風疹
発熱・感染症β版・逐条レビュー継続中
2026-09-12更新
β版用量は適用前に一次資料と院内採用を確認。このβ版について
施設プロファイル: 二次救急/産科併設。この病気で当院が最も気をつけるのは、患児本人より、曝露した妊婦。
30秒要約
- 届出期限が2つある。風疹本体は「直ちに」、先天性風疹症候群(CRS)は「7日以内」。同じ5類全数把握でも扱いが違う。ここを間違える。
- 2018年1月1日から、届出は7日以内→直ちに に変わり、ウイルス遺伝子検査を原則全例実施になった。
- 感染性は発疹出現の7日前から7日後まで。発疹が出る前からうつす。
- 不顕性感染がある。母親が無症状でもCRSは発生しうる。
- 妊婦にワクチンは禁忌(生ワクチン)。免疫グロブリンの発症予防効果も確認されていない。だから曝露させないことが唯一の防御。
疑った瞬間にやること
| 順 | やること |
|---|---|
| 1 | マスクを装着させ、待合に戻さない(飛沫・接触感染) |
| 2 | 個室へ収容する |
| 3 | 同じ時間帯に待合にいた妊婦がいなかったかを確認する。産科併設なら必ず |
| 4 | 曝露した妊婦がいれば、産科へ連絡し、妊娠週数とHI抗体価を確認してもらう |
| 5 | 保健所へ直ちに届け出る(5類全数把握) |
| 6 | ウイルス遺伝子検査を出す(2018年から原則全例) |
| 7 | 職員の曝露も確認する(抗体価・接種歴) |
臨床像
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 潜伏期 | 14〜21日(平均16〜18日)(別の実務資料では12〜23日。出典で幅がある) |
| 前駆 | 耳介後部・後頭部・頸部のリンパ節腫脹が1〜5日先行し、軽度の発熱(約50%)と紅色斑状丘疹(約70%)で発症 |
| 発疹 | 淡紅色で小さく、皮膚面よりやや隆起。1〜2日で顔面から頸部・体幹・四肢へ遠心性に広がり、出現順に3日で消失。色素沈着を残さない |
| カタル症状 | 麻疹に比して軽症。眼球結膜の充血を伴うが軽い |
| 感染性のある期間 | 発疹出現の前後約1週間(発疹出現の7日前から7日後まで) |
| 不顕性感染 | 15(〜30)%程度(実務資料では25〜50%とするものもあり、出典で幅がある) |
| 届出 | 5類全数把握。診断後「直ちに」 |
| 出席停止 | 「風しんにあつては、発しんが消失するまで」(学校保健安全法施行規則第19条。風しんは第二種) |
| 治療 | 特異的な治療法はなく対症療法のみ |
所見 → 次の一手
| 所見 | 次の一手 |
|---|---|
| 発熱+発疹+耳介後部・後頭部・頸部のリンパ節腫脹 | 風疹を疑う。動線を止めて妊婦の曝露を確認 |
| 待合に妊婦がいた | 曝露時刻と接触状況を記録。産科へ連絡し、妊娠週数とHI抗体価を確認してもらう |
| 曝露した妊婦が妊娠20週までで抗体が低い/不明 | CRSのリスクがある。産科・2次施設の判断へ。当院で結論を出さない |
| 症状がないが濃厚接触歴がある | 不顕性感染がある。無症状でもうつすことを前提に対応 |
| 関節痛(思春期〜成人女性) | 一過性の多関節痛・多関節炎。成人の5〜30%。ほとんどは一過性 |
| 紫斑・出血傾向 | 血小板減少性紫斑病(3,000〜5,000例に1例) |
| 意識障害・けいれん | 急性脳炎(4,000〜6,000例に1例)。意識障害 |
| 発疹が消失した | 出席停止の解除基準 |
妊婦への曝露(産科併設施設として最重要)
CRS発症リスク(妊娠週数別)
産婦人科診療ガイドライン産科編CQ605の解説より。
| 感染時の妊娠週数 | CRS発症リスク |
|---|---|
| 4〜6週 | 100% |
| 7〜12週 | 80% |
| 13〜16週 | 45〜50% |
| 17〜20週 | 6% |
| 20週以降 | 0% |
「最終月経前の発症ではCRSは認められない」。
国立健康危機管理研究機構の解説は妊娠月で「1カ月:50%以上、2カ月:35%、3カ月:18%、4カ月:8%程度」としており、週単位と月単位で出典が異なる。片方だけを断定的に使わないこと。
