採血・末梢ルート確保(取れないときの判断)

採血・末梢ルート確保(取れないときの判断)

検査・画像・処置β版・逐条レビュー継続中

2026-09-13更新
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施設プロファイル: 二次救急

30秒要約

  • 当直で決めるのは「刺す技術」ではなく「いつ諦めるか」。重症な子ほど末梢が取れない。取れないまま時間を溶かすのが最大の失敗
  • 敗血症性ショックでは5分。合意意見の輸液蘇生アルゴリズムは5分以内に静脈路・骨髄路を確保としている。取れなければ骨髄路小児敗血症)。
  • 抗菌薬より先に培養。ただしそのために抗菌薬投与が遅れないようにする血液培養)。
  • 採血量には上限がある。血液培養だけでも「採血量は全血液量の1%を超えないようにすべき」という報告がある。小児では「何を測るか」を先に絞る
  • 痛みへの手当てを省かない。省くと、その子は次から病院を拒否する。処置の前に痛みを減らす手段を用意する処置時の鎮静・鎮痛)。

「いつ諦めるか」を先に決める

状況目標取れないときの次の一手
敗血症性ショック・重症5分以内に静脈路・骨髄路骨髄路。J-SSCG2016は小児敗血症性ショックで骨髄路を一時的な投与経路として弱く推奨小児敗血症
けいれん重積最初の薬はルートを待たない投与経路があるけいれん重積の投与経路に従う
低血糖・意識障害早く経口が安全なら経口。だめなら骨髄路(低血糖
中等度脱水経口補水を先に試す点滴が唯一の道ではない経口補水・点滴
検査だけが目的急がない回数を決める(下記)。無理に続けない

回数のルールを決めておく

「同じ人が2回まで、合計3回まで、そこで人を替える/方法を変える」——このような院内ルールがあると、子どもも家族もスタッフも救われる。本シートはこの回数を決めていない(下の医師確認事項)。決めるのは施設の仕事

部位(当直で迷わない順番)

年齢第一選択になりやすい備考
新生児・乳児手背、足背、前腕、頭皮(施設による)血管が見えなくても触れる
幼児手背、前腕、肘窩、足背動きを止める人が要る
学童以上前腕、肘窩、手背本人に選ばせると協力が得られる
緊急時に取れない骨髄路(脛骨近位前面など)一時的な投与経路。確保後は速やかに静脈路へ移行を検討

関節をまたぐ位置は避ける(固定が要り、屈曲で滴下が止まる)。利き手を避けると、その後の入院生活が楽になる。

痛みと恐怖を減らす(これも「手技」の一部)

内容
表面麻酔貼付・塗布から効果発現までの時間が要る。待てる場面では使う(院内採用を要確認)
ショ糖(乳児)施設の方針による
保護者の同席同席するか、外で待つかを家族に選ばせる
保定人数を確保して、短時間で終わらせる。押さえる時間が長いほど負担が大きい
説明年齢に応じて「何が、どのくらい、いつ終わるか」を伝える
環境処置室でまとめて。ベッドサイド(安心の場所)で痛い処置をしない運用もある
鎮静は痛みを取らない鎮静と鎮痛は別物処置時の鎮静・鎮痛

採血量(小児では先に決める)

  • 血液培養に関する検討では、採血量は全血液量の1%を超えないようにすべきという報告がある。
  • 血液培養の推奨量の目安(小児):体重あたり0.8 mL/kg(日本小児感染症学会セミナーのベストプラクティス案。詳細は血液培養)。
  • 貧血のある児・新生児・繰り返し採血する児では、累積量を意識する。

→ 採る前に「今日どうしても要る項目」を絞る。 「一応」で増やした項目が、翌日の再採血を生む。

当直でよく出す組み合わせ

場面最低限
発熱+全身状態不良血算・CRP・生化(Na/K/Cl/BUN/Cr/AST/ALT)・血糖血液培養血液培養
けいれん・意識障害血糖(最優先)・電解質・Ca/Mg・血ガス・アンモニア(初発の無熱性けいれん
嘔吐・脱水電解質・血糖・血ガス・ケトン(胃腸炎と脱水
紫斑・出血血算+末梢血液像・凝固(紫斑・出血斑
長引く発熱血算+末梢血液像・LDH・尿酸・赤沈・フェリチン(不明熱
腹痛血算・CRP・生化・尿検査急性腹痛尿検査の読み
黄疸総/直接ビリルビン・AST/ALT・PT-INR黄疸・肝機能異常

