伝染性単核症(EBV)
発熱・感染症β版・逐条レビュー継続中
2026-09-12更新
β版用量は適用前に一次資料と院内採用を確認。このβ版について
施設プロファイル: 二次救急。多くは当院で対応できる。落とし穴は「扁桃炎だと思って抗菌薬を出すこと」。
30秒要約
- 溶連菌性扁桃炎と思ってペニシリン系を出すと、薬疹が出る。「ABPCを内服すると薬疹を生じて、鮮明な滲出性紅斑様皮疹や丘疹などを呈す」。
- 発熱は38℃以上の高熱で1〜2週間持続することが多い。「抗菌薬が効かない扁桃炎」で疑う。
- 乳幼児期の初感染は不顕性であることが多く、思春期以降に感染するとIMを発症することが多い。年齢で見え方が変わる。
- 異型リンパ球は数%以下のこともある。10〜50%と著増する例もあれば、少ない例もある。少ないことを否定の根拠にしない。
- 脾腫があれば脾破裂のリスク。運動制限が要る(期間は出典で食い違う。下記)。
レッドフラグ → 次の一手
所見があったときにどれだけ急ぐかと、家族に何を伝えるかの対応表。3列目の文言は家族説明ページに同じ言葉で載っているので、画面を見せながら渡せる。
| 緊急度 | 所見 | 次の一手 |
|---|---|---|
| 119 | 左上腹部痛・ショック(脾破裂) | 「時に巨大脾腫から脾破裂に至ることもある」。外科のある施設へ緊急(当院で開腹できない) |
| 119 | 気道閉塞を疑う(扁桃の著明腫大・いびき・陥没呼吸) | 気道確保のできる施設へ。急性喉頭蓋炎と同じ扱いで刺激しない |
| 緊急 | 意識障害・けいれん・麻痺 | 中枢神経合併症(無菌性髄膜炎、脳炎、急性片麻痺、Guillain-Barré症候群)。意識障害 |
| 緊急 | 黄疸・著明な肝機能異常 | 肝炎型。入院を検討 |
| 緊急 | 経口摂取ができない(咽頭痛・扁桃腫大) | 輸液。入院適応の判断へ |
| 当日 | 抗菌薬を出したあとに全身の皮疹 | ペニシリン系による薬疹を疑う。EBVを考え直す |
| 当日 | 扁桃炎+頸部リンパ節腫脹+肝脾腫 | EBVを疑い、血算(異型リンパ球)・肝機能・EBV抗体 |
治療ワークフロー(当院でやること)
| 順 | やること | 注意 |
|---|---|---|
| 1 | 溶連菌迅速検査を出す | 陽性でもEBVの合併はありうる。「陽性だからEBVではない」と決めない |
| 2 | 血算(異型リンパ球)・肝機能 | 異型リンパ球は10〜50%と著増することもあれば数%以下のこともある |
| 3 | EBV抗体(VCA-IgM、抗EBNA抗体) | VCA IgMは乳幼児では検出されない場合がある |
| 4 | ペニシリン系(ABPC/AMPC)を出さない | 薬疹が出る。すでに出ていれば中止 |
| 5 | 脾腫を触知するか確認する | あれば運動制限(期間は下記・要確認) |
| 6 | 対症療法(解熱鎮痛・水分) | 特異的治療はない |
| 7 | 経口摂取・気道・意識を評価して入院適応を判断 | — |
検査の読み方
| 項目 | 所見 |
|---|---|
| 潜伏期 | 4〜6週間と長い。接触歴は思い出せないことが多い |
| 発熱 | 多くの場合38℃以上の高熱で1〜2週間持続 |
| 異型リンパ球 | 10%から中には50%と著増する場合もあるが、中には数%以下の症例も認められる |
| AST/ALT | 第2週頃をピークとして300〜500 IU/L程度のことが多い |
| VCA-IgM | 通常、初感染急性期に検出される。乳幼児では検出されない場合がある |
鑑別
脾腫と運動制限(出典で期間が食い違う)
- 国立健康危機管理研究機構: 「時に巨大脾腫から脾破裂に至ることもあるため、注意を要する」(期間の明記なし)
- 二次情報では「脾腫が認められる場合、脾破裂のリスクとなるため発症3週間は運動を避けるよう指示」とするものと、「脾腫は2〜3カ月は安静が必要で、本格的な運動開始は6カ月後が望ましい」とするものがある。
