急性糸球体腎炎(溶連菌感染後)

緊急

急性糸球体腎炎(溶連菌感染後)

腎・泌尿器β版・逐条レビュー継続中

2026-09-12更新
β版用量は適用前に一次資料と院内採用を確認。

施設プロファイル: 二次救急/小児の急性血液浄化なし/当直帯の尿検査は定性のみ(沈渣は出ない)・超音波も使えない/夜間入院はできる(2026-09-14 確認)。

30秒要約

  • 「コーラ色のおしっこ」+「まぶたの腫れ」+「2週間前に喉が痛かった」。この3つが揃えば、ほぼこれ。
  • 咽頭炎や扁桃炎が治癒した約2週間後に、血尿・蛋白尿・浮腫・高血圧・全身倦怠感が出る。皮膚(とびひ)が先行することもあり、その場合は3〜6週間とされる。
  • 4〜10歳くらいに多く、晩秋から寒冷期に多い。ほとんどの場合完全に治癒する。
  • 当直で命に関わるのは腎臓ではなく血圧と水。高血圧性脳症(けいれん・意識障害)、肺水腫(呼吸困難)、高カリウム血症。
  • 体重を測る。急に増えていれば水が溜まっている。「急に体重が増えたことに気づく」のが家族側のサイン。

レッドフラグ → 次の一手

所見があったときにどれだけ急ぐかと、家族に何を伝えるかの対応表。3列目の文言は家族説明ページに同じ言葉で載っているので、画面を見せながら渡せる。

緊急度所見その場で次にやること時間の勝負
119けいれん・意識障害+高血圧高血圧性脳症。降圧を開始しつつ搬送(意識障害・初発の無熱性けいれん)即時
119呼吸困難・起座呼吸・湿性ラ音・SpO2低下肺水腫。座位・酸素・利尿。胸部X線(胸部X線)即時
119高カリウム血症(K高値・心電図変化)心電図(テント状T波)。当院で治療開始→透析が要れば持てない即時
119無尿・著明な乏尿+Cr上昇急性腎障害。一時的に透析が必要となることもある=当院で持てない即時
緊急高血圧(年齢の基準値を超える)塩分・水分制限、降圧薬。頭痛・嘔吐は高血圧の症状として扱う当日
緊急体重が数日で数kg増えた体液貯留。入院で管理当日
緊急低補体血症が8週を超えて続く膜性増殖性糸球体腎炎・C3腎症を疑う。腎生検=専門施設数週
緊急ネフローゼ域の蛋白尿を伴う経過が典型でない。専門施設へ当日
当日肉眼的血尿のみ、血圧正常、浮腫なし、全身状態良好外来でフォロー可。血圧と体重を毎回測る数日

鑑別:よくあるもの(赤い尿・むくみ)

病態見分け次の一手
IgA腎症感染と同時(1〜3日以内)に肉眼的血尿。補体は正常。反復する専門施設。「感染と同時」か「2週間後」かで分かれる
出血性膀胱炎排尿痛・頻尿。アデノウイルスが多い。浮腫・高血圧なし尿培養・迅速検査(尿路感染症)
尿路感染症発熱・膿尿・細菌尿尿路感染症
紫斑病性腎炎(IgA血管炎)下肢の触知可能な紫斑が先行または同時ITP・紫斑
ネフローゼ症候群浮腫が主役、蛋白尿が主役、補体は正常ネフローゼ症候群
尿路結石疝痛・側腹部痛エコー(当直帯は当院で撮れない)
食品・薬剤による着色尿ビート・リファンピシンなど。試験紙は陰性尿定性で区別
運動後血尿・ナットクラッカー現象無症候。左腎静脈の形態血尿・蛋白尿

鑑別:見逃してはいけないもの

病態見逃しの形当院の扱い
高血圧性脳症「頭が痛い、吐いた」を胃腸炎として帰す。血圧を測っていない降圧開始→持てない
急性腎障害・高カリウム血症Crと電解質を出さない透析が要れば持てない
溶血性尿毒症症候群(HUS)血性下痢が先行していたのに腎炎として扱う持てない(細菌性腸炎とHUS)
膜性増殖性糸球体腎炎・C3腎症低補体が遷延しているのに「急性腎炎だから治る」と説明する腎生検=持てない
ループス腎炎発熱・皮疹・関節痛を拾わない持てない。抗核抗体
心不全浮腫を腎炎のせいにする心エコー(当直帯は当院で撮れない)。夜は呼吸数・肝腫大・頸静脈・ラ音で疑う

治療ワークフロー(当院でやること)

