白血病・悪性腫瘍を疑うとき
内分泌・代謝・血液β版・逐条レビュー継続中
施設プロファイル: 二次救急/小児血液・腫瘍科なし・骨髄検査なし/当直帯に末梢血液像(鏡検)は出ない/夜間入院はできる(2026-09-14 確認)。
30秒要約
- 当直で診断をつける必要はない。「おかしい」と気づいて、血算を出して、送るだけ。
- 当直帯に末梢血液像(鏡検)は出ない。だから夜の仕事は「芽球を見つけること」ではなく、血算の3系統の数字と5つの鍵で、朝まで待てるかどうかを決めることに変わる。
- 帰さないという選択肢を使う。当院は当直帯でも小児科病床に入院させられる。3系統のどれかが明らかにおかしければ、血液像を待って翌朝に見る形で院内に留める。夜に見えないことは、帰す理由にならない。
- 白血病は小児がんの中で最も多い。急性リンパ性白血病(ALL)が約70%、急性骨髄性白血病(AML)が約25%。日本ではALLが年間約500人、AMLが年間約180人が新たに診断されている。
- 代表的な症状は、貧血、出血、感染、肝臓や脾臓の腫れ、発熱、骨痛。中枢神経系で白血病細胞が増殖することもあり、頭痛や吐き気・嘔吐などの症状に注意が必要。
- 「かぜ」を何度も繰り返す子の中に混じっている。拾う鍵は、①長引く/繰り返す発熱 ②蒼白 ③紫斑・出血 ④骨痛・歩かない ⑤肝脾腫・リンパ節腫大。この5つのうち2つ以上が揃ったら血算。
- 血算の3系統をセットで見る。白血球数は増加している場合から減少している場合までさまざまで、数だけでは判断できない。赤血球数や血小板数は減少していることが多い。
レッドフラグ → 次の一手
所見があったときにどれだけ急ぐかと、家族に何を伝えるかの対応表。3列目の文言は家族説明ページに同じ言葉で載っているので、画面を見せながら渡せる。
| 緊急度 | 所見 | その場で次にやること | 時間の勝負 |
|---|---|---|---|
| 119 | 化学療法中・免疫抑制中の子の発熱(腋窩温≧37.5℃) | 当直帯は好中球数が出ないのでFNを確かめられない。血培2セットを採ってから広域抗菌薬をただちに。解熱を待たない(節「発熱性好中球減少症(FN)」・小児敗血症) | 即時 |
| 119 | 高度の貧血(Hb低値)+頻脈・呼吸困難 | 輸血が要る。当院の輸血体制を確認して搬送 | 即時 |
| 119 | 血小板著減+頭痛・嘔吐・意識障害 | 頭蓋内出血(紫斑・出血斑) | 即時 |
| 119 | 前縦隔腫瘤による気道・上大静脈の圧迫(起座呼吸・顔面の腫れ・頸静脈怒張) | 仰臥位にしない。鎮静をかけない。酸素・座位で搬送 | 即時 |
| 119 | 白血球数が著明高値(過粘稠度症候群)+呼吸困難・意識障害 | 持てない。輸液を開始して搬送 | 即時 |
| 119 | 腫瘍崩壊症候群(高K・高P・高尿酸・低Ca・乏尿) | 輸液。持てない | 即時 |
| 緊急 | 末梢血に芽球(blast)、または自動分析装置の芽球・異常細胞フラグ | その日のうちに小児血液へ。帰さない。当直帯は鏡検が出ないので、フラグと数字で動く | 即時 |
| 緊急 | 血算の3系統のうち2つ以上が明らかに異常(貧血+血小板減少など)+5つの鍵のどれか | 鏡検を待たずに動く。当直帯は入院させて翌朝の血液像につなぐか、その場で小児血液へ相談 | 即時 |
| 緊急 | 2系統以上の血球減少 | 持てない。骨髄検査が要る | 当日 |
| 緊急 | 肝脾腫+リンパ節腫大+発熱 | 血液悪性腫瘍として動く | 当日 |
