末梢が取れないときは骨髄路へ切り替える
当直で決めるのは「刺す技術」ではなく「いつ諦めるか」。重症な子ほど末梢が取れない。取れないまま時間を溶かすのが最大の失敗。敗血症性ショックでは5分以内に静脈路・骨髄路を確保し、取れなければ骨髄路に切り替える。
始める前に
- 穿刺の回数ルール(同じ人が2回まで、合計3回まで、そこで人を替える/方法を変える)を院内で決めておく(本シートはこの回数を決めていない。決めるのは施設の仕事)
- 採る前に「今日どうしても要る項目」を絞る。「一応」で増やした項目が、翌日の再採血を生む
- 表面麻酔は貼付・塗布から効果発現までの時間が要る。待てる場面では使う(院内採用を要確認)
- ショ糖(乳児)を使うかは施設の方針による(要確認)
- 保護者に、同席するか外で待つかを選んでもらう
- 保定は人数を確保して短時間で終わらせる。押さえる時間が長いほど負担が大きい
- 関節をまたぐ位置は避ける(固定が要り、屈曲で滴下が止まる)。利き手を避けると、その後の入院生活が楽になる
- 新生児・乳児では頭皮静脈も選択肢になりうるが、使用は施設によって方針が分かれる
手順
- 1
敗血症性ショック・重症では5分以内に静脈路・骨髄路の確保を目指す
合意意見の輸液蘇生アルゴリズムによる
- 2
5分で末梢が取れなければ骨髄路に切り替える
- 3
けいれん重積では、最初の薬はルートを待たない投与経路を使う
- 4
低血糖・意識障害では、経口が安全なら経口を先に試し、だめなら骨髄路
- 5
中等度脱水では、点滴より先に経口補水を試す
- 6
抗菌薬開始前に血液培養を2セット以上採取する。ただし、このために抗菌薬投与が遅れないようにする
やってはいけない
- 重症なのに末梢に固執すると治療開始が遅れる。時間の上限を先に決める(敗血症なら5分)
- 抗菌薬を先に入れてしまうと培養が出なくなる。採血→抗菌薬の順を口に出して確認する
- 点滴側から採血すると希釈・電解質の偽値が出る。反対側から採る。やむを得ないなら記録に残す
- 血液培養のコンタミを避けるため鼠径部は避ける
- 採血量は全血液量の1%を超えないようにすべきという報告がある(血液培養に関する文献の記載であり、総採血量の上限として一般化してよいかは本シートで確認していない)
- 貧血のある児・新生児・繰り返し採血する児では、累積量を意識する
終わったあと
- 家族へ:一度で入らないことがあります。そのときは、むやみに続けず、人を替えたり、方法を変えたりします。痛みをやわらげる方法も用意していますので、遠慮なくお申し出ください
- 家族へ:必要な検査だけに絞って採血します。小さなお子さんは採れる血液の量に限りがあるためです
この場で持てない・送る
- 重症で末梢が取れない → 骨髄路。使えないなら搬送しながら(搬送先と相談)
- 中心静脈路が必要 → 要確認(当院で持つか)
- 深い鎮静が必要な採血 → 処置時の鎮静・鎮痛の体制次第
- 繰り返しの採血が要る管理 → 入院管理の可否による
- 要確認:本シートは手技(穿刺の角度・駆血・針のサイズ・固定法)について一次資料を確認していない。院内手順書・教育資材が要る
- 要確認:骨髄針の在庫・サイズ・使える人
- 要確認:小児の累積採血量の上限の院内基準
- 要確認:ショ糖など非薬物的鎮痛の運用(乳児)
- 要確認:エコーガイド下穿刺を当直帯で使えるか
- 要確認:処置室で行うか、ベッドサイドで行うかの運用
手順・適応・禁忌はすべて本シートの正本の記載のみ。院内の器材・採用薬・搬送先は施設ごとに違うため、適用前に院内ルールを確認すること。