アトピー性皮膚炎

緊急

アトピー性皮膚炎

アレルギー・皮膚β版・逐条レビュー継続中

2026-10-08更新
β版用量は適用前に一次資料と院内採用を確認。

家族説明を開く

30秒要約

  • アトピー性皮膚炎。家族説明と同じ受診サインで切る。
  • 感染・眼症状・全身状態を先に評価し、診断と外用の実施状況を確認する。
  • 家族には説明ページを渡し、様子見の自己判断を止めさせる。

レッドフラグ

所見があったときにどれだけ急ぐかと、家族に何を伝えるかの対応表。3列目の文言は家族説明ページに同じ言葉で載っているので、画面を見せながら渡せる。

緊急度所見家族に伝えること
緊急大きさのそろった水ぶくれ・ただれが急に広がる。発熱がなくても当日評価家族ページの「受診の目安」に載っている。画面を見せて指差しで渡す
当日黄色いかさぶたや汁の出る発赤が急に広がる、または皮膚が熱を持って腫れが広がってきた家族ページの「受診の目安」に載っている。画面を見せて指差しで渡す
当日保湿とお薬を1〜2週間続けても良くならない、かゆくて眠れない日が続く家族ページの「受診の目安」に載っている。画面を見せて指差しで渡す
当日体重が増えない、食欲がない、元気がない状態が続く家族ページの「受診の目安」に載っている。画面を見せて指差しで渡す
当日目のまわりの湿疹が重い、または長引いている家族ページの「受診の目安」に載っている。画面を見せて指差しで渡す
当日感染を繰り返しやすい、あざができやすい、体重が増えにくいなど、いつもと違う様子が重なって気になるとき家族ページの「受診の目安」に載っている。画面を見せて指差しで渡す

問診チェック

初期プラン(コア)

  1. ABC と毒性を先に見る。
  2. 上のレッドフラグで 119 / 今日受診 / 説明して帰宅 を分ける。
  3. 検査・薬は施設プロトコル。用量は国内添付文書の一般的な用法を確認する。
  4. 家族説明を渡す。

家族に渡す一文

この説明ページに、今日の判断と受診の目安がまとまっています。当てはまるサインがあれば様子を見続けずに連絡してください。
→ https://ampl-kids-health-guide.pages.dev/patient/アトピー性皮膚炎について_患者説明_2026-07-31.html

エスカレーション

  • レッドフラグ、判断に迷う → 上級医

計算

スコア

アトピー性皮膚炎:かゆみ・重症度の入力と計算

評価した項目を選ぶと、その指標の結果を表示します。各指標は独立しています。入力が足りない場合は点数を表示しません。

NRS:かゆみを0〜10で回答

本人が回答できる場合に使います。乳幼児の保護者による評価とは分けて扱います。

どのかゆみを回答するか
0=かゆみなし、10=想像できる最も強いかゆみ
未入力です。
VAS(測定値を記録)

100mmのVASで測定した値を記録。画面の線の長さをmmに換算しない。

どのかゆみを回答するか

0 mm=かゆみなし、100 mm=最も強いかゆみ。紙などの100 mmの線で測定した値を入力します。

未入力です。
IGA:医師の全般評価を記録

診察者が、施設で採用する定義に沿って評価します。この入力欄はvIGA-ADの正式な判定表を再現したものではありません。

評価したIGA(0〜4)
未入力です。
EASI:4部位の所見から計算

診察者が評価します。面積は、その部位の皮膚全体を100%として選びます。全身のBSAとは分母が異なります。各部位の湿疹がある皮膚で、4所見の平均的な強さを選びます。最も悪い1か所だけで判定しません。

年齢区分(必須)

所見:0=なし、1=軽度、2=中等度、3=重度。1と2の中間は1.5、2と3の中間は2.5を選べます。0.5は使いません。

頭頸部この部位は未入力です
この部位で湿疹がある面積(この部位全体=100%)
紅斑
浮腫・丘疹
掻破痕
苔癬化
体幹この部位は未入力です
この部位で湿疹がある面積(この部位全体=100%)
紅斑
浮腫・丘疹
掻破痕
苔癬化
上肢この部位は未入力です
この部位で湿疹がある面積(この部位全体=100%)
紅斑
浮腫・丘疹
掻破痕
苔癬化
下肢この部位は未入力です
この部位で湿疹がある面積(この部位全体=100%)
紅斑
浮腫・丘疹
掻破痕
苔癬化

「なし」を選ぶと、その部位の4所見を0にします。面積を選び直した場合は、4所見も再入力します。

未入力です。
BSA:病変面積を確認
評価方法(EASIとは別に評価)
未入力です。

医師最終確認前の下書き。点数だけで診断や薬剤の適応を決めません。入力値を保存・送信しません。ページを再読み込みすると入力を消去します。

計算方法と注意点

EASIは各部位の「4所見の合計×面積スコア×部位係数」を合算します。8歳未満は頭頸部0.2・体幹0.3・上肢0.2・下肢0.3。8歳以上は頭頸部0.1・体幹0.3・上肢0.2・下肢0.4です。範囲は0〜72です。

NRSとVASは本人の回答を記録します。「平均」と「最大」を混ぜて経過を比較しないでください。IGAは採用する定義を確認します。BSAの手による評価は概算です。

出典

EASI:HOME公式マニュアル(2017)。年齢係数・面積区分・4所見・計算方法を参照。

IGA:アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024。標準化尺度はvIGA-AD公式日本語版を参照してください。上の入力欄は、医師評価済みIGAの記録用です。

参考計算・参考判定です。適用は添付文書・現行ガイドライン・院内採用・患者個別要因を確認のうえ医師が判断してください。

手技

手技

アトピー性皮膚炎は十分量の外用を貫き、二次感染を見逃さない

外用不足(FTU基準で処方量の42.4%が不足)が慢性化・再燃の主因になりやすい。「薄く塗る」でなく十分量(FTU基準)を保湿と抗炎症外用薬のセットで塗ることが基盤で、その上に重症度・部位・年齢に応じたランクの外用薬を選ぶ。カポジ水痘様発疹症・とびひ・免疫不全示唆所見などのレッドフラグを見逃さない。