| 緊急 | 夜間に泣くほどの骨痛・歩かなくなった+発熱・蒼白 | 血算とLDHを出す(歩かない・手足を動かさない) | 当日 |
| 緊急 | 腹部の硬い腫瘤(乳幼児) | 神経芽腫・腎芽腫。触りすぎない。当直帯はエコーが無いので、触れたという事実だけで小児血液・腫瘍へ相談する | 当日 |
| 緊急 | 朝の頭痛・嘔吐・複視・失調・斜頸 | 脳腫瘍。画像が要る(頭痛) | 当日 |
| 緊急 | 白色瞳孔(猫目)・斜視 | 網膜芽細胞腫。眼科へ | 当日 |
| 当日 | 2週間以上続く/繰り返す原因不明の発熱 | 血算・末梢血液像・LDH・尿酸・CRP(血液像は翌日以降。当直帯には出ない)(不明熱) | 数日 |
| 当日 | 体重減少・寝汗・持続する倦怠感 | 同上 | 数日 |
「かぜ」と分けるための5つの鍵
| 鍵 | 具体的に | なぜ効くか |
|---|---|---|
| ①発熱の形 | 2週間以上続く、または熱が下がりきらずに繰り返す | ウイルス感染は普通そこまで続かない |
| ②蒼白 | 眼瞼結膜・手掌・爪床を見る。元気がない、すぐ息が上がる | 正常な血液細胞がつくれないことによる貧血 |
| ③出血 | 点状出血・紫斑・鼻血が止まらない・歯肉出血 | 血小板が減っていることで、鼻血や歯ぐきの出血 |
| ④骨痛 | 夜間痛・歩かない・抱っこをせがむ・関節痛と言われている | 骨痛は代表的症状。関節炎と誤診されやすい |
| ⑤腫れ | 肝脾腫、リンパ節腫大(頸部・腋窩・鼠径) | 肝臓や脾臓の腫れ |
2つ以上そろったら血算。1つでも「何かおかしい」と思ったら血算。 血算は安く、早く、当直帯でも当院で出せる。出ないのは鏡検(末梢血液像)のほうで、血算そのものは夜も使える。
鑑別:よくあるもの(似ているが違う)
| 病態 | 見分け | 次の一手 |
|---|---|---|
| ウイルス感染(EBV・CMV・パルボ等) | 異型リンパ球、一過性の血球減少、肝脾腫あり | 伝染性単核症。それでも芽球がないことを確かめる |
| 鉄欠乏性貧血 | 小球性、他系統正常、食事歴 | 鉄欠乏性貧血 |
| ITP | 血小板だけが減る。全身状態良好・肝脾腫なし | 紫斑・出血斑 |
| 若年性特発性関節炎(全身型) | 弛張熱・サーモンピンク疹・関節炎。血小板は上がる | 白血病と最も紛らわしい。専門施設 |
| 化膿性関節炎・骨髄炎 | 単関節の熱感・発赤・可動域制限 | 血培・画像(歩かない) |
| 成長痛 | 夜間痛だが日中は元気、両側性、他覚所見なし、発熱なし | 経過観察。片側・跛行・発熱・体重減少があれば成長痛としない |
| 伝染性単核症のリンパ節腫大 | 発熱・咽頭痛・肝脾腫 | 伝染性単核症 |
| 川崎病 | 発熱+眼球結膜充血・口唇紅潮・発疹・BCG発赤 | 川崎病 |
鑑別:見逃してはいけないもの(当院の扱い)
| 病態 | 代表的な初発症状 | 当院の扱い |
|---|---|---|
| 急性リンパ性白血病(ALL) | 貧血、出血、感染、肝臓や脾臓の腫れ、発熱、骨痛 | 持てない。骨髄検査が要る |
| 急性骨髄性白血病(AML) | 同上。歯肉腫脹・皮膚浸潤が出ることがある | 持てない |
| リンパ腫 | 痛みのないリンパ節の腫れ、原因が明らかでない発熱や寝汗・体重減少。腫瘤により気道や血管、脊髄などの臓器が圧迫されると、呼吸困難(気道閉塞)、血流障害、麻痺などの症状があらわれ、緊急で治療が必要となる場合もある | 持てない |
| 脳腫瘍 | 朝の頭痛・嘔吐・失調・複視・斜頸・視野障害 | 持てない |
