不明熱(長引く発熱)

不明熱(長引く発熱)

発熱・感染症β版・逐条レビュー継続中

2026-09-13更新
β版用量は適用前に一次資料と院内採用を確認。このβ版について

施設プロファイル: 二次救急/小児感染症・小児リウマチ・小児血液の専門医なし

30秒要約

  • 当直で診断名をつける病気ではない。当直の仕事は①今夜死ぬ病気を外す ②川崎病を外す ③次の検査と次の受診日を決めるの3つ。
  • 不明熱の定義(成人領域)は「1)38.3℃以上の発熱が3週間以上持続、2)3日間の入院精査あるいは3回の外来診療で原因不明」。小児で何日を閾値にするかは施設で決める必要がある(下の医師確認事項)。
  • 枝分かれの順番を守るまず3大不明熱疾患(感染症、悪性腫瘍、膠原病)を確認する。これらを否定できた場合、見逃されやすいその他の疾患、広義の自己炎症症候群、狭義の自己炎症症候群と鑑別を行う
  • 小児で最初に外すのは川崎病5日以上の発熱があれば、他の主要症状を毎回取り直す(川崎病)。
  • 「熱の形」より「熱以外の所見」。熱型では診断できない。体重・成長曲線・皮疹・関節・リンパ節・肝脾腫・眼を毎回見る。

レッドフラグ → 次の一手

所見があったときにどれだけ急ぐかと、家族に何を伝えるかの対応表。3列目の文言は家族説明ページに同じ言葉で載っているので、画面を見せながら渡せる。

緊急度所見その場で次にやること時間の勝負
119発熱+意識障害・けいれん・項部硬直髄膜炎・脳炎(細菌性髄膜炎即時
119発熱+頻脈・CRT延長・乏尿・末梢冷感敗血症小児敗血症即時
119発熱+急速に拡大する紫斑髄膜炎菌血症・DIC(紫斑・出血斑即時
119発熱+好中球減少(化学療法中・原因不明)発熱性好中球減少症。血培→広域抗菌薬即時
119起座呼吸・顔面と頸部の腫れ(前縦隔腫瘤)仰臥位にしない・鎮静をかけない白血病を疑うとき即時
緊急5日以上の発熱+眼球結膜充血・口唇紅潮・発疹・手足の腫脹・頸部リンパ節腫脹・BCG痕の発赤川崎病当院で治療開始川崎病当日
緊急末梢血に芽球/2系統以上の血球減少/肝脾腫+リンパ節腫大血液悪性腫瘍持てない白血病を疑うとき当日
緊急生後3か月未満の発熱別の病気として扱う(生後3か月未満の発熱即時
緊急弛張熱+発熱時だけ出るサーモンピンク疹+関節痛全身型若年性特発性関節炎血小板は上がる(白血病と逆)当日
緊急発熱+心雑音の新出/既知の心疾患感染性心内膜炎頻回の血液培養と早期の心エコー検査が重要。最後まで疑う必要がある血液培養は当直帯にも採れる。心エコーは無いので、疑ったら小児循環器へ相談当日
緊急体重減少・寝汗・持続する倦怠感悪性腫瘍・結核・IBD(白血病を疑うとき炎症性腸疾患当日
緊急結核の曝露歴がある肺内結核、肺外結核、粟粒結核の全てにおいて念頭に置く。届出が要る当日
当日免疫抑制薬・ステロイド・抗がん薬の使用中真菌感染症、薬剤耐性菌や弱毒菌による感染症も鑑別する当日
当日発熱以外に所見がなく、全身状態良好、体重も伸びも保たれている次の検査と次の受診日を決めて帰す。日誌をつけてもらう数日

順番を守る(枝分かれの図)

不明熱は枝分かれするように、①感染症 → ②悪性腫瘍 → ③膠原病 → ④その他 → ⑤広義の自己炎症症候群 → ⑥狭義の自己炎症症候群と、順番に診断していく。

当直では①〜③まで(+小児では川崎病)を意識すれば足りる。④以降は専門施設の仕事。

①感染症(小児では圧倒的に多い)