当直の本体は「血圧」と「水」。腎炎そのものに効く薬はない。

時間やること
0分血圧を測る(カフサイズを確認。年齢の基準値で読む)。意識・呼吸を評価
0〜10分体重を測る。前回値との差を出す
10〜30分尿定性+尿沈渣(赤血球円柱を探す)、尿蛋白クレアチニン比。当直帯に沈渣は出ない(2026-09-14 確認)。夜は「定性の潜血+蛋白」「血圧」「尿量」「浮腫」の4つで動く——この4つだけで入院と降圧の判断はできる。赤血球円柱は翌日に確認する
10〜30分採血:Cr・BUN・電解質(特にK)・アルブミン・C3(CH50)・ASO/ASK、血算、CRP
30分心電図(高カリウム血症の評価)
必要時胸部X線(肺水腫・心拡大)。SpO2低下・起座呼吸があれば
入院管理浮腫や高血圧の強い時には安静が必要であり、入院して様子をみる。水分や塩分、蛋白質などの食事制限が必要となる。高血圧に対しては、降圧薬と利尿薬が用いられることもある
経過急性期を過ぎると、十分な量の尿がでるようになり、塩分の制限なしでもむくみがなくなる。血圧が正常化すれば安静を解除する。浮腫が消失し蛋白尿が減れば退院となる
抗菌薬溶連菌が残っていれば治療する。ただし抗菌薬で腎炎そのものは治らない(溶連菌)

所見の取り方

所見取り方所見があったら次にどうする
尿の色実物を見る。コーラ色・ワイン色・紅茶色は糸球体性。鮮血は尿路系糸球体性なら腎炎として動く
血圧測っていない=診ていない。年齢基準・カフサイズ高ければ入院
体重前回値との差。数日で数kg体液貯留
眼瞼浮腫朝が最強尿定性
尿量家族に回数とおむつの重さを聞く乏尿なら急性腎障害
呼吸起座呼吸・湿性ラ音肺水腫。119
咽頭・皮膚2週間前の咽頭炎/とびひの痕を探す病歴が診断を決める
紫斑下肢伸側IgA血管炎

検査

検査何がわかるか読み方
尿沈渣変形赤血球・赤血球円柱赤血球円柱があれば糸球体性で確定に近い。当直帯には出ないので、夜に確定を求めない
尿蛋白クレアチニン比蛋白の量ネフローゼ域なら非典型
C3(補体)低補体血症「C3は通常2か月以内に正常となる」とされる。8週を超えて低補体が続けばMPGN/C3腎症を疑う
ASO・ASK溶連菌の先行感染咽頭培養が陰性でも先行感染を示せる
Cr・BUN腎機能年齢基準で読む
K高カリウム血症乏尿なら必ず
アルブミンネフローゼとの区別著明な低下は非典型
血算貧血・血小板貧血+血小板減少+腎障害はHUS
心電図高カリウム血症テント状T波
胸部X線肺水腫・心拡大呼吸症状があれば

経過と説明(そのまま伝える数字)

  • 急性糸球体腎炎は、通常6か月くらいで尿所見は正常化する。
  • 退院後外来では、蛋白尿が消えるまでは体育などの運動は禁止する。
  • 蛋白尿が消えたら、たとえ血尿が残っていても幼稚園・保育園への登園は可能で、他の園児と同じ生活をしても問題はない。
  • 血尿は3〜6か月間続くが、蛋白尿が見られなければ運動を禁止する必要はない。
  • 血尿が消失したら、治癒したと考える。
  • 学校生活管理指導表の指導区分(岡山県検尿マニュアルの目安):急性腎炎症候群は、発症後3か月以内でP/C比0.5 g/gCr程度のもの=C(軽い運動のみ)/発症後3か月以上でP/C比0.5 g/gCr以上のもの=D(軽い運動および中程度の運動のみ)。

問診チェック

  • 2〜3週間前の咽頭炎・扁桃炎(受診の有無、抗菌薬の有無)
  • とびひ(伝染性膿痂疹)の既往
  • 尿の色・回数・量の変化はいつからか
  • 体重の変化
  • 頭痛・嘔吐(高血圧の症状として聞く)
  • 息苦しさ、横になれるか
  • 下痢・血便の先行(HUSを外す)
  • 紫斑・関節痛・腹痛(IgA血管炎)
  • 発熱・皮疹・脱毛・光線過敏(ループス)
  • 家族歴:腎疾患、難聴(Alport)

送る/持つ(当院=二次救急・急性血液浄化なし)

