RSV細気管支炎は支持療法に徹し、疲弊のサインを見逃さない
気管支拡張薬・ステロイド・抗菌薬は原則使わない。支持療法(酸素・水分・鼻腔吸引)が本体。それまで目立っていた努力呼吸が急に消えて活気低下・顔色不良を伴う場合は「改善」でなく疲労徴候で、喘息のsilent chestと同型の落とし穴になる。緊急度3層区分・疲労徴候の記載・鑑別診断の追加は敵対的レビューでの追記であり、院内運用としての妥当性は医師(岡本)の確認待ちの論点である。
始める前に
- 初発の喘鳴・多呼吸を反射的に「細気管支炎」と診断しない。肝腫大・ギャロップ・心雑音・成長不良→先天性心疾患/心不全、先行するかぜ症状なく突然発症し左右差のある呼吸音→気道異物、発作性の咳嗽・無呼吸が前景で低月齢かつワクチン未接種→百日咳、を鑑別に挙げる(この鑑別追加は敵対的レビュー指摘に基づく院内プロトコル整合が未確認の論点)
- 診断は病歴・身体診察で行い、画像・検査所見をルーチンに追加しない
- 生後12週未満、早産の既往、血行動態的に問題となる先天性心疾患、慢性肺疾患(気管支肺異形成症)、免疫不全を重症化リスク因子として評価する
- 生後90日未満(特に60日未満)で発熱を伴う場合は、RSV等が陽性であっても重症細菌感染症(特に尿路感染症、報告により0.8〜3.1%)の合併リスクが残ることを踏まえ、発熱を機械的に随伴症状として片付けない
- 低月齢児・早産児は典型的な喘鳴が目立たず無呼吸だけが前景に立つ非典型的な経過を取り得るため、月齢が若いだけで「軽症そうに見える」と判断しない
手順
- 1
パルスオキシメトリでSpO2を評価する。酸素投与を要さない児での連続モニタリングは必須ではなく間欠的な評価で足りる
- 2
room airでSpO2が90%を上回っていれば酸素投与を必須としなくてよい
SpO2 90%を目標値とした場合と94%を目標値とした場合とで安全性・臨床的アウトカムは同等だった(BIDS試験)
- 3
経口摂取が困難な場合は経鼻胃管または静脈路で補液する。輸液は等張液を基本とし、低張液は避ける
低張液は抗利尿ホルモン分泌不適合様の病態を背景とした低ナトリウム血症のリスクを高める
- 4
鼻腔吸引は必要時のみ浅く行う
頻回・深い鼻咽頭吸引はかえって入院期間の延長と関連したとする報告がある
- 5
母乳栄養の児には生後6ヶ月まで母乳栄養継続を推奨する
- 6
入院患児には3%高張食塩水吸入を選択してよいが、救急外来単独での投与は推奨されない
やってはいけない
- 気管支拡張薬(アルブテロール/サルブタモール吸入)は投与しない(Evidence Quality B、Strong Recommendation)
- アドレナリン吸入は投与しない(Evidence Quality B、Strong Recommendation)
- 全身性ステロイドはあらゆる場面で健康な乳児に投与しない(Evidence Quality A、Strong Recommendation)
- 抗菌薬は二次的な細菌感染の合併、または強い疑いがない限り投与しない(Evidence Quality B、Strong Recommendation)
- 胸部理学療法(バイブレーション・パーカッション等)は推奨しない
- ルーチンの深い鼻咽頭吸引は避ける(入院期間の延長と関連したとの報告あり)
- 市販の総合感冒薬・咳止め(コデインリン酸塩水和物・ジヒドロコデインリン酸塩を含む製剤)は12歳未満に禁忌
- 胸部X線のルーチン施行はしない。無気肺像を細菌性合併症と誤認し不要な抗菌薬投与につながることがある
- 血液検査(血算等)・迅速ウイルス抗原検査のルーチン施行は診断・管理方針の決定に日常的には不要
- 低月齢児・早産児は典型的な喘鳴が目立たず無呼吸だけが前景に立つ非典型的な経過を取り得るため、月齢が若いだけで「軽症そうに見える」と判断しない
終わったあと
- 【今すぐ救急車を呼ぶ/今すぐ受診】呼吸が止まって見える瞬間があった、顔色や唇・皮膚の色が悪い、ぐったりして反応が乏しい、それまで苦しそうだったのに急に呼吸が落ち着いたように見えてかつぐったりしている・顔色が悪い、と伝える
- 【数時間〜当日中に連絡・受診】呼吸がはっきり速い・苦しそう(陥没呼吸の増悪、肩呼吸、鼻翼呼吸)、おっぱい・ミルクの量が明らかに減った、おしっこの回数が減った、と伝える
- 【数日以内に相談】症状が長引く、咳が強くなってきた等の軽度な変化があれば数日以内に相談するよう伝える
- 症状は通常発症後2〜3日で悪化のピークを迎えその後徐々に軽快する。咳嗽は治癒後も2〜3週間程度残ることがあると伝える
- 細気管支炎後は咳嗽が数週間残ることがあり市販の咳止め(コデイン類)は12歳未満禁忌であることを説明時に明示的に注意喚起する
この場で持てない・送る
- 低月齢児(生後12週未満、特に正期産児で生後1ヶ月未満・早産児で修正週数48週未満)や早産児での無呼吸(既往含む)
- SpO2が90%を下回る、または持続する低酸素
- 哺乳不良・脱水徴候(経口摂取困難で経鼻胃管/静脈路での補液を要する場合を含む)
- 高度陥没呼吸・呼吸数60〜70回/分以上の多呼吸、チアノーゼ
- 血行動態的に問題となる先天性心疾患、慢性肺疾患(気管支肺異形成症)、免疫不全等の基礎疾患の合併
- 家族の観察・対応能力(自宅で経過を見られるか、再受診できる体制があるか)も入院要否の判断に含める
- 要確認:入院基準の数値閾値、酸素投与の開始・中止基準、高張食塩水吸入の採用有無、ハイフローネーザルカニューレの適応、予防医薬品(パリビズマブ/ニルセビマブ/RSV母子免疫ワクチン)の導入状況、生後90日未満・発熱児への尿検査等の院内方針、既接種児が受診・入院した場合の連絡・確認体制、当直帯での低月齢児無呼吸疑い例の対応・上位施設(NICU/PICU)への連携経路
- 要確認:緊急度3層区分(今すぐ救急要請/当日中受診/数日以内相談)の文言・閾値、努力呼吸の見かけ上の消失=疲労徴候の記載、鑑別診断の追加(先天性心疾患/心不全・気道異物・百日咳の除外プロトコル)は、いずれも敵対的レビューでの追記であり院内運用としての妥当性は医師(岡本)の確認待ち
- 要確認:AAP 2014年版ガイドラインは発行から約11年が経過しており、最新のreaffirm(見直し)状況を一次情報で確認できていない
手順・適応・禁忌はすべて本シートの正本の記載のみ。院内の器材・採用薬・搬送先は施設ごとに違うため、適用前に院内ルールを確認すること。