始める前に

  • 瘙痒、特徴的皮疹と分布(急性病変と慢性病変の混在)、慢性・反復性経過(乳児2ヶ月以上、その他6ヶ月以上)の3つを満たすかで診断する
  • 年齢による皮疹分布(乳児期は頭・顔から体幹・四肢へ下降、幼小児期は頸部・四肢屈曲部、思春期以降は上半身)に合致するか確認する
  • 強い炎症を伴う皮疹の体表面積(BSA)で重症度(軽症/中等症10%未満/重症10〜30%未満/最重症30%以上)を判定してから治療方針を決める。一度の診察で決め打ちせず経過も含め総合評価する
  • 難治性・治療反応不良の湿疹では、疥癬・接触皮膚炎の見落としや外用量不足をまず再確認する。乳児では乳児脂漏性皮膚炎との鑑別も行う
  • 出生直後からの重症紅皮症・湿疹様皮疹に好酸球増多・毛髪異常・免疫不全示唆所見が重なる場合は、Netherton症候群・Omenn症候群・Wiskott-Aldrich症候群を鑑別に挙げてから治療方針を決める

手順

  1. 1

    入浴後速やかに、皮膚の乾燥が気になるタイミングで1日複数回、刺激の少ない保湿剤をたっぷり塗布する

    保湿単独では中等症以上の炎症は制御できないため、必ず抗炎症外用薬と併用する

  2. 2

    重症度・部位・年齢に応じてステロイド外用薬のランクを選ぶ(顔・頸部・間擦部などはミディアム〜ストロング、体幹・四肢は重症度に応じてストロング〜ベリーストロング)

  3. 3

    塗布量は体重換算でなくFTU(finger tip unit)で考える。保護者が塗布する場合も保護者自身の指のFTUを基準にする

  4. 4

    処方量の指導は「薄く塗る」でなく「ティッシュに軽く付着する程度、テカる・少し光る程度まで」量を確保するよう伝える

    FTU基準で42.4%の処方量が不足していた一方、不足を自覚していた患者は15.2%にとどまる

  5. 5

    頻回に再燃する部位には、寛解導入後も保湿を継続しつつステロイド外用薬またはタクロリムス軟膏を週2回程度予防的に塗布するプロアクティブ療法へ移行する

    炎症が消退して正常に見える皮膚にも炎症細胞が残存し再燃しやすい

  6. 6

    標準治療(スキンケア+適切な外用薬+プロアクティブ療法)で十分な効果が得られない中等症以上は、外用療法の質を十分検証してから全身療法への切り替えを検討する

  7. 7

    経口JAK阻害薬・生物学的製剤の導入前に、生ワクチン接種歴と今後の接種予定を確認し専門医と共有する

やってはいけない

  • 保護者のステロイド忌避を理由に無治療・自己判断中止で放置すること。炎症を残すと慢性化・苔癬化・かゆみの悪循環を招き、結果的により強いランク・より長期のステロイドが必要になる
  • 「薄く塗る」指導によるFTU不足のままの継続。不十分な抗炎症治療は寛解に到達できず再燃を繰り返す原因になる
  • 明確な食物アレルギーの確定診断(病歴+必要に応じた専門的検査・食物経口負荷試験)なしに、保護者の自己判断・AIの提案で食物除去を行う/勧めること
  • 保湿剤を併用せず抗炎症外用薬のみで管理すること
  • 抗ヒスタミン薬内服のみで炎症そのものをコントロールしようとすること
  • 外用不足を検証せずに安易に全身療法へ移行すること
  • 「顔だから」「年齢が低いから」という理由だけで皮疹の重症度に見合わない弱いランクを選んでしまうこと
  • 出生直後からの紅皮症・特徴的な毛髪異常を伴う難治性湿疹(Netherton症候群疑い)に、通常のAD治療と同様に強いランクのステロイドを広範囲・長期に外用すること。経皮吸収が全身に及び医原性クッシング症候群・副腎抑制を招くリスクがある
  • 眼囲に強力な外用ステロイドを反復使用すること自体が緑内障・白内障の医原性リスクになるため、眼囲は原則ウィーク〜ミディアムランクに留める

終わったあと

  • 大きさのそろった水疱・びらんが急に多発し発熱や元気のなさを伴う(カポジ水痘様発疹症の疑い)は再受診すべきサインと伝える
  • 黄色い浸出液・かさぶたを伴う発赤が急速に広がる、または熱を持って腫れが広がる(とびひ・蜂窩織炎の疑い)は再受診すべきサインと伝える
  • 標準治療を1〜2週間続けても改善しない、またはかゆみで眠れない状態が続く場合は再受診すべきサインと伝える
  • 体重が増えない・食欲がない・活気がない状態が続く場合も再受診すべきサインと伝える
  • AD自体は学校感染症には該当せず登園・登校を制限する必要は基本的にないが、合併したとびひは治癒するまでプール・入浴の共用を避けると伝える
  • ステロイドは適切なランク・十分な量(FTU基準)・適切な期間で使用すれば効果が高く副作用は管理可能であり、忌避による中断はかえって長期・強いステロイドを招くと説明する
  • 「掻き壊した部位に黄色いかさぶた」=とびひ、「大きさのそろった水疱・びらんが急速に多発し発熱を伴う」=カポジ水痘様発疹症、という見分け方を伝える
  • 湿疹があること自体は食物アレルギーの証拠ではなく、自己判断・インターネット情報での食物除去は行わないよう伝える
  • ダニ対策(寝具の洗濯・天日干し、拭き掃除、エアコンフィルター清掃)と汗・摩擦・爪による掻破対策(発汗後の洗い流し、爪を短く切る)を伝える

この場で持てない・送る

  • 標準治療を数週間〜数ヶ月継続しても中等症以上が持続する場合、全身療法の適応検討で皮膚科・アレルギー専門医へ紹介する
  • 眼囲の重症・難治病変は眼科紹介を検討する
  • カポジ水痘様発疹症で広範囲・全身状態不良の場合は入院適応
  • 免疫不全症を疑う所見がある場合は速やかに専門施設へ紹介する
  • 生物学的製剤(デュピルマブ等)は厚生労働省の最適使用推進ガイドラインにより投与施設・医師に専門医の関与等の要件が課されるため、紹介先が要件を満たすか事前に確認する
  • 要確認:院内採用のステロイド外用薬・タクロリムス軟膏・デルゴシチニブ軟膏・ジファミラスト軟膏の採用状況、全身療法紹介先とルート、疥癬疑い時の顕微鏡検査体制、カポジ水痘様発疹症の入院・点滴体制、食物アレルギー精査への紹介ルート
  • 要確認:経口JAK阻害薬・生物学的製剤の適応年齢・体重条件は製剤ごとに改定されるため、導入前に最新添付文書で必ず確認する

手順・適応・禁忌はすべて本シートの正本の記載のみ。院内の器材・採用薬・搬送先は施設ごとに違うため、適用前に院内ルールを確認すること。

病態・根拠20章
0. 診療の順序

医療者向け・医師最終確認前の下書き。院内採用と運用は別に確認する。

  1. 感染、眼症状、全身状態不良を先に評価する。
  2. アトピー性皮膚炎(AD)の診断と、似た疾患を確認する。
  3. 皮疹、かゆみ、睡眠・生活への支障を別々に記録する。
  4. 保湿と抗炎症外用薬を調整する。実際の塗り方と使用量も見る。
  5. 改善が不十分なら、診断・感染・外用不足を再評価し、専門医へ相談する。
  6. 全身療法は製剤ごとの導入条件で選ぶ。導入後も外用治療を続ける。
  7. 効果と副作用を比較し、継続・変更・休薬を判断する。[1] [2] [3] [4] [5] [6]