状態当院の扱い
高血圧性脳症降圧を開始して搬送
肺水腫初期対応は当院。人工呼吸・透析が要れば持てない
高カリウム血症内科的治療は当院で開始。透析は持てない
乏尿・無尿を伴う急性腎障害持てない
典型的な経過で血圧・尿量が保たれている入院は当直帯でも受けられる(2026-09-14 確認)。血圧と尿量のモニタは夜間でも回せるので、当院で管理しうる。夜間は当院で入院管理し、日勤帯に専門施設と相談する
低補体の遷延・ネフローゼ域蛋白尿腎生検が要る=持てない
血尿のみ、血圧正常外来フォロー可

エスカレーション(施設オーバーレイで上書き)

  • 要確認:小児の急性血液浄化(透析)ができる紹介先
  • 確定(2026-09-25 確認):夜間に電解質・Crは出せる。尿沈渣は出ない。C3・ASOの夜間可否は未確認
  • 要確認:小児の降圧薬の院内採用(経口・静注のどちらを、どの薬で)
  • 決定:全身状態が安定していれば夜間は当院で入院管理し、日勤帯に専門施設と相談する。血圧と尿量は夜間でも測れる
  • 要確認:小児の年齢別血圧基準値を当直帯でどこに置くか

家族に渡す一文

「のどや皮膚の感染のあと、2週間ほどしてから腎臓に炎症が起きる病気です。おしっこが赤い(コーラのような色)、まぶたが腫れる、血圧が上がるのが特徴です。ほとんどの場合、完全に治ります。ただし、治るまでのあいだ、血圧と体に溜まる水には気をつける必要があります。強い頭痛、吐く、息が苦しい、横になれない、けいれん、おしっこがほとんど出ない、このどれかがあれば、時間を待たずに来てください。おしっこの異常(血尿)は3〜6か月続くことがありますが、たんぱくが消えれば運動を止める必要はありません。血尿が消えても受診を自己終了せず、血圧・尿検査・腎機能などの回復を確認します。」

出典

  • 日本小児腎臓病学会.患者、ご家族、一般の方向けQ&A「急性糸球体腎炎」(Copyright © 2020).https://jspn01.umin.jp/kanja/files/kanja-byoki-01.pdf (2026-09-12閲覧)。「急性糸球体腎炎は4歳~10歳くらいまでの子どもに多く、晩秋から寒冷期に多く発症します。ほかの腎臓病と異なって、ほとんどの場合完全に治癒します。細菌やウイルスなどの感染症がきっかけになりますが、最も頻度が高いのは、溶血性連鎖球菌(溶連菌)感染後の急性糸球体腎炎です」「咽頭炎や扁桃炎が治癒した約2週間後に血尿や蛋白尿、むくみ(浮腫)、高血圧、全身倦怠感などの症状が出ます。体重を量ると、急に増えていることに気づきます。高血圧のせいで頭痛を訴えたり、吐いたりすることもあります。重症の場合は、痙攣や意識障害を起こすことがあります。そのほか、尿量が減り浮腫が強くなると、肺水腫となり呼吸困難を呈したり、腎臓の働きが低下し、高カリウム血症を呈することもあり、一時的に透析が必要となることもあります」「浮腫や高血圧の強い時には安静が必要であり、入院して様子をみます。水分や塩分、蛋白質などの食事制限が必要となります。高血圧に対しては、降圧薬と利尿薬が用いられることもあります」「急性糸球体腎炎は、通常6か月くらいで尿所見は正常化します。退院後外来では、蛋白尿が消えるまでは体育などの運動は禁止します。蛋白尿が消えたら、たとえ血尿が残っていても幼稚園・保育園への登園は可能で、他の園児と同じ生活をしても問題はありません。血尿は3~6か月間続きますが、蛋白尿が見られなければ運動を禁止する必要はありません。血尿が消失したら、治癒したと考えます」。
  • 日本小児腎臓病学会.患者、ご家族、一般の方向けQ&A「血尿」(Copyright © 2021).https://jspn01.umin.jp/kanja/files/kanja-syojo-02.pdf (2026-09-12閲覧)。「腎臓が原因となる疾患は、腎炎によることが多いです。溶連菌感染症で有名な急性糸球体腎炎、他IgA腎症や紫斑病性腎炎、ループス腎炎などがあります」「尿路系の代表は、(出血性)膀胱炎です。アデノウイルスが原因となることが多いです」「小児では尿路系の悪性腫瘍(癌)は非常に希です」。
  • 岡山県医師会・岡山県教育委員会.岡山県検尿マニュアル -適正な学校検尿・3歳児検尿のために- 令和6年度改訂.https://www.pref.okayama.jp/uploaded/life/561663_8926830_misc.pdf (2026-09-12閲覧)。専門医への紹介の目安(低補体血症 C3<73 mg/dL/高血圧(測定法に注意し、年齢の基準値を参照)/肉眼的血尿/尿蛋白と尿潜血がともに陽性)、指導区分の目安(急性腎炎症候群:発症後3か月以内でP/C比0.5 g/gCr程度=C/発症後3か月以上でP/C比0.5 g/gCr以上=D)、3歳児検尿の紹介の目安(高血圧:3歳の場合 110/70 以上)。同マニュアルは「学校検尿のすべて」(日本学校保健会・令和2年度改訂)と「小児の検尿マニュアル」(日本小児腎臓病学会)をたたき台としている。
病態・根拠9章
鑑別の考え方:血尿だけでなく、水と血圧の病気として診る