| 神経芽腫 | 腹部腫瘤、不機嫌、眼窩周囲の紫斑(raccoon eye)、歩かない | 持てない |
| 腎芽腫(Wilms腫瘍) | 無症候性の腹部腫瘤、血尿、高血圧 | 持てない。強く触らない |
| 網膜芽細胞腫 | 白色瞳孔・斜視 | 持てない。眼科へ |
| 骨肉腫・Ewing肉腫 | 持続する骨痛・腫脹、夜間痛 | 持てない。X線 |
| 横紋筋肉腫 | 部位不定の腫瘤、眼球突出、鼻閉・鼻出血 | 持てない |
治療ワークフロー(当院でやること)
当院の仕事は「疑う・測る・つなぐ」の3つ。治療は始めない。
| 順 | やること |
|---|---|
| 1 | バイタル。発熱・頻脈・呼吸状態。気道圧迫の兆候(起座呼吸・顔面のむくみ・頸静脈怒張)があれば仰臥位にしない |
| 2 | 全身を見る:眼瞼結膜(蒼白)、皮膚(点状出血・紫斑)、口腔(歯肉腫脹・出血)、リンパ節(頸部・腋窩・鼠径)、腹部(肝脾腫・腫瘤)、四肢(骨の圧痛)、眼(白色瞳孔) |
| 3 | 血算+末梢血液像(必ずセットで)。顕微鏡で詳しく調べると、血液中に白血病細胞が存在していることがある。当直帯は鏡検が出ないので、血算を出して血液像は翌朝にオーダーしておき、その間は帰さないという形にする |
| 4 | LDH・尿酸・生化(K・P・Ca・Cr)・凝固 |
| 5 | 化学療法中の子が発熱していれば、血液培養2セットを採って広域抗菌薬をただちに。解熱・診断確定を待たない。当直帯は好中球数が出ないので、好中球減少の確認を待たない(節「発熱性好中球減少症(FN)」) |
| 6 | 胸部X線(前縦隔腫瘤を探す)。腹部エコー(肝脾腫・腫瘤) |
| 7 | 芽球があれば、その場で小児血液のある施設に電話。帰さない。当直帯は芽球を見られないので、代わりに「3系統の異常+5つの鍵」で同じ判断をする |
| 8 | 輸血を当院で行うかを決める(貧血・血小板減少の程度と搬送距離) |
| 9 | やってはいけないこと:ステロイドを先に投与しない(白血病細胞を部分的に殺して診断を困難にする)。気道圧迫がある子に鎮静をかけない。腹部腫瘤を繰り返し強く触らない |
ステロイドを先に出さない
原因不明の発熱・関節痛・リンパ節腫大に対して、診断がつく前にステロイドを出さない。白血病の診断は骨髄中の白血病細胞の量と性質で決定される(ALLは骨髄でリンパ芽球が全有核細胞数の25%以上)ため、先行するステロイドは診断を難しくする。紛らわしいときほど、血算と末梢血液像を先に出して、専門施設に相談する。
検査
| 検査 | 何がわかるか | 読み方 |
|---|---|---|
| 血算(3系統) | 貧血・血小板減少・白血球異常 | 赤血球数や血小板数は減少していることが多いが、白血球数は増加している場合から減少している場合までさまざま |
| 末梢血液像(必須) | 芽球 | これを見ないと始まらない。ただし当直帯の当院では出ない(2026-09-14 確認)。夜は血算の数字で代替し、鏡検は翌朝に回す。その間、患者を院内に留める |
| LDH | 細胞崩壊 | 高値は血液悪性腫瘍・腫瘍崩壊のサイン |
| 尿酸 | 腫瘍量・腫瘍崩壊 | 高値 |
| K・P・Ca・Cr | 腫瘍崩壊症候群 | 高K・高P・低Ca・Cr上昇 |
| 凝固(PT/APTT/フィブリノゲン/D-dimer) | DIC(特にAPL) | 出血傾向+凝固異常は緊急 |
| 胸部X線 | 前縦隔腫瘤 | T細胞性ALL・リンパ芽球性リンパ腫。気道圧迫は緊急 |
| 腹部エコー | 肝脾腫・腹部腫瘤・腎腫瘤 | 当院で撮れる(腹部エコー) |
