電撃傷(感電・落雷)

電撃傷(感電・落雷)

救急・外傷・中毒β版・逐条レビュー継続中

2026-09-13更新
β版用量は適用前に一次資料と院内採用を確認。このβ版について

施設プロファイル: 二次救急/外科的処置・集中治療を持たない
熱傷全般は熱傷

30秒要約

  • 見える傷で重症度を判断しない電撃傷では、体内を通過する電流により皮膚だけでなく様々な臓器、組織の損傷を起こしうる
  • 輸液は熱傷の計算より多く要る電撃傷患者は皮膚の熱傷受傷面積から見込まれる量よりも多い輸液治療を必要とする
  • 理由は筋肉電撃による筋障害からミオグロビン血症や腎障害を来しうるため、通常の熱傷患者よりも多い量での輸液が必要
  • 原則は入院一般的には電撃傷の場合は臓器障害などへの対応のために、入院して輸液治療と継続的なモニタリングを行う
  • 重症度分類が存在しない受傷転機、受傷部位や電流の通過経路、接触時間などはケースごとに異なり症例ごとの比較は難しいため重症度分類も定まったものはない。だから軽く見えても帰さない

レッドフラグ → 次の一手

所見があったときにどれだけ急ぐかと、家族に何を伝えるかの対応表。3列目の文言は家族説明ページに同じ言葉で載っているので、画面を見せながら渡せる。

緊急度所見その場で次にやること時間の勝負
119心停止・意識障害蘇生。落雷・高電圧では心停止が起こりうる即時
119不整脈・心電図異常モニタ継続。持てない心電図即時
119赤色尿(ミオグロビン尿)横紋筋融解大量輸液持てない即時
119高電圧(送電線・変圧器)・落雷体表所見が軽くても臓器障害を想定持てない即時
119電流の入口と出口が体幹をまたぐ(手→対側の手/手→足)心臓・脊髄を電流が通過している即時
119口唇・口腔の電撃傷(乳幼児がコードを噛んだ)数日後に口唇動脈からの大出血を起こしうる。持てない即時〜数日
緊急四肢の腫脹・緊満・強い痛み・知覚異常コンパートメント症候群。減張切開が要る=持てない骨折即時
緊急転落・後方への飛ばされを伴う外傷として評価する(頸椎・頭部・骨折)即時
緊急尿量が出ない/目標に届かない輸液速度の調整。持てない即時
当日家庭用電源(100 V)で瞬間的、意識清明、心電図正常、尿正常観察の要否は施設判断(下の医師確認事項)当日

何が起きているか

電撃傷は、感電、落雷、電気スパーク、弧光(アーク)などの電気的障害による損傷である。電撃傷は電流そのものによる障害とジュール熱発生による損傷、スパークによる損傷がある。

3つの機序が重なる。皮膚の熱傷(ジュール熱・アーク)だけを見ると、電流そのものによる深部の障害を見落とします。

輸液(ガイドラインの記載をそのまま置く)

電撃傷患者は皮膚の熱傷受傷面積から見込まれる量よりも多い輸液治療を必要とする。

電撃による筋障害からミオグロビン血症や腎障害を来しうるため、通常の熱傷患者よりも多い量での輸液が必要であったと報告されており、ABLS 2018では高電圧電撃傷の場合には全年齢で乳酸リンゲル(LR)4 mL/kg/% TBSAの半量を受傷後8時間で投与し、残りの半量を次の16時間で投与する方法がとられている。また小児ではグルコースを含む維持液をプラスする。

尿量の目標

対象目標尿量
成人30〜50 mL/hr
小児1 mL/kg/hr
ミオグロビン尿(明らかに赤色尿)尿がクリアになるまで目標尿量を75〜100 mL/hrまで増量する

また毎時間ごとに目標尿量1 mL/kg/hrの3分の1を超えて増加/減少があれば、輸液速度も最大3分の1減らす/増やして調整する、としている。

尿量を1時間ごとに見る導尿が要る導尿・カテーテル採尿)。

治療ワークフロー(当院でやること)

