典型経過(軽症・大多数)
38〜40℃の高熱が3〜4日程度持続したのち、解熱とともに(または解熱から半日ほど遅れて)体幹を中心に顔面・四肢へ広がる鮮紅色の斑丘疹が2〜4日出現する[2][8]。高熱の割に比較的機嫌が保たれることが多く、この「熱の高さと元気さのギャップ」が突発性発疹らしさのサインである一方、保護者にも医療者にも見過ごされやすいポイントでもある。有熱期に軟口蓋垂根部両側にみられる永山斑(粟粒大の紅色隆起)があれば、発疹出現前の段階でも診断の手がかりになる[8]。
診断の性質: 有効な迅速検査・確定血液検査は日常診療では通常行わない。解熱後に発疹が出て初めて確定できる「事後診断」であることを前提に、発熱中は「突発性発疹の疑い」として経過をみる姿勢が基本となる[2]。
年齢因子
好発は生後6か月〜2歳(ピークは生後9〜12か月前後)。近年は初感染年齢の年長化傾向が指摘されており、2014〜2016年の国内研究では初感染年齢の中央値が生後14か月に達したとの報告がある[3]。
熱性けいれん合併型
HHV-6/7初感染は他の熱性疾患より熱性けいれん合併率が高く、生後6〜18か月の乳児で10〜15%程度に熱性けいれんを伴うとされる。複雑型熱性けいれんで救急受診した症例の約半数を突発性発疹が占めるとの報告があり、「発熱から24時間以上経過してからのけいれん発症」が突発性発疹に伴う複雑型けいれんの特徴として有意に多いとされる[3]。単純型(全般性・15分未満・24時間以内に1回のみ)か複雑型(部分発作様/群発/長時間/24時間以内に複数回)かで、その後の検査方針・紹介要否が変わる(§3、§5)。
脳炎・脳症型(まれ、重症)
最重症型はけいれん重積型急性脳症(AESD)で、解熱後に部分けいれんの群発を伴う。全国推計で年間60〜100例と、頻度としては低いが、突発性発疹はその主要な背景疾患の一つである[3][4]。
鑑別診断(麻疹・風疹・薬疹)
- 麻疹: カタル期(咳・鼻汁・結膜充血)を伴う発熱が2〜4日続き、いったん解熱傾向を示した後に再び高熱とともに発疹が出現する二峰性の熱型が特徴。発疹出現の1〜2日前後にコプリック斑(頬粘膜の白色小斑点)を認める。発疹は解熱前〜再上昇した発熱期に出現する点が、解熱後に発疹が出る突発性発疹と決定的に異なる[7]。ワクチン歴・接触歴も確認する。
- 風疹: 発熱は軽度〜なしのことが多く、発熱(あれば)と同時期に紅色斑丘疹が出現し、後頸部・耳介後部・後頭部のリンパ節腫脹を伴うことが多い。突発性発疹のように「解熱してから」発疹が出るパターンとは異なる。
- 薬疹: 発熱中に感冒・中耳炎疑いなどで抗菌薬(アモキシシリン等)が投与されているケースでは、解熱後に出現した突発性発疹の紅色斑丘疹が薬疹と誤認されやすい。鑑別のポイントは、①発疹出現のタイミングが解熱と一致するか(=突発性発疹らしさ)/薬剤の投与開始・変更のタイミングと一致するか(=薬疹らしさ)、②痒みや蕁麻疹様膨疹の有無(薬疹で目立ちやすい)、③永山斑の有無、④薬剤中止後も発疹が数日持続・拡大する場合は薬疹よりウイルス性を疑う、という点を総合して判断する。抗菌薬使用歴がある発熱後発疹では、この鑑別を必ず一度言語化してからカルテに残す。
- 川崎病: 「診断の手引き改訂6版」(発熱の日数条件は撤廃)の主要症状6項目——①眼球結膜充血、②口唇発赤・苺舌・口腔咽頭粘膜のびまん性発赤などの口唇口腔所見、③不定形発疹(BCG接種痕の発赤を含む)、④四肢末端の変化(急性期の硬性浮腫・掌蹠紅斑、回復期の指先からの膜様落屑)、⑤急性期の非化膿性頸部リンパ節腫脹、⑥発熱——を積極的に確認する。冠動脈病変のリスクを踏まえ、「発熱5日以上」の一文だけでなくこれらの具体所見がひとつでもあれば突発性発疹より優先的に疑い、専用の評価・紹介経路に乗せる[10]。