| 骨髄検査 | 診断と病型分類 | 腸骨に針を刺して骨髄液を吸引。小児では全身麻酔あるいは鎮静薬を使って行う=当院では持てない |
| 染色体・遺伝子検査 | 病型・治療方針・予後 | 専門施設 |
所見の取り方
| 所見 | 取り方 | 所見があったら次にどうする |
|---|---|---|
| 蒼白 | 眼瞼結膜・手掌・爪床。照明の下で | 血算 |
| 点状出血 | 下肢・体幹・口腔粘膜。ガラス圧迫で消えない | 血算・凝固 |
| 肝脾腫 | 仰臥位・膝を立てて、右季肋部から吸気に合わせて。脾は左季肋部から | 触れる=血算 |
| リンパ節 | 大きさ・硬さ・可動性・圧痛・左右差。鎖骨上窩は必ず触る | 鎖骨上窩の腫大は原則すべて異常(リンパ節腫脹) |
| 骨の圧痛 | 長管骨の骨幹を押す。胸骨も | 痛がる=血算・X線 |
| 前縦隔症候群 | 仰臥位で息が苦しくなるかを必ず聞く。顔面浮腫・頸静脈怒張 | 仰臥位・鎮静禁止。119 |
| 白色瞳孔 | 暗い部屋でペンライト。家族のスマホ写真のフラッシュが手がかりになる | 眼科へ |
| 腹部腫瘤 | 一度だけ、そっと触る。境界・可動性 | エコー。繰り返し触らない |
問診チェック
- 発熱の期間と形(何日、何回、最高体温、解熱剤の効き)
- 体重の変化(母子手帳・学校の記録)
- 寝汗(着替えが要るほどか)
- 元気さの変化(遊ばなくなった、抱っこをせがむ、すぐ休む)
- 骨・関節の痛み(夜間か、片側か、歩けるか)
- 出血(鼻血の回数と止まるまでの時間、歯みがきでの出血、あざ)
- 感染の繰り返し(抗菌薬をどれだけ使ったか)
- 頭痛・嘔吐(朝に強いか)、複視、ふらつき
- 家族が「いつもと違う」と言っているか(この一言を軽く扱わない)
発熱性好中球減少症(FN)— ガイドラインの定義と初期治療
出典は日本臨床腫瘍学会「発熱性好中球減少症(FN)診療ガイドライン」の初版(2012年・南江堂)の前付けアルゴリズム図。
注意が2つある。①現行は改訂第3版(2024年2月)で、本シートは第3版の本文を確認していない(書籍のため)。②このガイドラインは成人の腫瘍内科を主な対象にしており、MASCCスコアも成人で検証されたもの。小児にそのまま当てはめられるかは別に確認が要る。
定義(逐語)
- 発熱:腋窩温≧37.5℃
- 好中球減少:<500/μL、または<1,000/μL で 48 時間以内に<500/μL になると予測される
初期評価(逐語): 「感染巣がないか症状の問診、診察/血算、白血球分画、血清生化学検査/静脈血培養(2セット)/必要に応じて胸部X線写真、検尿」
高リスク側の初期治療(逐語): 「抗緑膿菌作用を持つβラクタム薬(単剤)を経静脈投与」「施設での臨床分離菌の感受性を考慮して薬剤を選択する」
- 薬剤の例(逐語): 「セフェピム、メロペネム、タゾバクタム・ピペラシリン、セフタジジムなど」
- 抗MRSA薬を併用する場面(逐語): 「血行動態が不安定、蜂窩織炎を合併、MRSA など薬剤耐性グラム陽性菌感染症が疑われる場合は抗 MRSA 薬を併用」
「当院の初期抗菌薬」が空欄なのは、書き忘れではない。 ガイドライン自身が「施設での臨床分離菌の感受性を考慮して薬剤を選択する」としており、薬剤名は施設ごとに決めるものとして設計されている。だからここは先生が埋めるしかない。上の4剤が候補の範囲。
当直帯の当院での意味(ここが本題)
当院は当直帯に好中球数(自動分画)を出せない(2026-09-14 確認)。つまり上の定義の後半「好中球<500/μL」を夜に判定できない。