時間やること
0分安全確認(通電が止まっているか)。気道・呼吸・循環
0〜5分心電図モニタを装着心電図)。12誘導も撮る
5分外傷として全身を診る(転落・飛ばされ)。頸椎保護
5〜10分電流の入口と出口を探す(手・足・頭・口唇)。体幹をまたぐ経路かを判断
10〜20分ルート確保・乳酸リンゲル採血・末梢ルート確保)。熱傷面積からの計算より多く
20分導尿して時間尿量を測る尿の色を見る(赤色尿=ミオグロビン尿)
20分採血:CK・ミオグロビン・K・Cr・血ガス・凝固、血算、心筋逸脱酵素
随時四肢の腫脹・緊満・知覚を繰り返し確認(コンパートメント)
判断原則入院当院で持てないなら搬送
搬送前輸液を継続。尿量の記録を渡す

高電圧か低電圧か(聞き取りで決まる)

項目聞くこと
電圧家庭用(100 V)/業務用/送電線・変圧器/落雷
交流か直流か交流は筋強直で手が離れなくなる
接触時間瞬間か、掴んだままか
湿潤濡れていたか(抵抗が下がる)
入口と出口経路が心臓・脊髄をまたぐか
受傷後の症状意識消失・けいれん・不整脈の自覚・脱力
二次外傷転落・飛ばされ

小児で特に注意すること

場面押さえること
電気コードを噛んだ(乳幼児)口唇交連部の電撃傷。受傷直後は軽く見えるが、痂皮が脱落する数日後(一般に5〜10日後とされる)に口唇動脈から大出血を起こしうる。家族に必ず伝える(下の医師確認事項)
コンセントに物を差し込んだ手指の局所熱傷。深部損傷の評価が要る
体格が小さい同じ電流でも体重あたりの負荷が大きい
輸液小児ではグルコースを含む維持液をプラスする
冷却熱傷を伴う場合、小児では長く広範囲を冷却すると低体温をきたす熱傷低体温

鑑別・併存

病態なぜ探すか
横紋筋融解・急性腎障害ミオグロビン血症や腎障害を来しうる
不整脈心停止に至りうる(心電図
コンパートメント症候群深部の筋障害と腫脹
外傷(転落・頸椎)電撃で飛ばされる(頭部打撲骨折
鼓膜穿孔・白内障(落雷)落雷では複数臓器に及ぶ
熱傷熱傷
虐待説明のつかない電撃傷

送る/持つ(当院=二次救急・集中治療なし)

状態当院の扱い
高電圧・落雷持てない。輸液しながら搬送
心電図異常・意識障害持てない
ミオグロビン尿・CK著明高値持てない(血液浄化が要りうる)
コンパートメント症候群減張切開が要る=持てない
口唇の電撃傷(乳幼児)持てない遅発性出血の説明が必須
家庭用電源・瞬間・無症状・心電図正常観察の要否と時間は施設判断(下の医師確認事項)

エスカレーション(施設オーバーレイで上書き)

  • 要確認:電撃傷を受け入れる搬送先(熱傷センター・集中治療)
  • 要確認:当院で心電図モニタを何時間続けられるか
  • 要確認:CK・ミオグロビンを夜間に測れるか
  • 要確認:乳酸リンゲルの院内在庫と、小児の輸液セット
  • 要確認:家庭用電源の無症状例を何時間観察して帰すかの院内基準
  • 要確認:乳幼児の口唇電撃傷を診たときの説明文(遅発性出血)を紙で用意するか

家族に渡す一文

感電のけがは、見えている皮膚のやけどだけでは重さが決まりません。電気は体の中を通るので、皮膚は軽くても、筋肉・心臓・腎臓が傷んでいることがあります。特に筋肉が壊れると、その成分が腎臓を傷めます。そのため、やけどの面積から計算する量よりも多めの点滴をして、おしっこの量と色を1時間ごとに見ますおしっこが赤いときは、腎臓を守るためにさらに点滴を増やします不整脈が出ることがあるので、心電図のモニターもつけます。基本的に入院して様子を見るけがです。
乳幼児が電気コードを噛んだ場合口のやけどは、数日たってかさぶたが取れるときに、急にたくさん出血することがあります出血したら、そこを指でつまんで押さえたまま、すぐに救急車を呼んでください。

医師確認事項(要・岡本判断)

