こどもの熱傷(やけど)

緊急

こどもの熱傷(やけど)

救急・外傷・中毒β版・逐条レビュー継続中

2026-09-10更新
β版用量は適用前に一次資料と院内採用を確認。

施設プロファイル: 二次救急/外科的処置なし。デブリードマン・植皮・減張切開は当院で持てない。

30秒要約

  • 小児は成人より早く「輸液が要る側」に入る。熱傷面積が成人で20% TBSA以上、小児では10% TBSA以上で輸液療法を行う。
  • 冷やしすぎが小児では危険。長く広範囲を冷却すると低体温をきたし、意識障害や不整脈を起こすことがある。
  • 顔面熱傷・閉所空間での火災なら、気道熱傷を疑って身体所見を取る。疑ったら高濃度酸素投与をすぐ開始し、挿管の必要性を検討する。
  • 面積は本人の手全体で概算する。指・親指を合わせた掌側全体を約1%とする。掌だけ、医療者の手では代用しない。
  • 境界が明瞭な浸漬熱傷・受傷機転と合わない熱傷では虐待を疑う(外傷・跛行の虐待の項へ)。

レッドフラグ

所見があったときにどれだけ急ぐかと、家族に何を伝えるかの対応表。3列目の文言は家族説明ページに同じ言葉で載っているので、画面を見せながら渡せる。

緊急度所見その場で次にやること時間の勝負
119気道熱傷を疑う所見(下記)高濃度酸素投与をすぐ開始し、挿管の必要性を検討。気道は腫れて手遅れになる待たない
119意識障害・一酸化炭素中毒を疑う(閉所空間の火災)高濃度酸素。血中の評価へ待たない
緊急小児で10% TBSA以上輸液療法を開始。熱傷を扱える施設へ早いほどよい
緊急Artz基準の重症熱傷に該当(下記)持てない。熱傷を扱える施設へ早いほどよい
緊急電撃傷体表の所見が軽くても深部損傷・不整脈がありうる。心電図待たない
緊急顔・手・足のIII度熱傷機能予後に直結。専門施設へ—
緊急境界明瞭な浸漬熱傷、受傷機転と所見の不一致虐待を疑う。医学的対応と並行して院内手順へ—
当日小範囲のII度で全身状態良好冷却・被覆・鎮痛。冷やしすぎない。再評価を約束—

重症度判定:Artz の基準

区分基準
重症熱傷II度 30% TBSA以上/III度 10% TBSA以上/顔面・手・足のIII度熱傷/気道熱傷の合併/軟部組織の損傷や骨折の合併/電撃傷
中等度熱傷(一般病院で入院加療を要するもの)II度 15〜30% TBSA/III度 10% TBSA以下(顔・手・足を除く)
軽症熱傷(外来で治療可能なもの)II度 15% TBSA以下/III度 2% TBSA以下

当院での読み替え: 重症熱傷は持てない。輸液・疼痛管理・創処置(外用薬・被覆)に限定して当院で入院管理し、壊死組織除去等が必要になれば転送する。

面積の測り方

  • 手掌法: 本人の手全体(指・親指を含む掌側)を体表の約1%として概算する。指を合わせた状態を使い、掌だけ、保護者や医療者の手で代用しない。個人差があるため概算として記録する。小児の原著は手全体と掌のみを区別している(下記出典)。
  • 小児は成人と体表面積の比率が違うため、成人の9の法則をそのまま使わない。小児では5の法則やLund & Browderの表を用いる。
  • 局所的な推定には手掌法が実用的で有用とされている。

気道熱傷を疑う所見

閉所空間での火災/顔面の熱傷やススの付着/嗄声/呼吸困難/喘鳴/肺雑音/黒色痰/意識障害

疑ったときは高濃度酸素投与をすぐに開始し、気管内挿管を含めた呼吸管理治療の必要性を検討する。気道熱傷では気道の損傷以外に一酸化炭素や有毒な気体の吸入もしている可能性がある。