紹介の判断と、注射を開始できる条件は別である。 重症、感染、鑑別が必要な場合は早く相談する。適切な治療を約1か月続けても改善しない場合も紹介を考える。デュピクセントの既存治療6か月という条件まで、紹介を待つ意味ではない。[1] [3]

1. 当日対応が必要な所見
所見疑う病態初期対応
大きさのそろった水疱・びらんが急速に増える。発熱の有無を問わないカポジ水痘様発疹症(ヘルペス感染)当日専門医へ。発熱がなくても評価。広範囲・全身状態不良なら入院を検討。眼周囲病変は眼科も相談。[21]
黄色いかさぶた、膿、熱感、腫れが急速に広がる膿痂疹・蜂窩織炎感染の範囲と全身症状を評価し、抗菌治療の要否を判断。
眼痛、まぶしさ、視力低下角膜病変などの眼合併症当日眼科へ。結膜炎と決めつけて様子を見ない。
哺乳不良、活気低下、広範囲の紅皮症、脱水重症皮膚炎・感染・全身疾患全身評価を優先。入院・上位施設への相談を検討。
乳児の難治性湿疹に、反復重症感染、出血傾向、成長不良が重なる免疫不全・遺伝性皮膚疾患通常のAD治療を続けるだけにせず、専門施設へ。

睡眠障害、登園・登校への支障、成長への影響が続く場合も、治療強化を早めに相談する。[1]

2. 診断基準と鑑別

日本皮膚科学会の診断基準は、次の3条件すべてを確認する。[1]

条件確認する内容
そう痒かゆみ、掻く行動、夜間の掻破。乳児では保護者からも聞く。
特徴的な湿疹と分布紅斑・丘疹・湿潤・鱗屑と、浸潤・苔癬化が混在。分布は年齢で異なる。
慢性・反復性経過乳児は2か月以上。それ以外は6か月以上。

乳児は頭・顔から体幹・四肢へ、幼小児は頸部・肘窩・膝窩、思春期以降は顔・頸部・上半身が目立ちやすい。診断基準の期間に達しなくても、湿疹への治療と経過確認を始める。期間が来るまで炎症を放置しない。[1]

ADに似る疾患再確認する手がかり
乳児脂漏性皮膚炎頭皮・眉間の脂性鱗屑。かゆみや経過を確認する。
接触皮膚炎新しい外用薬・保湿剤・日用品、接触部位と皮疹の一致。
疥癬家族内のかゆみ、夜間の強いかゆみ、特徴的な部位・皮疹。
白癬・他の皮膚疾患非典型な分布、片側優位、標準治療で悪化する部位。
免疫不全・Netherton症候群出生直後からの紅皮症、重症感染、出血傾向、成長不良、毛髪異常。

難治例では「ADが重い」とだけ考えない。皮膚感染、薬剤への接触アレルギー、外用不足も再評価する。[1]

3. 重症度と治療効果の記録

皮疹の改善と、かゆみの改善を分けて評価する。 写真だけ、採血だけで病勢を判定しない。本人・家族が困る症状も記録する。[1] [3] [6]

尺度何を評価するか実務での使い方
BSA湿疹が占める全身体表面積の割合全身の病変範囲を記録。強い炎症の面積による簡易重症度とは区別。
IGA(0〜4)医師による皮疹の全般評価0消失、1ほぼ消失、2軽症、3中等症、4重症。使用する定義をそろえる。
EASI(0〜72)湿疹の面積と4徴候の強さ導入前と治療後を同じ方法で比較する。かゆみは含まない。
そう痒NRS(0〜10)・VAS(0〜100)本人が感じるかゆみミチーガ導入条件は過去24時間の平均的なかゆみ。最大のかゆみとは混用しない。
かゆみスコア(0〜4)日中・夜間のかゆみと行動・睡眠の支障NRSと別の尺度。日中と夜間を評価し、高い方を用いる。
POEM、CDLQIなど自覚症状・小児の生活の質必要に応じて補助に使う。保険上の導入条件の代用にはしない。

スマホでの入力と記録

スマホで記録する場合は、各尺度の入力欄を使う。未入力は0点と区別し、尺度同士は換算しない。

入力欄操作と結果
NRS過去24時間の平均/最大を選び、本人の回答0〜10を記録する。期間と数字を理解して答えられるか確認する。
VAS紙の100mm線で本人が示した位置を測り、距離を記録する。画面の線は100mmの測定具として扱わない。
IGA医師が評価した0〜4を選ぶ。計算値ではない。定義を統一する場合は、vIGA-ADの原版を参照する。[26]
EASI8歳未満/8歳以上を選び、4部位の面積と4徴候を入力する。部位別点数と合計0〜72を表示する。[24]
BSA本人の手の掌側全体を、指・親指を含めて合わせた状態で約1%とする。4部位の枚数を合計して概算する。医師評価済みの%も直接記録できる。[25]

BSAの「手全体」は指を含む。掌だけ、保護者や医療者の手では代用しない。概算には個人差がある。EASIの面積区間や年齢係数からBSAを換算しない。数値だけで薬の導入・中止を決めない。

EASIを使うときの注意

頭頸部・体幹・上肢・下肢の4部位で、紅斑、浸潤/丘疹、掻破痕、苔癬化をそれぞれ0〜3で評価する。部位内の湿疹面積を0〜6に区分し、部位係数を掛けて合計する。[1]

部位内の湿疹面積面積スコア
なし/0%超10%未満/10%以上30%未満0/1/2
30%以上50%未満/50%以上70%未満3/4
70%以上90%未満/90〜100%5/6
年齢頭頸部/体幹/上肢/下肢の係数
7歳以下0.2/0.3/0.2/0.3
8歳以上0.1/0.3/0.2/0.4

各部位の点数は「4徴候の合計 × 面積スコア × 部位係数」。皮疹徴候は病変の平均を評価する。1.5・2.5は使えるが、0.5は使わない。EASIの部位内面積と、全身のBSAは別の値である。写真や説明文だけで採点せず、評価法を理解した医療者が診察して記録する。[1]