要確認: 運動制限の期間について、日本の一次情報で確定した記載を本シートでは確認できていない。「脾腫があれば運動を避ける」という原則のみ確実で、期間は院内で決めるか、専門医の指示に従うこと。学校・部活への指示を出す場面で必ず問題になるので、方針を決めておく必要がある。
送る/持つ(当院=二次救急・外科的処置なし)
| 状態 | 当院の扱い |
|---|---|
| 典型的な経過で経口摂取可能 | 当院で対応できる。対症療法と運動制限の指示 |
| 経口摂取不能・脱水 | 輸液。入院適応を判断 |
| 脾破裂を疑う | 持てない。外科のある施設へ緊急 |
| 気道閉塞を疑う扁桃腫大 | 持てない。気道確保のできる施設へ |
| 中枢神経合併症 | 持てない |
| 血算に芽球など悪性を疑う所見 | 血液専門施設へ |
エスカレーション(施設オーバーレイで上書き)
- 要確認:運動制限の期間の院内方針(学校・部活へ出す指示に直結する)
- 要確認:EBV抗体の外注と結果が出るまでの日数
- 要確認:入院適応(経口摂取不能・気道・肝障害)の院内基準
家族に渡す一文
「EBウイルスによる感染症で、のどの腫れ・高熱・首のリンパ節の腫れが1〜2週間続くのが特徴です。抗菌薬は効きません。むしろ、ある種の抗菌薬を飲むと全身に発疹が出ることがあるため使いません。脾臓(ひぞう)が腫れている場合は、ぶつけると破裂する危険があるので、運動は主治医の許可が出るまで控えてください。水が飲めない・息が苦しい・お腹の左上が強く痛む、といったときはすぐ来てください。」
医師確認事項(要・岡本判断)
- 要確認:脾腫がある場合の運動制限期間。日本の一次情報で確定した記載が見つからず、二次情報の間でも3週間・2〜3カ月・6カ月と食い違っている。
- 要確認:EBV抗体をいつ出すか(初診で全例か、経過を見てからか)。
- 要確認:溶連菌迅速陽性でもEBVを疑う場面の線引き。
- 要確認:本シートは国立健康危機管理研究機構の疾患ページを主な根拠としており、日本の学会による伝染性単核症の診療ガイドラインは確認していない。
出典
- 国立健康危機管理研究機構.伝染性単核症(詳細版).https://id-info.jihs.go.jp/infectious-diseases/infectious-mononucleosis/detail/index.html (2026-09-12閲覧)。潜伏期4〜6週間、症状(発熱・咽頭扁桃炎・リンパ節腫脹・発疹・末梢リンパ球増加・異型リンパ球増加・肝機能異常・肝脾腫)、38℃以上の高熱が1〜2週間持続すること、「乳幼児期に初感染をうけた場合は不顕性感染であることが多いが、思春期以降に感染した場合にIMを発症することが多く」、異型リンパ球が10〜50%と著増する場合もあれば数%以下の症例も認められること、AST/ALTが第2週頃をピークとして300〜500 IU/L程度のことが多いこと、「VCA IgMは通常、初感染急性期に検出されるが、乳幼児では検出されない場合がある」、中枢神経合併症(無菌性髄膜炎・脳炎・急性片麻痺・Guillain-Barré症候群)、「ABPCを内服すると薬疹を生じて、鮮明な滲出性紅斑様皮疹や丘疹などを呈す」、「時に巨大脾腫から脾破裂に至ることもあるため、注意を要する」。
- 日本感染症学会.感染症クイック・リファレンス「伝染性単核球症」.https://www.kansensho.or.jp/ref/d51.html (2026-09-12閲覧)。VCA-IgM抗体の診断的意義。
- 運動制限の期間(3週間/2〜3カ月/6カ月)は二次情報の間で食い違っており、日本の一次情報での確定記載は本シートでは確認できていない。
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