血糖は、迷ったら測る。 安く、速く、治せる異常を拾える。

失敗しやすい場面と、その手前で気づくこと

場面起きること手前でやること
重症なのに末梢に固執治療開始が遅れる時間の上限を先に決める(敗血症なら5分)
抗菌薬を先に入れてしまう培養が出なくなる採血→抗菌薬の順を口に出して確認
溶血K偽高値・LDH偽高値細い針での強い陰圧を避ける
点滴側から採血希釈・電解質の偽値反対側から採る。やむを得ないなら記録に残す
検体量不足翌日の再採血優先順位をつけて容器に入れる
血液培養のコンタミ偽陽性→不要な抗菌薬部位と消毒(血液培養)。鼠径部は避ける
何度も刺す子どもの受診拒否・家族の不信回数のルール交代を決めておく

骨髄路(当院で持つかの判断)

  • 位置づけ:小児敗血症性ショックで、一時的な投与経路として弱く推奨(J-SSCG2016 CQ19-15)。
  • 合意意見の輸液蘇生アルゴリズムは5分以内に静脈路・骨髄路確保としている。
  • 「使えるか」は、針の在庫と、当直医が使えるかの2つで決まる

要確認:骨髄針の在庫と、当直医が使えるか小児敗血症と共通の宿題)。

送る/持つ(当院=二次救急)

状態当院の扱い
通常の採血・末梢ルート確保当院で対応
重症で末梢が取れない骨髄路。使えないなら搬送しながら(搬送先と相談)
中心静脈路が必要要確認(当院で持つか)
深い鎮静が必要な採血処置時の鎮静・鎮痛の体制次第
繰り返しの採血が要る管理入院管理の可否による

エスカレーション(施設オーバーレイで上書き)

  • 要確認:穿刺の回数ルール(同一者は何回まで、合計何回で人を替えるか)
  • 要確認:表面麻酔薬の院内採用と、効果発現までの待ち時間
  • 要確認:ショ糖など非薬物的鎮痛の運用(乳児)
  • 要確認:骨髄針の在庫・サイズ・使える人
  • 確定(2026-09-14)当直帯にエコーは使えない=エコーガイド下穿刺は当直帯の選択肢に入らない取れないときの逃げ道は、骨髄路か、人を替えるか、送るかになる
  • 要確認:小児の累積採血量の上限の院内基準
  • 要確認:保定の方針(人数・体位・家族の同席)
  • 要確認:処置室で行うか、ベッドサイドで行うかの運用

家族に渡す一文

「お子さんの血管は細く、こわがって動くこともあるため、一度で入らないことがあります。そのときは、むやみに続けず、人を替えたり、方法を変えたりします。痛みをやわらげる方法も用意していますので、遠慮なくお申し出ください。そばにいていただくか、外で待っていただくかは、お母さん・お父さんが選んでかまいません。どちらでもお子さんのためになります。また、必要な検査だけに絞って採血します。小さなお子さんは採れる血液の量に限りがあるためです。」

医師確認事項(要・岡本判断)

  • 要確認:本シートは、手技(穿刺の角度・駆血・針のサイズ・固定法)について一次資料を確認していない院内手順書・教育資材が要る。本シートが扱うのは「いつ諦めるか」「何を先にやるか」という判断の部分に限る。
  • 要確認:穿刺の回数ルールは本シートでは決めていない(施設判断)。決めないと、当直ごとに運用が変わる。
  • 要確認:表面麻酔薬・ショ糖の使用は本シートで一次資料を確認していない。院内採用と、その根拠資料を別途確認したい。
  • 要確認:「全血液量の1%を超えない」は血液培養に関する文献の記載であり、総採血量の上限として一般化してよいかは確認していない血液培養の医師確認事項と共通)。
  • 要確認:骨髄路を当院で使うか。使うなら針の在庫と訓練。使わないなら、重症例で末梢が取れないときの手順(搬送中の投与をどうするか)を決める必要がある。
  • 要確認:頭皮静脈の使用は施設によって方針が分かれる。本シートは「施設による」とした。
  • 要確認:当直でよく出す組み合わせの表は本シートの実務上の整理であり、ガイドラインの推奨ではない。当院の採用項目に合わせて調整が要る。

出典

  • 日本集中治療医学会 小児集中治療委員会.日本での小児重症敗血症診療に関する合意意見.日本集中治療医学会雑誌 2014;21:67-88.https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsicm/21/1/21_67/_pdf (2026-09-12閲覧)。輸液蘇生アルゴリズム(5分以内に静脈路・骨髄路確保、15分以内に20 mL/kg等張晶質液をボーラス、血液培養後に抗菌薬投与)、「抗菌薬開始前に血液培養を2セット以上採取する。ただし、このために抗菌薬投与が遅れないようにする」。
  • 日本版敗血症診療ガイドライン2016(J-SSCG2016)CQ19 小児https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsicm/advpub/0/advpub_24S0022/_pdf/-char/ja (2026-09-12閲覧)。骨髄路を一時的な投与経路として弱く推奨(CQ19-15)
  • 松永展明、ほか(チューター:齋藤昭彦、笠井正志).レクチャー6 血液培養ベストプラクティス.小児感染免疫 24(4): 506–508, 2012.https://www.jspid.jp/wp-content/uploads/pdf/02404/024040506.pdf (2026-09-13閲覧)。「採血量は全血液量の1%を超えないようにすべき」「CLSIの提唱する安全な採血量(血液量の1%)を基に、0.8 ml/kgと仮定した」。詳細は本サイト「血液培養」を参照。
  • 日本小児科学会・日本小児麻酔学会・日本小児放射線学会.MRI検査時の鎮静に関する共同提言 2020年改訂版(案)https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/MRI_Public_Comment.pdf (2026-09-13閲覧)。「鎮静薬を使用しなければより安全な検査となります」。鎮静と鎮痛の区別、体制の要件は本サイト「処置時の鎮静・鎮痛」を参照。