見逃しやすいもの拾い方
深部膿瘍(腹腔内膿瘍、後腹膜膿瘍)血液検査や画像検査の進歩によって感染症は診断しやすくなってきたが、膿瘍、特に深部膿瘍に注意が必要。エコー・CT
診断がつきにくい骨髄炎さらに、診断がつきにくい骨髄炎、前立腺炎、歯槽膿漏なども忘れてはいけない。骨の圧痛・跛行(歩かない
結核本邦に多い結核は、肺内結核、肺外結核、粟粒結核の全てにおいて、念頭に置くべき疾患。曝露歴・IGRA
感染性心内膜炎頻回の血液培養と早期の心エコー検査が重要。最後まで疑う必要がある
ウイルス感染症(EBV、CMVなど)ウイルス抗原や抗体価が上昇している場合以外は診断確定が難しく、不明熱が自然軽快する場合に疑われるが、どのウイルスの罹患であったか不明であることが多い伝染性単核症
尿路感染症乳幼児では症状が出ない。尿を出す尿路感染症
副鼻腔炎・中耳炎・乳様突起炎見ないと分からない(副鼻腔炎急性中耳炎
猫ひっかき病動物との接触歴(リンパ節腫脹
マイコプラズマ流行期(マイコプラズマ
易感染性患者の真菌・弱毒菌抗がん薬やステロイド剤使用中の易感染性患者では、真菌感染症、薬剤耐性菌や弱毒菌による感染症も鑑別したい

②悪性腫瘍

  • 白血病・リンパ腫痛みのないリンパ節の腫れ、原因が明らかでない発熱や寝汗・体重減少白血病を疑うとき
  • 神経芽腫:腹部腫瘤・骨痛・眼窩周囲の紫斑
  • 拾い方血算+末梢血液像・LDH・尿酸。ここを出さずに「様子を見ましょう」はしない

③膠原病・自己炎症

病態小児での手がかり
全身型若年性特発性関節炎1日1回スパイクする弛張熱、熱があるときだけ出るサーモンピンク疹、関節痛、肝脾腫、リンパ節腫大血小板・フェリチンが上がる
川崎病川崎病不全型は主要症状が揃わない
全身性エリテマトーデス頬部紅斑・光線過敏・口腔潰瘍・脱毛・腎障害。抗核抗体
IgA血管炎紫斑・関節痛・腹痛(紫斑・出血斑
炎症性腸疾患消化器症状を主訴とせず、体重増加不良・成長障害・不明熱・鉄欠乏性貧血などの消化管外症状が先行することがある炎症性腸疾患
周期性発熱症候群(PFAPA等)きれいに周期的で、間欠期は完全に元気。成長も正常

治療ワークフロー(当院でやること)

当直で抗菌薬を「とりあえず」出さない。 出すと培養が採れなくなり、診断が数週間遅れる。出すなら、その前に培養を採る。

やること
1バイタル+全身状態。敗血症・髄膜炎を外す
2発熱の日数を確定する(家族の記憶ではなく、記録で)
3服を脱がせて全身を見る:皮疹(熱があるときだけ出る発疹を聞く)、紫斑、BCG痕、口腔、眼球結膜、爪
4リンパ節を全領域触る鎖骨上窩を飛ばさない)、肝脾腫関節(腫脹・可動域)、骨の圧痛
5成長曲線を描く。体重が落ちているか、伸びが止まっているか
6血算+末梢血液像、CRP、赤沈、生化(AST/ALT/LDH/Cr/アルブミン)、フェリチン、尿酸、尿検査
7血液培養(できれば2セット)抗菌薬の前に
8尿培養、咽頭培養、便培養(症状に応じて)
9胸部X線(肺門リンパ節・前縦隔腫瘤・結核
10腹部エコー(肝脾腫・深部膿瘍・腹部腫瘤・腸管壁肥厚
11心エコー(心雑音・川崎病の疑い・持続菌血症)
12状況に応じて:EBV/CMV抗体、抗核抗体、IGRA、sIL-2R
13次にやることと、次に来る日を紙に書いて渡す「様子を見て」で終わらせない

帰してよい条件

  • 全身状態がよく、水分が取れ、活動性が保たれている
  • 敗血症・髄膜炎・川崎病・血液悪性腫瘍を、今日の所見と検査で外せている
  • 体重が落ちていない/成長曲線から外れていない
  • 再受診の日が決まっていて、家族がそれを書いたものを持っている
  • 発熱日誌(時刻・体温・症状・食事・皮疹の写真)を始めてもらっている

このどれかが崩れたら帰さない。

所見の取り方

所見取り方所見があったら次にどうする
熱型体温を時刻つきで記録してもらう。1日1回スパイクする弛張熱は全身型JIA熱型だけで決めない
熱があるときだけ出る皮疹家族に解熱時と発熱時の写真を撮ってもらうサーモンピンク疹=全身型JIA
BCG痕発赤・痂皮川崎病川崎病
眼球結膜充血(眼脂を伴わない川崎病
口唇・口腔紅潮・いちご舌・アフタ川崎病・IBD
リンパ節全領域。鎖骨上窩必須リンパ節腫脹
肝脾腫季肋部血液疾患・EBV・全身型JIA
関節腫脹・熱感・可動域制限。歩かせて見るJIA・化膿性関節炎
骨の圧痛長管骨・脊椎骨髄炎・白血病・神経芽腫
心雑音の新出毎回聴く感染性心内膜炎
体重・身長成長曲線に打つ落ちていれば器質的疾患
齲歯・歯肉の腫れ歯槽膿漏も忘れない