ミチーガのかゆみスコア:要約

点数日中の目安夜間の目安
0ほぼかゆみなし。6〜12歳はかゆみなしほぼかゆみなし。6〜12歳はかゆみなし
1むずむずするが、掻くほどではない掻かずに眠れる
2ときどき軽く掻く掻けば眠れる
313歳以上は人前でも掻く。6〜12歳は授業などに集中しにくいかゆみで目が覚める
4強いかゆみが続き、掻いても治まらないかゆみでほとんど眠れない

これは原尺度の要約。導入の正式な判定には最適使用推進ガイドラインの定義を確認する。NRS 3と、かゆみスコア3は同じ意味ではない。[6]

外来で使う簡易重症度

軽い皮疹だけなら面積によらず軽症。強い炎症を伴う皮疹が全身体表面積の10%未満なら中等症、10%以上30%未満なら重症、30%以上なら最重症である。全身療法の適応は、この分類だけで決めず製剤別の条件を確認する。[1]

4. 検査を選ぶ

典型的なADの診断に必須の採血はない。検査は目的を決めて選ぶ。[1]

目的検査・確認解釈の注意
感染や別疾患を疑う培養、ウイルス検査、真菌検査、疥癬の検査を病像に合わせて選ぶ全員に一括で行わない。
即時型食物アレルギーを疑う摂取と症状の関係を確認し、特異的IgEや専門医評価を検討陽性は感作を示す。陽性だけで食物除去を決めない。
接触皮膚炎を疑う専門医とパッチテストを検討典型的なAD全例の検査ではない。
病勢の補助評価TARC、総IgE、好酸球などを必要に応じて選ぶ症状・診察・尺度を置き換えない。小児は年齢別基準にも注意。
全身療法の安全性確認選ぶ薬の電子添文に従うJAK阻害薬の検査手順を、すべての生物学的製剤に一律適用しない。

総IgEは長期の病勢を反映することがあるが、短期の効果判定には限界があり、導入・中止を決める一律のカットオフはない。短期と長期の評価を分けて扱う。[1]

ミチーガ開始初期のTARC単独で悪化・無効を判定しない。 皮疹と一致しない一過性上昇があり、開始から一定期間は短期病勢マーカーとして使えない。かゆみ、皮疹、睡眠と合わせて判断する。[4] [5]

5. 外用治療を成立させる

まず寛解を目指す

保湿は続けるが、炎症のある部位には抗炎症外用薬が必要である。ステロイドのランクは皮疹の強さ、部位、年齢、使用期間で選ぶ。「顔だから」「乳児だから」だけで、効かない弱さに固定しない。一方、眼周囲や皮膚の薄い部位への高ランク・頻回・長期使用は慎重に評価する。[1]

眼周囲の難治病変は、皮疹の治療と眼科評価を並行する。眼痛・視力低下は当日相談。緑内障・白内障のリスクを考え、強い外用薬を漫然と続けない。[1]

ステロイド外用薬:5段階のランク

国内AD診療ガイドラインの5群を、強い順に示す。一般名はエステル名まで確認し、濃度・剤形と合わせて製品を照合する。異なる成分の濃度だけで強さを比べない。院内採用・在庫はこの表とは別に確認する。[1]

代表的な単剤17製品を掲載。表に記載した濃度・剤形の例であり、全銘柄の一覧ではない。商品リンクは電子添文。製品資料は2026-10-08に確認した。現在の院内採用・包装別供給を保証する表ではない。[1]

I群:ストロンゲスト

一般名濃度代表製品・電子添文
クロベタゾールプロピオン酸エステル0.05%クロベタゾールプロピオン酸エステル軟膏0.05%「イワキ」
ジフロラゾン酢酸エステル0.05%ダイアコート軟膏0.05%

II群:ベリーストロング

一般名濃度代表製品・電子添文
ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル0.05%アンテベート軟膏0.05%
ジフルプレドナート0.05%マイザー軟膏0.05%
モメタゾンフランカルボン酸エステル0.1%フルメタ軟膏
ベタメタゾンジプロピオン酸エステル0.064%リンデロン-DP軟膏
フルオシノニド0.05%トプシム軟膏0.05%
酪酸プロピオン酸ヒドロコルチゾン0.1%パンデル軟膏0.1%

III群:ストロング

一般名濃度代表製品・電子添文
ベタメタゾン吉草酸エステル0.12%リンデロン-V軟膏0.12%
デキサメタゾンプロピオン酸エステル0.1%メサデルム軟膏0.1%
デキサメタゾン吉草酸エステル0.12%ボアラ軟膏0.12%

IV群:ミディアム

一般名濃度代表製品・電子添文
ヒドロコルチゾン酪酸エステル0.1%ロコイド軟膏0.1%
アルクロメタゾンプロピオン酸エステル0.1%アルメタ軟膏
プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル0.3%リドメックスコーワ軟膏0.3%
トリアムシノロンアセトニド0.1%レダコート軟膏0.1%
クロベタゾン酪酸エステル0.05%クロベタゾン酪酸エステル軟膏0.05%「イワキ」

V群:ウィーク

一般名濃度代表製品・電子添文
プレドニゾロン0.5%プレドニゾロン軟膏0.5%「VTRS」

皮疹の強さから選ぶ目安

次は個々の皮疹に対する選択の目安。BSAで分類した病気全体の重症度とは区別する。部位・年齢・期間を合わせて判断する。[1]

個々の皮疹基本の選択
炎症に乏しく、乾燥が主体ステロイドを含まない外用薬・保湿。
軽い赤み・鱗屑ミディアム以下。
中等度の赤み・鱗屑、少数の丘疹ストロングまたはミディアム。
強い腫れ・浸潤・苔癬化、難治性病変ベリーストロング。
ベリーストロングでも不十分な部位その部位に限定してストロンゲストを検討。診断・使い方も再確認。

ランク表を処方に使う前に

確認判断の原則
皮疹の強さ部位ごとの炎症に合う強さを選ぶ。低ランクで改善しないまま続けない。
顔顔は一般にミディアム以下が基本。重い炎症では必要な強さで速やかに改善させ、その後に減量・間欠塗布を検討する。高ランクを漫然と続けない。
乳幼児年齢だけで一律に1ランク弱めない。短期間で効果が出やすいため、期間・塗布量・面積を確認する。おむつの密封効果にも注意。
剤形軟膏・クリーム・ローションは病変の性状、部位、使用感に合わせる。皮膚用製剤を眼科用として使わない。

ランク表はADの抗炎症療法の参照用。汗疹・おむつ皮膚炎・虫刺されには、それぞれの病態と部位に合わせた選択が必要である。再診で炎症の改善、皮膚萎縮・毛細血管拡張などの局所副作用、眼症状を確認する。強さだけで副作用リスクを決めず、量・面積・期間も評価する。[1]

