最初の5分 — 小児を診るときの初期評価と次の一手

最初の5分 — 小児を診るときの初期評価と次の一手

救急・外傷・中毒β版・逐条レビュー継続中

2026-09-12更新
β版用量は適用前に一次資料と院内採用を確認。このβ版について

施設プロファイル: 二次救急/外科的処置なし・小児集中治療なし

30秒要約

  • 触る前に、離れて見る。外観・呼吸・循環の3つを数秒で。ここで「悪い」と思ったら、診察より先に人を呼ぶ。
  • 数値は年齢で変わる。大人の感覚で「脈130は速い」「呼吸40は速い」と判断しない。下の表を見る。
  • 血糖・SpO2・体温・体重は、迷ったら全部取る。取らないと後で困る。
  • 迷ったら送る。当院は外科的処置も集中治療も持たない。「持てないもの」を先に思い出す。
  • 所見が出たら、このページの表で次の一手を引く

触る前に、離れて見る(外観・呼吸・循環)

見るもの正常でない例次の一手
外観目が合わない、あやしても笑わない/泣きやまない、ぐったり、だらんとしている重症感あり。上級医コール、モニタ装着、ルート確保の準備
呼吸陥没呼吸、鼻翼呼吸、肩で息をする、うなり声(呻吟)、呼吸が浅く速い/遅い、無呼吸酸素投与。SpO2測定。気道の異常音(吸気性喘鳴=上気道/呼気性喘鳴=下気道)を聞き分ける
循環蒼白、まだら(網状チアノーゼ)、チアノーゼ、四肢冷感ショックを疑う。CRT・脈・血圧を測る。下の「ショック」へ

この3つのどれかが明らかにおかしい時点で、診断がつく前に動き始めてよい。

年齢別のめやす(数値は下限・上限の目安。院内基準があればそちらを優先)

年齢心拍数(回/分)呼吸数(回/分)収縮期血圧の下限(mmHg)
新生児(〜28日)100〜18030〜5060
乳児(1か月〜1歳)100〜16030〜4070
1〜10歳年齢とともに低下年齢とともに低下70 +(年齢×2)
10歳以上60〜10012〜2090

使い方

  • 収縮期血圧が上の下限を下回ったら「低血圧性ショック」。下回っていなくても、外観・呼吸・循環が悪ければ代償性ショック(血圧は最後まで保たれる)。
  • 「血圧が保たれているから大丈夫」と判断しない。小児は代償するので、血圧が下がったときにはもう遅い。
  • 呼吸数・心拍数は啼泣で大きく変動する。落ち着いたときに測り直す。

要確認: 心拍数・呼吸数の年齢別範囲と収縮期血圧の下限(70+年齢×2 など)は、AHA PALSに由来する基準を日本語の二次情報で確認したもので、日本の学会による一次資料では未確認。院内基準があればそちらに合わせること。

ショックを疑ったら

循環障害の一般的な徴候: 「毛細血管再充満時間の延長(2秒以上)、四肢冷感、尿量減少など」

状態定義
代償性ショック心拍数増加や末梢血管収縮などの代償機転により、血圧が各年齢における許容下限値以上に保たれている状態
低血圧性ショック代償機転の限界を越え、血圧が許容下限値以下になった状態

初期治療(原因によらず)

  1. ただちに酸素投与を行う。
  2. 等張性輸液(生理食塩液やリンゲル液など)10〜20 mL/kg を急速投与する。
  3. 低張性輸液は使用しない
  4. 迅速な初期評価に続いて再評価し、必要があれば等張性輸液を再投与する。同時にショックの原因の検索も行う

所見 → 次の一手(非専門が迷うところだけ)

呼吸

所見次の一手参照
吸気性喘鳴(吸うときにヒューヒュー)+犬吠様咳嗽クループ。泣かせない。ネブライザーの準備クループ
吸気性喘鳴+高熱+流涎+前傾姿勢急性喉頭蓋炎を疑う。咽頭を覗かない・仰臥位にしない・泣かせない。気道確保できる施設へ
呼気性喘鳴(吐くときにヒューヒュー)、両側性喘息・細気管支炎。SpO2測定、吸入喘息発作 / RSV
突然の咳込みから始まった、片側の呼吸音低下気道異物。咳を妨げない、口の中を触らない気道異物
深く速い呼吸(Kussmaul呼吸=規則的で深い)血糖と血液ガス。DKAを外すDKA
無呼吸(乳児)モニタ装着。敗血症・百日咳・BRUEを考える意識障害

循環・全身

所見次の一手参照
CRT 2秒以上、四肢冷感、蒼白ショック。酸素+等張性輸液10〜20 mL/kg上の「ショック」
発熱+紫斑髄膜炎菌・敗血症を疑う。血液培養、抗菌薬を遅らせない、上級医コール
頻脈が発熱や脱水で説明できない、肝腫大心筋炎を疑う。心電図・胸部X線急性腹痛
3か月未満の38.0℃以上「元気そう」でも精査前提3か月未満の発熱

意識・神経

所見次の一手参照
反応が鈍い・ぐったり血糖をまず測る。意識レベルを数値で記録意識障害
けいれんが続いている時刻を記録。5分を超えたら第一選択薬けいれん重積
けいれんは止まったが意識が戻らない非けいれん性重積を疑う。脳波が要る=当院で持てないけいれん重積
気を失った(運動中・臥位・前ぶれなし)心原性を疑う。心電図失神
瞳孔不同・徐脈+高血圧・異常肢位頭蓋内圧亢進当院にCTも脳外科も無い=この所見だけで搬送意識障害