検査

検査何がわかるか読み方
血算+末梢血液像芽球・血球減少・異型リンパ球最初に出す。これを出さない選択肢はない
CRP・赤沈炎症の持続CRPが陰性化しても赤沈が高いことがある
LDH・尿酸悪性腫瘍高値
フェリチン全身型JIA・血球貪食症候群著明高値は要注意
アルブミン慢性炎症・蛋白漏出低下
血液培養(2セット)菌血症・心内膜炎抗菌薬の前に。心内膜炎を疑うなら頻回に
尿検査・尿培養尿路感染症乳幼児では必ず
胸部X線結核・肺門リンパ節・前縦隔腫瘤必ず
腹部エコー深部膿瘍・肝脾腫・腹部腫瘤当院で撮れる(腹部エコー
心エコー感染性心内膜炎・冠動脈病変早期に
IGRA結核曝露歴があれば
EBV・CMV抗体ウイルス感染抗体価が上がっていないと確定は難しい
抗核抗体膠原病陽性でも直ちに診断にならない
sIL-2Rリンパ増殖性疾患補助的
造影CT・MRI・骨シンチ深部膿瘍・骨髄炎・腫瘍当院の夜間実施は要確認

問診チェック

  • 発熱の記録(いつから、何度、1日の変動、解熱剤の効き方と持続)
  • 間欠期に完全に元気か(周期性発熱症候群の鍵)
  • 体重と身長の推移(母子手帳・学校の記録を持参してもらう)
  • 寝汗(着替えが要るほどか)
  • 皮疹の有無と、出るタイミング熱と連動するか
  • 関節痛・骨痛・跛行・朝のこわばり
  • 腹痛・下痢・血便炎症性腸疾患
  • 動物との接触(猫・爬虫類・鳥)、虫刺され渡航歴
  • 結核の曝露(同居家族・高齢者・施設)
  • 生ものの摂取、井戸水
  • 薬剤熱。抗菌薬・抗けいれん薬を含む)
  • 既往:先天性心疾患、免疫不全、悪性腫瘍、脾摘
  • 予防接種歴
  • 家族歴:周期性発熱、自己免疫疾患、悪性腫瘍、近親婚

送る/持つ(当院=二次救急)

状態当院の扱い
敗血症・髄膜炎・発熱性好中球減少症持てない(初期治療は当院で開始)
血液悪性腫瘍を疑う所見持てない白血病を疑うとき
川崎病当院で治療開始川崎病
全身型JIA・SLEを疑う持てない(小児リウマチ)
感染性心内膜炎を疑う持てない
結核を疑う持てない。届出が要る
深部膿瘍ドレナージが要る=持てない
IBDを疑う持てない炎症性腸疾患
全身状態良好で、上記を外せている当院で外来フォロー可日を決めて再診

エスカレーション(施設オーバーレイで上書き)

  • 要確認:小児リウマチ・小児感染症・小児血液のそれぞれの紹介先
  • 要確認:夜間・休日の血液培養(2セット)の運用と、結果の連絡経路
  • 確定(2026-09-14・当直帯)心エコーは当直帯に撮れない。翌日以降に誰が撮れるかは要確認
  • 確定(2026-09-14・当直帯)造影CT・MRIは当直帯に撮れない。日勤帯の実施可否と骨シンチの所要日数は要確認
  • 補足:不明熱は定義上「時間をかけて詰める」病気なので、夜に画像が無いことはこのシートの主目的をほとんど損なわない。当直帯の仕事は敗血症・川崎病・悪性腫瘍という「今夜動く理由」があるかを外すことに絞る
  • 要確認:IGRA・sIL-2R・フェリチンの院内実施可否
  • 要確認:不明熱の入院精査を当院で行うか。行うなら「何日の発熱で、どの検査まで進んだら入院か」の院内基準

家族に渡す一文

「熱が長く続いていますが、今日の診察と検査では、すぐに命に関わる病気は見つかりませんでした。ただし、原因がまだ分かっていないという状態です。長引く熱の原因は、①どこかの感染症 ②血液の病気 ③自分の免疫が起こす炎症の順に調べていきます。熱の出方だけでは原因は分かりませんので、次のことをお願いします。①体温を時刻と一緒に記録する ②熱が出ているときの体の写真を撮る(発疹は熱があるときだけ出ることがあります)③体重を測る。そして◯月◯日に必ず来てください。それまでの間、ぐったりする、息が苦しい、けいれん、意識がおかしい、紫色のあざが広がる、水分が取れない、このどれかがあれば時間を待たずに来てください。熱がある間、自己判断で解熱剤以外の薬(抗菌薬など)を使わないでください。診断が難しくなります。」

