扁桃周囲膿瘍・咽後膿瘍は気道評価を最優先し、盲目的処置はしない
気道確保が最優先で、そのうえで造影CTを検討する。当院は二次救急・耳鼻科なしのため盲目的に穿刺・切開しない。傍咽頭間隙の深部には内頸動脈・総頸静脈・脳神経が走っている。咽後膿瘍は5歳未満、扁桃周囲膿瘍は思春期以降に多いが、好発年齢外でも否定しない。
始める前に
- 頸部腫脹・頸部可動域制限・いびき・流涎のいずれか(5歳未満)を確認する。咽後膿瘍33例中32例(97%)にこの4項目のいずれかが認められた
- 口蓋垂偏位・開口障害(年長児)を確認する。急性扁桃炎として経過をみている子にこれらが新たに出たら膿瘍化を疑う
- 有熱期間や年齢によらず、頸部腫脹をはじめとする臨床症状に注目して身体診察を行い造影CTの実施を検討する。扁桃周囲膿瘍16例で有熱期間48時間以内という典型的でない時点で受診した症例が半数あった
- 前医で抗菌薬が投与されていても膿瘍化を否定しない。扁桃周囲膿瘍55例中64%が前医抗菌薬投与例だった
- 乳児の吸気性喘鳴+無呼吸発作は発熱1日目でも好発年齢外として否定しない(生後5か月児が挿管後搬送された実例あり)
- 切開しても排膿がない場合は川崎病を鑑別に入れる。造影CTで咽頭後部に低吸収領域を認めるが周囲に造影効果を認めないのが相違点で、13歳男児で切開しても漿液性浸出液のみで排膿なく、後に発疹・結膜充血が出現し川崎病と確定した報告がある
手順
- 1
気道を評価する(喘鳴・陥没呼吸・流涎・体位)
気道が危ういなら、以降を飛ばして応援と搬送
- 2
楽な体位を保ち、刺激しない
開口障害があるときに無理に口を開けさせない
- 3
造影CTを検討する
扁桃周囲膿瘍は肉眼で観察できればCT不要とされるが、実際は開口障害や他の深頸部感染症の鑑別のため多くで実施されている
- 4
血液培養・血算・CRPを取る
結果待ちで気道の判断を遅らせない
- 5
耳鼻咽喉科へ連絡する。切開排膿が要るかは耳鼻科の判断
当院で盲目的に穿刺・切開しない
- 6
経過が思わしくなければ躊躇せず繰り返し造影CTで評価する
造影CTの所見で膿瘍形成をしているかどうか確実に予測することは難しく、Ring enhancementは絶対条件ではない
- 7
送ると決めた時点で、気道の状態、造影CTの画像の有無、前医を含めた抗菌薬の投与歴、発症からの日数を伝える
抗菌薬投与歴は起炎菌と嫌気性菌の関与に効く
やってはいけない
- 当院で盲目的に穿刺・切開しない。傍咽頭間隙深部には内頸動脈、総頸静脈、舌咽神経、迷走神経、副神経、舌下神経などが存在し、口腔内からの盲目的処置を行えば神経損傷・血管損傷等を生じる可能性がある(要確認:『耳鼻科不在施設は切開・穿刺を試みるな』と明文で述べた一次資料は確認できていない。本シートは上記の解剖学的リスクからの帰結として述べている)
- 開口障害があるときに無理に口を開けさせない
- 楽な体位を保ち、刺激しない
- 前医で抗菌薬が出ているからといって大丈夫と判断しない。抗菌薬投与下でも膿瘍化は進む
- Ring enhancementは絶対条件ではないため、造影CTの陰性所見のみで膿瘍を否定して安心しない。初診時に均一な造影効果と判断し抗菌薬のみで開始したが9日後の再CTで膿瘍化が判明した実例がある
- 有熱期間や好発年齢外という理由だけで膿瘍化の可能性を否定しない
- 膿瘍を疑って切開しても排膿がなければ、そこで思考を止めず川崎病を鑑別に入れる。切開排膿を先行させたことで診断が遅れた実例がある
終わったあと
- 小さなお子さんでは、のどの痛みより「首を動かさない」「いびきをかく」「よだれが増える」といった形で出ることがあると伝える
- 膿を出す処置が必要かどうかは造影CTと専門医の診察で決まると伝える
- 当院ではその処置ができないので、必要なら耳鼻科のある病院へ移ってもらうことを伝える
この場で持てない・送る
- 気道が危うい:持てない。気道確保のできる施設へ即連絡。刺激しない
- 膿瘍を疑う(画像の有無を問わず):持てない。切開排膿は耳鼻科
- 蜂窩織炎レベルで気道が安定:抗菌薬で経過を見るなら繰り返し造影CTで評価できる体制が要る。当院で担えるかは要確認
- 要確認:耳鼻咽喉科の夜間・休日の受け入れ先と直通番号
- 要確認:夜間に造影CTが撮れるか。撮れないなら「疑った時点で送る」が既定になる
- 要確認:搬送前に抗菌薬を開始するか、絶飲食にするか。これを明記した一次資料は見つかっていないので院内で決める必要がある
- 要確認:蜂窩織炎を当院で経過観察する範囲
- 要確認:頸部椎前軟部組織厚のカットオフ(C2で7mm未満・C3/C4で5mm未満)が小児の基準か成人の基準か、資料内に明記がない
手順・適応・禁忌はすべて本シートの正本の記載のみ。院内の器材・採用薬・搬送先は施設ごとに違うため、適用前に院内ルールを確認すること。