気胸はX線を待たずに疑い、当院はドレナージなしで送る
突然の胸の痛みと息苦しさが最も多い症状で、喘息発作と間違えやすい。緊張性気胸はX線を待たずに疑った時点で動く。日本救急医学会は「胸部エックス線写真による確診を待たずに、速やかな胸腔ドレナージを施行する必要がある」としている。当院はドレナージを持たないため、疑った時点で搬送手配する。
始める前に
- 片側の呼吸音減弱か両側性かを確認する(喘息発作は呼気性喘鳴が両側性・既往あり・吸入に反応する、気胸は片側の呼吸音減弱・突然発症・胸痛が前面)
- 突然発症か、先行する喘息の既往があるかを確認する
- 吸入への反応を見る(気胸は反応しない)
- 胸壁に開放創がないか確認する
- 胸腹部の咬傷がないか確認する(気胸と内臓損傷の有無を確認する)
- 10〜30代のやせ形の男性・中学生〜高校生男子の胸痛では自然気胸を鑑別に入れる
手順
- 1
高度の呼吸困難・チアノーゼ・ショックがあれば緊張性気胸を疑い、X線を待たずに酸素投与・モニタ装着のうえ、その場で受け入れ先に電話する
胸部エックス線写真による確診を待たずに、速やかな胸腔ドレナージを施行する必要があるため(当院はドレナージできない)
- 2
突然の胸痛+呼吸困難で、やせ形の10代男子なら自然気胸を疑い、胸部X線(立位)とSpO2を確認する
- 3
胸壁に開放創があれば、ビニール片の三辺固定で開放創を被い、胸腔内への空気流入を防ぐ
プレホスピタルケアで推奨されている方法
- 4
送ると決めたら酸素投与とモニタ装着(血圧・SpO2・心電図)を行う
やってはいけない
- 片側の呼吸音減弱を喘息発作と決めつけない
- 吸入に反応しない呼吸困難を喘息発作として扱い続けない(胸部X線で気胸・異物を外す)
- 緊張性気胸を疑ったら、胸部X線による確診を待って搬送手配を遅らせない(検査より先に搬送手配する)
- 用手脱気(穿刺による脱気)を独断で行わない。当院で試みるかは日本の学会一次資料に明記が見つからず、本シートでは手技を記載していない。院内で方針を決める必要がある
終わったあと
- 胸痛のみでX線正常なら他の原因を検討し、再受診条件を渡す
この場で持てない・送る
- 緊張性気胸の疑いは持てない。酸素と搬送。X線を待たない
- X線で気胸を確認した場合も持てない。ドレナージのできる施設へ
- 受け入れ先へ「緊張性気胸を疑っている」と最初に言う。X線を撮っていないならその旨も伝える
- 開放性気胸は三辺固定で被覆してから搬送する
- 要確認:緊張性気胸を疑ったときに、当院で用手脱気を試みる方針か。試みるなら誰が・どこに・何ゲージで行うかを院内で決めておく
- 要確認:胸腔ドレナージのできる施設の夜間・休日の受け入れ先と直通番号
- 要確認:夜間に胸部X線を撮れる体制
- 要確認:X線で気胸を認めた場合に、当院で経過観察してよい範囲があるか
- 要確認:「患側の呼吸音消失+打診で鼓音」という所見は臨床的に広く使われているが、日本呼吸器学会・日本救急医学会の一次文書中に同様の明文は確認できていない。本シートでは片側の呼吸音減弱を手がかりとし、打診所見は補助に留める
- 要確認:小児の気胸に特化した国内ガイドラインは確認できていない。日本気胸・嚢胞性肺疾患学会の書籍(2009年版)は有料で本文未確認
手順・適応・禁忌はすべて本シートの正本の記載のみ。院内の器材・採用薬・搬送先は施設ごとに違うため、適用前に院内ルールを確認すること。