気胸・緊張性気胸

緊急

気胸・緊張性気胸

呼吸器β版・逐条レビュー継続中

2026-10-03更新
β版用量は適用前に一次資料と院内採用を確認。

施設プロファイル: 二次救急/胸腔ドレナージなし。胸腔ドレーンの継続管理は専門施設へつなぐ。切迫例では既存院内方針院内に従う緊急減圧と搬送を並行する。

30秒要約

  • 突然の胸の痛みと息苦しさが最も多い症状。喘息発作と間違えやすい。
  • 緊張性気胸は、X線を待たずに診断して動く。日本救急医学会は「胸部エックス線写真による確診を待たずに、速やかな胸腔ドレナージを施行する必要がある」としている。
  • 当院は院内胸腔ドレナージの継続管理を持たない。緊張性気胸を疑ったら受入先への連絡と搬送を手配し、徐脈・ショック・高度呼吸不全を伴う場合は、既存院内方針院内に従い画像や搬送を待たず針穿刺減圧を並行する。
  • 自然気胸は10〜30代のやせ形の男性に好発する。中学生〜高校生男子の胸痛では鑑別に入れる。
  • 胸腹部の咬傷でも気胸が起きうる。

所見 → 次の一手

所見次の一手
高度の呼吸困難・チアノーゼ・ショック緊張性気胸を疑う。X線を待たない。酸素投与、モニタ装着、その場で受け入れ先に電話。当院ではドレナージできない。徐脈・ショック・高度呼吸不全のいずれかがあれば、第2肋間鎖骨中線に18G留置針で穿刺減圧(不良なら第4〜5肋間中腋窩線前方へ)
突然の胸痛+呼吸困難、やせ形の10代男子自然気胸を疑う。胸部X線(立位)。SpO2
片側の呼吸音減弱気胸を疑う。胸部X線。喘息と決めつけない
吸入に反応しない呼吸困難喘息発作として扱い続けない。胸部X線で気胸・異物を外す
胸壁に開放創があるビニール片の三辺固定で開放創を被い、胸腔内への空気流入を防ぐ(プレホスピタルケアで推奨されている方法)
胸腹部の咬傷がある気胸と内臓損傷の有無を確認する(動物咬傷)
基礎肺疾患がある続発性気胸。再発・重症化しやすい
X線で気胸を認めた程度によらず専門施設へ連絡・搬送する。当院では経過観察しない(2026-09-25既存院内決定)

緊張性気胸とは(日本救急医学会の定義)

「患側の胸腔内圧が異常に上昇した結果、患側肺虚脱、横隔膜低位、健側への縦隔偏位、静脈還流障害による心拍出量の低下などをきたしている状態」。「放置すると血圧低下、閉塞性ショックなどの重篤な状態を招く」。

対応の原則: 「緊張性気胸を疑った場合には、胸部エックス線写真による確診を待たずに、速やかな胸腔ドレナージを施行する必要がある」

当院には胸腔ドレーンの継続管理がないため専門施設への搬送を手配する。同時に、既存院内方針院内では緊張性気胸に徐脈・ショック・高度呼吸不全のいずれかを伴う場合、搬送前に針穿刺減圧を行う。画像確認や搬送到着を待たず、減圧と連絡・搬送を並行する。

鑑別(喘息発作との見分け)

病態見分け
喘息発作呼気性喘鳴が両側性、既往あり、吸入に反応する
気胸片側の呼吸音減弱、突然発症、胸痛が前面

要確認: 「患側の呼吸音消失+打診で鼓音」という所見は臨床的に広く使われているが、日本呼吸器学会・日本救急医学会の一次文書中に同様の明文は確認できていない。本シートでは「片側の呼吸音減弱」を手がかりとして書き、打診所見は補助に留めている。

そのほかの鑑別: 肺炎、心筋炎、肋骨骨折、心因性胸痛、気道異物。

検査

  1. 緊張性気胸を疑うならX線を待たず酸素・モニタ・搬送手配。徐脈・ショック・高度呼吸不全を伴う場合は、既存院内方針院内に従い緊急減圧を並行する。
  2. そうでなければ胸部X線。気胸の有無と、原因となる肺の病気の有無を見る。
  3. SpO2。
  4. 必要に応じてCT(原因検索)。当直帯の当院にCTは無い(2026-09-14 確認)ので、原因検索は送り先で。当院は院内呼吸数・SpO2・呼吸音の左右差・気管偏位で疑い、緊張性を疑い徐脈・ショック・高度呼吸不全のいずれかを伴えば、既存院内方針院内に従い画像を待たず減圧と搬送を並行する。

送る/持つ(当院=二次救急・胸腔ドレナージなし)