リンデロンVとVGを区別する。 Vはベタメタゾン吉草酸エステル0.12%の単剤。VGは同じステロイド成分にゲンタマイシンを加えた配合剤である。VGを「Vより強いステロイド」と扱わず、感染の有無と電子添文の適応を確認する。感染がないADへの抗菌薬配合の定型処方にしない。[1] [23]

旧商品名を調べるとき

ADGLの表8は2023年6月時点の代表名を含む。デルモベート・キンダベートは現在の処方例と分ける。GSKの2026年1月通知では、下記製品は2026年3月31日に経過措置満了・薬価削除となり、4月1日以降の処方分は保険請求不可とされる。[22]

旧商品名ランク・成分濃度同成分の確認先
デルモベート(軟膏・クリーム・スカルプローション)I群。クロベタゾールプロピオン酸エステル0.05%主表のクロベタゾール軟膏0.05%「イワキ」。剤形・包装・採用を確認。
キンダベート軟膏0.05%IV群。クロベタゾン酪酸エステル0.05%主表のクロベタゾン酪酸エステル軟膏0.05%「イワキ」。包装・採用を確認。

販売名だけで剤形・濃度を置き換えない。後発品も電子添文と供給・院内採用を確認する。

FTUと処方量

FTU(finger-tip unit)は、成人の人差し指の先端から第一関節まで出した外用薬の量。標準的な口径のチューブでは約0.5gで、成人の手のひら約2枚分の面積に相当する。小児に塗る場合も保護者の指を使うが、必要なFTU数は患児の年齢・部位で変わる。[1]

「患児の指で1FTU」「全ての部位に一律1FTU」としない。チューブの口径や剤形で量も変わるため、実際の製品を使って量を示す。[1]

小児の1回外用量の目安(FTU)

部位全体に塗る場合の目安。上肢・下肢は片側量で、両側なら2倍。皮疹が一部なら面積に合わせる。薬剤ごとの塗布上限が優先し、全身へ表の量をそのまま使う指示ではない。[1]

年齢顔・頸部上肢片側
3〜6か月11
1〜2歳1.51.5
3〜5歳1.52
6〜10歳22.5
年齢下肢片側体幹前面/背面
3〜6か月1.51/1.5
1〜2歳22/3
3〜5歳33/3.5
6〜10歳4.53.5/5

表にない年齢を補間して厳密な承認用量としない。必要な処方総量と使用方法は、患児の皮疹を診て決める。[1]

主な非ステロイド外用薬

薬国内用法の基本効果不十分時と注意
タクロリムス(プロトピック)0.03%小児用は1日1〜2回。低出生体重児・新生児・生後6か月未満は禁忌。16歳以上は0.1%の用法を確認。2週間以内に改善なし/悪化なら中止。初期の灼熱感、塗布上限、感染・びらん、腎機能の条件を確認。[7]
デルゴシチニブ(コレクチム)小児は0.25%、症状に応じ0.5%、1日2回。生後6か月未満の試験なし。0.5%で4週以内に改善なしなら中止。改善後0.25%を検討。体格・塗布上限を確認。[8]
ジファミラスト(モイゼルト)生後3か月以上。小児は0.3%、症状に応じ1%、1日2回。1%で4週以内に改善なしなら中止。改善後0.3%を検討。妊娠・避妊の注意も確認。[9]
タピナロフ(ブイタマー)成人・12歳以上は1%、12歳未満小児は0.5%、1日1回。ADで8週以内に改善なしなら中止。毛包炎・接触皮膚炎に注意。2歳未満は試験なし。[10]

濃度をステロイドのランクに換算しない。粘膜・潰瘍・明らかなびらん、感染部位の扱いは各薬の電子添文を確認する。タクロリムスは広範囲・重度皮疹では腎機能確認の条件もある。デルゴシチニブの1回5g上限を乳児の推奨量とせず、体格を考慮する。[7] [8] [9] [10]

2026年10月改訂のタクロリムス0.03%小児用電子添文では、生後6か月以上2歳未満の用法が追加された。1回の上限は次の表で確認する。体格や塗布面積を考慮し、上限量を毎回塗るという意味ではない。[7]

年齢(体重の目安)1回の最大塗布量
生後6か月以上2歳未満(10kg未満)0.5g
2〜5歳(10kg以上20kg未満)1g
6〜12歳(20kg以上50kg未満)2〜4g
13歳以上(50kg以上)5g

ブイタマー0.5%は2026年9月版に追加されたが、販売開始欄は未記載。処方前に最新電子添文と入手・採用状況を確認する。[7] [10] [20]

処方前に「1回量 × 1日回数 × 日数」から必要な総量を見積もる。家族に実際に塗ってもらい、量・範囲・回数を確認する。処方量が足りるか、園や学校で塗れるか、刺激感や不安で中断していないかも聞く。[1]

改善した後

頻回に再燃する部位では、炎症を十分に抑えた後に、ステロイドまたはタクロリムスを週2回程度塗る維持療法を検討する。これをプロアクティブ療法という。保湿は継続する。未改善の皮疹を残したまま、回数だけを減らさない。[1]

抗ヒスタミン薬だけでADの炎症は治療できない。かゆみへの補助として効果と眠気を評価する。ミチーガの導入条件に既存の抗アレルギー薬治療があることと、AD全例への一律投与は別である。[1] [6]

6. 外用で改善しないとき

注射に進む前に、次の5項目を確認する。[1]

見直す項目実際に確認すること
診断非典型な部位・経過、接触皮膚炎、疥癬、白癬、遺伝性疾患。
皮膚感染膿・痂皮・熱感、水疱、急速な悪化、発熱。
薬の強さと部位炎症に見合う薬か。顔や乳児を理由に不足していないか。
量と継続FTU、処方総量、塗る範囲、回数、自己中止、使用上の障害。
生活と負担掻破・睡眠障害、汗や刺激、本人・家族の不安、治療を続ける負担。

適切な外用が実行されても病勢や生活の支障が残るなら、全身療法を相談する。全員に同じ薬を順番に試す固定の梯子ではない。各薬の適応、年齢・体重、合併症、安全性、治療負担を比較する。[1]

2剤以外の選択肢

以下は専門医へ相談するための一覧。処方の優先順位や、全例で順番に試す手順ではない。全身療法へ進んでも、必要な抗炎症外用薬と保湿を続ける。[1]