医師確認事項(要・岡本判断)

  • 要確認:小児の不明熱の定義を当院でどう決めるか。本シートが引用した定義(38.3℃以上の発熱が3週間以上持続、3日間の入院精査あるいは3回の外来診療で原因不明)は日本内科学会の生涯教育講演会の記事であり、成人領域のもの。小児では「8日以上」「2週間以上」など短い閾値が使われることが多いが、本シートでは日本語の小児の一次資料を確認できていない。当直で「何日から不明熱として動くか」を決めておかないと運用できない。
  • 要確認:「枝分かれの順番(感染症→悪性腫瘍→膠原病→その他→自己炎症症候群)」も同じ成人向けの記事に基づく。小児では感染症の比率がさらに高く、川崎病が独立した位置を占めるため、本シートでは川崎病を先頭に置いた。この組み替えは本シートの判断
  • 要確認:全身型若年性特発性関節炎の記載(弛張熱・サーモンピンク疹・血小板/フェリチン上昇)は、本シートで一次資料を確認していない。載せ続けるなら「若年性特発性関節炎初期診療の手引き」等の一次資料が要る。
  • 要確認:PFAPAなど周期性発熱症候群についても一次資料を確認していない。鑑別として名前を挙げるにとどめている。
  • 要確認:血液培養を2セット採るか。小児では採血量の制約がある。当院の運用を決める必要がある。
  • 要確認:「抗菌薬をとりあえず出さない」は本シートの実務上の注意であり、引用元の記載ではない。
  • 要確認:不明熱の外来フォローを当院で担うか。担うなら、再診間隔と「何回目でどこに紹介するか」を決めておきたい。

出典

  • 井田弘明(久留米大学呼吸器・神経・膠原病内科).内科医が診る不明熱の鑑別診断.平成27年度日本内科学会生涯教育講演会 Aセッション.日本内科学会雑誌 105(3): 457–, 2016.https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/105/3/105_457/_pdf (2026-09-13閲覧)。「不明熱は、1)38.3℃以上の発熱が3週間以上持続、2)3日間の入院精査あるいは3回の外来診療で原因不明と定義される」「臨床検査や画像診断の進歩により、不明熱における感染症や悪性腫瘍の比率が減少、反対に非感染性炎症疾患と診断未確定疾患が増加している」「不明熱症例に出会った場合、まず、3大不明熱疾患(感染症、悪性腫瘍、膠原病)を確認する。これらを否定できた場合、見逃されやすいその他の疾患、広義の自己炎症症候群、そして狭義の自己炎症症候群と鑑別を行い、診断する」「血液検査や画像検査の進歩によって感染症は診断しやすくなってきたが、膿瘍、特に深部膿瘍(腹腔内膿瘍、後腹膜膿瘍)に注意が必要である。さらに、診断がつきにくい骨髄炎、前立腺炎、歯槽膿漏なども忘れてはいけない」「本邦に多い結核は、肺内結核、肺外結核、粟粒結核の全てにおいて、念頭に置くべき疾患である」「古くから不明熱として診断が難しい感染性心内膜炎は、頻回の血液培養と早期の心エコー検査が重要である。最後まで疑う必要がある」「ウイルス感染症(EBウイルス、サイトメガロウイルスなど)は、ウイルス抗原や抗体価が上昇している場合以外は診断確定が難しく、不明熱が自然軽快する場合に疑われるが、どのウイルスの罹患であったか不明であることが多い」「高齢者、抗がん薬やステロイド剤使用中の易感染性患者では、真菌感染症、薬剤耐性菌や弱毒菌による感染症も鑑別したい」。本文献は成人領域を対象としたものである。
  • 新井勝大、ほか(日本小児栄養消化器肝臓学会・日本小児IBD研究会).小児クローン病治療指針[2019]https://www.jspghan.org/guide/doc/shouni_clone_chiryou_gyude_2019_02.pdf (2026-09-13閲覧)。「小児では消化器症状を主訴とせず、体重増加不良・成長障害・不明熱・鉄欠乏性貧血などの消化管外症状が先行することがある」。
  • 国立がん研究センター がん情報サービス.リンパ腫〈小児〉について(更新・確認日:2022年08月17日).https://ganjoho.jp/public/cancer/malignant_lymphoma/about.html (2026-09-13閲覧)。「痛みのないリンパ節の腫れ、原因が明らかでない発熱や寝汗・体重減少などはリンパ腫を疑う症状の1つです」。

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