状態当院の扱い
緊張性気胸の疑い酸素・監視・専門施設への搬送。徐脈・ショック・高度呼吸不全を伴う場合は既存院内方針院内に従い緊急減圧を並行する。X線・搬送到着を待たない
X線で気胸を確認持てない。ドレナージのできる施設へ
開放性気胸三辺固定で被覆してから搬送
胸痛のみでX線正常他の原因を検討。再受診条件を渡す

送ると決めた時点でやること

  1. 酸素投与
  2. モニタ装着(血圧・SpO2・心電図)
  3. 受け入れ先へ「緊張性気胸を疑っている」と最初に言う。X線を撮っていないならその旨も
  4. 開放創があれば三辺固定

決定=緊張性気胸を疑い、①徐脈 ②ショック(血圧低下) ③高度呼吸不全のいずれかを伴う場合に限り、当直医が搬送前に針による胸腔穿刺減圧を行う。部位は第2肋間鎖骨中線、18Gの静脈留置針(外套カテーテル付き)。脱気が不良なら第4〜5肋間中腋窩線の前方へ切り替える(標準の留置針は短く、皮下脂肪が厚いと届かないため)。減圧後も胸腔ドレナージが必要なので、穿刺と並行して受け入れ先へ搬送する。

エスカレーション(施設オーバーレイで上書き)

  • 決定:緊張性気胸を疑い、①徐脈 ②ショック(血圧低下) ③高度呼吸不全のいずれかを伴う場合に限り、当直医が搬送前に針による胸腔穿刺減圧を行う。部位は第2肋間鎖骨中線、18Gの静脈留置針(外套カテーテル付き)。脱気が不良なら第4〜5肋間中腋窩線の前方へ切り替える(標準の留置針は短く、皮下脂肪が厚いと届かないため)。減圧後も胸腔ドレナージが必要なので、穿刺と並行して受け入れ先へ搬送する。
  • 要確認:穿刺後の管理手順、18G留置針の当直帯の在庫と置き場所、当直医の手技経験。
  • 要確認:胸腔ドレナージのできる施設の夜間・休日の受け入れ先と直通番号
  • 確定(2026-09-25 確認):夜間も胸部X線は撮れる(当直医が読む)
  • 決定:程度によらず全例、専門施設へ連絡・搬送する(当院では経過観察しない)(論点:X線で気胸を認めた場合に、当院で経過観察してよい範囲があるか)

家族に渡す一文

「肺を包む膜の中に空気がたまって、肺がしぼんでいる状態です。突然の胸の痛みと息苦しさが特徴です。しっかり空気を抜く処置(胸に管を入れる処置)は当院ではできませんので、できる病院へ移っていただきます。命に関わる状態のときは、移動までの間に当院で緊急に針で空気を抜くことがあります。移動の間も酸素を使います。」

出典

  • 外傷初期診療ガイドライン JATEC 改訂第6版 p.116(緊張性気胸の針穿刺:第2肋間鎖骨中線・18Gより太い静脈留置針・脱気不良時は第4〜5肋間中腋窩線前方へ変更)、p.102(その後速やかに胸腔ドレナージへ)。
  • PALS 小児二次救命処置プロバイダーマニュアル p.208(緊張性気胸を治療しなければ無脈性電気活動の心停止に至る)。
  • 日本呼吸器学会.市民のためのページ「G-04 気胸」.2025年9月更新.https://www.jrs.or.jp/citizen/disease/g/g-04.html (2026-09-12閲覧)。気胸の定義、最も多い症状(突然の胸の痛みと呼吸困難)、自然気胸が10〜30代のやせ形の男性に好発すること、基礎肺疾患に続発するタイプ、緊張性気胸の成因と症状(高度の呼吸困難・チアノーゼ・ショック)、X線・CTでの診断。
  • 日本救急医学会.医学用語解説集「緊張性気胸」.https://www.jaam.jp/dictionary/dictionary/word/0220.html (2026-09-12閲覧)。緊張性気胸の定義(患側肺虚脱・横隔膜低位・健側への縦隔偏位・静脈還流障害による心拍出量低下)、「緊張性気胸を疑った場合には、胸部エックス線写真による確診を待たずに、速やかな胸腔ドレナージを施行する必要がある」、放置すると血圧低下・閉塞性ショックを招くこと、プレホスピタルケアでの胸壁開放創に対するビニール片の三辺固定。
  • 日本形成外科学会・日本創傷外科学会・日本頭蓋顎顔面外科学会.急性創傷診療ガイドライン.2015年4月.https://jsprs.or.jp/docs/guideline/keiseigeka2.pdf (2026-09-12閲覧)。胸部腹部咬傷では気胸・内臓損傷の有無も確認すること。