だから当直帯の実務はこうなる。
| 手元にある材料 | 夜にできること |
|---|---|
| 化学療法中・免疫抑制中という病歴 | これが最強の情報。本人・家族・お薬手帳・主治医の指示書から取る |
| 腋窩温≧37.5℃ | 測れる。定義の前半は満たせる |
| 白血球の総数 | 出る。明らかに低ければ好中球減少として扱ってよい |
| 好中球の絶対数 | 出ない。総数が保たれていても分画が偏っていれば好中球減少はありうるので、総数だけで否定しない |
| 血液培養2セット | 採れる。ただし夜間に検査室へ提出できないので、抗菌薬の前に採って保管し翌朝提出(血液培養) |
| 広域抗菌薬 | 投与そのものは当院でできる。何を使うかが未定(上記) |
| 入院 | 当直帯でも受けられる |
結論として、当直帯は「FNかどうかを確かめてから動く」ことができない。「化学療法中の子が発熱して来た」という事実だけで動くことになる。その先の分岐(当院で広域抗菌薬を始めるか、主治医のいる施設へ送るか)は下の医師確認事項。
送る/持つ(当院=二次救急・骨髄穿刺なし)
| 状態 | 当院の扱い |
|---|---|
| 末梢血に芽球 | 持てない。その日のうちに搬送 |
| 2系統以上の血球減少 | 持てない |
| 発熱性好中球減少症 | 抗菌薬は当院で開始。その後搬送 |
| 前縦隔腫瘤・気道圧迫 | 持てない。座位・酸素・無鎮静で搬送 |
| 腫瘍崩壊症候群 | 輸液を開始して搬送 |
| 腹部腫瘤 | エコーまで当院。持てない |
| 白色瞳孔 | 眼科へ紹介 |
| 単独の軽度貧血・血小板減少で他に所見なし | 当院で短期フォロー可。ただし末梢血液像を確認してから。当直帯は鏡検が出ないので、夜のうちに「経過観察でよい」と決めない——翌日の血液像まで判断を保留する |
エスカレーション(施設オーバーレイで上書き)
- 要確認:小児血液・腫瘍科のある紹介先(夜間・休日の受け入れ経路)。施設名・番号は保留中
- 確定(2026-09-14):夜間に末梢血液像(鏡検)も自動分画も出ない。つまり当直帯に好中球絶対数(ANC)が出せない。当直帯の関門は鏡検ではなく、血算の3系統+5つの鍵+帰さない判断
- 要確認:夜間のLDH・尿酸・電解質・凝固の測定可否
- 要確認:当院での輸血(赤血球・血小板)の手配時間
- 要確認:小児の広域抗菌薬の院内採用。ガイドラインが挙げる候補はセフェピム/メロペネム/タゾバクタム・ピペラシリン/セフタジジム(抗緑膿菌作用を持つβラクタム薬の単剤)。このうち院内にあるのはどれか、当直帯に出せるか
- 要確認:抗MRSA薬の院内採用(血行動態が不安定・蜂窩織炎合併・耐性グラム陽性菌が疑われる場合に併用する)
- 要確認:眼科(白色瞳孔)・脳神経外科(脳腫瘍)の紹介先
家族に渡す一文
「今日の検査では、ふつうのかぜでは説明がつかない所見があります。血液の病気を含めて、詳しく調べられる病院で確かめる必要があります。今すぐ悪いものと決まったわけではありませんが、この種類の病気は、進みが速いことがあるので、確かめるのを遅らせないのが原則です。今日のうちに◯◯病院に行っていただきます。血液の病気の場合、骨髄(骨の中で血液をつくる場所)を調べる検査が必要になりますが、子どもでは眠るお薬を使って行うので、起きたまま痛みに耐えるようなことはありません。」
医師確認事項(要・岡本判断)