初期対応

  1. ABCを先に。気道熱傷の評価は熱傷面積の計算より先。
  2. 冷却: 小範囲なら水道水、広範囲なら浴室のシャワー。時間は諸説あるが一般に最低5分から30分くらいを、できれば流水で。小児では長く広範囲を冷却すると低体温をきたし、意識障害や不整脈を起こすことがある。過度の冷却にしない。
  3. 衣類: 貼り付いている衣類を無理に剥がさない。
  4. 輸液: 熱傷面積が成人で20% TBSA以上、小児で10% TBSA以上なら輸液療法を行う。それ以下でも全身状態を見て開始してよい。
  5. 尿量の目標: 成人は0.5 mL/kg/hr以上、体重30kg以下の小児は1.0 mL/kg/hr、30kgを超えていれば0.5 mL/kg/hr を保つように輸液速度を調整する。
  6. 保温。冷却と保温は矛盾しない。冷却は局所、保温は全身。

問診チェック

所見の取り方

  • 深度と面積を分けて記録する。面積は本人の指を含む手全体で概算する。
  • 顔・手・足・会陰・関節にかかるかを明記する(機能予後と転送基準に効く)。
  • 全周性の熱傷(四肢・体幹を一周する)は循環・呼吸を絞める。減張切開が要る=当院で持てない。
  • 口腔内・鼻毛の焼け・ススを見る。
  • 境界が明瞭で、手袋・靴下状の分布をとる浸漬熱傷は虐待を疑う所見。

送る/持つ(当院=二次救急・外科的処置なし)

状態当院の扱い
気道熱傷の疑い持てない。酸素を開始して緊急搬送
Artz基準の重症熱傷持てない。熱傷を扱える施設へ
全周性熱傷(減張切開が要る)持てない
電撃傷持てない(不整脈・深部損傷の評価が要る)
小児10% TBSA以上輸液を開始しつつ搬送を手配
小範囲のII度・全身状態良好当院で対応しうる。冷やしすぎない。再評価を約束

送ると決めた時点でやること

  1. 気道の評価と酸素
  2. 輸液ルート確保(面積が基準を超えるなら開始)
  3. 保温(冷却のやりすぎで低体温にしない)
  4. 創は清潔に覆う
  5. 受け入れ先へ受傷機転・時刻・面積(%TBSA)・深度・気道熱傷の有無をセットで伝える

エスカレーション(施設オーバーレイで上書き)

  • 要確認:熱傷を扱える施設(熱傷センター/救命救急センター)の夜間・休日の受け入れ先と直通番号
  • 決定:輸液・疼痛管理・創処置(外用薬・被覆)に限定して当院で入院管理し、壊死組織除去等が必要になれば転送する(論点:中等度熱傷を当院で入院管理するか。外科的処置ができない前提で、入院させて何をするのかを決めておく)
  • 要確認:一酸化炭素中毒を疑ったときの評価。血液ガス自体は夜間に出せる(2026-09-14 確認)が、CO-Hbが測れるかは未確認
  • 要確認:虐待を疑ったときの院内手順(外傷・跛行と共通)

家族に渡す一文

「やけどは、見た目の広さと深さで治療が変わります。冷やすことは大事ですが、小さなお子さんを長時間・広い範囲で冷やすと体温が下がりすぎて危険です。当院では手術が必要なやけどの処置ができないので、必要と判断したら、できる病院にお願いします。」

出典

  • 日本皮膚科学会.創傷・褥瘡・熱傷ガイドライン(2023)―6 熱傷診療ガイドライン(第3版).日皮会誌 134(3):509-557, 2024. https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/xoops/files/guideline/nessho2023.pdf (2026-09-10閲覧)。Artz の基準(重症・中等度・軽症の区分、表3)、手掌法(成人で手掌を体表の約1%、約1%〈0.7〜0.95〉)、熱傷面積が成人20% TBSA以上・小児10% TBSA以上で輸液療法を行うこと、尿量の目標(成人0.5 mL/kg/hr以上、体重30kg以下の小児1.0 mL/kg/hr、30kg超は0.5 mL/kg/hr)、気道熱傷を疑う所見(閉所空間での火災・顔面の熱傷やススの付着・嗄声・呼吸困難・喘鳴・肺雑音・黒色痰・意識障害)、疑ったときに高濃度酸素投与を開始し挿管の必要性を検討すること、気道熱傷では一酸化炭素や有毒気体の吸入も伴いうること。
  • 日本熱傷学会.熱傷(やけど)に関する簡単な知識.http://www.jsbi-burn.org/ippan/chishiki/outline.html (2026-09-10閲覧)。冷却は小範囲なら水道水・広範囲なら浴室のシャワーで、時間は諸説あるが一般に最低5分から30分くらいをできれば流水で行うこと、小児では長く広範囲を冷却すると低体温をきたし意識障害や不整脈を起こすことがあること、過度の冷却にしないこと、患者の掌が体表面積の1%に当たること。
  • 虐待を疑う熱傷の所見(境界明瞭な浸漬熱傷、受傷機転と所見の不一致)は本サイトの「歩かない・手足を動かさない(外傷・跛行)」の虐待の項および日本小児科学会の資料を参照。
  • Nagel TR, Schunk JE. Using the hand to estimate the surface area of a burn in children. Pediatr Emerg Care. 1997;13:254–255. 本人の指を含む手全体と掌のみを区別。https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9291511/ (2026-10-08確認)。
病態・根拠9章
病態:創の面積だけでなく、全身と受傷機転を見る