溶連菌感染後糸球体腎炎は、感染に続く免疫反応による非化膿性の腎炎である。糸球体の炎症により血尿・蛋白尿を生じ、水と塩分の排泄低下が浮腫・高血圧につながる。したがって、尿の色が薄くなったことだけを改善の指標にせず、体重、血圧、尿量、呼吸、腎機能を並べて評価する。[1][2]

先行感染の検査と、今の腎障害の検査を分ける

C3等の補体、ASO・抗DNase B等の先行感染の証拠は診断を支持する。一方、Cr・電解質・尿蛋白は現在の重症度を示す。咽頭培養が陰性でも、感染が過去のものならそれだけで否定できない。肉眼的血尿が反復する、感染と近接して起こる、全身性の発疹・関節症状がある場合は、IgA腎症やIgA血管炎、SLE等も考える。[1][2]

夜間に尿沈渣が出なくても、高血圧、乏尿、浮腫と潜血・蛋白の組合せから重症度判断を始める。翌日の赤血球円柱確認を待って肺水腫・高K血症への対応を遅らせない。超音波は典型例全員の確定検査ではなく、診断が不明、非典型、疼痛が強いなどの場合に別の原因を調べるため使う。[1]

利尿・降圧と抗菌薬は目的が異なる

治療の中心は体液過剰と高血圧の管理である。体重と出納を反復し、利尿・塩分や水分の調整を病態に合わせる。乏尿だからという理由で脱水例と同じ補液を繰り返すと、うっ血を悪化させうる。高度高血圧の神経症状、肺水腫、危険な電解質異常、進行する腎機能悪化は、腎臓・集中治療へ緊急相談する。[1]

抗菌薬は残存する溶連菌の除菌と伝播防止が目的で、成立した免疫性腎炎を直接治す薬とは区別する。選択と投与は国内の施設手順で確認する。[2]

尿所見だけを追って終わらせない

血圧・腎機能・体液量が改善してから退院・外来管理を考える。補体や腎機能が回復しない、蛋白尿が増える、肉眼的血尿が持続・再発する場合は専門再評価が必要である。顕微鏡的血尿が残る期間と、腎機能や補体の異常が続くことを同じ扱いにしない。[1]

出典と適用範囲

海外の即放性降圧薬の具体量や家庭での利尿薬継続方針は、この解説では国内へ転用しない。

臨床医が迷う場面
茶色い尿が薄くなれば、降圧薬や利尿薬はやめてよい?

尿色だけで治療終了を決めない。体重、血圧、尿量、浮腫、腎機能・電解質を確認し、体液過剰と高血圧の改善に合わせて調整する。頭痛・嘔吐、呼吸困難は尿の見た目に関係なく緊急再評価し、けいれんや意識障害があれば専門施設へ急ぐ。

出典:RCH 溶連菌感染後糸球体腎炎(海外) / CDC 溶連菌感染後糸球体腎炎

溶連菌が先行した腎炎なら、抗菌薬で腎炎も治る?

腎炎は感染後の免疫反応で、抗菌薬だけで体液過剰や高血圧が改善するわけではない。残る溶連菌の除菌・伝播予防と、腎炎の支持療法を分けて考える。抗菌薬を開始しても体重・尿量・血圧を追い、低補体や蛋白尿が続く例は腎臓専門医へ相談する。

出典:RCH 溶連菌感染後糸球体腎炎(海外) / CDC 溶連菌感染後糸球体腎炎

血尿が長引く。ステロイドを始めるべき?

血尿だけで免疫抑制薬を追加しない。蛋白尿、腎機能、血圧、補体の回復を合わせて追う。遷延する低補体、増える蛋白尿、腎機能悪化などは典型的な回復から外れるため別病態を再評価する。専門医と生検等の必要性を判断し、尿色のみで増悪としない。

出典:RCH 溶連菌感染後糸球体腎炎(海外) / CDC 溶連菌感染後糸球体腎炎

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