手技

手技

気胸はX線を待たずに疑い、当院は院内ドレナージなしで送る

突然の胸の痛みと息苦しさが最も多い症状で、喘息発作と間違えやすい。緊張性気胸はX線を待たずに疑った時点で動く。日本救急医学会は「胸部エックス線写真による確診を待たずに、速やかな胸腔ドレナージを施行する必要がある」としている。当院は院内ドレナージを持たないため、疑った時点で搬送手配する。

始める前に

  • 片側の呼吸音減弱か両側性かを確認する(喘息発作は呼気性喘鳴が両側性・既往あり・吸入に反応する、気胸は片側の呼吸音減弱・突然発症・胸痛が前面)
  • 突然発症か、先行する喘息の既往があるかを確認する
  • 吸入への反応を見る(気胸は反応しない)
  • 胸壁に開放創がないか確認する
  • 胸腹部の咬傷がないか確認する(気胸と内臓損傷の有無を確認する)
  • 10〜30代のやせ形の男性・中学生〜高校生男子の胸痛では自然気胸を鑑別に入れる

手順

  1. 1

    高度の呼吸困難・チアノーゼ・ショックがあれば緊張性気胸を疑い、X線を待たずに酸素投与・モニタ装着のうえ、その場で受け入れ先に電話する

    胸部エックス線写真による確診を待たずに、速やかな胸腔ドレナージを施行する必要があるため(当院は院内ドレナージできない)

  2. 2

    突然の胸痛+呼吸困難で、やせ形の10代男子なら自然気胸を疑い、胸部X線(立位)とSpO2を確認する

  3. 3

    胸壁に開放創があれば、ビニール片の三辺固定で開放創を被い、胸腔内への空気流入を防ぐ

    プレホスピタルケアで推奨されている方法

  4. 4

    送ると決めたら酸素投与とモニタ装着(血圧・SpO2・心電図)を行う

やってはいけない

  • 片側の呼吸音減弱を喘息発作と決めつけない
  • 吸入に反応しない呼吸困難を喘息発作として扱い続けない(胸部X線で気胸・異物を外す)
  • 緊張性気胸を疑ったら、胸部X線による確診を待って搬送手配を遅らせない(検査より先に搬送手配する)
  • 用手脱気(穿刺による脱気)を独断で行わない。当院で試みるかは日本の学会一次資料に明記が見つからず、本シートでは手技を記載していない。院内で方針を決める必要がある

終わったあと

  • 胸痛のみでX線正常なら他の原因を検討し、再受診条件を渡す

この場で持てない・送る

  • 緊張性気胸の疑いは持てない。酸素と搬送。X線を待たない
  • X線で気胸を確認した場合も持てない。ドレナージのできる施設へ
  • 受け入れ先へ「緊張性気胸を疑っている」と最初に言う。X線を撮っていないならその旨も伝える
  • 開放性気胸は三辺固定で被覆してから搬送する
  • 要確認:緊張性気胸を疑ったときに、当院で用手脱気を試みる方針か。試みるなら誰が・どこに・何ゲージで行うかを院内で決めておく
  • 要確認:胸腔ドレナージのできる施設の夜間・休日の受け入れ先と直通番号
  • 要確認:夜間に胸部X線を撮れる体制
  • 要確認:X線で気胸を認めた場合に、当院で経過観察してよい範囲があるか
  • 要確認:「患側の呼吸音消失+打診で鼓音」という所見は臨床的に広く使われているが、日本呼吸器学会・日本救急医学会の一次文書中に同様の明文は確認できていない。本シートでは片側の呼吸音減弱を手がかりとし、打診所見は補助に留める
  • 要確認:小児の気胸に特化した国内ガイドラインは確認できていない。日本気胸・嚢胞性肺疾患学会の書籍(2009年版)は有料で本文未確認

手順・適応・禁忌はすべて本シートの正本の記載のみ。院内の器材・採用薬・搬送先は施設ごとに違うため、適用前に院内ルールを確認すること。

病態・根拠12章
胸膜腔の空気から閉塞性ショックへ

胸膜腔に空気が入ると肺が虚脱し、換気面積が減る。緊張性気胸では胸腔内圧が上がり続け、患側肺だけでなく縦隔・対側肺や大静脈を圧迫する。静脈還流が減るため低酸素と心拍出低下が同時に進み、徐脈・血圧低下から心停止へ至りうる。画像での「大きさ」より呼吸・循環の破綻を優先して判断する。[1][2][3]