選択肢国内AD用法の対象比較する点
バリシチニブ(オルミエント)成人・2歳以上の小児。体重別用量。[11]経口JAK阻害薬。感染症・腎機能・採血管理を確認。
ウパダシチニブ(リンヴォック)成人・12歳以上かつ30kg以上の小児。[12]経口JAK阻害薬。他疾患用の小児用法をADへ転用しない。
アブロシチニブ(サイバインコ)成人・12歳以上の小児。[13]経口JAK阻害薬。感染症・血球・脂質、腎肝機能を確認。
レブリキズマブ(イブグリース)成人・12歳以上かつ40kg以上の小児。[14]抗IL-13抗体。眼症状、寄生虫、注射負担を確認。
トラロキヌマブ(アドトラーザ)国内用法は成人。[15]抗IL-13抗体。海外の小児承認を国内へ流用しない。
シクロスポリン(ネオーラル)GLでは16歳以上、既存治療で不十分な最重症。[1] [16]血圧・腎機能などを管理。8週無改善なら中止、1回治療12週以内を目安。
紫外線療法薬の承認年齢表とは別に専門医が判断。[1]通院負担、皮膚障害、長期安全性を検討。小児の長期情報は不十分。

経口JAK阻害薬は、注射を避けられる点だけで選ばない。重篤感染、結核・肝炎、血球・脂質の変化、悪性腫瘍、心血管・血栓リスクを製剤別に評価する。成人の関節リウマチ研究で示されたリスクの大きさを、ADの小児へそのまま当てはめない。[11] [12] [13]

免疫調整生物学的製剤、他の経口JAK阻害薬、シクロスポリンなどとの併用を行わない条件が各JAK阻害薬にある。必要な検査、禁忌、医師・施設要件を原文で確認する。[11] [12] [13]

7. デュピクセントとミチーガを選ぶ
選択の軸デュピルマブ(デュピクセント)ネモリズマブ(ミチーガ)
標的と適応IL-4/IL-13経路。既存治療で効果不十分なAD。IL-31受容体。既存治療で効果不十分なADに伴うそう痒。
主な相談場面湿疹の炎症と、かゆみを併せて改善したい。適切な外用後にも、強いかゆみ・睡眠の支障が残る。
小児の対象生後6か月以上、体重5kg以上。体重別の用量。6歳以上。年齢別に製剤と用量が異なる。
投与負担体重により2週間隔または4週間隔。初回負荷量のある群がある。ADは4週間隔。初回負荷量なし。
目立つ確認点結膜炎・眼症状、好酸球関連症状、寄生虫感染、過敏症。皮膚症状悪化、感染、浮腫性紅斑、類天疱瘡、過敏症。
他疾患の併存喘息など別の適応もあるが、疾患別の年齢・導入条件・用量を確認。喘息などへの効果を前提に選ばない。

この比較表は優劣を示さない。デュピクセントもかゆみを改善する。ミチーガも皮疹の病勢評価が必要で、単に「皮疹は軽いがかゆい」という説明だけでは導入条件を満たさない。[2] [3] [4] [5] [6]

外用を続けられるか、注射の頻度、自己注射の可否、眼症状、既往歴、本人・家族の希望も共有する。費用は製剤と負担割合、助成制度、自己注射・受診の運用で変わる。導入前に薬剤師・医事担当と見積もる。[2] [3] [4] [5] [6]

8. 製剤別の導入条件

デュピクセント:最適使用推進ガイドライン

生後6か月以上・体重5kg以上が対象。直近6か月以上、適切な抗炎症外用薬を使っても十分な効果が得られない、または過敏症・顕著な副作用で外用治療だけの継続が難しい場合に検討する。成人はストロング以上、小児はミディアム以上を基本とし、小児でも導入前にストロングクラスの使用を考慮する。[3]

次の3条件すべてを確認する。[3]

条件数値・病像
IGA3以上。
EASIまたは顔面病変EASI 16以上、または顔面の広範囲に強い炎症。頭頸部EASIの目安は8歳以上2.4以上、7歳以下4.8以上。
BSAAD病変が全身体表面積の10%以上。

ADGL2024と後の制度文書で条件が異なる箇所は、現行の国内添文・最適使用推進ガイドラインを確認する。臨床試験の参加条件や旧版の乳児例外を、現在の導入条件として転記しない。[1] [3]

ミチーガ:最適使用推進ガイドライン

6歳以上が対象。原則として、適切な抗炎症外用薬を4週間以上、抗ヒスタミン薬などの抗アレルギー薬を2週間以上使っても、規定のそう痒が残ることを確認する。外用薬への過敏症、または抗アレルギー薬が禁忌・過敏症で使えない場合の扱いは原文で確認する。[6]

年齢そう痒の条件
6歳以上13歳未満かゆみスコア3以上。
13歳以上NRS 5以上またはVAS 50以上に加え、かゆみスコア3以上。

共通して、そう痒条件が投与前2日間と投与日の3日間続き、EASIが10以上であることを確認する。試験の登録条件と、実診療の最適使用推進ガイドラインを混用しない。[6]

投与医・施設には要件がある。尺度を満たしても、院内で自由に開始できるとは限らない。紹介状には、既存外用薬・使用期間・効果不十分の経過、尺度、かゆみ・睡眠への支障を添える。[3] [6]

9. 投与量と製剤を確認する

デュピクセント:ADの国内用法

対象初回維持投与
小児5kg以上15kg未満200mg200mgを4週間隔。
小児15kg以上30kg未満300mg300mgを4週間隔。
小児30kg以上60kg未満400mg200mgを2週間隔。
小児60kg以上600mg300mgを2週間隔。
成人600mg300mgを2週間隔。

すべて皮下注射。小児は生後6か月以上が対象で、30kg未満には追加の初回負荷量がない。600mgは300mg製剤2本で投与し、200mg製剤3本で代用しない。皮膚・皮下組織が薄い患者にはシリンジ製剤を用いる。[2] [3]

小児は成長に伴い体重を再確認する。体重の境界を越えた際の変更時期と処方は担当医が判断する。ADの表を喘息、結節性痒疹、他の適応へ流用しない。[2]

ミチーガ:ADに伴うそう痒の国内用法

対象製剤投与量・間隔
6歳以上13歳未満30mgバイアル30mgを4週間隔で皮下注射。
13歳以上・成人60mgシリンジ60mgを4週間隔で皮下注射。

ADに初回負荷量はない。30mgバイアルと60mgシリンジは互換使用しない。 60mgシリンジを30mgバイアル2本で置き換えない。結節性痒疹の「初回60mg、以降30mg」をADへ流用しない。[4] [5]

13歳に達する際も自己判断で製剤を変更しない。担当医・薬剤師が年齢と適応を確認し、製剤変更後の状態を観察する。自己注射の指導も再確認する。[4] [5] [19]

10. 導入前と副作用の確認

導入前

病勢・かゆみ・睡眠、既存治療、過敏症歴、感染徴候、眼症状、予防接種計画を記録する。思春期以降は妊娠・授乳に関する条件も必要に応じて確認する。[2] [3] [4] [5] [6]