押さえる原則
- 母親が無症状でもCRSは発生する。「不顕性感染が15%程度あると考えられ、不顕性感染でもCRSは発生する」。
- 再感染によるCRSもまれに生じうる。「抗体測定歴やワクチン接種歴があっても、再感染によるCRSはまれに生じうる」。
- 妊婦へのワクチンは禁忌。「風疹含有ワクチンはウイルスの毒性を弱めて作られたワクチンであり、ウイルスが胎児に感染する可能性が完全には否定できないので、妊娠中は予防接種を受けることができません」。
- 免疫グロブリンの発症予防効果は確認されていない。「既往歴がなく抗体陰性の接触者への、ワクチン緊急接種や免疫グロブリン投与による発症予防効果は確認されていない」(大学病院の感染管理マニュアル。学会ガイドライン本文での確認は未)。
- → 曝露させないことが唯一の防御。だから待合の動線が決定的に重要になる。
産科での対応(当院から産科へ渡す情報)
- 妊娠初期にHI抗体価を測定するのが標準(推奨A)。抗体検査は「可能な限りHI法で」(他法は検査値の解釈に一定した基準がないため)。
- 感染診断検査を行う基準(推奨B): ①風疹様症状(発疹・発熱・リンパ節腫脹)があった ②風疹患者と明らかな接触があった ③妊娠初期の検査でHI抗体価256倍以上
- 感染診断検査の内容: ペア血清HI抗体価+風疹特異的IgM抗体価。「HI抗体価およびIgM抗体を同時に測定し、1〜2週間後に再検査(可能ならペア血清)し、HI抗体価が4倍以上上昇しIgM抗体が陽性化した場合は風疹罹患の可能性が高い。ただし妊婦感染は胎児感染を意味しないので注意する」
- HI抗体価が高くても罹患とは限らない: 「HI抗体価には個人差があり…HI抗体価256倍以上の妊婦は約17%との報告あり。HI抗体価が高値であってもただちに最近の風疹罹患であるとはいえない」
- 2次施設への紹介: 「HI抗体価が高い例や4倍以上上昇した例、IgM抗体の陽性例などについては、必要に応じ…各地区ブロックごとの相談窓口(2次施設)への相談・紹介を考慮する」
- 産褥期のワクチン: 「風疹HI抗体価が16倍以下の妊婦には、産褥早期の風疹ワクチン接種を勧める(推奨C)」。授乳中でも差し支えない(母乳中にワクチンウイルスが検出される場合があるが、それにより新生児が感染することはない)。
- 接種歴による細分化(日本産婦人科医会の実務ノート): 16倍は2回接種歴が確認できれば追加接種は不要/8倍以下は接種歴にかかわらず産後の追加接種が推奨される。
診断(検査の落とし穴)
| 検査 | 注意点 |
|---|---|
| RT-PCR(遺伝子) | 急性期の咽頭ぬぐい液・血液・尿から検出。最も早期診断に有用だが実施可能機関は限定的。2018年から原則全例実施 |
| IgM抗体 | 発疹出現3日以内では約半数で検出されない(偽陰性)。発疹出現後4日以降に再検査が必要 |
| IgM偽陽性 | 他の感染症で非特異的に弱陽性になる。長期間にわたって持続陽性を示すケースもある |
| IgMと再感染 | 再感染の場合でも約50%にIgM抗体が検出されるため、IgM抗体の有無だけでは初感染との判別は困難 |
| ペア血清 | 急性期と回復期で陽転または有意上昇(HI法4倍以上、EIA法2倍以上) |
届出(風疹とCRSで期限が違う)
| 風疹 | 先天性風疹症候群(CRS) | |
|---|---|---|
| 類型 | 5類・全数把握 | 5類・全数把握 |
| 期限 | 直ちに(2018年1月1日から。改正前は7日以内) | 7日以内 |
| 検査 | ウイルス遺伝子検査を原則として全例実施 | 分離同定・PCR・IgM検出・HI抗体価の持続のいずれか |
| 届出基準 | 検査診断例=臨床症状(全身性の小紅斑や紅色丘疹/発熱/リンパ節腫脹)の1つ以上+病原体診断のいずれか。臨床診断例=3つすべて | 三徴=白内障、先天性心疾患、難聴。ほかに先天性緑内障、色素性網膜症、紫斑、脾腫、小頭症、精神発達遅滞、髄膜脳炎、骨のX線透過性所見、生後24時間以内に出現する黄疸など |
CRS(先天性風疹症候群)
- 三徴は白内障、先天性心疾患、難聴。