おなか

所見次の一手参照
緑〜黄色の嘔吐(胆汁性)腸回転異常症・中腸軸捻転を最優先で外す。小児外科へ即連絡中腸軸捻転
間欠的に激しく泣き、合間は機嫌が戻る(3か月〜2歳)腸重積当直帯はエコーが無い=この所見だけで電話する。血便を待たない腸重積
板状硬・反跳痛腹膜炎。絶食・ルート・外科のある施設へ急性腹痛
男児の腹痛・下腹部痛陰嚢を必ず開けて診る(精巣捻転は6〜8時間)急性陰嚢症
鼠径部に硬い膨隆+不機嫌嵌頓ヘルニア嵌頓ヘルニア

その他

所見次の一手参照
ボタン電池・磁石を飲んだ可能性頸部から骨盤までX線。なにも飲ませない消化管異物
薬・洗剤・たばこを口にした吐かせない。物質で水・牛乳の可否が分かれる急性中毒
受傷機転と所見が合わない/乳児の骨折虐待を疑う。2歳以下は全身骨X線外傷・跛行
顔面熱傷・閉所での火災気道熱傷。高濃度酸素をすぐ開始熱傷

迷ったときの既定

  1. 当院が持てないものを先に思い出す — 外科手術、整形外科手術、緊急内視鏡、気管支鏡、人工呼吸管理、脳波、集中治療。これらが要ると思った時点で、確定を待たずに電話する
  2. 検査を全部終えてから電話しない。並行する。
  3. 家族に「うちでは手術ができない」ことを、検査の前に伝えておく。決まってからの説明が揉めない。
  4. 帰すなら、再受診の条件を具体的な所見で紙に渡す(家族説明ページを開いてURLを渡す)。「何かあれば」は条件にならない。

電話で伝える順(ISBAR)

  • I(Identify): 誰が・どこから・何歳何か月・体重
  • S(Situation): いま何を疑っていて、発症から何時間目か
  • B(Background): 経過・既往・ワクチン・最終飲食
  • A(Assessment): バイタル・意識レベル・所見・やった検査と結果
  • R(Request): お願いしたいこと(受け入れ/処置/相談だけ、を明示する)

必ず取るもの(あとで困らないために)

エスカレーション(施設オーバーレイで上書き)

  • 要確認:当直体制(1人当直か、上級医オンコールがあるか。呼ぶ基準と連絡先)
  • 要確認:夜間・休日の受け入れ先一覧(小児外科/泌尿器/整形/脳外科/集中治療/緊急内視鏡/気管支鏡/熱傷)
  • 要確認:救急車要請の院内手順(誰が呼び、誰が同乗するか)
  • 要確認:年齢別バイタルの院内基準の有無
  • 確定(2026-09-14)夜間に出せる=血糖・血液ガス・血算・簡易生化・迅速検査・尿定性・便・髄液(細胞数/糖/蛋白/グラム染色)。出せない=末梢血液像(鏡検)・白血球の自動分画・尿沈渣・培養の提出・画像(X線を除く)

医師確認事項(要・岡本判断)

  • 要確認:年齢別バイタルの数値は日本の学会一次資料では確認できていない。院内基準を置くか、このまま二次情報由来として使うか。
  • 要確認:このシートを非専門の当直医が最初に開く入口として置く前提でよいか。
  • 要確認:「迷ったときの既定=送る」の書き方が、当院の運用と合っているか。
  • 要確認:体重を実測する前提で書いている(推定式は載せていない)。夜間に体重計が使えるか。

出典

  • 日本蘇生協議会(JRC)/AHA系 小児の蘇生(PALS)日本語版.第3章 小児の蘇生(PBLS、PALS).https://www.seccm.org.tw/files/edu_aclsInfo/JPN_PED.pdf (2026-09-12閲覧・PDF原文を確認)。循環障害の一般的な徴候(毛細血管再充満時間の延長〈2秒以上〉、四肢冷感、尿量減少)、代償性ショックと低血圧性ショックの定義、ショックの初期治療=原因によらず等張性輸液(生理食塩液やリンゲル液など)10〜20 mL/kg を急速投与し、低張性輸液は使用しない、ただちに酸素投与を行う、再評価して必要なら再投与し同時に原因検索を行うこの文書は台湾の学会サイトに置かれた日本語版PDFであり、日本の学会の公式配布物としての所在は未確認
  • 小児の収縮期血圧下限(新生児60・乳児70・1〜10歳は70+年齢×2・10歳以上90 mmHg)および年齢別の心拍数・呼吸数の目安は、AHA PALSに由来する基準を日本語の二次情報(HOKUTO「小児のバイタルサイン正常範囲」https://hokuto.app/calculator/65boZVK1MV6v3SOvdQ0U 、看護roo!「小児のバイタルサインの特徴」https://www.kango-roo.com/learning/9891/ ほか)で確認したもので、日本の学会による一次資料は未確認(2026-09-12閲覧)。
  • 各行の「次の一手」の根拠は、リンク先の各シートの出典に従う。

処方

kgこのシートの計算すべてに反映。タブを閉じるまで保持されるので、患者が変わったらクリアする。
処方

処方の考え方

触る前に、離れて見る(外観・呼吸・循環)。小児は代償するため、血圧が保たれていても代償性ショックはあり得る。ショックを疑ったら原因によらず、ただちに酸素投与+等張性輸液を急速投与し、低張性輸液は使わない。

初期治療

この数字の意味

体重換算の考え方であって処方箋ではない。実際の剤形・力価(ドライシロップ10%/20%等)と採用薬は施設ごとに違い、本シートの「院内ローカルルール」(§6)は未確定のまま。g・包数への換算は院内採用を確認したうえで行う。

薬剤名だけで用量が出ないものは、正本にその記載が無いということ。推測の数字は出さない。

参考計算・参考判定です。適用は添付文書・現行ガイドライン・院内採用・患者個別要因を確認のうえ医師が判断してください。

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