病歴・所見を組み合わせる

突然の片側胸痛、息苦しさ、片側呼吸音低下を拾う。中高生の自然気胸に加え、外傷、処置、陽圧換気、基礎肺疾患、気道異物でも起こる。重い呼吸困難、チアノーゼ、頻脈から徐脈、低血圧などが重なれば緊張性を疑う。気管偏位は遅い/取りにくいことがあり、所見が全てそろうのを待たない。[1][2][3]

喘息・肺炎・異物との見分け

喘息は通常びまん性の呼気性喘鳴だが、重症例では呼吸音が乏しくなりうる。片側の減弱、突然の胸痛、吸入に反応しない経過では気胸や異物を再評価する。胸痛だけでも肺炎、胸壁痛、心筋炎などがあり、画像・バイタル・経時変化を合わせる。自然気胸の診断がついても基礎肺疾患や外傷性を見落とさない。[1]

安定例の画像、緊張性例の臨床診断

循環と呼吸が保たれる児では胸部単純X線で胸膜線と末梢肺紋理の消失を確認する。小児ではX線上の気胸サイズの測定は年齢による限界があり、症状・低酸素・年齢・基礎肺疾患が管理を決める。CTは通常の初期診断には必須ではない。当院は院内夜間X線可、CT/MRIは不可で、画像が撮れることを理由に緊張性気胸の処置を遅らせない。[1][2]

緊張性気胸は搬送と減圧を同時に考える

緊張性気胸を臨床的に疑い呼吸・循環が破綻している児は、X線確定や搬送先到着を待たず緊急減圧が必要である。RCH小児外傷一次評価と日本救急医学会は、生命危機に対する胸腔減圧を初期蘇生に置く。当院は院内胸腔ドレーンによる継続管理を持たないが、既存オペシートには切迫例の針穿刺減圧が記載されている。実施可能な訓練・器具・院内手順を直ちに確認し、上級医のもとで減圧と受入先への連絡を並行する。「ドレナージがないから電話して待つ」ことは、切迫例の対応ではない。[2][3]

院内の既存18G留置針という規格と、既存JATEC引用の「18Gより太い」という表記には差がある。このページから規格を上書きせず、径・カテーテル長・体格への適合、在庫・手技体制を医師/施設が再確認する。緊急減圧の成功と再緊張の有無を反復評価する。

減圧後も終わりではない

針穿刺は一時的な減圧で、空気漏れが続けば再緊張や減圧不良が起こる。胸腔ドレーンや外科/呼吸管理ができる施設へ搬送し、SpO2、呼吸数・努力呼吸、脈・血圧、左右の呼吸音を反復確認する。陽圧換気や移送中の体位変化で悪化する可能性もあるため、実施した穿刺の部位・時刻・反応、再悪化時の計画を引き継ぐ。[1][2]

安定例の管理と退院後

安定した原発性自然気胸では、サイズだけで一律の処置を決めず、疼痛・呼吸困難・低酸素、年齢、再発/基礎疾患、観察体制で決める。RCHは大きな気胸、症状、12歳未満、続発性・外傷性・再発例などを専門相談の対象とする。当院にはドレナージ管理がなく、2026-09-25の既存院内方針院内は程度によらず全例を専門施設へ連絡・搬送する。観察や胸腔処置の方法は受入専門施設が判断し、当院で経過観察を継続する方針に読み替えない。再発時の胸痛・呼吸困難、運動・航空機搭乗等の制限について退院先の指示を家族へ明確にする。[1]

出典
臨床医が迷う場面
胸痛が軽いので、小さな気胸なら全員帰宅できる?

大きさだけでなく呼吸苦、酸素化、循環、背景肺疾患、経時変化と再診の確実性で判断する。画像上小さくても症状が強い例は観察・専門相談が必要。当院では胸腔ドレナージの継続管理ができないため、必要時は早く搬送先と調整する。

出典:RCH 小児自然気胸(海外) / 日本救急医学会 緊張性気胸

喘息の吸入後も片側の呼吸音が弱い。薬を追加する?

突然の胸痛、左右差、治療不応は気胸を再評価する。安定していれば画像で確認し、不安定で緊張性気胸を疑えば画像待ちにしない。酸素・監視と搬送連絡を行い、ショックや高度呼吸不全では既存院内手順による緊急減圧を並行する。

出典:RCH 小児自然気胸(海外) / 日本救急医学会 緊張性気胸

症状が消えたら、運動や飛行機はすぐ再開してよい?

痛みの消失だけで肺の再膨張を確認できない。再診画像と原因・再発リスクを踏まえて専門医が活動再開を判断する。飛行や潜水は圧変化を伴うため別途相談し、自己判断で再開しない。新しい胸痛・息切れは再発の可能性として速やかに受診する。

出典:RCH 小児自然気胸(海外) / 日本救急医学会 緊張性気胸

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