- 「先天性心疾患・白内障:妊娠初期3カ月以内の母親の感染で発生」「難聴:初期3カ月のみならず、次の3カ月の感染でも出現し、高度難聴であることが多い」。
- 新生児期には低出生体重、血小板減少性紫斑病、溶血性貧血、黄疸、間質性肺炎、髄膜脳炎も生じうる。
- CRSが強く疑われた場合は、感染児を他の新生児(他の母親)と隔離する。「生後6ヶ月間程度、児はウイルスを排出し続けるとされている」。
鑑別
送る/持つ(当院=二次救急・産科併設)
| 状態 | 当院の扱い |
|---|---|
| 診断・届出(直ちに)・遺伝子検査 | 当院で行う(保健所と連携) |
| 小児の風疹そのもの | 対症療法。当院で対応 |
| 曝露した妊婦 | 当院で結論を出さない。産科へ即つなぎ、必要なら2次施設の相談窓口へ |
| 血小板減少性紫斑病・脳炎 | 専門施設へ |
| CRSが疑われる新生児 | 他の新生児と隔離。専門施設へ |
エスカレーション(施設オーバーレイで上書き)
- 要確認:待合で妊婦が曝露したときの院内手順(誰が記録し、誰が産科へ連絡するか)。産科併設施設として最も重要な空欄
- 要確認:夜間・休日の保健所への「直ちに」の届出手順
- 要確認:ウイルス遺伝子検査の提出経路(保健所経由か)
- 要確認:職員(特に妊娠の可能性がある職員)の抗体価把握
- 要確認:2次施設(各地区ブロックの相談窓口)の連絡先
家族に渡す一文
「風疹の可能性があります。お子さん自身は比較的軽く済むことが多い病気ですが、妊娠している方がうつると、おなかの赤ちゃんに影響が出ることがあります。そのため、待合室に戻らず個室でお待ちいただきます。発疹が出る7日前から、出たあと7日までうつります。この期間に接触した方のなかに妊娠中の方がいたら、必ず教えてください。妊娠中はワクチンを打てず、注射で防ぐ方法も効果が確かめられていないので、うつさないことが唯一の対策です。発疹が消えるまでは登園・登校できません。」
医師確認事項(要・岡本判断)
- 要確認:待合で妊婦が曝露したときの院内手順。産科併設施設として決めておく必要がある。
- 要確認:届出の非対称性(風疹は直ちに/CRSは7日以内)を院内の掲示に落とすか。
- 要確認:CRSリスクの数値を週単位(産科GL)と月単位(JIHS)のどちらで載せるか。本シートは両方を併記した。
- 要確認:潜伏期(14〜21日 vs 12〜23日)と不顕性感染率(15% vs 25〜50%)が出典で食い違う。代表値をどちらにするか。
- 要確認:入院適応の数値基準(血小板数のカットオフ等)は一次資料で確認できていない。載せるならITP診療ガイドライン等での裏付けが要る。
- 要確認:風疹第5期対策(成人男性の抗体検査・定期接種)は2025年3月31日で終了している。旧来のクーポン券の案内をそのまま使わないこと。
出典
- 国立健康危機管理研究機構.風しん(詳細版)(2013年5月7日改訂).https://id-info.jihs.go.jp/infectious-diseases/rubella/detail/index.html / 先天性風疹症候群 https://id-info.jihs.go.jp/relevant-information/rubella/20130508/crs-intro.html / 病原体検出マニュアル 風疹 第5.0版(令和4年10月)https://id-info.jihs.go.jp/manuals/pathogen-detection/Rubella20221003.pdf (2026-09-12閲覧)。潜伏期14〜21日(平均16〜18日)、三主徴、発疹の性状、麻疹に比してカタル症状が軽症、ウイルスの排泄期間は発疹出現の前後約1週間、不顕性感染15(〜30)%、合併症の頻度(血小板減少性紫斑病1/3,000〜5,000、急性脳炎1/4,000〜6,000、関節炎5〜30%)、特異的な治療法はなく対症療法のみ、RT-PCRが最も早期診断に有用、IgMは発疹出現3日までは約半数で検出されない、ペア血清の判定(HI法4倍以上・EIA法2倍以上)、CRSの母体感染時期別発生頻度(妊娠月単位)、CRSの三徴と難聴の時期。