熱傷は熱による組織傷害に加え、広範囲では血管透過性亢進による血管内水分の減少を生じる。深さは受傷直後に正確に決めにくく、経時的に変化する。そのため「初診で浅く見えた」ことだけで、その後の創管理を終えない。煙への曝露、電流、化学物質は皮膚の面積と別の臓器障害も考える。[1][2]

鑑別と評価:発赤、深い傷、気道傷害を分ける

水疱のない単なる発赤を、輸液量を決める熱傷面積へ加算しない。年齢に合った面積評価を用い、顔・手・足・会陰・関節、全周性の傷では機能や循環への影響を確認する。閉鎖空間の火災、嗄声、煤、呼吸症状なら気道傷害やCO中毒を考え、通常のSpO2の数値だけで安全としない。受傷状況と傷の形が合うか、保護の必要性も確認する。[2]

検査と初期治療:冷やす目的と、冷やしすぎの害

熱源から離し、冷却で熱による傷害を減らす一方、小児では低体温を避ける。氷を直接当てず、全身を冷やし続けない。鎮痛と清潔な被覆を行い、創の深さと面積、体温・循環を繰り返し評価する。検査は広範囲、吸入傷害、電撃傷等の病態に合わせ、軽い局所熱傷の全員へ一律に採血するものではない。[1][2]

広範囲熱傷の輸液計算式は開始時の目安で、処方後の体重・循環・尿量・電解質等を見て調整する。受傷からの時間と年齢・体重を無視した一律量にしない。気道傷害、広範囲・深い熱傷、重要部位、全周性による循環障害は熱傷専門施設へ早く連絡する。[1][2]

感染対策とフォロー

感染を予防する目的だけで、全例に全身抗菌薬を定型投与しない。国内ガイドラインは画一的投与を勧めず、汚染創や特定の条件では対象菌を考慮した個別判断としている。創保護のための外用・被覆と、成立した感染の治療を区別する。破傷風予防は受傷と接種歴で確認する。[1]

帰宅時も創の深さが変わりうるため、予定した創の再評価を確保する。痛みの増悪、発赤の拡大、発熱、末梢の色や感覚の変化、飲めない状態では予定を待たず受診する。専門外科処置がない当院では、処置可能範囲を超える創を抱えない。[1][2]

出典と適用範囲

成人を含む国内ガイドラインの固定輸液量・尿量目標は小児へそのまま転用せず、体重と専門施設の判断を要する。

臨床医が迷う場面
受傷直後は浅そうだった。翌日も同じ処置でよい?

熱傷の深さは初期に判定しきれない。色、毛細血管再充満、感覚、疼痛、浸出液を再診で見直す。手・顔・関節・陰部、全周性、深い熱傷は面積が小さくても専門相談する。外用薬を漫然と継続せず、治癒の進みと機能障害リスクで方針を調整する。

根拠:RCH Burns - acute management(海外指針)

輸液を始めたが尿が少ない。計算量をそのまま続ける?

面積計算は開始の目安であり、尿量・循環・体重と実投与量で調整する。低尿量では熱傷面積、脱水、尿路と循環を再評価し、浮腫や呼吸状態も観察する。輸液を際限なく追加せず、広範囲熱傷は早期から小児熱傷に対応する施設と管理を相談する。

根拠:RCH Burns - acute management(海外指針)

冷却して痛みが減った。ずっと水をかけてよい?

冷却中も深部体温・震え・反応を確認する。小児や広範囲熱傷では創を冷やす一方、他部位を保温し、低体温を起こす長時間冷却を避ける。氷を直接当てない。鎮痛後にも循環障害や気道熱傷の所見を再評価し、痛みの軽減だけで帰宅を決めない。

根拠:RCH Burns - acute management(海外指針)

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