手技

手技

末梢が取れないときは骨髄路へ切り替える

当直で決めるのは「刺す技術」ではなく「いつ諦めるか」。重症な子ほど末梢が取れない。取れないまま時間を溶かすのが最大の失敗。敗血症性ショックでは5分以内に静脈路・骨髄路を確保し、取れなければ骨髄路に切り替える。

始める前に

  • 穿刺の回数ルール(同じ人が2回まで、合計3回まで、そこで人を替える/方法を変える)を院内で決めておく(本シートはこの回数を決めていない。決めるのは施設の仕事)
  • 採る前に「今日どうしても要る項目」を絞る。「一応」で増やした項目が、翌日の再採血を生む
  • 表面麻酔は貼付・塗布から効果発現までの時間が要る。待てる場面では使う(院内採用を要確認)
  • ショ糖(乳児)を使うかは施設の方針による(要確認)
  • 保護者に、同席するか外で待つかを選んでもらう
  • 保定は人数を確保して短時間で終わらせる。押さえる時間が長いほど負担が大きい
  • 関節をまたぐ位置は避ける(固定が要り、屈曲で滴下が止まる)。利き手を避けると、その後の入院生活が楽になる
  • 新生児・乳児では頭皮静脈も選択肢になりうるが、使用は施設によって方針が分かれる

手順

  1. 1

    敗血症性ショック・重症では5分以内に静脈路・骨髄路の確保を目指す

    合意意見の輸液蘇生アルゴリズムによる

  2. 2

    5分で末梢が取れなければ骨髄路に切り替える

  3. 3

    けいれん重積では、最初の薬はルートを待たない投与経路を使う

  4. 4

    低血糖・意識障害では、経口が安全なら経口を先に試し、だめなら骨髄路

  5. 5

    中等度脱水では、点滴より先に経口補水を試す

  6. 6

    抗菌薬開始前に血液培養を2セット以上採取する。ただし、このために抗菌薬投与が遅れないようにする

やってはいけない

  • 重症なのに末梢に固執すると治療開始が遅れる。時間の上限を先に決める(敗血症なら5分)
  • 抗菌薬を先に入れてしまうと培養が出なくなる。採血→抗菌薬の順を口に出して確認する
  • 点滴側から採血すると希釈・電解質の偽値が出る。反対側から採る。やむを得ないなら記録に残す
  • 血液培養のコンタミを避けるため鼠径部は避ける
  • 採血量は全血液量の1%を超えないようにすべきという報告がある(血液培養に関する文献の記載であり、総採血量の上限として一般化してよいかは本シートで確認していない)
  • 貧血のある児・新生児・繰り返し採血する児では、累積量を意識する

終わったあと

  • 家族へ:一度で入らないことがあります。そのときは、むやみに続けず、人を替えたり、方法を変えたりします。痛みをやわらげる方法も用意していますので、遠慮なくお申し出ください
  • 家族へ:必要な検査だけに絞って採血します。小さなお子さんは採れる血液の量に限りがあるためです

この場で持てない・送る

  • 重症で末梢が取れない → 骨髄路。使えないなら搬送しながら(搬送先と相談)
  • 中心静脈路が必要 → 要確認(当院で持つか)
  • 深い鎮静が必要な採血 → 処置時の鎮静・鎮痛の体制次第
  • 繰り返しの採血が要る管理 → 入院管理の可否による
  • 要確認:本シートは手技(穿刺の角度・駆血・針のサイズ・固定法)について一次資料を確認していない。院内手順書・教育資材が要る
  • 要確認:骨髄針の在庫・サイズ・使える人
  • 要確認:小児の累積採血量の上限の院内基準
  • 要確認:ショ糖など非薬物的鎮痛の運用(乳児)
  • 要確認:エコーガイド下穿刺を当直帯で使えるか
  • 要確認:処置室で行うか、ベッドサイドで行うかの運用

手順・適応・禁忌はすべて本シートの正本の記載のみ。院内の器材・採用薬・搬送先は施設ごとに違うため、適用前に院内ルールを確認すること。

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