- 決着(2026-09-14):夜間・休日に末梢血液像は出ない。よってこのシートの核は当直帯では「血算の3系統+5つの鍵で、帰さない判断をする」に置き換えた。残る判断は2つ——(1) 自動分析装置の芽球フラグを当直帯に見られるか、(2) 3系統のうち何がどれだけ異常なら、その場で搬送し、何なら入院させて翌朝の血液像を待つかの線引き。この2つ目は数値基準の話なので、先生に決めていただきたい。
- 要確認:発熱性好中球減少症に対する当院の初期抗菌薬。ガイドライン自身が「施設での臨床分離菌の感受性を考慮して薬剤を選択する」としており、薬剤名は施設ごとに決める設計。候補の範囲(セフェピム/メロペネム/タゾバクタム・ピペラシリン/セフタジジム)は上の節に書き出した。用量は本シートに書いていない——第3版(2024年)の本文を確認できていないため。
- 要確認:FN診療ガイドライン改訂第3版(2024年2月)の本文との照合。本シートは初版(2012年)の前付けアルゴリズム図に基づいており、12年ぶんの改訂を反映していない。またこのガイドラインは成人の腫瘍内科が主な対象で、小児への適用可否は別に確認が要る。
- 要決定(2026-09-14 に判明した宿題):当直帯に好中球数が出せないことが分かった。つまり化学療法中の子が夜に発熱して来ても、好中球減少かどうかを判定できない。閾値を決める以前に、「判定できないときどうするか」を先に決める必要がある。実務的な選択肢は2つ——(a) 好中球減少とみなして広域抗菌薬を開始する、(b) 主治医のいる施設へそのまま送る。白血球総数が明らかに低ければ (a) に倒せるが、総数が保たれていても分画が偏っていれば好中球減少はありうるので、総数だけで安心はできない。ここは先生の判断をいただきたい。
- 要確認:当院での輸血手配の所要時間。搬送と院内輸血のどちらが早いかで判断が変わる。
- 要確認:本シートの「かぜと分ける5つの鍵」「2つ以上そろったら血算」は、がん情報サービスが挙げる代表的症状(貧血・出血・感染・肝脾腫・発熱・骨痛)を当直で使える形に組み直したもので、この組み合わせ方自体に一次資料の裏付けがあるわけではない。臨床判断のための整理として使い、診断基準として扱わないこと。
- 要確認:「ステロイドを先に出さない」は本シートの実務上の注意として書いたもので、引用元のガイドライン文言ではない。ALLの診断が骨髄中のリンパ芽球25%以上で決まることは出典に基づく。
- 要確認:前縦隔腫瘤での仰臥位・鎮静の回避も同様に、本シートでは一次資料を確認していない。載せ続けるなら別の一次資料が要る。
出典
- 国立がん研究センター がん情報サービス.白血病〈小児〉(更新・確認日:2022年06月06日).https://ganjoho.jp/public/cancer/leukemia/print.html (2026-09-12閲覧)。「白血病は小児がんの中で最も多い病気です」「発症する割合は急性リンパ性白血病(ALL)が約70%、急性骨髄性白血病(AML)が約25%です」「急性リンパ性白血病・急性骨髄性白血病は、病気の進行が速いために急に症状が出る場合があります。このような場合は、早期に診断して速やかに治療を開始することが重要です」「代表的な症状は、貧血、出血、感染、肝臓や脾臓の腫れ、発熱、骨痛などです。症状が起こる原因は大きく2つに分類されます。骨髄で白血病細胞が増加することによって造血機能が低下し、正常な血液細胞がつくれないことで起こる場合と、白血病細胞が臓器に増殖することで起こる場合です。中枢神経系(脳と脊髄)で白血病細胞が増殖することもあり、頭痛や吐き気・嘔吐などの症状に注意が必要です」「血液中の細胞の増減を調べます。赤血球数や血小板数は減少していることが多いですが、白血球数は増加している場合から減少している場合までさまざまです。