項目デュピクセントミチーガ
成分への過敏症歴禁忌。禁忌。
生ワクチン投与中の接種は避ける。状態を慎重に確認し、十分な注意を払う。
特有の確認寄生虫感染を治療。喘息の急性増悪を治す薬ではない。皮膚症状と感染を把握。かゆみが下がっても外用を継続。
自己注射教育・訓練と確実な投与を確認して医師が判断。60mgシリンジは教育・訓練後に検討。30mgバイアルに同じ運用を自動適用しない。

生ワクチンへの対応を、全生物学的製剤で同じにしない。接種のための一律の休薬日数はこの資料では定めず、製剤の原文と接種担当医の判断を確認する。[2] [4] [5]

受診を早める症状

症状対応の考え方
呼吸困難、血圧低下、急な全身蕁麻疹重篤な過敏症を疑い、直ちに救急対応。
眼痛、まぶしさ、視力低下、眼症状の遷延眼科へ。デュピクセント使用中の結膜炎・角膜病変も確認。
発熱、急速な皮膚の腫れ、膿、水疱・びらん感染を評価。ミチーガでは重篤感染や類天疱瘡も確認。
ミチーガ開始後の浮腫性紅斑・湿疹悪化外用不足や感染だけでなく薬剤関連の悪化も考え、継続可否を評価。
デュピクセント使用中の新たな呼吸・神経・全身症状好酸球関連疾患を含め、症状に応じて検査・専門医相談。

副作用が疑われる場合は、次回投与前に連絡する。薬剤を続けるか、保留・中止するかは重症度と電子添文に基づき担当医が判断する。検査値だけの軽度変化と、症状を伴う異常を分ける。[2] [4] [5]

11. 効果判定と部分反応

再診で比べること

評価する項目記録する内容
皮疹分布、範囲、EASI・IGAなど同じ尺度、感染の有無。
かゆみ・睡眠同じ定義のかゆみ尺度、夜間覚醒、掻破、登園・登校への支障。
外用薬剤・量・回数、必要量の変化、塗れていない部位。
安全性・負担眼症状、感染、皮膚悪化、注射の問題、体重・年齢、本人・家族の希望。

尺度だけでなく、導入時に決めた困りごとが改善したかを比較する。改善が始まる時期には差があるため、数日の経過だけで無効と決めない。一方、重大な副作用は16週を待たずに対応する。[1] [2] [3] [4] [5] [6]

16週までの判断

経過次の判断
治療反応がない最適使用推進ガイドラインに従い中止。診断、外用、感染、投与状況を再確認し、別の治療を相談。
一部は改善したが支障が残る皮疹とかゆみを別々に比較。外用を再調整し、目標・負担・副作用から継続や変更を専門医と判断。
皮疹・かゆみ・生活の支障が改善外用を適切に続けながら継続。改善維持期間を記録。

デュピクセント電子添文は「16週までに反応が得られない場合は中止を考慮」、最適使用推進ガイドラインは両剤とも無反応なら中止とする。[2] [3] [6]

EASI-75は開始時からEASIが75%以上改善したことを表す。試験の評価項目であり、「EASI-75未達なら全員を中止」という国内の一律条件ではない。部分反応の判断に、試験の数字だけを当てはめない。[3] [6]

併用や切り替えは専門医が判断する。生物学的製剤2剤の併用、経口JAK阻害薬との併用、全身ステロイドの追加をこのガイドから定型処方にしない。JAK阻害薬には生物学的製剤などとの併用を行わない条件が各JAK阻害薬にある。[11] [12] [13]

12. 継続・休薬・再開

治療開始から半年で自動的に終了する薬ではない。 約6か月は、改善を維持した期間を指す。薬の効果、外用治療、再燃歴、本人・家族の希望と負担を踏まえて検討する。[3] [6]

薬一時中止などを検討する条件
デュピクセント寛解維持が約6か月以上。抗炎症外用薬・保湿も適切に続けられている。
ミチーガそう痒改善が約6か月以上維持。併用薬も適切に使えている。

寛解・改善の維持が不十分なら継続が必要な場合がある。「完治した」「必ず休薬する」と説明しない。注射の間隔を延ばすことと一時中止は別の変更であり、患者が自己判断で変更しない。[3] [6]

休薬後に再燃したら

  1. 皮疹、かゆみ、睡眠を再評価する。
  2. 感染、新しい接触物、外用の中断・不足を確認する。
  3. 必要な外用を再調整する。
  4. 症状が戻り支障が続く場合は、再開や別治療を専門医と相談する。

休薬後に症状が再び現れた場合、デュピクセントでは最適GLの患者条件②、ミチーガでは②・③を再度満たさなくても再開できる旨が記載されている。既存治療をもう一度6か月/4週間/2週間やり直すことを、一律の再開条件にしない。他の安全性・施設条件は引き続き確認する。[3] [6]

再開時の初回負荷量、薬を切り替える際の休薬期間、休薬後の再診間隔には、この資料で使える一律ルールを設定しない。病勢、前回の中止理由、薬の原文に基づき担当医が決める。[2] [3] [4] [5] [6]

打ち忘れ・自己注射

2回分をまとめて注射しない。デュピクセントの打ち忘れは医師・薬剤師に連絡し、次の投与日を確認する。ミチーガ60mgの自己注射も主治医へ連絡する。30mgの院内投与は予約を再調整する。海外の投与忘れルールを国内の全年齢・全製剤へ流用しない。保管、温度、調製、注射手順、使用済み器具の廃棄は製剤別の資材で説明する。[2] [4] [5] [17] [18]

13. 迷いやすい場面:架空の例

例は判断の整理であり、薬剤を自動的に決める処方例ではない。[1] [2] [3] [4] [5] [6]

場面確認すること判断の方向
2歳。塗り薬を使っているが毎晩掻く処方量、実際の量と範囲、炎症、感染、睡眠。外用不足を直す。なお重症なら紹介。ミチーガは6歳未満のADには用いない。
8歳・25kg。湿疹も強く外用で改善不十分Dupの既存治療・IGA・EASI/顔面・BSA条件を確認。デュピクセントを検討するなら300mgを4週間隔。25kgでは追加負荷量なし。
10歳。外用後もかゆみスコア3が持続外用・抗アレルギー薬の期間、3日間のそう痒、EASI 10以上を確認。条件を満たせばミチーガ30mgバイアルを検討。皮疹と外用も継続評価。
14歳。皮疹は小範囲だが強くかゆい疥癬・接触皮膚炎、EASI、そう痒尺度を確認。かゆみだけでミチーガ適応としない。診断と導入条件を再評価。
ミチーガで眠れるようになったがTARCが上がる皮疹、感染、外用、TARC測定時期を比較。初期の一過性上昇だけで無効としない。臨床症状の悪化があれば評価。
注射開始6か月。改善したのは最近改善を維持した期間と外用、生活の支障を確認。「初回から6か月」で自動休薬しない。
休薬後、再び夜間覚醒が増えた皮疹・感染・外用不足・中止理由を確認。外用再調整と再開を相談。既存治療のやり直しを一律に要求しない。
14. 家族への説明と院内確認事項