  • 要確認:本シートは日本皮膚科学会「創傷・褥瘡・熱傷ガイドライン(2023)―6 熱傷診療ガイドライン(第3版)」の「全身管理3:電撃傷」を一次資料としている。引用した輸液プロトコルはABLS 2018(米国)のものであり、ガイドラインがそれを紹介する形になっている。
  • 要確認:乳酸リンゲル4 mL/kg/%TBSAの半量を8時間、残りを16時間という式は高電圧電撃傷の場合の記載。低電圧・家庭用電源での輸液の考え方は本シートで確認していない
  • 要確認:「小児ではグルコースを含む維持液をプラスする」の具体的な組成・量はガイドラインに記載がない。院内で決める必要がある。
  • 要確認:乳幼児の口唇電撃傷の遅発性出血(5〜10日後)は、本シートで一次資料を確認していない。広く知られた合併症だが、日数を含めて裏取りが要る
  • 要確認:無症状の家庭用電源例を帰してよいか、何時間観察するか。ガイドラインは「一般的には電撃傷の場合は臓器障害などへの対応のために、入院して輸液治療と継続的なモニタリングを行う」としており、帰宅の基準は示されていない。当院の基準が要る。
  • 要確認:コンパートメント症候群・落雷の合併症(鼓膜穿孔・白内障)は本シートで一次資料を確認していない。
  • 要確認:日本熱傷学会のガイドラインとの照合は未熱傷と共通の宿題)。

出典

  • 日本皮膚科学会.創傷・褥瘡・熱傷ガイドライン(2023)―6 熱傷診療ガイドライン(第3版).日皮会誌 134(3): 509–557, 2024.https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/xoops/files/guideline/nessho2023.pdf (2026-09-13閲覧)
  • 用語解説「電撃傷」:「感電,落雷,電気スパーク,弧光(アーク)などの電気的障害による損傷である。電撃傷は電流そのものによる障害とジュール熱発生による損傷,スパークによる損傷がある」。
  • 本文「4)全身管理3:電撃傷」:「電撃傷では,体内を通過する電流により皮膚だけでなく様々な臓器,組織の損傷を起こしうる。受傷転機,受傷部位や電流の通過経路,接触時間などはケースごとに異なり症例ごとの比較は難しいため重症度分類も定まったものはない。一般的には電撃傷の場合は臓器障害などへの対応のために,入院して輸液治療と継続的なモニタリングを行う」。
  • 解説4 全身管理3:電撃傷」:「4.1)電撃傷患者は皮膚の熱傷受傷面積から見込まれる量よりも多い輸液治療を必要とする」「電撃による筋障害からミオグロビン血症や腎障害を来しうるため通常の熱傷患者よりも多い量での輸液が必要であったと報告されており,ABLS 2018では高電圧電撃傷の場合には全年齢で乳酸リンゲル(LR)4 mL/kg/%TBSAの半量を受傷後8時間で投与し,残りの半量を次の16時間で投与する方法がとられている。また小児ではグルコースを含む維持液をプラスする。尿量の目標は成人で30〜50 mL/hr,小児で1 mL/kg/hrとするがミオグロビン尿のように明らかに赤色尿であれば尿がクリアになるまで目標尿量を75〜100 mL/hrまで増量する。また毎時間ごとに目標尿量1 mL/kg/hrの3分の1を超えて増加/減少があれば輸液速度も最大3分の1減らす/増やして調整する,としている」。
  • 用語解説「減張切開」:「減圧切開とも言う。軀幹,四肢,頸部の全周性・深達性熱傷における腫脹による四肢末梢部の血行障害,頸部・軀幹での呼吸運動障害を予防するために行う」。

処方

処方

処方の考え方

電撃傷は皮膚の熱傷面積から見込まれる量よりも多い輸液が必要になる。電撃による筋障害でミオグロビン血症・腎障害を来しうるため、高電圧電撃傷ではABLS 2018のプロトコルに沿って乳酸リンゲルを4 mL/kg/%TBSAの半量を受傷後8時間、残り半量を次の16時間で投与し、小児はグルコース加維持液を追加する。低電圧・家庭用電源での輸液の考え方は正本で確認できていない(要確認)。

電圧

この数字の意味

体重換算の考え方であって処方箋ではない。実際の剤形・力価(ドライシロップ10%/20%等)と採用薬は施設ごとに違い、本シートの「院内ローカルルール」(§6)は未確定のまま。g・包数への換算は院内採用を確認したうえで行う。

薬剤名だけで用量が出ないものは、正本にその記載が無いということ。推測の数字は出さない。

参考計算・参考判定です。適用は添付文書・現行ガイドライン・院内採用・患者個別要因を確認のうえ医師が判断してください。

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