気胸・緊張性気胸

気胸・緊張性気胸

呼吸器β版・逐条レビュー継続中

2026-09-12更新
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施設プロファイル: 二次救急/胸腔ドレナージなし。この病気は当院で治せない。判断は「疑うか」と「どう送るか」だけ。

30秒要約

  • 突然の胸の痛みと息苦しさが最も多い症状。喘息発作と間違えやすい。
  • 緊張性気胸は、X線を待たずに診断して動く。日本救急医学会は「胸部エックス線写真による確診を待たずに、速やかな胸腔ドレナージを施行する必要がある」としている。
  • 当院は胸腔ドレナージを持たない。緊張性気胸を疑ったら、その場で受け入れ先に電話しながら搬送を手配する。
  • 自然気胸は10〜30代のやせ形の男性に好発する。中学生〜高校生男子の胸痛では鑑別に入れる。
  • 胸腹部の咬傷でも気胸が起きうる。

所見 → 次の一手

所見次の一手
高度の呼吸困難・チアノーゼ・ショック緊張性気胸を疑う。X線を待たない。酸素投与、モニタ装着、その場で受け入れ先に電話。当院ではドレナージできない
突然の胸痛+呼吸困難、やせ形の10代男子自然気胸を疑う。胸部X線(立位)。SpO2
片側の呼吸音減弱気胸を疑う。胸部X線。喘息と決めつけない
吸入に反応しない呼吸困難喘息発作として扱い続けない。胸部X線で気胸・異物を外す
胸壁に開放創があるビニール片の三辺固定で開放創を被い、胸腔内への空気流入を防ぐ(プレホスピタルケアで推奨されている方法)
胸腹部の咬傷がある気胸と内臓損傷の有無を確認する動物咬傷
基礎肺疾患がある続発性気胸。再発・重症化しやすい
X線で気胸を認めた程度にかかわらず呼吸器外科/胸腔ドレナージのできる施設へ連絡。当院で経過観察してよいかは要確認

緊張性気胸とは(日本救急医学会の定義)

「患側の胸腔内圧が異常に上昇した結果、患側肺虚脱、横隔膜低位、健側への縦隔偏位、静脈還流障害による心拍出量の低下などをきたしている状態」。「放置すると血圧低下、閉塞性ショックなどの重篤な状態を招く」。

対応の原則: 「緊張性気胸を疑った場合には、胸部エックス線写真による確診を待たずに、速やかな胸腔ドレナージを施行する必要がある

当院はこれを持たない。 だから「疑った時点で電話する」が、当院での唯一の正しい動きになる。

鑑別(喘息発作との見分け)

病態見分け
喘息発作呼気性喘鳴が両側性、既往あり、吸入に反応する
気胸片側の呼吸音減弱、突然発症、胸痛が前面

要確認: 「患側の呼吸音消失+打診で鼓音」という所見は臨床的に広く使われているが、日本呼吸器学会・日本救急医学会の一次文書中に同様の明文は確認できていない。本シートでは「片側の呼吸音減弱」を手がかりとして書き、打診所見は補助に留めている。

そのほかの鑑別: 肺炎、心筋炎、肋骨骨折、心因性胸痛、気道異物

検査

  1. 緊張性気胸を疑うなら、検査より先に搬送手配
  2. そうでなければ胸部X線。気胸の有無と、原因となる肺の病気の有無を見る。
  3. SpO2。
  4. 必要に応じてCT(原因検索)。当直帯の当院にCTは無い(2026-09-14 確認)ので、原因検索は送り先で。当院は呼吸数・SpO2・呼吸音の左右差・気管偏位で疑い、緊張性を疑えば画像を待たずに脱気と搬送に動く。

送る/持つ(当院=二次救急・胸腔ドレナージなし)

状態当院の扱い
緊張性気胸の疑い持てない。酸素と搬送。X線を待たない
X線で気胸を確認持てない。ドレナージのできる施設へ
開放性気胸三辺固定で被覆してから搬送
胸痛のみでX線正常他の原因を検討。再受診条件を渡す

送ると決めた時点でやること

  1. 酸素投与
  2. モニタ装着(血圧・SpO2・心電図)
  3. 受け入れ先へ「緊張性気胸を疑っている」と最初に言う。X線を撮っていないならその旨も
  4. 開放創があれば三辺固定

用手脱気(穿刺による脱気)を当院で試みるかは、日本の学会一次資料に明記が見つからなかったため、本シートでは手技を記載していない。院内で方針を決める必要がある(下記)。

エスカレーション(施設オーバーレイで上書き)

  • 要確認:緊張性気胸を疑ったときに、当院で用手脱気を試みる方針か。試みるなら、誰が・どこに・何ゲージで行うかを院内で決めておく。決まっていない状態で夜間に判断を迫られるのが最悪
  • 要確認:胸腔ドレナージのできる施設の夜間・休日の受け入れ先と直通番号
  • 要確認:夜間に胸部X線を撮れる体制
  • 要確認:X線で気胸を認めた場合に、当院で経過観察してよい範囲があるか

家族に渡す一文

「肺を包む膜の中に空気がたまって、肺がしぼんでいる状態です。突然の胸の痛みと息苦しさが特徴です。たまった空気を抜く処置が必要で、当院ではその処置ができませんので、できる病院へ移っていただきます。移動の間も酸素を使います。」

医師確認事項(要・岡本判断)

