叩打法・腹部突き上げ法の手技、乳児では腹部突き上げ法を行わず背部叩打法のみ行うという記載、見えない場合にやみくもに指を入れて探らないこと、反応がなくなれば心肺蘇生の手順を開始すること、腹部突き上げ法を実施した場合は内臓損傷の可能性があるため救急隊に伝えるか速やかに医師の診察を受けさせること。

計算

kgこのシートの計算すべてに反映。タブを閉じるまで保持されるので、患者が変わったらクリアする。
計算

気管チューブのサイズと固定長(JRC 2020)

cm(任意)
kg(任意)

算出式は指標であって、確定ではない。実際のサイズは声門・気管の見え方と換気の状態で決める。挿管後は聴診で両肺換気を確認し、頭位が変わるたびに確認し直す(前屈で深く、後屈で浅くなる)。体重が不明なときに年齢から体重を推定して代用しない — JRCは実際の体重を用い、わからない場合はあらかじめ投与量が計算された身長テープを用いることを示している。

いつ使う

2歳以上の小児で、年齢からチューブ内径と経口固定長の目安を出す。固定長は式ごとに数cm違うので、幅として持っておいて聴診で詰めるのが正しい使い方。

落とし穴
  • 2歳未満はこの算出式の対象外。年齢式を無理に当てない
  • カフなしとカフ付きで式が違う。さらにカフ付きにもMotoyama(大きめ)とKhine(小さめ)の2流儀があり、JRCはどちらも併記している。Motoyamaはシーリング性が高い反面サイズ過大の可能性、Khineは過大を避けられる反面リークでチューブ交換が必要になる可能性
  • 内径×3 の固定長はカフなしチューブを前提とした式で、カフ付きにそのまま適用できない
  • 狭すぎるチューブは気道抵抗と呼吸仕事量を増やし、リークを減らそうとして過大なカフ圧を要することになる
  • 「引き抜き法」は信頼性が低い可能性がある。深さマーキングも製品ごとに位置が違い統一されていない
次の一手

カフ付きを使うときは、カフを膨らませない状態で陽圧換気によるリークを確認し、カフ圧を最大20(〜25)cmH2O となるようモニタリングする。カフ圧も頭位で変わり、頭頸部の回旋・前屈・後屈で2.6〜6.9 cmH2O変化する。

出典

JRC蘇生ガイドライン2020 第3章 小児の蘇生(PLS)p.172-173「4)カフなしチューブとカフ付きチューブ」。Cole の式・Motoyama の式・Khine の式、固定長の3式、内径×3の簡便式、カフ圧の記載はいずれも同ページ。原文PDFで直接確認(2026-09-13)。

参考計算・参考判定です。適用は添付文書・現行ガイドライン・院内採用・患者個別要因を確認のうえ医師が判断してください。

手技

手技

気道異物は完全閉塞か不完全閉塞かで動きを分ける

完全閉塞か、不完全閉塞かで対応がまったく違う。声が出る・咳ができるなら咳を妨げない。乳児に腹部突き上げは行わない。摘出は当院で持てないため、疑った時点で受け入れ先へ連絡する。

始める前に

  • まず「声が出るか」を確認する。話せる・泣ける・咳ができるなら不完全閉塞で、咳を妨げないのが最善
  • 不完全閉塞では不用意に口腔内を触らない・泣かせない(完全閉塞に変わる)
  • 年齢を確認する(乳児1歳未満か、1歳以上か)で手技が変わる
  • 呼吸音は左右を比べる。片側の低下・局所的な喘鳴は気管支異物を示唆する
  • 出典間の食い違いに注意する:乳児の手技について、JRC蘇生ガイドライン系の記載は「背部叩打と胸部突き上げを組み合わせる」だが、日本医師会「救急蘇生法」のページは「乳児では腹部突き上げ法は行いません。背部叩打法のみ行います」としている。院内のBLSコースがどちらを教えているかに合わせること。両者に共通するのは「乳児に腹部突き上げを行わない」点

手順

  1. 1

    話せない・声が出ない・チアノーゼ・呼吸ができない(完全閉塞)なら、ただちに異物除去手技を行う

  2. 2

    乳児(1歳未満)には腹部突き上げを行わず、背部叩打と胸部突き上げを組み合わせて繰り返す

  3. 3

    1歳以上の小児・成人は、まず背部叩打を行い、除去できなければ腹部突き上げを行う

  4. 4

    背部叩打法:患者の後ろから、手のひらの基部で左右の肩甲骨の中間あたりを力強く何度も叩く。乳児では片腕にうつぶせに乗せ、手のひらであごを支えて頭を体より低く保ち、背中の真ん中を叩く

  5. 5

    腹部突き上げ法:へそを確認し、握りこぶしをへその上方に当て、すばやく手前上方に向かって突き上げる。妊婦や乳児には行わない

  6. 6

    口腔内に異物が見える場合は、可能なら指で取り除く(見えないときは探すことに時間を使わない)

  7. 7

    反応がなくなったら心肺蘇生の手順を開始する

    異物を探すために胸骨圧迫を中断しない

やってはいけない

  • 異物が見えない場合に、やみくもに指を入れて探らない
  • 異物を探すために胸骨圧迫を中断しない
  • 乳児に腹部突き上げを行わない(妊婦にも行わない)
  • 不完全閉塞では不用意に口腔内を触らない・泣かせない(完全閉塞に移行しうる)
  • 咳込みのあとに症状が消えても、異物の存在を否定しない(異物が末梢に落ちると無症状期に入り、後から肺炎・無気肺で見つかる)

終わったあと

  • 腹部突き上げ法を実施した場合は、腹部の内臓を傷める可能性があるため、救急隊にその旨を伝えるか、すみやかに医師の診察を受けさせる

この場で持てない・送る

  • 摘出は持てない。疑った時点で気管支鏡のできる施設へ連絡する
  • 完全閉塞はその場で手技。搬送を待たない
  • 不完全閉塞は咳を妨げず、刺激しないまま搬送を手配する。処置で完全閉塞に変えない
  • 受け入れ先へ伝えること:何を・いつ・目撃の有無・現在の閉塞の程度・すでに行った手技
  • 腹部突き上げを行っていれば、その旨を必ず伝える(内臓損傷の評価が要る)
  • 要確認:気管支鏡(硬性・軟性)のできる施設の夜間・休日の受け入れ先と直通番号
  • 要確認:院内のBLSコースが乳児の手技をどう教えているか(JRC系と日本医師会の食い違いに合わせる)
  • 要確認:搬送中に完全閉塞に移行した場合の手順(同乗の要否)
  • 要確認:気道異物を疑うときのX線撮影法(呼気時・側臥位)の院内での実施可否。放射線科と相談して決める

手順・適応・禁忌はすべて本シートの正本の記載のみ。院内の器材・採用薬・搬送先は施設ごとに違うため、適用前に院内ルールを確認すること。

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