- 日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会.産婦人科診療ガイドライン産科編 CQ605「妊婦における風疹罹患の診断とその後の児への対応は?」 http://www.jaog.or.jp/wp/wp-content/uploads/2017/01/CQ605-20130703.pdf (2026-09-12閲覧)。妊娠初期のHI抗体価測定(推奨A)とHI法の推奨理由、問診5項目、感染診断検査を行う3基準(推奨B)、ペア血清HI+IgMの解釈、妊婦感染は胎児感染を意味しない、HI抗体価256倍以上の妊婦は約17%、CRS発症リスクの妊娠週数別(4〜6週100%/7〜12週80%/13〜16週45〜50%/17〜20週6%/20週以降0%)、不顕性感染でもCRSは発生する、再感染によるCRSもまれに生じうる、2次施設への紹介、産褥早期のワクチン接種(HI 16倍以下・推奨C)と授乳中でも差し支えないこと、CRS確定診断の検体、CRSが強く疑われた場合の隔離(生後6ヶ月間程度ウイルスを排出)、CRSの届出は7日以内。
- 日本産婦人科医会.会員向けノート No.116-2-30「風疹HI抗体価16倍で産後風疹ワクチンを接種すべきか?」https://www.jaog.or.jp/note/no116_2_30/ (2026-09-12閲覧)。16倍は2回接種歴が確認できれば追加接種不要/8倍以下は接種歴にかかわらず産後の追加接種が推奨。
- 厚生労働省.「平成30年1月1日から風しんの届出が変わりました。」https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/rubella/dl/poster10.pdf (2026-09-12閲覧)。改正前は7日以内→改正後は診断後直ちに、ウイルス遺伝子検査を原則として全例実施、届出基準(検査診断例・臨床診断例)。
- 厚生労働省.先天性風しん症候群 届出基準(最終更新2021-3-4).https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01-05-10.html (2026-09-12閲覧)。CRSの届出は7日以内、三徴と臨床症状、病原体診断、「先天異常の発生は妊娠週齢と明らかに相関し、妊娠12週までの妊娠初期の初感染に最も多くみられ、20週を過ぎるとほとんどなくなる」。
- 日本産婦人科医会.患者向けQ&A.https://www.jaog.or.jp/qa/confinement/ninsinshusanqa13/ (2026-09-12閲覧)。妊娠中は予防接種を受けることができない。
- 学校保健安全法施行規則(e-Gov法令検索)https://laws.e-gov.go.jp/law/333M50000080018 (2026-09-12閲覧)。第18条(風しんは第二種)、第19条「風しんにあつては、発しんが消失するまで」。
- 東京都健康安全研究センター.東京都感染症マニュアル 各論編(24)風しん https://idsc.tmiph.metro.tokyo.lg.jp/assets/survey/kobetsu/j1072.pdf / 大阪大学医学部附属病院.感染管理マニュアル 風疹(2023.8)https://www.hosp.med.osaka-u.ac.jp/home/hp-infect/file/manual/5-5ingai.pdf (2026-09-12閲覧)。感染期間は発疹出現の7日前から7日後まで、個室収容、接触者の定義と就業制限(接触後7日目から23日目)、ワクチン緊急接種や免疫グロブリン投与による発症予防効果は確認されていない、リンパ節腫脹の先行と発疹の遠心性の広がり。いずれも行政・大学病院の実務マニュアルであり、学会一次ガイドラインそのものではない。
- 風疹第5期対策(1962年4月2日〜1979年4月1日生まれの男性への抗体検査・定期接種)は令和7年(2025年)3月31日をもって終了(自治体の案内による。厚労省の一次発表は本シートで未確認)。
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