家族に伝えること

  • 注射を始めても、保湿と必要な塗り薬は続ける。
  • 皮疹、かゆみ、眠れるかを別々に確認する。診察ごとに困っている症状を伝える。
  • 半年で必ず終わる薬ではない。改善が続いた期間を見て相談する。
  • 注射の間隔変更や中止、打ち忘れ後のまとめ打ちは自分で決めない。
  • 目の痛み・見えにくさ、急増する均一な水疱・ただれは当日連絡する。発熱の有無は問わない。呼吸困難は救急対応。[21]
  • 食物検査が陽性という理由だけで、自己判断の除去食を始めない。[1] [2] [3] [4] [5] [6]

院内で確定すること

確認する担当・体制確定する事項
処方医・紹介先最適GLの医師・施設要件、皮膚科・アレルギー科・眼科との連携。
薬剤師採用製剤、年齢・体重確認、調製、保管、自己注射教育、再開処方。
医事・相談担当自己負担の見積もり、子ども医療費助成、高額療養費、制度の対象・手続き。
外来担当尺度の記録、再診・連絡方法、休薬後の再燃時対応。

院内で実施していると確認できた項目は、確認後に手順へ反映する。本資料では未確認の採用・連携・費用を確定事項として扱わない。

15. 出典(一次資料)
  1. 日本皮膚科学会・日本アレルギー学会「AD診療ガイドライン2024」。診断・尺度・検査、外用、紹介、全身療法。誌面2750〜2767、2770、2782〜2793、2801〜2805。外用ランクは表8(2762)、皮疹の強さと選択は表9(2763)。学会PDF
  2. PMDA デュピクセント電子添文。2026年3月第14版。ADの用法、7・8・9・11・14章。電子添文
  3. 厚生労働省 デュピルマブ最適使用推進ガイドライン・AD。2025年12月改訂。本文p.12〜15。最適GL
  4. PMDA ミチーガ60mgシリンジ電子添文。2025年11月第7版。5〜9・11・12章。電子添文
  5. PMDA ミチーガ30mgバイアル電子添文。2025年6月第5版。AD用法、5〜9・11・12章。電子添文
  6. 厚生労働省 ネモリズマブ最適使用推進ガイドライン・ADそう痒。2024年5月改訂。本文p.13〜17。最適GL
  7. PMDA プロトピック0.03%小児用電子添文。2026年10月第3版(2026-10-30確認)。用法・禁忌・安全性。電子添文
  8. PMDA コレクチム電子添文。2025年12月第7版。電子添文
  9. PMDA モイゼルト電子添文。2024年10月第6版。電子添文
  10. PMDA ブイタマー電子添文。2026年9月第6版。電子添文
  11. PMDA オルミエント電子添文。2026年7月第13版。AD用法・7.5・安全性。電子添文
  12. PMDA リンヴォック電子添文。2026年8月第17版。AD用法・7.1・安全性。電子添文
  13. PMDA サイバインコ電子添文。2023年7月第4版(掲載更新2026-06-04)。AD用法・7.4・安全性。電子添文
  14. PMDA イブグリース電子添文。2025年5月第3版。電子添文
  15. PMDA アドトラーザ150mg電子添文。2024年4月第3版。電子添文
  16. PMDA ネオーラル電子添文。2026年5月第4版。AD用法・7.6。電子添文
  17. PMDA デュピクセント患者向医薬品ガイド。2026年3月。打ち忘れ、自己注射。患者向ガイド
  18. マルホ ミチーガ60mg自己注射Q&A。打ち忘れの説明。メーカーの製剤別説明資材。自己注射Q&A
  19. PMDA掲載 ミチーガ適正使用ガイド。2026年4月。13歳時の製剤変更、安全性。適正使用ガイド
  20. 厚生労働省 タクロリムス使用上の注意改訂の審議資料。2026-09-29。改訂案であり、現行電子添文の改訂完了を示さない。審議資料
  1. NICE CG57 小児ADの診療。カポジ水痘様発疹症の疑いと当日対応、1.5.1.40・1.5.1.42・1.7.1.1。国内GLを補う緊急紹介の根拠。Recommendations
  1. GSK「薬価基準削除に伴う経過措置期間移行のご案内」。2026年1月。デルモベート各剤形・キンダベートの終了と同成分代替例。公式通知
  2. PMDA リンデロンV・VG電子添文。単剤とゲンタマイシン配合の区別、組成・適応・安全性。V電子添文/VG電子添文
  1. HOME「How to Use EASI」January 2017 v3。面積、4徴候、年齢別係数と計算式。公式手引き
  2. Nagel TR, Schunk JE. Using the hand to estimate the surface area of a burn in children. Pediatr Emerg Care. 1997;13:254–255。本人の手全体と掌のみの測定値を区別。原著
  3. International Eczema Council「vIGA-AD」公式日本語版、2018年更新。Copyright 2017 Eli Lilly and Company、CC BY-ND 4.0。入力欄の一般IGAとは区別して原版を参照。公式尺度

2026-10-08に国内電子添文・最適使用推進ガイドラインとADGL2024を照合した。将来の審議資料、海外の承認年齢、臨床試験の参加条件は、現行国内用法と区別する。

臨床医が迷う場面
塗り薬が効かないと言われたら、すぐ強くする?

塗布した実量・部位・頻度と継続日数を確認し、実物で塗り方を見直す。掻破、感染、接触皮膚炎も評価する。適切な外用でも睡眠や生活への支障が続く場合は、単に高ランクを長期処方せず皮膚科と治療を再設計する。

根拠:RCH Eczema:外用最適化・感染の評価

きれいになった部位の外用は全部中止する?

炎症が落ち着いたら部位と再燃歴に合わせて抗炎症薬の頻度を減らし、保湿は続ける。同じ部位に繰り返す児では維持の塗布計画を共有する。治療中も皮膚萎縮などを確認し、再燃時に戻す薬・量と受診条件を家族に示す。

根拠:RCH Eczema:外用最適化・感染の評価

赤くじゅくじゅくしている皮疹に抗菌薬を足す?

湿潤だけで細菌感染とは決めない。膿疱、痂皮、拡大する発赤、発熱を診察する。痛みの強い均一な小水疱・打ち抜き状びらんや眼症状はヘルペス性湿疹を疑い当日評価し、通常の外用強化だけで待たない。

根拠:RCH Eczema:外用最適化・感染の評価

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