  • 要確認:用手脱気の院内方針。日本の学会一次資料に「外科的処置のできない施設の医師が自ら穿刺すべきか」の明記がなく、本シートでは手技を載せていない。
  • 要確認:「患側呼吸音消失+鼓音」を緊張性気胸の臨床診断根拠として本シートに載せるか(国内一次資料では未確認)。
  • 要確認:小児の気胸に特化した国内ガイドラインは今回確認できていない。日本気胸・嚢胞性肺疾患学会の書籍(2009年版)は有料で本文未確認。
  • 要確認:X線で気胸を認めた場合の当院での観察範囲。

出典

  • 日本呼吸器学会.市民のためのページ「G-04 気胸」.2025年9月更新.https://www.jrs.or.jp/citizen/disease/g/g-04.html (2026-09-12閲覧)。気胸の定義、最も多い症状(突然の胸の痛みと呼吸困難)、自然気胸が10〜30代のやせ形の男性に好発すること、基礎肺疾患に続発するタイプ、緊張性気胸の成因と症状(高度の呼吸困難・チアノーゼ・ショック)、X線・CTでの診断。
  • 日本救急医学会.医学用語解説集「緊張性気胸」.https://www.jaam.jp/dictionary/dictionary/word/0220.html (2026-09-12閲覧)。緊張性気胸の定義(患側肺虚脱・横隔膜低位・健側への縦隔偏位・静脈還流障害による心拍出量低下)、「緊張性気胸を疑った場合には、胸部エックス線写真による確診を待たずに、速やかな胸腔ドレナージを施行する必要がある」、放置すると血圧低下・閉塞性ショックを招くこと、プレホスピタルケアでの胸壁開放創に対するビニール片の三辺固定。
  • 日本形成外科学会・日本創傷外科学会・日本頭蓋顎顔面外科学会.急性創傷診療ガイドライン.2015年4月.https://jsprs.or.jp/docs/guideline/keiseigeka2.pdf (2026-09-12閲覧)。胸部腹部咬傷では気胸・内臓損傷の有無も確認すること。

手技

手技

気胸はX線を待たずに疑い、当院はドレナージなしで送る

突然の胸の痛みと息苦しさが最も多い症状で、喘息発作と間違えやすい。緊張性気胸はX線を待たずに疑った時点で動く。日本救急医学会は「胸部エックス線写真による確診を待たずに、速やかな胸腔ドレナージを施行する必要がある」としている。当院はドレナージを持たないため、疑った時点で搬送手配する。

始める前に

  • 片側の呼吸音減弱か両側性かを確認する(喘息発作は呼気性喘鳴が両側性・既往あり・吸入に反応する、気胸は片側の呼吸音減弱・突然発症・胸痛が前面)
  • 突然発症か、先行する喘息の既往があるかを確認する
  • 吸入への反応を見る(気胸は反応しない)
  • 胸壁に開放創がないか確認する
  • 胸腹部の咬傷がないか確認する(気胸と内臓損傷の有無を確認する)
  • 10〜30代のやせ形の男性・中学生〜高校生男子の胸痛では自然気胸を鑑別に入れる

手順

  1. 1

    高度の呼吸困難・チアノーゼ・ショックがあれば緊張性気胸を疑い、X線を待たずに酸素投与・モニタ装着のうえ、その場で受け入れ先に電話する

    胸部エックス線写真による確診を待たずに、速やかな胸腔ドレナージを施行する必要があるため(当院はドレナージできない)

  2. 2

    突然の胸痛+呼吸困難で、やせ形の10代男子なら自然気胸を疑い、胸部X線(立位)とSpO2を確認する

  3. 3

    胸壁に開放創があれば、ビニール片の三辺固定で開放創を被い、胸腔内への空気流入を防ぐ

    プレホスピタルケアで推奨されている方法

  4. 4

    送ると決めたら酸素投与とモニタ装着(血圧・SpO2・心電図)を行う

やってはいけない

  • 片側の呼吸音減弱を喘息発作と決めつけない
  • 吸入に反応しない呼吸困難を喘息発作として扱い続けない(胸部X線で気胸・異物を外す)
  • 緊張性気胸を疑ったら、胸部X線による確診を待って搬送手配を遅らせない(検査より先に搬送手配する)
  • 用手脱気(穿刺による脱気)を独断で行わない。当院で試みるかは日本の学会一次資料に明記が見つからず、本シートでは手技を記載していない。院内で方針を決める必要がある

終わったあと

  • 胸痛のみでX線正常なら他の原因を検討し、再受診条件を渡す

この場で持てない・送る

  • 緊張性気胸の疑いは持てない。酸素と搬送。X線を待たない
  • X線で気胸を確認した場合も持てない。ドレナージのできる施設へ
  • 受け入れ先へ「緊張性気胸を疑っている」と最初に言う。X線を撮っていないならその旨も伝える
  • 開放性気胸は三辺固定で被覆してから搬送する
  • 要確認:緊張性気胸を疑ったときに、当院で用手脱気を試みる方針か。試みるなら誰が・どこに・何ゲージで行うかを院内で決めておく
  • 要確認:胸腔ドレナージのできる施設の夜間・休日の受け入れ先と直通番号
  • 要確認:夜間に胸部X線を撮れる体制
  • 要確認:X線で気胸を認めた場合に、当院で経過観察してよい範囲があるか
  • 要確認:「患側の呼吸音消失+打診で鼓音」という所見は臨床的に広く使われているが、日本呼吸器学会・日本救急医学会の一次文書中に同様の明文は確認できていない。本シートでは片側の呼吸音減弱を手がかりとし、打診所見は補助に留める
  • 要確認:小児の気胸に特化した国内ガイドラインは確認できていない。日本気胸・嚢胞性肺疾患学会の書籍(2009年版)は有料で本文未確認

手順・適応・禁忌はすべて本シートの正本の記載のみ。院内の器材・採用薬・搬送先は施設ごとに違うため、適用前に院内ルールを確認すること。

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