顕微鏡で詳しく調べると、血液中に白血病細胞が存在していることがあります」「骨髄穿刺は診断と病型分類のために重要な検査で、治療効果の判定にも用います。腸骨(腰の骨)に針を刺し、骨の中にある骨髄液を注射器で吸引して採取します。骨髄穿刺や骨髄生検は痛みを伴うため、小児では全身麻酔あるいは鎮静薬を使って行います」「骨髄でリンパ芽球が全有核細胞数の25%以上まで増加し、顕微鏡で見た形態および特殊染色で急性リンパ性白血病由来のものと判定された場合に診断されます」。同ページは「小児白血病・リンパ腫診療ガイドライン 2016年版 第3版」(日本小児血液・がん学会編、金原出版)等をもとに作成されている。
- 国立がん研究センター がん情報サービス.白血病〈小児〉 患者数(がん統計)(更新・確認日:2021年07月01日).https://ganjoho.jp/public/cancer/leukemia/patients.html (2026-09-12閲覧)。「急性リンパ性白血病は、日本では年間約500人が新たに診断されています」「急性骨髄性白血病は、日本では年間約180人が新たに診断されています」。
- 国立がん研究センター がん情報サービス.リンパ腫〈小児〉について(更新・確認日:2022年08月17日).https://ganjoho.jp/public/cancer/malignant_lymphoma/about.html (2026-09-12閲覧)。「発症年齢のピークは明確ではありませんが、10歳前後からの発症が多く、乳幼児での発症は頻度が低くなります」「大きくはホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫の2つに分けられますが、小児では多くの場合、非ホジキンリンパ腫です」「痛みのないリンパ節の腫れ、原因が明らかでない発熱や寝汗・体重減少などはリンパ腫を疑う症状の1つです。しこりなど腫瘤により気道や血管、脊髄などの臓器が圧迫されると、呼吸困難(気道閉塞)、血流障害、麻痺などの症状があらわれ、緊急で治療が必要となる場合もあります」。
- 日本臨床腫瘍学会(編).発熱性好中球減少症(FN)診療ガイドライン.南江堂、2012年(初版).Minds掲載の前付け・目次PDF https://minds.jcqhc.or.jp/common/summary/pdf/c00174_maeduke_mokuji.pdf (2026-09-14閲覧・pdftotextで本文照合済)。「FN 患者に対する初期治療(経験的治療)」のアルゴリズム図から、発熱の定義「腋窩温≧37.5℃」、好中球減少の定義「<500/μL、または<1,000/μL で 48 時間以内に<500/μL になると予測される」、初期評価「感染巣がないか症状の問診、診察/血算、白血球分画、血清生化学検査/静脈血培養(2セット)/必要に応じて胸部X線写真、検尿」、高リスク側の初期治療「抗緑膿菌作用を持つβラクタム薬(単剤)を経静脈投与」「施設での臨床分離菌の感受性を考慮して薬剤を選択する」、薬剤例「セフェピム、メロペネム、タゾバクタム・ピペラシリン、セフタジジムなど」、抗MRSA薬の併用「血行動態が不安定、蜂窩織炎を合併、MRSA など薬剤耐性グラム陽性菌感染症が疑われる場合は抗 MRSA 薬を併用」。本シートが参照したのは初版(2012年)の前付け図のみ。現行は改訂第3版(2024年2月)で、本文は未確認。また本ガイドラインは成人の腫瘍内科を主な対象としており、MASCCスコアを含め小児への適用可否は別途確認が要る。